LEDはなぜ光る? 半導体で電気を光に変えるしくみ
LEDは、性質の違う2種類の半導体の境目に電流を流す部品です。そこで電子と「電子の空席(正孔)」が出会うときのエネルギーが、光として出ます。光の色は、材料ごとに決まる「段差」(バンドギャップ)の大きさで決まります。白いLEDの多くは、青いLEDの光の一部を、黄色く光る材料で変えて混ぜています。
この記事でわかること
- LEDが光るしくみと、太陽電池との関係
- 色が材料で決まる理由と、色を計算する方法
- シリコンではLEDがほとんど作れない理由
- 青色LEDが難しく、大切だった理由と、白いLEDのしくみ
- 白熱電球より省エネなのに、熱くなる理由と寿命の数字の読み方
- ディスプレイや半導体レーザとの関係
前提知識: n型とp型、電子の空席である正孔、「段差」(バンドギャップ)を知っていると読みやすくなります(「半導体とは?」)。
身近なところでは
LED電球、信号機、車のライト、スマホのライトは、どれもLEDで光っています。テレビのリモコンの先にも、目に見えない赤外線を出すLEDが入っています。
LEDは Light Emitting Diode の頭文字で、日本語では発光ダイオードと呼びます。ダイオードは、電流を一方向にだけよく流す部品です。LEDは、その中でも電流を流すと光るように作ったものです。光っているのは、中の小さな半導体のかけら(チップ)です。
しくみ① 境目で電子と正孔が出会う
LEDの中心には、n型とp型の半導体がくっついた境目があります。n型には自由に動ける電子が多く、p型には電子の空席である正孔が多くあります。この境目を「PN接合」と呼びます。
p型の側を電池のプラスに、n型の側をマイナスにつなぐと、電流がよく流れます。この向きの電圧のかけ方を順方向バイアスと呼びます。このとき、電子はn型の側から、正孔はp型の側から、境目へ次々に送り込まれます。
電子が自由に動ける状態は、正孔のある状態よりエネルギーが高く、その差は材料ごとに決まっています。この差を段差(バンドギャップ)と呼びます。
境目で電子が正孔に出会うと、電子は空席に落ち込み、両方とも消えます。これを「再結合」と呼び、電子は段差の分のエネルギーを手放します。LED用の材料では、このエネルギーが光の粒として出ます。
しくみ② 太陽電池やイメージセンサの逆
LEDで起きていることは、太陽電池やカメラのセンサの逆向きです。太陽電池やセンサでは、光が電子と正孔の組を生み、境目の電気の力がそれを引き離して電流にします(「太陽電池はなぜ発電できる?」「イメージセンサとは?」)。LEDでは、電流で電子と正孔を境目に集め、出会わせて光にします。
ただし、どちらの向きが得意かは材料で変わります。カメラのセンサはシリコンで作れますが、LEDはシリコンではほとんど作れません。理由は後で説明します。
しくみ③ 色は「段差」の大きさで決まる
光は、波の長さ(波長)によって色が変わります。人の目に見えるのは、およそ380〜780ナノメートル(nm、1nmは10億分の1メートル)の範囲です。波長が短いほど青や紫に、長いほど赤に見えます。さらに長い光は目に見えない赤外線です。
光の粒1個のエネルギーは、波長が短いほど大きくなります。そのため、段差の大きい材料ほど、青に近い光を出します。段差の単位にはeV(電子ボルト)を使います。1 eVは、電子1個が1ボルトの電圧で押されて得るエネルギーです。
「1240を段差(eV)で割ると波長(nm)になる」という、おおよその関係があります。逆算すると、青い光(450nm)には1240÷450で約2.76 eVの段差が要ります。赤い光(630nm)なら、1240÷630で約1.97 eVです。ほかの値は、バンドギャップと波長の換算ツールで確かめられます。
色を作り分けるときは、材料の組み合わせと混ぜる割合を変えます。青や緑には、窒化ガリウムにインジウムを混ぜた InGaN を使います。赤や黄色には、アルミニウム・ガリウム・インジウム・リンからなる AlGaInP を使います。赤外線にはガリウムヒ素(GaAs)などを使います。どれも、周期表の13族(旧III族)と15族(旧V族)の元素を組み合わせたIII-V族化合物半導体です。
LEDを光らせるのに要る電圧も、段差に近い値になります。ロームの製品の代表値では、赤のLEDは1.9ボルト、青のLEDは3.2ボルトです(20ミリアンペアのとき)。
なぜシリコンは光らないのか
シリコンの段差は約1.1 eVなので、計算では約1,100ナノメートルの赤外線を出せそうです。ところが、シリコンに電流を流しても、光はごくわずかしか出ません。電子と正孔が出会うときに、エネルギーのほかにもう1つ、そろえるべきものがあるからです。
結晶の中の電子は、エネルギーのほかに「動きの勢い」も持っています。物理では運動量と呼ぶ量で、ここでは単純化して「勢い」と言います。光の粒は、この勢いをほとんど運べません。そのため、電子と正孔の勢いがもともとそろっていないと、光を出す再結合が起きにくいのです。
電子と正孔が集まる状態の勢いがそろっている材料を直接遷移型と呼びます。窒化ガリウムやガリウムヒ素は、この型です。出会った電子と正孔は、光を出して再結合しやすいのです。
シリコンは、電子と正孔の勢いがずれている間接遷移型です。光を出すには、結晶の原子の振動が勢いの差を受け持つ必要があり、そうした出会いはめったに起きません。待つ間に、多くは結晶の傷などを通って再結合し、エネルギーを熱として手放します。くわしくは「直接遷移型と間接遷移型の違い」の表で比べられます。
一方、光を受け取る側では、シリコンはよく働きます。光の吸収は直接遷移型より起きにくいものの、光の粒は吸収されるまで結晶の中を進みます。シリコンを厚めにすれば、多くの光を受け取れます。光を出すときのように、熱になる速い道と取り合いにならないからです。
青色LEDは、なぜ難しく、なぜ大切だったのか
1962年、米国GE社のニック・ホロニアックが、目に見える赤い光を出すLEDを作りました。これが実用的なLEDの出発点です。その後、赤・黄・緑のLEDは表示ランプなどに広まりました。しかし、青は長い間、明るく光るものが作れませんでした。
青い光には、2.7 eV前後の大きな段差が要ります。候補だった窒化ガリウム(GaN)は、きれいな結晶を作るのがとても難しい材料でした。原子の並びの間隔が合う土台の結晶がなく、作ると傷だらけになったのです。正孔の多いp型の窒化ガリウムも、なかなか作れませんでした。
赤﨑勇氏と天野浩氏は1986年、土台のサファイアとの間に薄い層をはさみ、質のよい結晶を作りました。1989年には、p型を作ってPN接合のLEDも実現します。日亜化学工業の中村修二氏は、結晶を作る装置を独自に改良し、1993年に明るい青色LEDを実現しました。
3氏は2014年のノーベル物理学賞を受けました。授賞理由は、英語の原文を訳すと「明るく省エネルギーな白色光源を可能にした、効率のよい青色LEDの発明に対して」です。青がそろったことで光の三原色がLEDでそろい、白いLEDの照明も可能になりました。窒化ガリウムは今、電源用のパワー半導体にも使われています。
白いLEDのしくみ
白という色の光を出す1種類の段差はありません。白い光は、いろいろな色の光が混ざったものだからです。そこで白いLEDの多くは、青く光るLEDのかけらを、黄色く光る材料で覆っています。
この黄色く光る材料を「蛍光体」と呼びます。蛍光体は、ある色の光を吸い込み、波長の長い別の色の光を出す物質です。青い光の一部はそのまま通り抜け、残りは蛍光体で黄色い光に変わります。青と黄色が混ざると、人の目には白く見えます。黄色の蛍光体には、YAGという結晶にセリウムを加えたもの(YAG:Ce)がよく使われます。
この方式は1996年に日亜化学工業が開発しました。赤・緑・青の3つのLEDを混ぜる方法や、紫外に近いLEDで何色かの蛍光体を光らせる方法もあります。それでも照明では、青いLEDと蛍光体の組み合わせが主流です。消えているLEDの光る部分が黄色っぽく見えるのは、この蛍光体の色です。
白熱電球より省エネな理由
白熱電球は、細い金属の線(フィラメント)をとても高い温度にして光らせます。熱い物は光を出しますが、その多くは目に見えない赤外線です。白熱電球では、使ったエネルギーの約90%が熱になります(米国の省エネ認証制度ENERGY STAR)。
LEDは、熱で光るのではなく、電子のエネルギーを直接光に変えます。照明の効率は、電力1ワットあたりの明るさ「lm/W(ルーメン毎ワット)」で比べます。
一般的な60ワットの白熱電球は約16 lm/Wです(米国エネルギー情報局、2014年)。国際エネルギー機関(IEA)によると、2026年時点で売られているLEDの平均は100 lm/W近くです。200 lm/Wを超える製品もあります。同じ明るさなら、電力はおよそ6分の1ですむ計算です。
それでもLEDが熱くなる理由
LEDの光には赤外線がほとんど含まれないので、照らされた物はあまり温まりません。しかし、LEDの中では、電気の多くがやはり熱になっています。光にならずに再結合する電子があり、蛍光体で色を変えるときや電源の回路でも、エネルギーの一部が熱になるからです。
どのくらい熱になるかは、上限と比べると見当がつきます。米国エネルギー省(DOE)の2020年の資料は、LEDの白い光の効率の理論上の上限を325 lm/Wとしています。100 lm/Wのランプは、その3分の1に届きません。光にならなかった分は、熱になります。細かい条件を省いた見積もりですが、電気の半分以上は熱になっていると考えられます。
白熱電球の熱は、赤外線として周りに広がります。LEDの熱は、小さなかけらの中にこもります。熱がたまると、光が弱くなり、寿命も縮みます。そのためLED電球の根元には、熱を逃がす金属などの部品(放熱板、ヒートシンク)が入っています。
LEDには、1つのかけらに流す電流を増やすほど、光になる割合が下がる性質もあります。これを効率ドループと呼びます。明るい照明では、かけらを大きくしたり何個も並べたりして、1個あたりの電流を抑えています。
寿命の数字の読み方
LEDは突然切れることは少なく、少しずつ暗くなっていきます。そこでLEDの寿命は、明るさが初めの70%に下がるまでの点灯時間で表すのが一般的です。これをL70と書き、日本の製品では「光束(光の量)維持率70%」と書かれます。
LED電球の箱には、「定格寿命40,000時間」のような数字がよく書かれています。これは平均の目安で、保証された時間ではありません。1日8時間つけると、40,000時間は約13.7年です。電源の回路が先に傷むこともあり、日本照明工業会は照明器具の交換の目安を8〜10年としています。
LEDには「一定の電流」を流す
LEDは、ある電圧を超えると、電圧が少し上がっただけで電流が急に増えます。さらに温まると電流が流れやすくなります。電池などに直接つなぐと、電流が流れすぎて壊れることがあります。
そこでLEDは、電圧ではなく電流を決めて動かします。表示ランプのような小さなLEDなら、抵抗を1本つないで電流を制限します。照明のように大きな電流を流すときは、電流を一定に保つ「定電流回路」を使います。
LED電球の根元にも、家庭の交流100ボルトを、LEDに合う直流の一定の電流に変える小さな回路が入っています。明るさを変える調光では、LEDを目にわからないほど速く点滅させ、点いている時間の割合を変える方法がよく使われます。
ディスプレイとLED
| 方式 | 光を出すもの | ひとこと |
|---|---|---|
| 液晶(LEDバックライト) | 画面の裏の白いLED | 裏からの光を、液晶が画素ごとに通したりさえぎったりする |
| 有機EL(OLED) | 画素ごとの有機材料の膜 | 画素そのものが光る。炭素を含む材料で、電子と正孔の出会いで光る |
| マイクロLED | 画素ごとの小さなLED | 画素そのものが光る。作るのが難しい |
「LEDテレビ」と呼ばれる製品の多くは、液晶の画面を裏からLEDで照らす方式です。4KのマイクロLEDの画面には、約2,490万個のLEDが要ります(3,840×2,160画素×3色。当サイトの計算)。これを欠けなく並べることが、大きな課題です。
いとこの部品: 半導体レーザ
半導体レーザも、PN接合で電子と正孔を出会わせて光を出す点はLEDと同じです。違いは、かけらの両端を鏡のようにして、光を中で何度も往復させることです。往復する光が、同じ色・同じ向きの光を次々に呼び出し、そろった細い光になって出てきます。
LEDの光は色に少し幅があり、広い方向に広がるので、照明や表示に向いています。半導体レーザの光は色の幅が狭く、一方向に進みます。光ファイバの通信やブルーレイディスクの読み取りなどに使われます。違いは「LEDと半導体レーザーの違い」で表にしています。
よくある誤解
誤解: LEDは熱を出さない
実際は、LEDに流した電気の半分以上は、今でも熱になっています。光に赤外線がほとんどなく、照らされた側が熱くならないため、熱を出さないように感じられます。熱はかけらにこもるので、放熱板で逃がす必要があります。
誤解: LEDの色は、色のついたプラスチックのカバーで決まる
実際は、色はかけらの材料の段差で決まります。透明なカバーのLEDでも、赤いLEDは赤く、青いLEDは青く光ります。昔の表示ランプは、光る色と同じ色のカバーをつけたものが多かったため、カバーが色を作っているように見えやすいのです。
誤解: 白いLEDは、白い光をそのまま出している
実際は、多くの白いLEDは、青いLEDと黄色く光る蛍光体の組み合わせで、色を混ぜて白に見せています。光っているときは白しか見えないので、中で色が混ざっていることに気づきにくいのです。
数字で見る
| 項目 | 数字 | ひとこと |
|---|---|---|
| 窒化ガリウムの段差 | 約3.4 eV | 直接遷移型。出る光は紫外 |
| シリコンの段差 | 約1.1 eV | 間接遷移型で、ほとんど光らない |
| 白熱電球(60W)の効率 | 約16 lm/W | 米国エネルギー情報局、2014年 |
| 売られているLEDの平均 | 100 lm/W近く | IEA、2026年。高性能品は200超 |
| 寿命の基準の明るさ | 初めの70% | L70、光束維持率70% |
| 明るい青色LED | 1993年 | ノーベル物理学賞は2014年 |
ノーベル賞の発表(2014年)は、世界の電力の約4分の1が照明に使われていると述べています。電力が6分の1ですむ差は、積み重なると大きくなります。
もっと詳しく学ぶ
- 違いを表で見る: 直接遷移型と間接遷移型の違い、LEDと半導体レーザーの違い、順方向バイアスと逆方向バイアスの違い
- 図で見る: PN接合の図解
- 次の一歩の用語: 量子井戸(電子と正孔を薄い層に閉じ込める作り)、オージェ再結合(効率ドループの原因の1つ)
- 数字で試す: バンドギャップと波長の換算ツールで、材料と光の色の関係を計算できます
- 逆向きのしくみ: 「太陽電池はなぜ発電できる?」「イメージセンサとは?」