直接遷移型と間接遷移型の半導体の違い:バンド構造・発光効率・光吸収・材料を比較

直接遷移型の半導体では、伝導帯の底と価電子帯の頂上が運動量(波数)の空間で同じ位置にあり、電子と正孔が再結合するとそのまま光を出せます。間接遷移型では両者の位置がずれているため、光を出したり吸収したりするには、運動量を補うフォノン(格子振動)が同時に関わる必要があります。そのため、GaAs・InP・GaNなどの直接遷移型はLEDや半導体レーザーに使われ、間接遷移型のSiやGeは発光には向きませんが、受光素子やLSIに広く使われます。

項目直接遷移型間接遷移型
バンド構造伝導帯の底と価電子帯の頂上が、運動量の空間で同じ位置にある伝導帯の底と価電子帯の頂上が、運動量の空間でずれている
光の放出・吸収とフォノンフォノンなしで遷移できる運動量を補うフォノンが同時に関わる必要がある
発光効率高い。放射再結合の確率が高いきわめて低い。多くは非放射再結合で熱になる
少数キャリアの寿命(目安)短い。ns程度長い。高品質なシリコンではµs〜msに達する
バンド端付近の光の吸収吸収端から急に強くなる(約10⁴ cm⁻¹以上)吸収端の近くでは弱く、エネルギーが高くなるにつれて徐々に強くなる
光が吸収される深さ浅い。GaAsでは約1〜2 µmの厚さで太陽光の大部分を吸収する深い。シリコンでは波長約1 µmの光が100 µm以上入り込む
受光素子での扱い薄い吸収層で済み、高速の受光器に向く吸収層を厚くするか、光を閉じ込める構造が必要
代表的な材料GaAs(約1.42 eV)、InP(約1.34 eV)、GaN(約3.4 eV)、InGaNなどの混晶Si(約1.12 eV)、Ge(約0.66 eV)、SiC、GaP
主な用途LED、半導体レーザー、高効率の太陽電池、通信用の受光器LSI、パワー素子、フォトダイオード、イメージセンサ、太陽電池

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

直接遷移型
電気を光に変えるとき。LEDや半導体レーザーの発光層、薄い層で光を強く吸収したい受光器や高効率の太陽電池に使います。
間接遷移型
発光を必要としないとき。シリコンはLSIやパワー素子のほか、フォトダイオード、イメージセンサ、太陽電池などの受光に使います。
組み合わせ
シリコンフォトニクスでは、光導波路や変調器、Geの受光器をシリコンの上に作り、光源にはInP系などの直接遷移型のレーザーを貼り合わせたり、別のチップとして組み合わせたりします。

よくある質問

間接遷移型のシリコンが光を吸収できるのはなぜですか?

吸収のときは、フォノンを吸収または放出して運動量を補えば遷移できるからです。確率が低いので吸収は弱めですが、厚さを確保すれば十分な光を吸収できます。シリコンのフォトダイオードやイメージセンサが可視光をよく検出できるのはこのためです。

間接遷移型では、電子と正孔はどのように再結合するのですか?

光を出す放射再結合の確率が低いので、多くは結晶の欠陥や不純物の準位を介したSRH再結合などで、光ではなく熱としてエネルギーを失います。シリコンの少数キャリアの寿命が長いのも、放射再結合が起きにくいからです。

Geは間接遷移型なのに、通信用の受光器に使われるのはなぜですか?

Geは間接遷移型ですが、直接遷移のギャップが約0.8 eVと、間接遷移のギャップ(約0.66 eV)に近いからです。そのため1.55 µm付近までの通信波長の光を強く吸収でき、シリコンの上に結晶成長させやすいことから、シリコンフォトニクスの受光器に使われています。

発光の波長は何で決まりますか?

主に発光層のバンドギャップで決まり、波長 λ (nm) はおよそ 1240 ÷ Eg (eV) です。GaAsは約1.42 eVで約870 nmの近赤外、GaN系は青色から紫外の光になります。混晶の組成を変えるとバンドギャップを調整でき、InGaNではインジウムを増やすと波長が長くなります。

理解度チェック

ガリウムヒ素(GaAs)のバンド構造として正しいものはどれか。

  1. A直接遷移型
  2. B間接遷移型
  3. Cバンドギャップをもたない
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正解:A. 直接遷移型

GaAsは伝導帯の底と価電子帯の頂上が運動量空間で同じ位置にある直接遷移型で、フォノンの助けなしに電子と正孔が再結合して効率よく光を出します。そのため赤外LEDや半導体レーザー(光ディスク、通信、顔認証のVCSEL)に使われます。シリコンは間接遷移型で、再結合にフォノンが関わるため発光効率がきわめて低くなります。光の吸収も強く、薄い層で済むため高効率太陽電池にも使われます。

シリコンのバンド構造の種類として正しいものはどれか。

  1. A直接遷移型
  2. B間接遷移型
  3. Cバンドギャップをもたない金属型
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正解:B. 間接遷移型

シリコンは、伝導帯の底と価電子帯の頂上が運動量(波数)空間で異なる位置にある間接遷移型です。電子と正孔が再結合して光を出すには、運動量を補うフォノン(格子振動)が同時に関わる必要があり、発光効率が非常に低くなります。そのためLEDやレーザーにはGaAs、InP、GaNなどの直接遷移型が使われます。一方、光の吸収はフォノンの助けで起こるので、シリコンも受光素子には使えます。

シリコンのような間接遷移型の半導体で、電子と正孔が再結合して光を出す確率が低い理由として正しいものはどれか。

  1. A伝導帯の底と価電子帯の頂上の運動量が異なり、遷移にフォノンの関与が必要なため
  2. B正孔の移動度が電子より小さいため
  3. Cバンドギャップが大きすぎるため
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正解:A. 伝導帯の底と価電子帯の頂上の運動量が異なり、遷移にフォノンの関与が必要なため

間接遷移型では、伝導帯の底と価電子帯の頂上が運動量(波数)空間で離れています。光子は運動量をほとんど運べないため、遷移にはフォノンが同時に関わる必要があり、放射再結合の確率は直接遷移型より桁違いに低くなります。その間にSRH再結合などで熱になってしまうため、シリコンは発光素子に向きません。シリコンフォトニクスで光源にInPなどを貼り合わせるのはこのためです。

  1. LEDの発光色(発光波長)を決める主な要因はどれか。
  2. シリコンフォトニクスで、レーザー光源に化合物半導体を組み合わせる理由として正しいものはどれか。
  3. シリコンの光回路で、通信波長の受光器にゲルマニウム(Ge)が広く使われる理由として正しいものはどれか。

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関連する用語の解説

直接遷移型
伝導帯の底と価電子帯の頂上が同じ波数にあるバンド構造。電子と正孔の再結合で効率よく発光する。GaAsなど。
間接遷移型
伝導帯の底と価電子帯の頂上の運動量(波数)がずれているバンド構造。遷移にフォノンが必要で発光しにくい。シリコンやゲルマニウムが代表例。
バンドギャップ
価電子帯の上端と伝導帯の下端とのエネルギー差。シリコンは室温で約1.12 eV。大きいほど高温・高電圧に強い。
GaAs(ガリウムヒ素)
ガリウムとヒ素からなるIII-V族の化合物半導体。直接遷移型でバンドギャップは約1.42 eV。電子移動度が高く、高周波のトランジスタや赤外のLED、レーザーに使われる。
フォトダイオード
光を受けて電荷(電流)を発生させるダイオード。イメージセンサの画素の受光素子として使われる。

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