nMOSFETのチャネル領域(p型基板)の不純物濃度を高くすると、しきい値電圧はどうなるか。
- A高くなる
- B低くなる
- C変化しない
しきい値電圧は、フラットバンド電圧、表面を強反転させるための電位 2φF、空乏層の電荷を支える電圧の3つの和で決まります。酸化膜厚や基板濃度を変えると、どの項がどれだけ動くかを数字で確かめられます。
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長チャネル、基板濃度は均一、温度300 K、ゲート絶縁膜はSiO₂(比誘電率3.9)、基板はシリコン(比誘電率11.7、電子親和力4.05 eV、バンドギャップ1.12 eV、ni 1.0×10¹⁰ cm⁻³)として計算しています。n⁺ポリSiの仕事関数は伝導帯の端(4.05 eV)、p⁺ポリSiは価電子帯の端(5.17 eV)とみなしています。ポリSiゲートの空乏化、量子効果、短チャネル効果、チャネル注入による濃度分布は考えていません。
ほかの入力は今の値のまま、選んだ入力だけを今の値の1/4〜4倍の範囲で変えたときの結果です。赤い点が今の値です。
nMOSでは、表面のポテンシャルが 2φF だけ曲がって、表面の電子密度が基板の正孔密度と等しくなる「強反転」をしきい値の条件とします。このとき Vth = VFB + 2φF + √(2qεsNA(2φF + VSB))/Cox です。φF = (kT/q)ln(NA/ni) はフェルミ電位、Cox = εox/tox は単位面積あたりの酸化膜容量です。フラットバンド電圧は VFB = φms − Qf/Cox で、ゲートと基板の仕事関数差 φms と、酸化膜中の固定電荷 Qf で決まります。pMOSでは符号が逆になり、Vth = VFB + 2φF − √(2qεsND(2|φF| + |VSB|))/Cox(φF < 0)です。
長チャネルで、ゲートの下の基板濃度は均一とします。実際のトランジスタではしきい値電圧を合わせるためにチャネルの表面だけにイオン注入(チャネル注入)をするので、濃度は深さ方向に分布します。また、ゲート長が短いとドレインの電界の影響で Vth が下がる短チャネル効果やDIBLが起こります。酸化膜が数nm以下になると、ポリSiゲートの空乏化や反転層の量子効果で、実効的な酸化膜厚が厚く見えます。このツールの値は、各パラメータが Vth をどちらへどれだけ動かすかを見るための、教科書的な目安です。
既定値のnMOS、n⁺ポリSiゲート、tox = 5 nm、NA = 5×10¹⁷ cm⁻³、Qf/q = 10¹⁰ cm⁻² では、Cox ≈ 0.691 µF/cm²、φF ≈ 0.458 V、φms ≈ −1.018 V、VFB ≈ −1.021 V、空乏層の電荷による分 ≈ 0.565 V で、Vth ≈ −1.021 + 0.917 + 0.565 ≈ 0.461 V です。酸化膜を10 nmに厚くすると、空乏層の項が2倍の約1.129 Vになり、Vth は約1.02 Vに上がります。基板濃度を10¹⁸ cm⁻³ にすると Vth ≈ 0.728 V、基板バイアスを1 Vかけると Vth ≈ 0.713 V です。ゲートをp⁺ポリSiにすると φms が1.12 V大きくなり、Vth ≈ 1.58 V になります。CMOSでnMOSにn⁺、pMOSにp⁺のポリSiを使うのは、両方の Vth の絶対値を小さくそろえるためです。
シリコンとSiO₂の比誘電率(11.7、3.9)、シリコンの電子親和力(4.05 eV)、バンドギャップ(1.12 eV)、真性キャリア密度(1.0×10¹⁰ cm⁻³)は、半導体デバイスの教科書で使われる代表的な物性値です。固定電荷の既定値 10¹⁰ cm⁻² は、良質な熱酸化膜の目安としてよく示される桁です。金属ゲートの仕事関数は、材料や結晶面、下地の膜で変わるため、手元の資料の値を入れてください。
nMOSでは、空乏層の電荷の項 Qd/Cox が tox に比例して小さくなるので、Vth は下がります。既定値で tox を5 nmから2.5 nmにすると、Vth は約0.461 Vから約0.179 Vになります。そのため微細化で酸化膜を薄くするときは、基板濃度を上げたりゲートの仕事関数を変えたりして、Vth を合わせ直します。
ソースに対して基板を逆バイアスにすると空乏層が広がり、ゲートが支えなければならない空乏層の電荷が増えるからです。変化量は ΔVth = γ(√(2φF + VSB) − √(2φF)) で、既定値(γ ≈ 0.59 V^½)では VSB = 1 V で約0.25 V上がります。これを基板バイアス効果(ボディ効果)と呼びます。
目安としては使えます。酸化膜厚の欄にEOT(SiO₂に換算した等価酸化膜厚)を、ゲートを「金属」にして実効的な仕事関数を入れてください。ただし、High-k膜中の電荷や界面の双極子でしきい値電圧がずれるほか、実際の微細トランジスタはFinFETやGAAの立体構造なので、この式の値とは差が出ます。
しきい値電圧 フラットバンド電圧 仕事関数 基板バイアス効果 反転層 High-k/メタルゲート EOT(等価酸化膜厚)