エンハンスメント型とデプレッション型MOSFETの違い:しきい値電圧・記号・用途を比較

エンハンスメント型は、ゲート電圧が0 Vのときにはチャネルがなく、ゲートに電圧をかけて反転層をつくって初めて電流が流れるMOSFETです(ノーマリーオフ)。デプレッション型は、あらかじめチャネルができていて、ゲートが0 Vでも電流が流れ、ゲートに逆向きの電圧をかけてチャネルをなくすと電流が止まります(ノーマリーオン)。nチャネルでは、しきい値電圧がエンハンスメント型は正、デプレッション型は負になります。CMOSの論理回路をはじめ、ほとんどの用途ではエンハンスメント型が使われます。

項目エンハンスメント型デプレッション型
ゲートが0 Vのときチャネルがなく、オフ(ノーマリーオフ)チャネルがあり、オン(ノーマリーオン)
しきい値電圧の符号(nチャネル)正負
しきい値電圧の符号(pチャネル)負正
チャネルのでき方ゲートの電圧で、基板の表面に反転層を誘起するイオン注入などで、あらかじめ表面に薄いチャネルの層をつくっておく
電流の止め方(nチャネル)ゲート電圧をしきい値より下げる(0 Vにすればよい)ゲートに負の電圧をかけ、チャネルを空乏化させる
名前の由来ゲート電圧でチャネルを増やす(enhance)ゲート電圧でチャネルを減らす(deplete)
回路記号チャネルの線が3つに切れた破線チャネルの線が1本の実線
駆動回路が止まったときオフになるので安全オンになり得るので、短絡などに注意が必要
主な用途CMOSの論理回路、パワーMOSFET、アナログ回路など、ほとんどの用途初期のNMOS論理の負荷素子、定電流源、電源の起動回路など

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

エンハンスメント型
ほとんどの場合。ゲートを0 Vにすれば確実にオフになるので、論理回路のスイッチや、安全にオフにしたいパワー用のスイッチに使います。
デプレッション型
ゲート電圧なしで電流を流したいとき。抵抗の代わりの負荷素子、ゲートとソースをつないだ簡単な定電流源、電源が立ち上がる前から動く起動回路など。
ノーマリーオンの素子を使うとき
GaNのHEMTのように本来ノーマリーオンの素子は、ゲートの構造を工夫するか、低耐圧のシリコンMOSFETと直列につなぐカスコード構成で、ノーマリーオフとして使います。

よくある質問

パワー用途でノーマリーオフが求められるのはなぜですか?

ノーマリーオンの素子は、ゲートの駆動回路の電源が落ちたり故障したりするとオンになり、電源が短絡して大きな電流が流れるおそれがあるからです。エンハンスメント型なら、ゲートが0 Vでオフになるので安全です。

デプレッション型は、どんな回路で使われてきましたか?

CMOSが主流になる前のNMOS論理では、ゲートとソースをつないだデプレッション型を、抵抗の代わりの負荷素子として使っていました。現在も、簡単な定電流源や、電源の起動回路などで使われています。

回路記号では、どう見分けますか?

チャネルを表す線で見分けます。エンハンスメント型は、ゲート電圧をかけないとチャネルがないことを表すため、線が3つに切れた破線で描きます。デプレッション型は、チャネルが最初からあるので1本の実線で描きます。

しきい値電圧の値で見分けられますか?

見分けられます。nチャネルでは、しきい値電圧が正ならエンハンスメント型、負ならデプレッション型です。pチャネルでは符号が逆になり、負ならエンハンスメント型、正ならデプレッション型です。

理解度チェック

デプレッション型MOSFETの特徴として正しいものはどれか。

  1. Aゲートを持たない
  2. Bゲート電圧が0 Vでもチャネルが存在し、電流が流れる
  3. Cしきい値電圧より高いゲート電圧でも電流が流れない
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正解:B. ゲート電圧が0 Vでもチャネルが存在し、電流が流れる

デプレッション型はチャネルがあらかじめできており、ゲート電圧が0 Vでも電流が流れる(ノーマリーオン)MOSFETです。nチャネルなら負のゲート電圧でチャネルを消して電流を止めます。初期のNMOS論理では負荷素子として使われました。電源が落ちても導通するため安全面で注意が必要で、GaNのHEMTも本来はノーマリーオンのため、ノーマリーオフ化する構造の工夫が行われています。

エンハンスメント型のnチャネルMOSFETがオン(導通)するための条件として正しいものはどれか。(VGS:ゲート-ソース間電圧、Vth:しきい値電圧)

  1. AVGSが0 Vであること
  2. BVGSがVthより大きいこと
  3. CVGSが負の電圧であること
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正解:B. VGSがVthより大きいこと

エンハンスメント型のnMOSFETでは、ゲートにVthを超える正の電圧を加えると、p型基板の表面に電子が引き寄せられて反転層(チャネル)ができ、ソースとドレインの間に電流が流れます。VGS = 0 Vではチャネルがなくオフなので、ゲートが浮いても電流が流れにくく(ノーマリーオフ)、論理回路やパワー用途の安全性に向きます。Vthは先端ロジックで0.2〜0.4 V、パワー用で1〜4 V程度が一般的です。

エンハンスメント型pチャネルMOSFETのしきい値電圧(ソース基準)の符号はどれか。

  1. A正の値
  2. B負の値
  3. C必ず0 V
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正解:B. 負の値

pMOSでは、ゲートにソースより低い電圧を加えるとn型基板(nウェル)の表面に正孔の反転層ができ、オンになります。そのためエンハンスメント型pMOSのしきい値電圧は負の値(例えば −0.4 V)です。回路では、ソースを電源VDDにつなぎ、ゲートをVDDより|Vth|以上低くするとオンになると考えます。設計資料では符号の混乱を避けるため、絶対値|Vth|で比較することがよくあります。

  1. パワーデバイスで、ゲート電圧が0 Vのときに電流が流れない「ノーマリーオフ」特性が求められる主な理由はどれか。
  2. ノーマリーオン型のGaN HEMTを、ノーマリーオフの動作で安全に使うために、低耐圧のシリコンMOSFETと直列に組み合わせる構成はどれか。

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関連する用語の解説

しきい値電圧
MOSFETでチャネル(反転層)が形成され、電流が流れ始めるゲート電圧。Vthと書く。
ノーマリーオフ
ゲート電圧が0 Vのときに電流が流れない特性。駆動回路が故障したときでも電流が流れ続けないため、パワーデバイスで安全上求められる。
反転層
ゲート電圧によって半導体表面に、もとの型と逆のキャリアが集まってできる層。MOSFETのチャネルになる。

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