太陽電池はなぜ発電できる? 光を電気に変えるしくみと効率の限界
太陽電池は、光を直接電気に変える半導体の部品です。中身は、性質の違う2種類の半導体を広い面積で接した「PN接合」です。光が生んだ電子と正孔を、境目の電気の力が反対側へ分けるので、外の回路につなぐと電流が流れます。
この記事でわかること
- 光が当たると電気が生まれる理由(電子と正孔を「分ける」しくみ)
- 太陽の光の一部しか電気にならない理由と、効率の上限(約34%)
- 暑い日や曇りの日に発電量が変わる理由
- パネルから家のコンセントまで(パワーコンディショナとMPPT)
- 結晶シリコン・薄膜・ペロブスカイト・タンデム型の違い
前提知識: 特にありません。半導体の「n型・p型」と、バンドギャップという「段差」を知っていると読みやすくなります(「半導体とは?」)。
身近なところでは: 屋根の上から電卓まで
住宅の屋根や広い土地に並ぶ黒や紺色の板が、太陽光発電のパネルです。1枚のパネルの中には、手のひらほどの大きさの太陽電池が何十枚も並んでいます。燃料も回る部品もなく、光が当たるだけで電気が出てきます。
電卓の表面の細長い窓や、人工衛星の翼のような板も太陽電池です。大きさは違っても、光を受けて電気を作るしくみは同じです。
しくみ① 光の粒が「電子と正孔の組」を作る
光は、エネルギーの小さなかたまりの集まりとしてふるまいます。このかたまりを光子(こうし)と呼びます。ここでは話を簡単にするため、光を「粒の流れ」として説明します。光子1個のエネルギーは光の色で決まり、青い光ほど大きく、赤い光ほど小さくなります。
シリコンの中の電子は、ふだんは原子どうしの結びつきに使われていて、動けません。自由に動けるようになるには、決まった大きさのエネルギーの「段差」を越える必要があります。この段差をバンドギャップと呼びます。シリコンでは約1.1 eVです。eV(電子ボルト)は、ごく小さなエネルギーを表す単位です。
段差より大きなエネルギーの光子が当たると、電子が段差を越えて動けるようになります。電子が抜けた跡には空席が残ります。この空席は、プラスの電気を運ぶ粒のようにふるまうので、正孔(せいこう)と呼びます。光子1個から、電子と正孔が1組できるわけです。
ただ、このままでは電気は取り出せません。電子と正孔は、しばらくすると再び出会って結びつき、もらったエネルギーを熱などとして手放すからです。シリコンの板に光を当てるだけでは、板が少し温まって終わります。電気として取り出すには、電子と正孔を反対の方向へ引き離す必要があります。
しくみ② 境目の電気の力が電子と正孔を分ける
引き離す役目をするのが、p型とn型のシリコンを接した構造です。n型は電子が、p型は正孔が多くなるように不純物を加えたシリコンです。2つが接する境目を、PN接合と呼びます。太陽電池は、板の面積全体をこの境目にした、大きなPN接合です。
境目では、n型の電子とp型の正孔の一部が相手側へ移り、出会って消えます。すると境目には、動ける電子も正孔もほとんどない薄い層ができます。この層を空乏層と呼びます。電子が去ったn型の側はプラスに、正孔が去ったp型の側はマイナスに帯びます。そのため、電子をn型へ、正孔をp型へ押す電気の力がいつも働いています。
光が作った電子と正孔がこの層に入ると、電子はn型へ、正孔はp型へと分けられます。実は、光の多くは境目から離れた所で吸われます。そこでできた組も、動き回るうちに境目に着けば分けられます(着く前に出会って消えた分は損です)。分けられた電子と正孔は、境目の力にじゃまされて戻れません。n型に電子が、p型に正孔がたまり、両側の間に電圧が生まれます。
光で電圧が生まれるこの現象を、光起電力効果と呼びます。n型とp型の表面に金属の電極をつけ、外の回路でつなぐと、電子は回路を通ってp型の側へ戻ります。そこで正孔と出会って結びつきます。光が当たり続ける限り、この流れも続きます。これが太陽電池の電流です。
イメージセンサとの違い
同じしくみは、スマホのカメラのイメージセンサでも使われています。画素の中のフォトダイオードも、PN接合で光が生んだ電子を集める部品です。違うのは目的です。イメージセンサは光の量を測るために、電子をためて数えます。太陽電池は電力を得るために、電子を外の回路へ流し続けます(カメラの側の話は「イメージセンサとは?」)。
しくみ③ セルからパネル、パネルから並びへ
太陽電池の1枚を、セルと呼びます。市販の結晶シリコンのセル1枚の電圧は、外に何もつながないときで約0.7ボルトです。乾電池1本の1.5ボルトの半分ほどしかありません。そこで、何十枚ものセルを直列につないで電圧を高めます。
セルを並べてガラスや枠で守り、1枚の板にしたものをモジュールと呼びます。ふだん「パネル」と呼んでいるのが、このモジュールです。
パネルの性能は、国際規格で決めた同じ条件で測って比べます。光の強さは1平方メートルあたり1,000ワット、セルの温度は25℃などです。この条件を標準試験条件(STC)と呼び、カタログの「400W」などはこの条件での値です。
なぜ光の一部しか電気にならないのか
太陽の光には、紫外線から目に見える光、赤外線まで、いろいろな色の光が混ざっています。つまり、エネルギーの大きい光子と小さい光子が混ざっています。シリコンの太陽電池は、そのすべてを同じようには使えません。
まず、段差より小さなエネルギーの光子は、電子を動けるようにできません。シリコンでは、波長がおよそ1,100nmより長い赤外線がこれにあたり、ほとんどが素通りします。nm(ナノメートル)は、1mmの100万分の1の長さです。
次に、段差より大きな光子でも、電気にできるのは多くても段差の分だけです。動けるようになった電子は、余分なエネルギーをすぐに手放してしまうからです。手放した分は熱になります。たとえば青い光(波長約450nm)の光子は約2.8 eVなので、半分以上が熱になります(当サイトの計算)。
効率の上限: 約34%の壁
当たった光のエネルギーのうち、電気になった割合を変換効率と呼びます。前の節の2つの損は、材料の段差の大きさで決まります。段差が小さいと多くの光子を使えますが、1個から得られる電気は減ります。段差が大きいと1個あたりは増えますが、素通りする光子が増えます。
この兼ね合いを、米国のショックレーとクワイサーが1961年の論文で計算しました。ショックレーは、トランジスタの発明者の一人です。1つのPN接合で作る太陽電池の効率には、理論上の上限があることを示しました。これをショックレー・クワイサー限界と呼びます。
今の標準的な太陽光のデータで計算すると、段差が約1.34 eVのとき上限が最も高く、約33.7%です。ただし、この数字は仮定によって変わります。理想的なセル、地上の標準的な太陽光、光をレンズで集めないことなどが前提です。光を集めると、上限は上がります。
シリコンの段差(約1.1 eV)は、最も有利な値より少し小さめです。電子と正孔がシリコンの中で自然に消える損も入れると、上限は約29.4%です(2013年、ドイツのフラウンホーファー研究所)。2026年9月、中国のロンジ(LONGi)は研究用のシリコンのセルで28.29%を発表しました。ドイツの研究機関ISFHが確かめた値で、この上限の約96%にあたります。
暑さと天気で発電量が変わる理由
太陽電池は、温度が上がると発電量が下がります。温度が高いと、光がなくても熱で段差を越える電子と正孔が増えます。すると、境目で分けた電子と正孔が逆向きに漏れやすくなり、電圧が下がります。ここでは理由をかなり単純化しています。
下がり方の目安を、温度係数と呼びます。第三者の試験機関PVELの2024年の結果では、主な3方式のパネルの平均で、1℃あたり約0.26〜0.32%でした。1℃あたり0.3%とすると、パネルが25℃より35℃熱いとき、出力は約1割下がります(当サイトの計算)。同じ明るさなら、気温の低い日のほうが多く発電します。
曇りの日は、届く光の量に応じて出力が下がります。厚い雲の日は、晴れの日よりかなり少なくなります。
パネルから家のコンセントまで
太陽電池が作るのは、いつも同じ向きに流れる直流の電気です。一方、家のコンセントや送電線の電気は、流れる向きが行ったり来たりする交流です。そこで、直流を交流に変える装置が必要になります。家庭の太陽光発電では、この装置をパワーコンディショナ(パワコン)と呼びます。
パワコンの中心は、直流を交流に変えるインバータです。中では、電気で切り替えるスイッチ(パワー半導体)が、1秒間に数千回以上もオン・オフしています。くわしいしくみは「パワー半導体とは?」で説明しています。変換の損は小さく、家庭用の製品の変換効率は96〜97%ほどです(シャープの製品の例)。
いちばん多く取り出せる点を探し続ける(MPPT)
太陽電池から取り出せる電力は、電流をどれだけ流させるかで変わります。電流をたくさん流させると電圧が下がり、電圧を高く保とうとすると電流が減ります。電力は電圧と電流の掛け算なので、その間に、電力が最も大きくなる「ちょうどよい点」があります。
この点の位置は、光の強さや温度が変わると動きます。そこでパワコンは、電圧を少しずつ変えては電力が増えたかを確かめ、山の頂上を探し続けます。この働きを、最大電力点追従(MPPT)と呼びます。
材料のいろいろ: シリコンから新しい材料まで
結晶シリコン: ほぼすべてを占める
いま作られる太陽電池のほとんどは、結晶シリコンです。同じフラウンホーファー研究所のまとめでは、2024年の生産量の約98%を占めます。チップ作りで育った技術を生かせることと、材料のシリコンが豊富なことが強みです。2024年に新しく作られたシリコンのパネルの効率は、平均で約22%です(同研究所)。
薄膜型: 薄い膜で光を吸う
シリコンの板の代わりに、ガラスなどの上に、光を吸う材料を薄い膜として付ける方式もあります。これを薄膜型と呼びます。代表は、テルル化カドミウム(CdTe)と、銅・インジウム・ガリウム・セレンの化合物(CIGS)です。薄膜型は、生産量の残りの2%ほどです。
ペロブスカイト: 塗って作れる新顔
ここ十数年で急に注目されたのが、ペロブスカイト太陽電池です。ペロブスカイトは、原子の並び方の型の名前です。この型をもつ鉛やヨウ素などの化合物は、液体にして塗ったり印刷したりして膜にできます。2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力氏らが太陽電池に使って報告したときの効率は、3.8%でした。
その後、研究室の小さなセルの効率は急に上がりました。2026年1月には、面積0.1平方センチメートルに満たないセルで27.87%という、中国の企業の発表もありました。薄く軽く、曲げられる膜にもできるので、重いパネルを載せにくい壁や屋根での利用が期待されています。経済産業省は2024年11月の戦略で、2040年に約20GW(2,000万キロワット)の導入を目指すとしています。
課題は、長持ちさせることです。ペロブスカイトの材料は水分や熱で傷みやすく、屋外で何十年も使えるかが問われています。材料に鉛を含むものが多く、その扱いも課題です。
タンデム型: 段差の違う電池を重ねる
段差の違う太陽電池を重ねる方法もあります。上には段差の大きい材料を置き、エネルギーの大きい青い光を受け持たせます。通り抜けた赤や赤外の光は、下の段差の小さい材料で使います。これをタンデム型と呼び、光子1個あたりの「おつり」(熱になる分)を減らせます。
2026年7月には、ロンジが、ペロブスカイトを上に、シリコンを下に重ねたセルで35.5%を発表しました。欧州委員会の共同研究センター(JRC)の試験施設が確かめた値です。熱になる分を大きく減らせるので、1つの接合の上限(約33.7%)を超えられます。製品にするのは、これからです。
はじまりは1954年
実用になる最初のシリコン太陽電池は、1954年に米国のベル研究所で発表されました。チェイピン、フラー、ピアソンの3人が作り、効率は約6%でした。1958年には、米国の人工衛星ヴァンガード1号が太陽電池を積んで打ち上げられました。それから約70年で、量産のパネルでも効率は20%を超えるまでになりました。
よくある誤解
誤解: 太陽電池は、太陽の熱で発電している
実際は、光子が電子と正孔の組を作ることで発電しています。熱はむしろ邪魔で、温度が上がるほど出力は下がります。屋根の上で水を温める太陽熱温水器は、熱を使う別の装置です。日なたのパネルが熱くなることや、名前が似た装置があることから、混同されがちです。
誤解: 効率20%なら80%はむだで、たいした技術ではない
実際は、電気にならなかった光の多くは、パネルがなくても屋根を温めていた光です。光は燃料と違ってお金がかからず、使っても減りません。効率が大事なのは、限られた面積で多くの電気を得るためです。欧州で作って設置した設備は、製造に使ったエネルギーを約1年で取り戻します(フラウンホーファー研究所)。燃料を燃やす機械と同じ物差しで見るので、低く感じるのです。
誤解: 曇りや雨の日は、まったく発電しない
実際は、雲を通った光や空全体の明るさで発電します。出力は晴れの日より大きく下がりますが、ゼロにはなりません。発電しないのは光のない夜です。発電量の表示がぐっと下がるので、止まったように見えやすいのです。
数字で見る
| 項目 | 数字 | ひとこと |
|---|---|---|
| シリコンの段差 | 約1.1 eV | 約1,100nmより長い波長の光は使えない |
| 市販のセル1枚の電圧 | 約0.7V | 外に何もつながないとき |
| 1つの接合の効率の上限 | 約33.7% | 段差約1.34 eVのとき(仮定で変わる) |
| シリコンの効率の上限 | 約29.4% | 2013年の計算 |
| シリコンのセルの記録 | 28.29% | 2026年9月、ロンジ(研究用のセル) |
| シリコンのパネル | 約22% | 2024年に作られたものの平均 |
| タンデム型のセルの記録 | 35.5% | 2026年7月、ペロブスカイトとシリコン |
| 温度による出力の低下 | 1℃あたり約0.3% | 2024年、PVELの試験で約0.26〜0.32% |
標準試験条件の光は、1平方メートルあたり1,000ワットです。効率22%のパネルなら約220ワットになります(当サイトの計算)。記録は研究用のセルの値で、売られているパネルはそれより数ポイント低くなります。
もっと詳しく学ぶ
- 違いを表で見る: n型半導体とp型半導体の違い、直接遷移型と間接遷移型の半導体の違い、コンバータとインバータの違い
- 図で見る: PN接合の図解で、境目の空乏層を動かしながら確かめられます
- 次の一歩の用語: 内蔵電位(境目の電気の力のもと)、拡散長(消えるまでに動ける距離)、量子効率(光子のうち電子になる割合)
- 数字で試す: バンドギャップと波長の換算ツール(段差と使える光の波長)、PN接合の空乏層の計算ツール(境目の層の厚さ)
- 関連して読む: 「半導体とは?」「イメージセンサとは?」「パワー半導体とは?」