半導体の前工程と後工程の違い:工程の内容・装置・担う企業を比較

半導体の製造は、大きく前工程と後工程に分かれます。前工程は、シリコンウエハの上で成膜・露光・エッチング・イオン注入などを繰り返し、トランジスタと配線を作り込む工程です。後工程は、完成したウエハを1個ずつのチップに切り分け、パッケージに組み立てて外部と接続し、検査して出荷する工程です。最近はチップレットなどの先端パッケージで、両者の中間にあたる工程の重要性が高まっています。

項目前工程後工程
目的ウエハの上にトランジスタと配線を作り込み、回路を完成させるチップを切り出してパッケージに組み立て、外部とつないで、出荷できる製品にする
主な工程洗浄、酸化、成膜(CVD・PVD)、リソグラフィ、エッチング、イオン注入、熱処理、CMP、配線の形成バックグラインド、ダイシング、ダイボンディング、ワイヤボンディングやフリップチップによる接続、樹脂の封止(モールド)、マーキング、最終検査
扱う単位ウエハ(直径300 mmや200 mmなど)チップ(ダイ)とパッケージ
加工する寸法ナノメートル(nm)の領域主にマイクロメートル(µm)からミリメートル(mm)の領域
工程の数と期間同じ種類の工程を層の数だけ繰り返す。先端のロジックでは千以上の段階があり、前工程だけで3か月以上かかる前工程より工程の数が少なく、期間も短い
主な装置露光装置、エッチング装置、成膜装置、イオン注入装置、CMP装置、洗浄装置ダイサー、ダイボンダ、ワイヤボンダ、モールド装置、テスター(ATE)、ハンドラ
作業環境非常に清浄度の高いクリーンルームクリーンルームを使うが、前工程ほどの清浄度は求められないことが多い
検査工程の途中で、外観検査や膜厚・寸法の計測を行うウエハテスト(前工程の最後に含める分け方もある)、パッケージ後の最終検査、必要に応じてバーンイン
担う企業IDMとファウンドリIDMとOSAT(後工程の受託企業)。先端パッケージを手がけるファウンドリも増えている

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

前工程
チップの性能・消費電力・集積度を決める部分です。微細化の競争の中心で、露光装置などへの投資も大きくなります。
後工程
チップを保護し、熱を逃がし、基板とつなぐ部分です。パッケージの形や接続の方法が、製品の大きさ、放熱、信号の速さに影響します。
中工程
TSVや微細な再配線、バンプの形成など、前工程に近い技術をウエハの状態でパッケージに使う工程は、中工程(ミドルエンド)と呼ばれることがあります。チップレットや積層メモリで重要になっています。

よくある質問

前工程と後工程の境目はどこですか?

一般に、ウエハの上に回路を作り終えるまでが前工程、ウエハをチップに切り分けてパッケージに組み立てる工程からが後工程です。チップごとの電気的な検査(ウエハテスト)をどちらに含めるかは、会社や資料によって異なります。

前工程の方が時間がかかるのはなぜですか?

成膜・露光・エッチングなどの工程を、トランジスタや配線の層の数だけ何十回も繰り返すからです。先端のロジック半導体では段階が千以上に及び、ウエハを投入してから前工程が終わるまでに3か月以上かかります。

後工程が注目されているのはなぜですか?

微細化だけで性能を上げ続けることが難しくなり、複数のチップを1つのパッケージに高密度に並べたり積み重ねたりするチップレットや3D実装で、性能を高める方法が広がっているからです。プロセッサの隣にメモリを積み重ねて置くHBMのように、後工程の技術が製品の性能を左右する例が増えています。

OSATとは何ですか?

Outsourced Semiconductor Assembly and Testの略で、後工程の組み立てと検査を受託する企業です。ファブレス企業やファウンドリから完成したウエハを受け取り、パッケージングとテストを行います。

理解度チェック

半導体製造の「前工程」と「後工程」の区分として正しいものはどれか。

  1. A前工程は設計、後工程は製造
  2. B前工程はウエハ上に回路をつくる工程、後工程はチップを切り出して組み立て・検査する工程
  3. C前工程は検査、後工程はウエハの製造
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正解:B. 前工程はウエハ上に回路をつくる工程、後工程はチップを切り出して組み立て・検査する工程

前工程は、成膜・リソグラフィ・エッチング・イオン注入などを繰り返してウエハ上に回路をつくる工程です。後工程は、ウエハから切り出したチップをパッケージに組み立て、検査して出荷する工程です。設計は製造の前の別の段階です。近年は、ウエハの状態で再配線やチップの積層を行う先端パッケージの重要性が増し、両者の境界があいまいになりつつあります。

先端のロジック半導体で、ウエハを製造ラインに投入してから前工程が完了するまでにかかる期間の目安として最も近いものはどれか。

  1. A約1日
  2. B数か月(おおむね3か月以上)
  3. C約10年
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正解:B. 数か月(おおむね3か月以上)

先端のロジック半導体では、露光や成膜、エッチングなどの工程が合計で千以上の段階に及び、前工程だけで3か月以上かかります。さらに後工程やテストが加わり、新しい工場の建設には2年以上かかるため、需要が急に増えても供給をすぐには増やせず、需給のずれや品不足が起こりやすい要因の一つになっています。1日では多数の工程は終えられず、10年は長すぎます。

近年、後工程(パッケージング)の重要性が高まっている理由として適切なものはどれか。

  1. A後工程は不要になったため
  2. Bパッケージのコストがほぼ0になったため
  3. Cチップレットや先端パッケージが、システムの性能を高める重要な手段になったため
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正解:C. チップレットや先端パッケージが、システムの性能を高める重要な手段になったため

微細化だけで性能を伸ばすことが難しくなるなかで、複数のチップを高密度に接続する先端パッケージが、性能や電力効率を高める手段になりました。AI向けの半導体では、プロセッサの隣にHBMを並べてシリコンのインターポーザでつなぐ2.5D実装の生産能力が、製品の供給量を左右するほどになっています。後工程が不要になったわけでも、コストが0になったわけでもありません。

  1. ダイシングの説明として正しいものはどれか。
  2. 前工程を終えたウエハで、TEGのしきい値電圧やシート抵抗などを測り、工程が規格どおりにできたかを確認する検査を何と呼ぶか。
  3. TSVや微細な再配線層の形成など、前工程に近い微細加工の技術をウエハの状態で使う先端パッケージの工程が、前工程と後工程の間にあたることから呼ばれる名前はどれか。

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関連する用語の解説

ダイシング
ウエハを個々のチップ(ダイ)に切り分ける工程。回転するブレードで切る方法のほか、レーザーで内部に改質層をつくるステルスダイシングなどがある。
バックグラインド
パッケージを薄くするため、ダイシングの前にウエハの裏面を研削して薄くする工程。積層用のチップでは数十µmまで薄くする。
ワイヤボンディング
チップの電極パッドとリードフレームや基板を、金や銅などの細い金属線でつなぐ接続方法。
ウエハテスト(プローブテスト)
ダイシングの前に、ウエハ上の各チップの電極にプローブを当てて電気的特性を検査する工程。不良チップを組み立て前に見つけ、無駄な組み立てを避ける。
OSAT
半導体の組立やテストなどの後工程を受託する企業。

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