液晶と有機ELは何が違う? 画面が色を出すしくみ

約14分 · 更新: 2026年10月23日

画面の絵は、赤・緑・青の小さな点の明るさを、1つずつ変えて作っています。液晶は、裏から照らす白い光を、液晶のシャッターで点ごとに通したりさえぎったりします。有機ELは、点そのものが光ります。この違いが、黒の深さや焼き付きのしやすさの差になります。

この記事でわかること

  • 画面の1つの点(画素)が、3色のさらに小さな点でできていること
  • 液晶が光を通したりさえぎったりするしくみと、点ごとのスイッチ(TFT)
  • 有機ELが黒をきれいに出せる理由と、焼き付きやちらつきの話
  • ミニLED、120Hz、ppiなど、仕様表に出る言葉の読み方

前提知識: 特にありません。「トランジスタとは?」「LEDはなぜ光る?」を読んでいると、TFTと有機ELの話がわかりやすくなります。

身近なところでは: 仕様表に並ぶ画面の言葉

スマホやテレビの仕様表には、「液晶」「有機EL(OLED)」「Mini LED」などの画面の方式が書かれています。「120Hz」「460ppi」のような数字も、画面のしくみに関係します。

白い画面を虫めがねで拡大すると、赤・緑・青の小さな点が並んでいるのが見えます。話は、この点から始めます。

画素とサブピクセル: 3色の点で色を作る

画面の絵は、縦と横に並んだ小さな点の集まりです。絵を作る一番小さな単位の点を、画素(ピクセル)と呼びます。

1つの画素は、ふつう赤・緑・青の、さらに小さな3つの点でできています。この小さな点を、サブピクセル(副画素)と呼びます。3色とも明るくすると白に、すべて消すと黒に見えます。3色の明るさの組み合わせを変えれば、いろいろな色になります。

点が小さいので、目は3色を混ざった1つの色として見ます。各色の明るさを256段階に分けると、組み合わせは約1,678万通りです(256×256×256)。

たとえば液晶のiPhone 11の画面は1792×828画素で(Appleの仕様)、サブピクセルは約445万個あります。その1つ1つの明るさを、別々に変えているのです。

しくみ① 液晶: 光を通すかどうかを決めるシャッター

液晶は、液体のように流れるのに、分子の向きがそろう性質を持つ物質です。分子は細長い棒のような形で、電圧をかけると向きが変わります。この性質を使う画面が、液晶ディスプレイ(LCD)です。

液晶そのものは光を出さないので、画面の裏に白い光を出す板を置きます。これをバックライトと呼び、今はふつう白いLEDを使います。

光は、進む向きと直角の方向に振動する波です。ふつうの光には、いろいろな向きの振動が混ざっています。そのうち、1つの向きの振動だけを通す膜を偏光板と呼びます。2枚の偏光板を、通す向きが直角になるように重ねると、光はほとんど通りません。

液晶は、この2枚の偏光板の間にはさみます。液晶の分子の並び方によって、通り抜ける光の振動の向きが回ります。向きが回れば光は2枚目を通れ、回らなければさえぎられます。電圧で分子の向きを変えれば、明るさを細かく調節できます。つまり液晶は、電圧で開け閉めするシャッターとして働きます。

いちばん上には、サブピクセルごとに赤・緑・青の1色だけを通す膜を重ねます。これをカラーフィルタと呼びます。

液晶ディスプレイの層の重なり: バックライトの光が偏光板、液晶、偏光板、カラーフィルタを通る。液晶が光の向きを回すと光が出て、回さないとさえぎられる 光が出る 出ない 赤 緑 カラーフィルタ 偏光板 回す 回さない 液晶 (電圧で変わる) 偏光板 バックライト 白い光が下から上へ進む
左右の2つのサブピクセルを並べた断面の模式図。右は2枚目の偏光板で光が止まる。省略していること: ガラスの板、透明な電極、分子の向きをそろえる膜。TN・IPS・VAなどの方式の違い(どちらの状態を「電圧あり」にするかも方式で違う)。

この作りでは、光の多くが途中で失われます。振動の向きがばらばらな光は、1枚目の偏光板でおよそ半分が止まります。カラーフィルタも3色のうち1色しか通さないので、外に出るのは多くても約6分の1です(当サイトの単純な計算)。

しくみ② TFT: サブピクセルごとのスイッチ

数百万個のサブピクセルに別々の電圧をかけるため、1つ1つにスイッチを付けます。このスイッチは、電圧で電流を流したり止めたりするトランジスタです(「トランジスタとは?」)。

画面のトランジスタは、ガラスの板の上に、ごく薄い膜を重ねて作ります。そのため、薄膜トランジスタ(TFT)と呼びます。シリコンの結晶の板(ウエハ)の上に作るふつうのチップとは、ここが違います。

TFTは、縦と横に張った細い配線の交わる所に並んでいます。横の線は、1行分のTFTをまとめてオンにします。縦の線は、それぞれのサブピクセルに、明るさに合わせた電圧を届けます。1行ずつ順に書き込み、下まで行ったら、また上から書き直します。

TFTがオフになっても、書き込んだ電圧は、電気をためる小さな部品(コンデンサ)に残ります。そのため、次に書き直すまで明るさが保たれます。

サブピクセルのマス目と配線: 縦の線が明るさの電圧を運び、横の線が1行分のTFTをオンにする。赤・緑・青の3つで1画素 ドライバIC 赤 緑 青 赤 緑 青 赤 緑 青 赤 緑 青 1画素 縦の線: 明るさの電圧 横の線: 1行をオンにする TFT(スイッチ)
液晶の画面の2行×2画素分の模式図。省略していること: 電圧をためるコンデンサ、行を順に選ぶ回路。実際は数千行×数千列あり、点の形や並びは製品で違う。

TFTの材料: アモルファスシリコン・LTPS・IGZO

TFTの膜の材料によって、中で電子がどれだけ動きやすいかが変わります。この動きやすさを移動度と呼びます。移動度が高いほど、TFTを小さくでき、速く切り替えられます。

古くから広く使われてきたのは、原子の並びが乱れたシリコンの膜です。これをアモルファスシリコンと呼びます。大きなガラスに安く作れますが、電子が動きにくいのが弱点です。

この膜にレーザーを当てて、小さな結晶の集まりに変えたものがLTPS(低温ポリシリコン)です。電子がずっと動きやすく(レーザーアニールで作ります)、画素の細かいスマホの画面でよく使われます。

3つめが、インジウム・ガリウム・亜鉛・酸素からなる酸化物のIGZOです。東京工業大学(現・東京科学大学)の細野秀雄氏らが、2004年にこの材料のTFTをNature誌に発表しました。シャープは2012年、IGZOのTFTを使った液晶パネルの生産を始めています。

IGZOの移動度は、アモルファスシリコンの10倍以上あります(LTPSよりは低めです)。さらに、オフのときに電流が漏れにくいのが特徴です。書き込んだ電圧が長く保たれるので、動かない絵なら書き直しの回数を減らし、電力を節約できます。

しくみ③ 有機EL: サブピクセルそのものが光る

有機ELは、サブピクセル1つ1つが自分で光る画面です。「有機」は、炭素を骨組みにした物質のことです。「EL」は、電気を流すと光る現象(エレクトロルミネッセンス)を指します。英語ではOLED(有機発光ダイオード)と書きます。

光るしくみは、LEDとよく似ています。2つの電極の間に、有機材料のごく薄い膜を何層か重ねます。電流を流すと、片側から電子が、反対側から電子の空席(正孔)が入り、膜の中で出会って光ります。赤・緑・青は、それぞれ別の材料で光らせます。

今の有機ELの出発点は、1987年に米コダックのTangとVanSlykeが発表した、有機材料の膜を2層重ねた素子です。膜は、真空の中で材料を蒸発させて付ける真空蒸着などで作ります。

有機ELは、電流を流している間だけ光ります。そこで1つのサブピクセルに、少なくとも2つのTFTを置きます。1つは電圧を書き込むスイッチ、もう1つは書き込んだ電圧に応じて電流を流し続ける役です。液晶なら、ふつう1つで足ります。

黒の深さとコントラスト

液晶では、黒を出すときもバックライトは点いたままです。液晶のシャッターは光を完全には止められず、少し漏れます。そのため暗い部屋では、黒が灰色がかって見えることがあります。

有機ELでは、黒いサブピクセルは消えていて光を出さないので、黒は本当に暗くなります。一番明るい白と一番暗い黒の、明るさの比をコントラスト比と呼びます。

Appleの仕様(標準の値)では、液晶のiPhone 11は1400:1です。有機ELのiPhone 15は2,000,000:1で、黒がほぼ0なので桁違いに大きくなります。測り方は会社で違うので、他社の数字とは単純に比べられません。

黒を出すとき、液晶は裏の光が点いたままで少し漏れ、有機ELは光を出さない 液晶 有機EL 少し漏れる 閉じた液晶 点いたまま 裏の光をさえぎる 消えた点 光なし 光を出さない
どちらも黒いサブピクセル1つを横から見た模式図。省略していること: 偏光板やカラーフィルタ、有機ELの電極と膜の層。漏れる光の量は方式や製品で大きく違う。

有機ELの弱点: 焼き付き

有機ELの材料は、光らせた時間と明るさに応じて、少しずつ傷んで暗くなります。同じ明るい絵を長く出し続けると、その部分だけが周りより傷みます。すると別の絵を出しても、前の絵の跡がうっすら残ります。これを焼き付きと呼びます。

Appleによると、焼き付きが起こりうるのは、明暗の差が大きい同じ絵を、明るいまま長時間出し続けるような場合です。対策として、画素ごとの使われ方を記録し、明るさを補正しています。液晶は画素ごとに光る材料がないので、この形の焼き付きは起きません。

選ぶときの目安液晶有機EL
暗い部屋の黒少し灰色になりやすい深い黒
同じ絵を長時間焼き付きの心配が少ない焼き付きに注意

製品による差も大きい、一般的な傾向です。

ミニLEDとマイクロLED

ミニLEDは、液晶のバックライトを、たくさんの小さなLEDに分けたものです。画面の暗い場所の裏ではLEDを暗くし、明るい場所では明るくします。こうして、液晶でも黒を深くできます。Appleによると、2021年のiPad Pro(12.9インチ)は、1万個超のLEDを2,500超の区画に分けています。

ただし区画は画素よりずっと大きく、方式は液晶のままです。黒い背景の明るい物の周りが、うっすら明るくなることがあります。

マイクロLEDは、サブピクセル1つ1つが、ごく小さなLEDそのものです。有機ELと同じく点そのものが光りますが、材料は有機物ではなく、窒化ガリウムなどの無機の半導体です。数千万個のLEDを欠けなく並べるのが難しいことは、「LEDはなぜ光る?」で計算しています。

リフレッシュレート: 1秒に何回描き直すか

画面は、絵を1秒間に何十回も描き直しています。この回数をリフレッシュレートと呼び、Hz(ヘルツ)で表します。60Hzなら1秒に60回、1回あたり約16.7ミリ秒です。120Hzなら約8.3ミリ秒ごとなので、スクロールが滑らかに見えます。

描き直すたびに、すべてのTFTに電圧を書き込む電力がかかります。そこで、動きのない絵では回数を減らす工夫が生まれました。そのための画面の作りを、LTPOと呼びます。速いLTPSのTFTと、電流が漏れにくい酸化物のTFTを、同じ画面の中で使い分けます。

Appleは2019年、Apple Watch Series 5の常時表示の画面にLTPOを使ったと発表しました。2021年のiPhone 13 Proでは、10〜120Hzの間で回数が変わる画面を発表しています。2022年のiPhone 14 Proでは、1Hzまで下げられるようにして、画面を消さずに表示し続ける機能を加えました。

ディスプレイドライバIC: 数字を電圧に変えるチップ

どのサブピクセルをどれだけ明るくするかは、スマホの計算の中心のチップ(SoC)が数字で決めます。その数字を受け取り、縦の線ごとの電圧に変えて送り出すのが、ディスプレイドライバICです。ほかのチップは「スマホの中にはどんな半導体が入っている?」で紹介しています。

iPhone 15 Proの画面は2556行あり、最大で1秒に120回描き直します(Appleの仕様)。すると1行に使えるのは約3.3マイクロ秒(100万分の3.3秒)です。休みの時間を省いた目安ですが、TFTにはこれほど速い切り替えが求められます。

明るさの調整とちらつき

有機ELの明るさは、流す電流で変えられます。ただし電流をとても小さくすると、TFTの性質のわずかなばらつきが目立ち、明るさや色がむらになりやすくなります。

そこで多くの有機ELは、特に暗くするとき、目にわからないほど速く点けたり消したりします。点いている時間の割合で、明るさを調整するのです。この方法をPWMと呼び、LED照明の調光にも使われます。

ほとんどの人は、この点滅に気づきません。一方で、目の疲れや不快感を訴える人もいます。点滅の速さと目の疲れの関係は研究が続いていますが、はっきりした結論は出ていません。

解像度とppi: 細かさを数字で見る

画素の細かさは、1インチ(2.54センチ)の長さに並ぶ画素の数で表します。これをppi(pixels per inch)と呼びます。画素の数が同じなら、画面が小さいほどppiは大きくなります。

iPhone 15で計算してみます。画面は2556×1179画素で、四角形として測った対角は6.12インチです(Appleの仕様)。対角に並ぶ画素の数は、三平方の定理で求めます。2556の2乗と1179の2乗を足して平方根をとると、約2,815個です。これを6.12で割ると約460となり、仕様の460ppiと合います。

では、どこまで細かければ十分でしょうか。視力1.0の人は、1分(1度の60分の1)の角度だけ離れた点を見分けられます。30センチ離れて見ると、1分は約0.087ミリの幅に当たります。この幅の点を1インチに並べると、約290個です(当サイトの計算)。

つまり30センチから見るなら、約300ppiを超えた差は、視力1.0の人には見えにくくなります。ただし単純化した計算で、視力の良い人や近づいて見る人なら、もっと細かい差も見分けられます。

出せる色の範囲(色域)も画面で違います。iPhone 15は、ウェブの標準のsRGBより広いP3という色域に対応しています(Appleの仕様)。P3は、映画用のDCI-P3をもとにした範囲です。

よくある誤解

誤解: 「LEDテレビ」は画素がLEDで光るテレビで、有機ELテレビもその一種

実際は、「LEDテレビ」と呼ばれる製品の多くは、LEDのバックライトを使った液晶テレビです。光っているのは裏のLEDで、色と明るさは液晶とカラーフィルタが作ります。有機ELは、画素そのものが光る別の方式です。有機ELを英語でOLEDと書くことも、混同のもとです。

誤解: 解像度が高いほど、必ずくっきり見える

実際は、見る距離と目の細かさで限界があります。上の計算のとおり、スマホを30センチから見るなら、約300ppiが目安です。元の映像の画素が少なければ、画面の画素を増やしても細かさは増えません。仕様表で比べやすい数字なので、大きいほど良いと思われがちです。

誤解: 1つの画素は、1つの光の点

実際は、1つの画素は、ふつう赤・緑・青の3つのサブピクセルでできています。有機ELのスマホでは、緑のサブピクセルを赤や青の2倍並べ、隣の画素と分け合う並べ方も多く使われています。点が小さすぎて、ふだんは混ざった1色に見えるので、1つの光だと思われやすいのです。

数字で見る

数字何の数字か
約445万個液晶のiPhone 11のサブピクセルの数(1792×828画素×3。当サイトの計算)
約290ppi視力1.0の人が30センチから見分けられる細かさの目安(当サイトの計算)
約3.3マイクロ秒2556行を120Hzで書き直すとき、1行に使える時間(当サイトの計算)

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