半導体製造装置とは? チップを作る機械の種類と役割

約14分 · 更新: 2026年10月23日

半導体製造装置は、シリコンのウエハにチップの回路を作り込んだり、できたチップを切り分けて調べたりする機械です。膜をつける・模様を写す・削る・洗う・測るなど、作業ごとに専用の装置があり、工場はそれを何種類も組み合わせて使います。作るのは東京エレクトロンやASMLなどの装置メーカーで、売上は半導体の景気の波を大きく受けます。

この記事でわかること

  • 工場に必要な装置の種類と、それぞれの役目
  • 装置ごとの代表的なメーカーと、日本の会社が強い分野
  • 装置がこれほど高価で精密な理由
  • 装置メーカーのもうけ方と、売上が大きく上下する理由

前提知識: チップが「膜をつけ、光で模様を写し、削る」作業のくり返しで作られることを知っていると読みやすくなります。くわしくは「半導体チップはどうやって作られる?」で説明しています。

身近なところでは: ニュースの「半導体装置株」

株式のニュースで「東京エレクトロンやアドバンテストが上昇」「ASMLの受注が予想を上回った」といった見出しを見かけます。どれも、チップそのものではなく、チップを作る機械を売る会社です。アメリカのアプライド・マテリアルズ、ラムリサーチ、KLA、日本のSCREENやディスコも同じ仲間です。

業界団体のSEMIによると、2025年の世界の半導体製造装置の売上は1,351億ドルでした。前の年より15%増え、過去最高です。1ドル=150円なら約20兆円です。

半導体製造装置とは: 作業ごとの専用の機械

チップは、シリコンの円い薄い板(ウエハ)の上で作ります。膜をつけ、光で模様を写し、削る作業を何十回もくり返します。この段階を前工程と呼びます。そのあと、ウエハを1個ずつのチップに切り分け、包んで検査する段階を後工程と呼びます。2つの違いは「前工程と後工程の違い」で表にしています。

半導体製造装置は、こうした作業の1つ1つを受け持つ機械です。膜をつける装置は膜をつけるだけ、というように、多くは役目が分かれています。工場では、何種類もの装置を何台も並べて使います。

なお、ウエハやガス、薬液は、装置メーカーとは別の材料メーカーが作ります(「シリコンウエハとは?」)。ここでは話を簡単にするため、装置を作業ごとにまとめて紹介します。

工場に並ぶ装置を作業ごとにまとめた図: 前工程の6つの作業と検査、後工程の3つの作業 前工程: ①〜⑥を層ごとにくり返す ① 膜をつける CVD・ALD スパッタリング ② 模様を写す 露光装置 コータ/デベロッパ ③ 削る ドライエッチング 装置 ④ 洗う 洗浄装置 ⑤ 平らに磨く CMP装置 ⑥ 入れて熱する イオン注入装置 熱処理装置 あいだで何度も: 測る・調べる 検査装置・計測装置 後工程 薄く削り、切り分ける 研削装置・ダイサ チップをつなぐ ボンダ 電気で良否を調べる テスタ・プローバ
工場に並ぶ主な装置を、作業ごとにまとめた図。図の中の装置の名前は、このあと順に説明します。①〜⑥の番号は説明のための並びで、実際の順番や組み合わせは層ごとに変わります。省略していること: ウエハを運ぶ装置、熱で酸化膜を作る作業、パッケージに包む装置など。

模様を写す: 露光装置とコータ/デベロッパ

回路の模様は、光を使ってウエハに写します。まず、光が当たると性質が変わる薬剤(レジスト)を、ウエハに薄く均一に塗ります。次に、回路の原版を通して光を当てます。最後に薬液でレジストの一部を溶かし、模様を浮かび上がらせます。この最後の作業を現像と呼びます。

光を当てる機械が、露光装置です。原版の模様をレンズや鏡で縮めて写し、ウエハを少しずつずらしながら全面に写していきます。主なメーカーは、オランダのASMLと、日本のニコン、キヤノンです。とても波長の短い光で最先端の層を写すEUV露光装置は、ASMLだけが作っています。くわしくは「EUV露光とは?」で説明しています。

レジストを塗る作業と現像する作業は、1台にまとめた装置で行います。この装置をコータ/デベロッパ(塗布・現像装置)と呼び、露光装置と直接つないで使います。代表的なメーカーは東京エレクトロンで、SCREENも作っています。

膜をつける: CVD・ALD・スパッタリング

膜をつける装置は、大きく2つのやり方に分かれます。1つは、原料のガスをウエハの上で化学反応させ、できた固体を膜として積もらせるやり方です。これをCVD(化学気相成長)と呼び、電気を通さない膜などに広く使います。

CVDの仲間に、原子の層を1層ずつ重ねるように膜を育てる方法があります。これをALD(原子層堆積)と呼びます。時間はかかりますが、細く深い溝の底や壁まで、そろった厚さで覆えます。

もう1つは、金属などの板に、勢いをつけたガスの粒をぶつけるやり方です。はじき出された原子が飛んで、ウエハに積もります。これをスパッタリングと呼び、配線になる金属の膜などに使います。

化学反応を使わずに膜をつけるやり方を、まとめてPVD(物理気相成長)と呼びます。スパッタリングはその代表です。2つのやり方の違いは「CVDとPVDの違い」で比べられます。

膜をつける装置の主なメーカーは、アプライド・マテリアルズ、ラムリサーチ、東京エレクトロンです。ALDではオランダのASM Internationalも知られています。多くのウエハをまとめて処理する装置では、KOKUSAI ELECTRICが代表的です。

削る: ドライエッチング装置

模様を写したあとは、レジストで覆われていない部分の膜を削ります。今の細かい工程では、主にガスを使って削ります。空気を抜いた容器の中で、ガスに強い電気のエネルギーを与えると、電気を帯びた粒や反応しやすい粒の集まりになります。この状態をプラズマと呼びます。

プラズマの粒をウエハに上から当てて削る方法を、ドライエッチングと呼びます。粒の向きをそろえられるので、横に広がらず、まっすぐ下に深く削れます。薬液で削るやり方との違いは「ウェットエッチングとドライエッチングの違い」で表にしています。

主なメーカーは、ラムリサーチ、東京エレクトロン、アプライド・マテリアルズ、日立ハイテクです。

洗う・磨く・打ち込む・熱する

洗浄装置

ウエハは、ほとんどの作業の前後で洗います。目に見えないごみやわずかな金属の汚れが、不良の原因になるからです。洗浄装置は、薬液と純水でウエハを洗い、乾かすまでを自動で行います。

洗い方には、何十枚ものウエハを薬液の槽にまとめて浸すやり方と、1枚ずつ回しながら薬液をかけるやり方があります。後者を枚葉式洗浄と呼びます。主なメーカーは、SCREEN、東京エレクトロン、ラムリサーチです。

CMP装置

層を重ねると、表面に凹凸ができます。凹凸が残ると、次に模様を写すときにピントが合わない場所が出ます。そこで、薬品と細かい研磨の粒を含む液をかけ、回転するパッドで表面を平らに磨きます。この作業をCMPと呼び、主なメーカーはアプライド・マテリアルズと荏原製作所です。

イオン注入装置と熱処理装置

半導体の電気の通りやすさは、ごくわずかに混ぜる元素(不純物)で決まります。イオン注入装置は、不純物の原子に電気を帯びさせ、電気の力で加速してウエハに打ち込みます。主なメーカーは、アプライド・マテリアルズ、アメリカのAxcelis、住友重機械マテリアルソリューションズ(2026年1月に住友重機械イオンテクノロジーから社名を変更)です。

打ち込んだあとは、ウエハを高温に熱して、乱れた結晶を整え、不純物を働かせます。この熱処理をアニールと呼びます。熱処理装置には、多くのウエハをまとめて炉で熱するものと、1枚ずつ数秒で熱するものがあります。主なメーカーは、東京エレクトロン、KOKUSAI ELECTRIC、アプライド・マテリアルズです。

測る・見つける: 計測装置と検査装置

前工程では、作業の合間に何度もウエハを調べます。問題を早く見つけるほど、むだになるウエハを減らせるからです。

調べる装置の1つは、決めた場所の寸法や膜の厚さを正確に測る計測装置です。たとえば、電子の細いビームで模様を上から見て、線の幅を測る専用の電子顕微鏡があります。これをCD-SEMと呼びます。

もう1つは、ウエハ全体から、ごみや模様の欠けを探す装置です。光を当てて異物で散らばった光をとらえたり、となり合うチップの画像を比べて違う所を探したりします。これを欠陥検査装置と呼びます。計測と検査の主なメーカーは、アメリカのKLA、アプライド・マテリアルズ、日立ハイテクです。

後工程の装置: 切る・つなぐ・調べる

前工程を終えたウエハは、まず裏を削って薄くし、1個ずつのチップに切り分けます。切り分ける作業をダイシングと呼び、回転する薄い刃やレーザーを使う装置(ダイサ)で行います。削る装置と切る装置の主なメーカーは、ディスコと東京精密です。

切り分けたチップは土台に固定し、チップの電極と土台を、細い金属の線などでつなぎます。この作業をボンディングと呼び、使う装置をボンダと呼びます。線でつなぐ装置ではKulicke & Soffaが知られています。チップを置いて直接つなぐ装置では、オランダのBesiが代表的です。

チップが正しく動くかは、電気の信号を入れて確かめます。決めた信号を与えて答えを調べ、良品かどうかを自動で判定する装置を、テスタ(ATE)と呼びます。主なメーカーは、アドバンテストとアメリカのテラダインです。

ウエハのまま調べるときは、ウエハを運んで位置を合わせる装置を使います。この装置をプローバと呼び、主なメーカーは東京エレクトロンと東京精密です。

プローバの上では、チップの電極に、細い針をたくさん並べた部品を押し当てます。この部品をプローブカードと呼びます。テスタの信号は、この針を通ってチップに届きます。

なぜこれほど高価で精密なのか

1つ目の理由は、求められる細かさです。最先端のチップの細い配線は、数十nmの間隔で並びます。nm(ナノメートル)は、100万分の1 mmです。新しい層は下の層の模様とぴったり重なるように写す必要があり、許されるずれは、配線の間隔よりずっと小さくなります。

2つ目は、空気と汚れを締め出すことです。膜をつける作業や削る作業の多くは、空気を抜いた容器の中で行います。空気中の分子が反応のじゃまをしたり、膜に混じったりするからです。

3つ目は、同じ結果を出し続けることです。何千枚目のウエハでも、1枚目と同じ仕上がりが求められます。そのため装置には、温度・圧力・ガスの量を細かく測って調整するしくみが詰め込まれています。

極端な例が、EUV露光装置です。ASMLの2025年の決算によると、EUV露光装置の売上は116億ユーロで、48台分でした。この記事で単純に割ると、1台あたり約2.4億ユーロです(新型も含めた平均)。1ユーロ=170円なら約410億円です。

装置メーカーはどうやってもうけるのか

機械を売り、そのあとも支える

装置メーカーの収入は、新しい装置の販売だけではありません。納めた装置の点検や修理、交換部品、性能を上げる改造も大きな収入です。装置は工場で何年も使い続けるので、そのあいだずっと支えが要るからです。

たとえばASMLの2025年の売上は327億ユーロでした。そのうち82億ユーロ、およそ4分の1が、すでに納めた装置の保守や改造による売上です。

お客さんは少数の大きな会社

装置を買うのは、チップを作る会社です。最先端の工場を建てられる会社は限られ、少数の大手が売上の多くを占めます。ラムリサーチの2025年度(2025年6月期)の年次報告では、大きな顧客2社が売上の約17%と約15%を占めました。

地域で見ても偏りがあります。SEMIによると、2025年の装置の売上の79%は、中国本土・台湾・韓国の3つの地域向けでした。製造を引き受ける会社と分業のしくみは「ファウンドリとは?」で説明しています。

好況と不況の波

チップがよく売れると、チップを作る会社は工場を増やすために装置を買います。売れ行きが落ちると、投資をいっせいに控えます。そのため装置の売上は、年によって大きく上下します。半導体の市場で好況と不況が交互に来る動きを、シリコンサイクルと呼びます。

SEMIによると、2019年の装置の売上は前の年より7%減り、韓国向けは44%も減りました。2021年には44%増え、2023年に少し減ったあと、2025年は過去最高になりました。

世界の半導体製造装置の売上の推移(2018〜2025年、SEMI) 世界の装置の売上(億ドル) 2018 645 2019 598 2020 712 2021 1,026 2022 1,076 2023 1,063 2024 1,171 2025 1,351 前の年より減った年
SEMIが毎年発表する、世界の半導体製造装置の売上。各年の値は、翌年4月ごろの発表によります。棒の長さはすべて同じ縮尺です。省略していること: 発表後の数字の改訂、為替や物価の影響、装置の種類ごとの内訳。

装置メーカーの業績や株価が大きく動きやすいのは、この波のためです。需要と品不足の関係は「半導体不足はなぜ起きた?」で説明しています。

日本の会社が強い分野

製造装置は、日本の会社が強い分野として知られます。国全体のシェアの数字と、その変化は「半導体業界にはどんな仕事がある?」で紹介しています。ここでは、各社が自ら公表しているシェアの推計を並べます。調べ方や時点は会社ごとに違います。

  • コータ/デベロッパ: 東京エレクトロンは、世界シェアが9割を超えると説明しています(2026年4月の決算説明)。EUV露光装置とつないで使うものでは100%としています(2025年3月時点の同社の推計)。
  • 洗浄装置: SCREENは、1枚ずつ洗う装置やまとめて洗う装置などで、世界シェア1位だと説明しています(2025年7月の発表。2024年の調査会社のデータによる)。
  • 切る・削る装置: ディスコは、切り分ける装置とウエハを薄く削る装置の世界シェアを、7〜8割と推定しています(同社のFAQ。時点の記載はありません)。
  • テスタ: アドバンテストは、2025年のシェアを約66%と推計しています。スマホのプロセッサのように多くの機能をまとめたチップ向けの数字です。メモリ向けは約60%です(2026年4月の決算説明)。

装置は安全保障にも関わります。2022年10月に米国が、2023年7月に日本が、先端の半導体製造装置などの輸出管理を強めました。

よくある誤解

誤解: 1つの会社の機械が、チップを丸ごと作っている

実際は、膜をつける・写す・削る・洗う・測るなど、作業ごとに別の装置を使い、それを多くのメーカーから買いそろえます。ASMLの露光装置の隣には、東京エレクトロンやラムリサーチ、KLAなどの装置が並びます。「ASMLの装置がないと作れない」という報道が「その1台で作れる」と受け取られやすいのが、誤解の理由です。

誤解: チップを作る会社は、自分の工場の機械を自分で設計している

実際は、多くの装置を装置メーカーから買います。チップを作る会社が自分で決めるのは、装置をどの順に使い、温度やガスの量をどうするかという作り方の条件です。ただし、新しい装置の開発には顧客も深く関わります。たとえばASMLは2012年、インテル・TSMC・サムスンから出資を受け、開発費の一部も負担してもらいました。

誤解: 装置メーカーは、機械を売ったら終わり

実際は、納めた装置の保守や部品、改造も大きな事業で、ASMLでは2025年の売上のおよそ4分の1でした。装置が売れない不況の年でも、この仕事は続きます。ニュースになりやすいのが新しい装置の受注なので、生まれやすい誤解です。

数字で見る

数字何の数字か
1,351億ドル2025年の世界の半導体製造装置の売上。前の年より15%増(SEMI)
79%2025年の装置の売上のうち、中国本土・台湾・韓国向けの割合(SEMI)
約2.4億ユーロ2025年のEUV露光装置の1台あたりの平均の売上(ASMLの決算の数字をこの記事で割ったもの)
約17%と約15%ラムリサーチの2025年度の売上のうち、大きな顧客2社がそれぞれ占めた割合

高価な機械を少数の大きなお客さんに売り、そのあとも長く支える。売上はお客さんの投資の波で大きく上下する。数字からは、そんな業界の形が見えます。どの数字も毎年変わるので、最新の値はSEMIや各社の発表で確かめてください。

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