ALDとCVDの違い:原子層堆積を比較

ALD(原子層堆積)は、CVDの特別な形で、原料のガスを1種類ずつ順番に流し、それぞれの反応が、表面が覆われたところで止まるようにしたものです。そのため、1サイクルで原子1層ずつ膜が成長し、膜厚を正確に制御でき、非常に深い構造もむらなく覆えます。代わりに速度は遅く、普通のCVDよりずっと時間がかかるので、最も薄く最も重要な膜に使われます。

項目ALDCVD
仕組み原料を順番に流し、間をパージで分ける。反応は自己停止的で、1サイクルでおよそ原子1層が付く原料を同時に流し、表面で連続的に反応させる
膜厚の制御原子レベル。サイクル数で決まる成膜の時間と速度で決まるので、精度は低め
被覆性優れている。非常に深く狭い穴や溝でも均一良好。ただし深い構造は、埋まる前に口がふさがることがある
成膜の速度遅い。1サイクルで1 nm未満速い。1分あたり数nm以上
均一性と膜質非常に均一で、緻密で、ピンホールが少ない均一性は良好
温度低いことが多い(約100〜350 ℃)幅が広く、高めのことが多い(プラズマCVDは低い)
スループットウェハあたりでは低い(バッチ式の装置で改善)高い
一般的な膜厚約1〜50 nm数十nmからマイクロメートル
主な用途high-kのゲート絶縁膜(HfO2など)、薄いバリア、スペーサー、3D構造のライナー厚い絶縁膜、ポリシリコン、窒化シリコン、タングステンのプラグ

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

ALD
膜が極端に薄く、完全に均一で、複雑な3D構造を覆う必要があるとき。FinFETやGAAのゲートスタック、DRAMのキャパシタなど。
CVD
より厚い膜を、速く、安く作りたく、構造がそれほど厳しくないとき。
使い分け
両方を組み合わせることも多くあります。最初の薄い被覆層をALDで作り、そのあと速いCVDで埋めたり厚くしたりします。

よくある質問

なぜALDは遅いのですか?

原料を1種類ずつ流し、間にパージを入れるので、1サイクルでおよそ原子1層しか付きません。膜厚を完全に制御できる代わりに、1サイクルで1 nm未満の速度になります。

なぜゲート絶縁膜にはALDを使うのですか?

HfO2などのhigh-kのゲート絶縁膜は、数nmの厚さで、完全に均一で、フィンなどの3D構造をむらなく覆う必要があります。ALDは、この3つをすべて満たせます。

ALDはCVDの一種ですか?

はい。ALDは、反応を時間で分け、自己停止的にした、CVDの特別な形と考えられます。

ALDよりCVDが好まれるのはどんなときですか?

厚い膜を、速く、安く作りたく、構造がそれほど厳しくないときです。厚い絶縁膜などです。

理解度チェック

ALD(原子層堆積)の特徴として正しいものはどれか。

  1. A1回の処理で数µmの膜を高速に堆積できる
  2. B前駆体の自己制限的な表面反応を繰り返し、原子層レベルで膜厚を制御できる
  3. C真空を必要としない印刷技術である
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正解:B. 前駆体の自己制限的な表面反応を繰り返し、原子層レベルで膜厚を制御できる

ALDでは、原料ガス(前駆体)を供給して表面に1層分だけ吸着させ、余分なガスをパージで除いたあと反応ガスを供給して反応させる、というサイクルを繰り返します。表面の反応できる場所が埋まると反応が止まる(自己制限的)ため、1サイクルで約0.1 nmずつ膜厚を精密に制御でき、アスペクト比が数十の深い溝の中にも均一に成膜できます。その代わり成膜速度は遅くなります。

ALDで成膜される代表的な材料の例として正しいものはどれか。

  1. A厚い銅配線
  2. Bフォトレジスト
  3. CHigh-k膜の酸化ハフニウムや窒化チタンなど
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正解:C. High-k膜の酸化ハフニウムや窒化チタンなど

ALDは原子層単位で膜厚を制御でき、段差被覆性に優れるため、High-kゲート絶縁膜の酸化ハフニウム、メタルゲートやバリア層の窒化チタン、DRAMキャパシタの酸化ジルコニウム、3D NANDの電荷トラップ層まわりの膜、マルチパターニングのスペーサーなど、薄く均一な膜が必要な用途で使われています。先端のロジックやメモリでは、成膜工程の中でALDの割合が増え続けています。

成膜におけるステップカバレッジ(段差被覆性)の説明として正しいものはどれか。

  1. A段差の側壁や底部に、平坦部と比べてどの程度の厚さで膜が付くかを表す
  2. B膜の電気抵抗を表す
  3. C1分あたりの成膜速度を表す
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正解:A. 段差の側壁や底部に、平坦部と比べてどの程度の厚さで膜が付くかを表す

ステップカバレッジは、溝や穴などの段差の側壁や底に、平坦部と比べてどれだけ膜が付くかを、例えば「底の膜厚 ÷ 上面の膜厚」の百分率で表します。一般にスパッタなどのPVDは直進する原子のため低く(深い穴の底では10%以下も)、CVDは表面反応で回り込むため高く、ALDはほぼ100%です。微細な穴に薄く均一な膜が必要なバリア層やゲート膜では、この指標が成膜方法の選択を左右します。

  1. CVDで段差被覆性(コンフォーマル性)がよくなる条件として正しいものはどれか。
  2. 減圧CVD(LPCVD)の特徴として正しいものはどれか。
  3. プラズマCVD(PECVD)の主な利点として正しいものはどれか。

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関連する用語の解説

ALD
原子層堆積。前駆体ガスの自己制限的な表面反応を繰り返し、原子層単位で膜厚を制御する成膜法。
CVD
化学気相成長。原料ガスの化学反応によってウエハ上に薄膜を堆積する方法。
PECVD(プラズマCVD)
プラズマで原料ガスを分解して膜を堆積するCVD。熱CVDより低い温度で成膜でき、配線工程の絶縁膜などに使われる。

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