PDNの目標インピーダンスとデカップリングコンデンサ
電源電圧と許容できる電圧の揺れ、負荷の電流の変化から、電源供給網(PDN)に求められるインピーダンスを計算します。デカップリングコンデンサの容量・ESR・ESLと個数を入れると、インピーダンスの周波数特性と、目標を満たす周波数の範囲が分かります。
結果
- 目標インピーダンス Zt
- –
- 自己共振周波数 1/(2π√(LC))
- –
- 自己共振周波数での |Z| = ESR/N
- –
- |Z| < Zt となる範囲の下限
- –
- |Z| < Zt となる範囲の上限
- –
- ESR/N ≤ Zt となる最小の個数
- –
この個数では、インピーダンスが目標インピーダンスを下回る周波数がありません。
両軸とも対数目盛です。青い線がN個を並列にしたときのインピーダンス、破線が目標インピーダンスで、赤い点が自己共振周波数です。
コンデンサは容量C、ESR、ESLの直列回路とし、同じものをN個並列にしたインピーダンスを (ESR + jωESL + 1/(jωC))/N として計算しています。電源(VRM)、基板やパッケージの配線のインダクタンス、電源プレーンやチップ内の容量は含めていません。ESRとESLは実装のしかたや周波数で変わり、セラミックコンデンサの容量は直流電圧や温度で減るため、部品メーカーのデータで確かめてください。
グラフで見る
ほかの入力は今の値のまま、選んだ入力だけを今の値の1/4〜4倍の範囲で変えたときの結果です。赤い点が今の値です。
目標インピーダンスの考え方
負荷の電流がΔIだけ急に変わったとき、電源の経路のインピーダンスがZなら、電圧は約 Z·ΔI だけ揺れます。この揺れを許容リップル以内に抑えるには、インピーダンスを Zt = V × リップル / ΔI 以下にする必要があります。既定値の1.0 V、5%、10 Aでは、Zt = 1.0 × 0.05 / 10 = 5 mΩです。0.75 V、3%で同じ10 Aなら、Ztは2.25 mΩになります。消費電力が同じまま電圧が下がると電流が増えるので、目標インピーダンスは電圧の2乗に比例して小さくなり、低電圧・大電流のチップほど電源の設計が難しくなります。
コンデンサの自己共振とESR・ESL
実際のコンデンサには、容量のほかに等価直列抵抗ESRと等価直列インダクタンスESLがあります。インピーダンスは、低い周波数では容量で決まる 1/(2πfC)、高い周波数ではESLで決まる 2πf·ESL で、両者が打ち消し合う自己共振周波数 1/(2π√(LC)) で最小のESRになります。既定値の1 µF、0.5 nHでは自己共振周波数が約7.12 MHzで、10個並列ではそこでのインピーダンスが10 mΩ / 10 = 1 mΩです。目標の5 mΩを下回るのは、約2.76 MHz〜18.4 MHzの範囲です。
個数とESLで決まる範囲
同じコンデンサをN個並列にすると、インピーダンスはすべての周波数で1/Nになります。ESR/N ≤ Zt となる最小の個数は既定値では2個ですが、2個では自己共振周波数の1点でようやく5 mΩに届くだけです。範囲の上限はほぼ ESL/N で決まり、容量を10 µFに増やしても上限は約15.9 MHzとほとんど変わらず、下限が約318 kHzに下がるだけです。一方、ESLを0.25 nHに半減させると、上限は約34.2 MHzに広がります。高い周波数では、容量よりもインダクタンスを下げることが重要です。
実際のPDNと反共振
実際のPDNは、低い周波数を受け持つ電源(VRM)とバルクコンデンサ、基板のセラミックコンデンサ、パッケージのコンデンサ、チップ内の容量のように、周波数ごとに役割を分けた部品で構成されます。このツールが扱うのは1種類のコンデンサだけです。値の異なるコンデンサを並列にすると、容量の大きい方のESLと小さい方の容量が並列共振を起こし、インピーダンスが鋭く高くなる反共振が生じることがあり、PDN設計の大きな落とし穴です。そのため、プレーンの容量や配線まで含めた解析で確かめます。
パッケージ・実装の問題を解く
- A信号を増幅するため
- B電源電圧の変動(ノイズ)を抑え、急な電流の変化に対して電荷を供給するため
- Cチップを光らせるため
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正解:B. 電源電圧の変動(ノイズ)を抑え、急な電流の変化に対して電荷を供給するため
LSIは動作によって電源電流が急に変化し、電源配線のインダクタンスLのためにL·di/dtの電圧変動が生じます。チップの近くにデカップリングコンデンサを置くと、急な電流の変化に対してコンデンサから電荷が供給され、電源電圧の揺れを抑えられます。周波数帯ごとに効く場所が違うため、チップ内、パッケージ、基板に大きさの異なるコンデンサを分けて配置します。信号の増幅は役割ではありません。
- A電源ラインの直流抵抗を下げることで、ICの平均の消費電流を減らすため
- B配線が長いと、そのぶんコンデンサの静電容量そのものが小さくなってしまうため
- C配線のインダクタンスを小さくし、急な電流変化による電源電圧の変動を抑えるため
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正解:C. 配線のインダクタンスを小さくし、急な電流変化による電源電圧の変動を抑えるため
デジタル回路は、クロックのたびに短時間で大きな電流を電源から引き込みます。電源からICまでの配線にはインダクタンスLがあり、電流の変化に対して L × di/dt の電圧降下が生じます。例えば2 nHの配線で0.1 A/nsの電流変化があると、電源電圧が0.2 Vも下がります。コンデンサを端子のすぐ近くに置くと、この電流をコンデンサが短い経路で供給できます。配線の長さで容量の値そのものが変わるわけではなく、問題は経路のインダクタンスです。
- A大きくなる
- B小さくなる
- C変化しない
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正解:B. 小さくなる
コンデンサのインピーダンスは 1/(2πfC) で、周波数が高いほど小さくなります。直流(f = 0)は通さず、高い周波数ほど通しやすい性質です。例えば0.1 µFは1 kHzで約1.6 kΩ、10 MHzで約0.16 Ωです。この性質から、ICの電源端子のそばに置いて高周波ノイズを接地へ逃がすバイパスコンデンサや、フィルタに使われます。ただし実物は寄生インダクタンスのため、高周波では逆にインピーダンスが上がります。
- A2π√(LC)
- B1 / (2π√(LC))
- C√(L / C)
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正解:B. 1 / (2π√(LC))
LC回路は、コイルのリアクタンス2πfLとコンデンサのリアクタンス1/(2πfC)が等しくなる周波数で共振し、f = 1/(2π√(LC)) です。例えば L = 10 µH、C = 100 pF なら約5 MHzです。直列共振ではインピーダンスが最小、並列共振では最大になります。ラジオの選局(同調)、LC発振器、フィルタ、ワイヤレス給電やRFIDのアンテナ回路に使われます。
よくある質問
目標インピーダンスは、すべての周波数で満たす必要がありますか?
負荷の電流の変化が含む周波数の範囲で満たすことを目指します。低い周波数は電源(VRM)の制御が受け持ち、それより上はバルクコンデンサ、セラミックコンデンサ、パッケージやチップ内の容量が順に受け持ちます。高い周波数では、パッケージの配線のインダクタンスのため基板のコンデンサは効かなくなり、チップ内の容量が頼りになります。
ESRは小さいほどよいのですか?
自己共振周波数でのインピーダンスを下げる点では小さいほうが有利です。しかし、ESRがきわめて小さいと、異なるコンデンサの間の反共振や、電源プレーンとの共振のピークが鋭く高くなります。そのため、適度なESRで共振を抑える設計や、ESRを大きめにしたコンデンサが使われることもあります。
大きいコンデンサ1個と小さいコンデンサ複数個では、どちらがよいですか?
高い周波数ではESLが効くため、コンデンサを複数並列にしてESLをN分の1に下げるほうが有利なことが多いです。ただし、1個ごとに配線やビアのインダクタンスも加わるので、電源とグラウンドのビアを近づけるなどの実装の工夫も必要です。このツールで個数NやESLを変えると、範囲の上限がどう変わるかを確かめられます。