USBとは? USB-Cと規格・速度の違いをやさしく
USBは、パソコンやスマホと周りの機器をつなぐための共通の決まり(規格)です。USB-Cは差し込み口の「形」の名前です。データの速さ(USB 2.0〜USB4)や送れる電力(USB PD)は、別の規格で決まります。だから同じ形のケーブルでも、できることが違います。
この記事でわかること
- USBは何を決めた規格で、だれが決めているのか
- 「形」「速さ」「電力」の3つを分けて考えると、何がすっきりするか
- 世代ごとの速さと、箱に書かれる「USB 10Gbps」のような呼び方
- 同じUSB-Cのケーブルなのに、充電はできても映像が出ないことがある理由
- 大きなW数の充電器でスマホが壊れない理由と、EUの共通充電器のルール
前提知識: 電圧(ボルト、V)と電流(アンペア、A)の大まかな意味。「電力=電圧×電流」というかけ算だけ使います(本文で言葉で説明します)。
身近なところでは
マウスやキーボード、USBメモリ、スマホの充電器。どれもUSBでつながっています。最近は、ノートパソコンの充電や、外付けのモニタにつなぐのにも使います。
2023年9月に出たiPhone 15からは、iPhoneの差し込み口もUSB-Cになりました。ところが、データの速さは、iPhone 15が最大480 Mb/sです。iPhone 15 Proは最大10 Gb/sです(アップル)。形は同じでも、速さは約20倍違います。
「USB-Cのケーブルなのに、モニタに映らない」「充電が遅い」という困りごとも、同じところから来ています。その理由を、しくみから順に見ていきます。
しくみ1: USBは「つなぎ方の共通の決まり」
USBが広まる前、パソコンの差し込み口は、つなぐ機器ごとにばらばらでした。マウス用、プリンタ用、と形も中身も違っていたのです。そこで、どんな機器でも同じ口でつなげる共通の決まりが作られました。それがUSBで、最初の版1.0は1996年1月にできました。
USBはUniversal Serial Busの略です。Serial(シリアル)は、0と1を1つずつ順番に送るという意味です。たくさんの線で同時に送る方式より、線が少なくてすみます。
USBの規格を管理しているのは、USB-IF(USB Implementers Forum)という非営利の団体です。USBを作った会社が集まり、1995年に設立しました。規格どおりに動くかを試験し、合格した製品にロゴを使わせる「認証」も行っています(USB-IF)。
USBの便利な点の一つは、電源を入れたまま抜き差しできることです。つなぐとパソコンが機器の種類を自動で調べ、使えるようにします。この性質をホットプラグと呼びます。
しくみ2: 「形」「速さ」「電力」は別々の決まり
USBのややこしさの多くは、3種類の決まりが同じ「USB」という名前で呼ばれることから来ています。差し込み口の形、データを送る速さ、電力の送り方です。表にすると、次のようになります。
| 何の決まりか | 主な名前 | 例 |
|---|---|---|
| 差し込み口の形(コネクタ) | USB Type-A、Micro-B、USB Type-C | パソコンの長方形の口、少し前のAndroidスマホの口、今のスマホやパソコンの口 |
| データの速さ | USB 2.0、USB 3.2、USB4 | 480 Mb/s〜80 Gb/s |
| 電力の送り方 | 基本の5 Vの給電、USB PD | 数W〜240 W |
USB Type-C(以下、USB-C)は、2014年8月に規格ができた差し込み口の形です。上下どちら向きでも差し込め、中には24本の端子が並んでいます。USB-IFの手引きも「USB 3.2は速さの規格で、USB-Cとは別」と明記しています。
実際の速さや電力は、両方の機器とケーブルの、いちばん低い能力にそろいます。どれか一つでも古い規格にしか対応していなければ、そこが上限になります。
しくみ3: データの速さは世代で決まる
速さの単位から説明します。0か1の1つぶんの情報を1ビット(b)と呼びます。1秒に何ビット送れるかを「b/s」で表します。Mb/sは1秒に100万ビット、Gb/sは1秒に10億ビットです。
| 規格の名前 | 年 | 最大の速さ | 今の呼び方 |
|---|---|---|---|
| USB 1.0 / 1.1 | 1996 / 1998年 | 12 Mb/s | — |
| USB 2.0 | 2000年 | 480 Mb/s | Hi-Speed USB |
| USB 3.0(= USB 3.2 Gen 1) | 2008年 | 5 Gb/s | USB 5Gbps |
| USB 3.1 Gen 2(= USB 3.2 Gen 2) | 2013年 | 10 Gb/s | USB 10Gbps |
| USB 3.2 Gen 2x2 | 2017年 | 20 Gb/s | USB 20Gbps |
| USB4 | 2019年 | 40 Gb/s | USB 40Gbps |
| USB4 Version 2.0 | 2022年 | 80 Gb/s | USB 80Gbps |
年は規格が完成した年で、製品が出るのはその後です。速さは規格の上限で、実際にファイルを送る速さはこれより遅くなります(USB-IF、インテルほか)。USB4は、インテルが提供したThunderbolt(サンダーボルト)の規格をもとに作られました。
名前がわかりにくくなった理由
同じ5 Gb/sの速さは、改訂のたびに呼び直されました。USB 3.0、USB 3.1 Gen 1、USB 3.2 Gen 1です。新しい版が古い版を取り込むとき、前の速さにも新しい名前を付けたためです。
「Gen 2x2」の「x2」は、10 Gb/sの道を2本同時に使う、という意味です。USB-Cには、速い信号を送る組と受ける組のセットが2つ(合わせて4組)あるので、こうした「2車線」の使い方ができます。
混乱を避けるため、USB-IFは2019年から、箱には番号より速さを書くよう求めています。2022年からは「USB 10Gbps」のような短い書き方です(USB-IF)。
しくみ4: 0と1は2本1組の線で送る
速い信号ほど、まわりからの雑音の影響を受けやすくなります。そこでUSBでは、2本の線を1組にして、逆向きの信号を流します。受ける側は、2本の電圧の「差」だけを見て、0か1かを決めます。
雑音は、すぐ隣の2本に同じように乗りやすい性質があります。差をとると、その雑音は打ち消されます。この送り方を差動信号と呼びます。1本の線で送る方式との違いは、比較のページ「シングルエンドと差動信号の違い」で表にしています。
USB 2.0では、この線の組が1組だけで、送るのと受けるのを交代で行います。USB 3.x以降は、送る専用と受ける専用の組を別に足し、同時にやり取りできるようにしました。速い信号の線は、太さや間隔まで決めて作ります。その理由は「プリント基板とは?」で説明しています。
しくみ5: 電力は5 Vから始まり、話し合って上げる
電力(W、ワット)は、電圧と電流のかけ算で決まります。たとえば5 Vで1 Aなら5 Wです。USBの電気の線は、もともと5 Vでした。USB 2.0の口では0.5 A(2.5 W)、USB 3.0の口では0.9 A(4.5 W)です(インテル)。
USB-Cでは、同じ5 Vのまま、1.5 Aや3 A(15 W)まで出せるようになりました。充電器は、端子の中の「会話用の線」(CC線と呼びます)の電圧で、どこまで出せるかを相手に知らせます(マイクロチップ)。
ノートパソコンを充電するには、もっと大きな電力が要ります。そこで、つないだ後に充電器と機器が話し合い、電圧を上げる決まりが作られました。これがUSB PD(USB Power Delivery)です。最大は20 V・5 Aの100 Wでした。2021年5月の改訂で、48 V・5 Aの240 Wに広がりました(USB-IF)。
電流を増やさずに電圧を上げるのは、ケーブルで熱になる電気を減らすためです。同じ電力なら、電圧が高いほど電流は少なくてすみます。送電線で電圧を上げるのと同じ考え方で、「交流と直流の違いとは?」で説明しています。
しくみ6: ケーブルの中身で、できることが変わる
USB-C同士をつなぐケーブルの中身は、1種類ではありません。いちばん簡単なものは、電力の線、会話用のCC線、USB 2.0の線の組だけで作られています。USB 3.x以降の速い信号の線の組は、入っていません。
USB-Cで映像をモニタに送るときは、この速い線の組を、映像の信号に貸して使います。その代表が、DisplayPort(ディスプレイポート)という映像の規格です(VESA)。速い線のないケーブルでは、充電はできても、この方法で映像を送ることはできません。
ケーブルの中の小さなチップ「eマーカー」
ふつうのUSB-Cのケーブルは、3 Aまで流せるように作られています。20 Vで3 Aなら60 Wです。それより多い5 Aを流すには、ケーブルの差し込む部分に、小さなチップが入っている必要があります(USB-IF)。
このチップは、電気の通り道に名札を付けるようなものです。「このケーブルは5 Aまで、速さは何Gb/sまで」といった情報を、充電器や機器に答えます。このチップをeマーカー(電子マーカー)と呼びます。名札のないケーブルだと、充電器は安全のため3 Aまでに抑えます。240 Wで充電するには、240 Wに対応したeマーカー入りのケーブルが要ります。
受け身のケーブルと、アクティブケーブル
速い信号は、ケーブルが長いほど弱まり、形がくずれます。USB-Cの規格では、中に回路のない受け身のケーブルで10 Gb/sを送る長さの目安を、1 mまでとしています。それより長く速く送るには、中に信号を整えるチップを入れたケーブルを使います。これをアクティブケーブルと呼びます。
USB4 Version 2.0の80 Gb/sは、今の40 Gb/sの受け身のケーブルでも送れます。新しく決めた80 Gb/sのアクティブケーブルも使えます(USB-IF)。認証を受けたケーブルには「40Gbps」「240W」のような速さと電力のロゴが付きます(USB-IF)。
しくみ7: USBの中で働く半導体チップ
パソコンの側には、つながった機器を見張り、いつどの機器と通信するかを決める回路があります。これをUSBのコントローラと呼びます。多くは、CPUと同じチップか、そのそばのチップに組み込まれています。
マウスやキーボードの側では、小さなコンピュータのチップが、USBの決まりどおりに返事をします。このようなチップの多くは、USBの回路を内蔵したマイコンです(「マイコンとは?」)。
充電器とスマホには、USB PDの話し合いを受け持つチップが入っています。これをPDコントローラと呼びます。話し合いの結果に合わせて、電気の通り道のスイッチを入れたり、電圧を変える回路に指示を出したりします。小さな充電器で大きな電力を扱う部品の話は「GaN(窒化ガリウム)とは?」で説明しています。
速い信号の通り道の途中には、弱まった信号を元気にするチップを置くことがあります。波の形を補って大きくするだけのものを、リドライバと呼びます。
もう一つは、いったん0と1を読み取り、きれいな信号として送り直すチップです。これをリタイマと呼びます(テキサス・インスツルメンツ)。大きく弱まった信号に強い代わりに、リドライバより値段は高くなります。
指でさわる差し込み口は、静電気が飛びこみやすい場所です。そこで口の近くには、静電気を逃がしてチップを守る部品も置きます(静電気放電)。
世界のルール: EUの「共通充電器」
EU(ヨーロッパ連合)では、充電の差し込み口をUSB-Cにそろえる決まりができました。指令(EU)2022/2380です。2024年12月28日から、EUで売る機器の充電口は、USB-Cでなければなりません。対象は携帯電話、タブレット、デジタルカメラ、ヘッドホン、携帯ゲーム機、イヤホンなどです。ノートパソコンは2026年4月28日からです(欧州委員会)。
この決まりは、差し込み口の形だけではありません。5 V・3 A・15 Wのどれかを超える急速充電ができる機器は、USB PDに対応する必要があります。また、充電器を付けずに機器だけを買える選び方も用意しなければなりません。充電器のごみを減らし、手持ちの充電器を使い回せるようにするのがねらいです。
日本で売られる製品はこの決まりの対象ではありません。ただ、同じ機種を世界で売るメーカーも多く、日本で手に入る機器にもUSB-Cが広がっています。
よくある誤解
誤解: USB-Cのケーブルは、どれも同じ
実際は、形が同じでも中身が違います。USB 2.0の速さしか出ないもの、3 A(60 W)までのもの、5 Aで100 Wや240 Wまで送れるものなどがあります。形の名前と、速さ・電力の規格が別々に決まっているので、見た目では区別できません。認証のロゴにある「Gbps」と「W」の数字を確かめるのが確実です。
誤解: W数の大きい充電器をつなぐと、スマホが壊れる
実際は、USB PDの充電器は、つないだ直後は5 Vしか出しません。どの電圧にするかは、充電器が示した一覧の中から、スマホが選んで頼みます。充電器のW数は「出せる上限」で、無理に押しこむ量ではありません。だから、100 Wの充電器で20 W用のスマホを充電しても、流れるのは話し合いで決まったぶんだけです。ただし、これは規格どおりに作られた製品の場合です。認証のない粗悪な製品では、この限りではありません。
誤解: 規格の番号が大きいほど速い
実際は、「USB 3.2」には5 Gb/s、10 Gb/s、20 Gb/sの3つの速さが含まれます。USB 3.0のころの5 Gb/sの製品も、今の名前ではUSB 3.2 Gen 1です。番号だけでは速さが決まらないので、買うときはGbpsの数字を見るのが確実です。
数字で見る
| 数字 | 何の数字か |
|---|---|
| 1995年 / 1996年 | USB-IFの設立 / USBの最初の版1.0 |
| 12 Mb/s → 80 Gb/s | USB 1.1(1998年)とUSB4 Version 2.0(2022年)の最大の速さ。約6,700倍 |
| 約2分50秒 / 8秒 | 10 GBのファイルを、480 Mb/sと10 Gb/sで送るときの理論上の最短の時間 |
| 5 V | USBの基本の電圧。USB PDの話し合いの前も5 V |
| 2.5 W / 4.5 W / 15 W | 5 VのままUSB 2.0、USB 3.0、USB-C(3 A)の口で出せる電力 |
| 60 W / 100 W / 240 W | 3 Aのケーブルで送れる上限 / 2021年5月までのUSB PDの上限 / 今の上限(48 V・5 A。EPRと呼ぶ範囲) |
| 2024年12月28日 / 2026年4月28日 | EUでUSB-Cの充電口が必要になった日。携帯電話など / ノートパソコン |
10 GBのファイルの時間は、1バイトを8ビットとして計算した、手順のむだを含まない値です。実際にはこれより長くかかります。ファイルの大きさと速さを変えて試せる「データ転送時間の計算ツール」もあります。
もっと詳しく学ぶ
- 関連する解説: 「GaN(窒化ガリウム)とは?」(小さな急速充電器) / 「ワイヤレス充電とは?」 / 「リチウムイオン電池とは?」 / 「プリント基板とは?」(速い信号の配線)
- 用語: USB PD / 差動信号 / リタイマ / ホットプラグ / アイソクロナス転送(音声や映像の送り方) / SerDes(速いシリアル通信の回路)
- 違いを表で見る: シングルエンドと差動信号の違い / NRZとPAM4の違い / PCIe 3.0・4.0・5.0・6.0の違い / I2C・SPI・UARTの違い
- 数字で試す: データ転送時間の計算ツール