伝達関数とは

でんたつかんすう

線形で時不変な系の入力と出力の関係を、初期値をすべて0としたときの出力と入力のラプラス変換の比 G(s) = Y(s)/X(s) で表したもの。系のインパルス応答のラプラス変換に等しい。分母を0にする s を極、分子を0にする s を零点と呼び、極の位置から安定性や応答の速さがわかる。s = jω とおくと周波数応答が得られる。離散時間の系では、z変換を使って H(z) で表す。

「伝達関数」は、3分野の26問の練習問題に出てきます(制御工学の基礎, デジタル信号処理の基礎, 回路解析(交流回路・線形回路・過渡現象)など)。

RCローパスフィルタとRCハイパスフィルタ (a) vin vout R C (b) vin vout C R H(s) = 1/(1 + sRC) H(s) = sRC/(1 + sRC)
RCローパスフィルタとRCハイパスフィルタ · 図解集で見る

この用語の分野: 制御工学の基礎

ブロック線図での計算

伝達関数を使うと、要素の直列の接続は掛け算、並列の接続は足し算で表せます。負帰還のループでは、前向きの伝達関数を G(s)、フィードバックの伝達関数を H(s) とすると、閉ループ伝達関数は G(s)/(1 + G(s)H(s)) になります。積 G(s)H(s) は一巡伝達関数(ループ伝達関数)と呼ばれ、安定性や安定の余裕を調べるときの出発点になります。

代表的な形

RC回路のローパスフィルタは 1/(1 + sRC) という一次遅れ系で、RLC回路やモータの位置の制御ループは、二次遅れ系で表されることが多くあります。積分は 1/s、微分は s、時間 L のむだ時間は e^(−Ls) です。分母の次数が分子の次数以上の伝達関数をプロパーと呼び、実際の物理的な系はふつうこの形になります。

極と零点が教えること

極 p は応答に e^(pt) の成分を生むので、すべての極の実部が負なら系は安定です。極が虚軸に近いほど応答はゆっくり減衰し、虚部が大きいほど速く振動します。零点は応答の形を変え、s平面の右半分に零点をもつ系では、ステップ応答が最初に逆向きに動く逆応答が現れることがあり、速い制御が難しくなります。

伝達関数の練習問題に挑戦

図(a)のRCローパスフィルタで、R = 1 kΩ、C = 1 µF である。伝達関数 H(s) = Vout(s)/Vin(s) の極はどれか。

  1. As = −1,000 s⁻¹
  2. Bs = −159 s⁻¹
  3. Cs = −0.001 s⁻¹
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正解:A. s = −1,000 s⁻¹

解き方1(伝達関数から): 分圧の式から H(s) = (1/(sC))/(R + 1/(sC)) = 1/(1 + sRC) で、分母が0になる s = −1/(RC) が極です。RC = 1×10³ × 1×10⁻⁶ = 1×10⁻³ s なので、極は s = −1,000 s⁻¹ です。解き方2(時間応答との対応): 極 s = −a はステップ応答などの e^(−at) の項に対応し、RC回路の応答 e^(−t/RC) から、極は −1/τ = −1/(1 ms) と読めます。極の大きさ1,000 rad/sは遮断角周波数で、周波数にすると約159 Hzです。

離散時間のLTIシステムの伝達関数 H(z) から周波数応答を求めるとき、z を動かす場所として正しいものはどれか。

  1. Az平面の単位円の上(z = e^(jω)、|z| = 1)
  2. Bz平面の正の実軸の上(z = r、r は0より大きい実数)
  3. Cz平面の虚軸の上(z = jω)
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正解:A. z平面の単位円の上(z = e^(jω)、|z| = 1)

周波数応答は、H(z) に z = e^(jω) を代入したもので、ω を −π から π まで動かすと、z は単位円を1周します。z = 1(ω = 0)が直流、z = −1(ω = π)がナイキスト周波数に当たります。連続時間のラプラス変換では虚軸 s = jω の上で周波数応答を求めますが、離散時間ではそれが単位円に対応します。

よくある質問

伝達関数と周波数応答の違いは何ですか?

伝達関数 G(s) は複素数 s の関数で、s を虚軸の上の jω に限ったものが周波数応答 G(jω) です。周波数応答の大きさと位相を周波数に対して描いたものが、ボード線図です。

非線形な系にも伝達関数はありますか?

そのままでは定義できません。動作点の近くで線形化すれば、その近くでの小さな変化について伝達関数を使えます。飽和や不感帯のような強い非線形性は、別の方法で扱います。

解説の中の「伝達関数」

「伝達関数」が出てくる問題(26問)

  1. 図(a)のRCローパスフィルタで、R = 1 kΩ、C = 1 µF である。伝達関数 H(s) = Vout(s)/Vin(s) の極はどれか。
  2. 離散時間のLTIシステムの伝達関数 H(z) から周波数応答を求めるとき、z を動かす場所として正しいものはどれか。
  3. 差分方程式 y[n] = x[n] + 0.5x[n − 1] + 0.25y[n − 1] で表されるシステムの伝達関数 H(z) = Y(z)/X(z) として正しいものはどれか。
  4. 伝達関数 H(z) = 1/(1 − 1.3z⁻¹ + 0.4z⁻²) で表される因果的なシステムの、極と安定性の組み合わせとして正しいものはどれか。
  5. サンプリング周波数8 kHzで動作する、伝達関数 H(z) = 1 + z⁻²(y[n] = x[n] + x[n − 2])のFIRフィルタがある。出力が0になる正弦波の入力の周波数として正しいものはどれか。
  6. アナログフィルタの伝達関数 H(s) からデジタルフィルタを設計するときに使う、双一次変換の説明として正しいものはどれか。
  7. 前向きの経路の伝達関数が G(s)、フィードバックの経路の伝達関数が H(s) の負帰還のブロック線図がある。目標値 R(s) から出力 Y(s) までの閉ループ伝達関数 Y(s)/R(s) として正しいものはどれか。
  8. 伝達関数 G(s) = 5/(s + 2) の系に、大きさ1のステップを入力した。出力の最終値(t → ∞ での値)として正しいものはどれか。
  9. 線形で時不変な系の伝達関数の説明として正しいものはどれか。
  10. 伝達関数 G(s) = 2/(1 + 0.5s) の一次遅れ系に、時刻0で大きさ1のステップを入力した。t = 1 s での出力に最も近いものはどれか。
  11. ある一次遅れ系に大きさ2のステップを入力したところ、出力は最終的に6に落ち着き、入力から0.4 sで最終値の約63%に達した。この系の伝達関数として正しいものはどれか。
  12. 伝達関数 G(s) = 25/(s² + 4s + 25) の二次遅れ系の、固有角周波数 ωn と減衰係数 ζ の組み合わせとして正しいものはどれか。
  13. 伝達関数 G(s) = 25/(s² + 4s + 25) の系のステップ応答が、最終値の±2%以内に収まるまでの整定時間を、近似式 ts ≈ 4/(ζωn) で見積もった値として正しいものはどれか。
  14. 単位フィードバックの系で、前向きの伝達関数が G(s) = 9/(1 + 2s) である。大きさ1のステップの目標値に対する定常偏差として正しいものはどれか。
  15. 閉ループが安定な単位フィードバックの系で、前向きの伝達関数 G(s) が積分 1/s を1つ含む(1形の系である)とき、定常偏差の説明として正しいものはどれか。

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