半導体業界にはどんな仕事がある? 設計から製造・販売までの職種

約13分 · 更新: 2026年10月23日

半導体の仕事は、工場のクリーンルームの中だけではありません。チップの企画と設計、工場での製造と検査、装置や材料づくり、販売と技術の支援と、流れに沿って多くの職種があります。調達・IT・安全・法務のように、全体を支える仕事もあります。電気系の学科の出身でなくても、化学・機械・情報や文系の学びを生かせる仕事があります。

この記事でわかること

  • チップが企画されてからお客さんに届くまでの流れと、そこにある主な職種
  • 職種ごとの仕事の中身と1日の例、生かしやすい専攻
  • 日本の会社が強い、装置と材料の分野
  • 職種ごとに、このサイトで次に読むとよいページ

前提知識: とくになし。工場の中の流れを知っていると読みやすくなります。くわしくは「半導体チップはどうやって作られる?」で説明しています。

身近なところでは: 「半導体の人材が足りない」

「熊本に大きな工場ができた」「半導体の人材が足りない」。こうしたニュースを見て、半導体の会社でどんな人が働いているのか気になった人もいるでしょう。内閣府の2024年の報告は、電機・電子の業界団体JEITA(電子情報技術産業協会)の試算を紹介しています。国内の主要な半導体メーカー9社だけで、今後10年に約4万3千人の人材が必要というものです。

「半導体の仕事」と聞くと、白い服を着てクリーンルームで働く姿を思い浮かべるかもしれません。それは仕事の一部です。この記事では、チップの流れに沿って、主な職種を順に紹介します。

なお、職種の名前や分け方は会社によって違います。ここでは話を簡単にするため、多くの会社に共通する代表的な形にまとめました。専攻は「よく見られる例」で、条件ではありません。

全体の地図: チップの流れと仕事

チップは、大きく5つの段階を通ってお客さんに届きます。何を作るか決める「企画」、設計図を作る「設計」、ウエハ(シリコンの円い板)に回路を作る「前工程」です。そのあと、切り分けて包み検査する「後工程」と、「販売」が続きます。

この5つを、1つの会社がすべて行うとは限りません。設計だけをする会社、製造を引き受ける会社といった分業は「ファウンドリとは?」で説明しています。

チップの流れに沿った仕事の地図: 企画、設計、前工程、後工程、販売と、装置・材料の会社、全体を支える仕事 チップの流れ 外から支える 企画 何を作るか決める 設計 設計図をつくる 前工程 ウエハに回路をつくる 後工程 包む・検査する 販売・FAE 届けて、使い方を支える 装置の会社 材料の会社 機械や材料を 工場へ届ける 全体を支える仕事 調達・品質・IT・安全・法務・輸出管理
チップの流れに沿った、仕事の大まかな地図。省略していること: 後の段階から前の段階へ戻る情報(不良の原因やお客さんの要望)、会社ごとの分業の違い、研究開発の部門。

企画・マーケティング: 何を作るかを決める

最初の仕事は、どんなチップを作れば求められるかを決めることです。お客さんや営業から要望を集め、市場の動きを調べて、性能・消費電力・値段・発売の時期の目標を決めます。決めた内容は、設計の出発点になる文書にまとめます。この文書を仕様書と呼びます。

  • 1日の例: 午前は営業と一緒にお客さんの話を聞き、午後は他社の製品と比べる資料を作ります。設計の担当者と、目標が実現できるかを話し合う日もあります。
  • 生かしやすい専攻: 電気電子や情報などの工学がよく見られますが、経済・経営を学んだ人もいます。技術と市場の両方の話をするのが特徴です。
  • サイトで学ぶ: 業界の会社の形は「IDM・ファブレス・ファウンドリの違い」でつかめます。

設計: コンピュータの上で設計図を作る

チップの設計は、紙ではなくコンピュータの上で行います。何十億個ものトランジスタを、人の手で1個ずつ描くことはできないからです。回路を書く、動きを確かめる、部品の置き場所を決める、といった作業を助ける専用のソフトを、まとめてEDAツールと呼びます。EDAは「電子設計の自動化」を意味する英語の頭文字です。

設計の仕事は、さらにいくつかの職種に分かれます。おおよそ作業の順に並べると、次のとおりです。

  • アーキテクチャ: チップ全体の構成を決めます。計算する部分をいくつ置き、メモリとどうつなぐかを、性能と電力の目標から考えます。
  • 論理設計: 回路の動きを、プログラムに似た専用の言語(ハードウェア記述言語)で書きます。こうして書いた設計図をRTLと呼びます。
  • 検証: 設計が仕様どおりに動くかを、コンピュータの上で動きをまねて(シミュレーション)確かめます。製造後に誤りが見つかると、作り直しに大きな費用と数か月の時間がかかるからです。
  • 物理設計(レイアウト): 回路を、チップの上の部品の置き場所と配線の形に変えます(配置配線)。工場が決めた寸法の決まりを守っているかも確かめます。
  • アナログ・RF設計: 音やセンサーの信号のように、なめらかに変わる信号を扱う回路や、電源の回路を設計します。RFは、無線の通信に使う高い周波数の信号のことです。
  • 1日の例: 机でコンピュータに向かう時間がほとんどです。設計を書き、シミュレーションの結果を確かめ、チームで問題を話し合います。ふだんクリーンルームに入ることは、まずありません。
  • 生かしやすい専攻: 電気電子と情報がよく見られます。アナログやRFの設計では、電気回路や電磁気の知識が特に役立ちます。
  • サイトで学ぶ: チップの種類は「ASIC・FPGA・SoCの違い」、設計に使う言語は「VerilogとVHDLの違い」で読めます。職種の詳しい紹介は「デジタル回路設計・検証エンジニア」「アナログ回路設計エンジニア」にあります。

前工程: 工場で回路を作り込む

前工程の工場では、ウエハに回路を作るため、膜をつける・模様を写す・削るといった作業を何十回もくり返します。ここで働く技術者は、大きく3つの役割に分かれます。

  • プロセスエンジニア: 1つ、またはいくつかの工程を受け持ちます。狙いどおりの膜の厚さや形になるよう装置の条件を決め、量産中のばらつきを見張ります。
  • インテグレーションエンジニア: 多くの工程をつないだ、全体の流れを組み立てます。完成したトランジスタが狙いどおりに動くかを確かめ、問題のある工程を探します。
  • 歩留まりエンジニア: 作ったチップのうち良品の割合(歩留まり)を上げる役です。不良のチップの場所や傾向をデータで調べ、原因の工程を突き止めます。

装置の仕事: 工場の機械を動かし続ける

工場には、膜をつける装置や模様を写す装置など、たくさんの製造装置が並びます。装置が止まると、そこで生産も止まります。そのため、装置を動かし続けることを専門にする技術者がいます。

  • 工場の装置エンジニア: 部品の交換や清掃を計画的に行い、故障した装置を直し、新しい装置を立ち上げます。多くの工場は昼も夜も動くので、交代で勤務する職場もあります。
  • 装置メーカーの技術者: 装置を開発・設計する人のほか、お客さんの工場に出向いて装置の据え付けや保守を行う人がいます。後者はフィールドエンジニアと呼ばれることが多い仕事です。
  • 1日の例(工場の場合): 装置の記録や警告を確かめ、予定した保守を行います。装置が止まれば原因を絞り込んで直し、くり返さないための対策を考えます。
  • 生かしやすい専攻: 機械、電気電子、情報(装置を制御するソフトウェア)などです。装置は機械・電気・真空・化学の組み合わせなので、幅広い知識が役立ちます。
  • サイトで学ぶ: ほこりを極端に減らした部屋(クリーンルーム)のしくみは用語集で、仕事の詳しい紹介は「装置エンジニア」で読めます。

後工程と品質: 包んで、確かめて、保証する

前工程を終えたウエハは、後工程で切り分けられ、部品の形になります。ここと品質を守る部門には、次の職種があります。

  • パッケージエンジニア: チップを包む入れ物(パッケージ)の設計と、組み立ての工程を受け持ちます。複数のチップを1つにまとめる新しい技術も扱います。
  • テストエンジニア: チップが正しく動くかを自動で調べる装置(ATE)のために、検査の手順をプログラムとして作ります。不良の見逃しを減らしつつ、1個あたりの検査時間を短くするのが腕の見せどころです。
  • 品質・信頼性エンジニア: 出荷する製品の品質を保つしくみを作り、お客さんで起きた不具合の原因を調べます。熱や湿気を強めた試験で、長く使っても壊れないかを短い期間で確かめるのも仕事です。

装置・材料の会社: 日本の会社が強い分野

半導体の業界には、チップを作る会社のほかに、工場へ装置や材料を届ける会社があります。材料には、ウエハ、模様を写すための薬剤、表面を磨く液、さまざまなガスなど、とても多くの種類があります。

この分野は、日本の会社が強いことで知られます。経済産業省の2023年7月の資料では、2021年度の日本企業の世界シェアは、製造装置で約3割と米国に次ぎます。ウエハなど主要な材料6品目では、約半分(48%)です。

ただし、同省の2025年12月の資料は、製造装置のシェアが2021年から2023年にかけて下がったと分析しています。

装置・材料の会社にも、研究開発、生産、品質、営業、お客さんの工場を支える技術者などの職種があります。材料の開発では、化学や材料の知識が特に生きます。

販売とFAE: お客さんに届けて支える

できたチップは、スマホや車、家電などを作るメーカーに売ります。営業は、お客さんに製品を提案し、値段や納める時期を話し合って、契約をまとめます。

営業と組んで技術の面を支えるのが、FAE(フィールドアプリケーションエンジニア)です。お客さんの技術者が、自社のチップを使って製品を設計するのを手伝います。使い方の説明、試作品が動かないときの原因調べ、お客さんの要望を設計の部門へ伝えることなどが仕事です。

  • 1日の例: 午前はお客さんを訪ねて、新しい製品の相談を受けます。午後は社内でお客さんの困りごとを再現し、原因を調べます。
  • 生かしやすい専攻: FAEは電気電子がよく見られます。営業には、理系・文系の両方の人がいます。
  • サイトで学ぶ: お客さんの製品の中でチップがどう使われるかは「マイコンとは?」が入口になります。

調達・サプライチェーン: 必要なものを、必要なときに

工場を動かすには、材料・ガス・部品・装置を、必要な時期に必要な量だけそろえなければなりません。調達の担当は、取引先を選んで値段や納期を交渉し、供給が止まったときの代わりの手段も考えます。

材料の仕入れから、生産の計画、お客さんへの出荷までのつながりを、サプライチェーン(供給の鎖)と呼びます。このつながり全体を見て、在庫や生産の量を調整する仕事もあります。供給が乱れたときの影響は「半導体不足はなぜ起きた?」で読めます。経済・商学などの学びも生かせる分野です。

全体を支える仕事

  • IT: 工場では、ウエハの運搬や装置の動き、検査の記録を、コンピュータのシステムで管理しています。設計の部門は、大量の計算をする計算機を使います。情報を学んだ人の知識が生きます。
  • 環境・安全(EHS): 半導体の工場では、毒性や燃えやすさをもつガス(特殊材料ガス)や薬品を使います。働く人を守るしくみ、排水や排ガスの処理、法令に沿った管理を受け持ちます。EHSは、環境・健康・安全を表す英語の頭文字です。化学や環境の知識が役立ちます。
  • 法務・知的財産: 取引の契約を確かめ、自社の発明を特許で守ります。他社の特許を侵していないかを調べるのも仕事です。法学を学んだ人のほか、技術の知識を生かして特許の仕事をする人もいます。
  • 輸出管理: 一部の装置や技術は、兵器への転用を防ぐため、外国へ送る前に国の許可が必要です。日本では外為法(外国為替及び外国貿易法)が根拠です。2023年7月には、先端の半導体製造装置23品目が対象に加わりました。自社の製品が規制の対象かを判断し、手続きを管理します。

専攻と仕事の対応

専攻ごとに、その知識がよく生きる仕事の例を表にしました。

学んだことよく生きる仕事の例
電気電子回路の設計、テスト、FAE
情報論理設計・検証、テストのプログラム、工場のIT
物理アナログ設計、プロセス、信頼性
化学・材料プロセス、材料の開発、環境・安全
機械装置の開発と保守、パッケージ
経済・経営・法学など企画、営業、調達、法務・知的財産、輸出管理

この表は「この専攻なら、この仕事しかない」という意味ではありません。入社してから別の分野を学び、仕事の幅を広げる人もいます。

よくある誤解

誤解: 電気系の学科を出ていないと、半導体の会社では働けない

実際は、前工程では化学・物理・材料、装置では機械、工場のITでは情報の知識が生きます。企画・営業・調達・法務など、技術以外の専攻を生かす仕事もあります。半導体が「電子部品」なので、電気の知識だけが必要だと思われやすいのが、誤解の理由です。

誤解: 半導体の仕事は、クリーンルームの中の仕事ばかり

実際は、設計、企画、営業、調達などは、主に事務所で行います。工場の技術者も、クリーンルームと事務所を行き来し、データの解析に多くの時間を使います。ニュースで白い作業服の写真がよく使われることから、生まれやすい誤解です。

誤解: 日本には、もう半導体の産業が残っていない

実際は、上で見たように、日本企業は製造装置と材料で大きな世界シェアを持っています。国内には、メモリやイメージセンサ、マイコン、パワー半導体を作る工場もあります。誤解が生まれるのは、チップの売上の世界ランキングで日本の会社が大きく後退したためです。内閣府の2024年の報告によると、上位10社に入る日本企業は、1990年代の6社から2023年には0社になりました。

数字で見る

数字何の数字か
約4万3千人国内の主要な半導体メーカー9社が、今後10年に必要とする人材(JEITAの試算。内閣府の2024年の報告より)
約3割製造装置の、日本企業の世界シェア。米国に次ぐ(2021年度。経済産業省の2023年7月の資料)
48%ウエハなど主要な材料6品目の、日本企業の世界シェア(同上)
534社ファウンドリ最大手のTSMCの顧客の数(2025年)。それだけ多くの会社がチップを設計している
23品目2023年7月に、外為法の輸出管理の対象に加わった先端の半導体製造装置

シェアや人材の見通しは数年で変わります。最新の値は各資料で確かめてください。

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  6. 半導体不足はなぜ起きた? 2020〜2022年の品不足のしくみ
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  8. 半導体業界にはどんな仕事がある? 設計から製造・販売までの職種
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この分野の問題: 半導体産業・市場

参考にした資料

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