イメージセンサとは? スマホのカメラが光を電気に変えるしくみ
イメージセンサは、カメラのレンズが集めた光を電気の信号に変える半導体のチップです。表面に並んだ数千万個の小さな受光部(画素)が、それぞれ届いた光の量を電子の数として数えます。その数を数字に直して並べたものが、デジタルの写真の元になります。
この記事でわかること
- 光が電子になり、電圧になり、数字になるまでの流れ
- 1つの画素は1色しか測らないのに、カラー写真が撮れる理由
- 裏面照射型・積層型とは何か、CMOSがCCDに代わって主流になった理由
- 「5,000万画素」の意味と、画素数が多いほどよいとは限らない理由
前提知識: 特にありません。半導体を「光や電圧で電気の通しやすさが変わる材料」と知っていると読みやすくなります(「半導体とは?」)。
身近なところでは: 「電子の目」はあちこちに
スマホの裏側にある丸い窓の奥には、レンズと、その後ろに置かれた小さなチップがあります。このチップがイメージセンサです。レンズが光を集めて像を結び、イメージセンサがその像を電気の信号に変えます。
イメージセンサは、スマホやデジタルカメラのほかにも使われています。車の周りを見るカメラ、防犯カメラ、ドアホン、パソコンのWebカメラなどです。工場では、流れてくる製品の傷を見つける検査のカメラにも使われます。
しくみ① 光の粒が電子を動けるようにする
光は、エネルギーの小さなかたまりの集まりとしてふるまいます。このかたまりを光子(こうし)と呼びます。ここでは話を簡単にするため、光を「粒の流れ」として説明します。明るい光ほど、1秒あたりに届く粒の数が多くなります。
シリコンの結晶の中の電子は、ふだんは原子どうしの結びつきに使われていて、自由に動けません。そこに光の粒が当たると、粒のエネルギーを受け取った電子が、自由に動ける状態になります。このように、光が物質の中の電子を動けるようにする現象を、内部光電効果と呼びます。電子が抜けた跡には「穴」も残りますが、ここでは電子だけを追います。
電子が動けるようになるのに必要なエネルギーは、材料ごとに決まっています(「半導体とは?」の「段差」の話です)。目に見える光の粒は、シリコンでこの段差を越えるのに十分なエネルギーを持っています。そのため、シリコンは目に見える光をよく電子に変えられます。
動けるようになった電子を、逃がさずに集めてためておく部品がフォトダイオードです。性質の違う2種類のシリコンが接する境目には、電子を1か所に引き寄せる電気の力が生まれます。この力で、光が生んだ電子が小さな「ため池」に集まります。
光を受けて電子をためる時間を、露光と呼びます。露光の間、フォトダイオードには届いた光の量に応じて電子がたまっていきます。暗い場所で露光の時間を長くすると明るく写るのは、電子がたまる時間が長くなるからです。
しくみ② 電子の数を数字にする
たまった電子は、そのままでは写真になりません。ここでは、スマホで使われている方式(後で説明するCMOS)で説明します。画素の中の小さな回路が、電子の量を電圧に変えます。電圧は、電気を押し出す強さのことで、測りやすい量です。電子が多いほど、電圧は大きく変わります。
次に、この電圧を整数の値に直します。連続して変わる電圧を、とびとびの数字に直すことをAD変換(アナログ・デジタル変換)と呼びます。たとえば「0から1,023までの整数のうち、いくつか」という形にします。こうして、それぞれの画素の明るさが数字になります。
数千万個の画素の数字を、画素の並びどおりに並べたものが、写真の元のデータです。スマホは、この数字の表に色の計算やざらつきを減らす処理などを加え、ふだん見る写真に仕上げます。
しくみ③ 色はどうやって見分けるのか
フォトダイオードは、届いた光の量しかわかりません。赤い光でも青い光でも、電子は同じように生まれるからです。そこで、各画素の上に、決まった色の光だけを通す小さな色付きの膜を置きます。この膜をカラーフィルタと呼びます。
フィルタの並べ方で最も広く使われているのが、ベイヤー配列です。2×2の4画素を1組にして、緑を2つ、赤と青を1つずつ置き、これを縦横にくり返します。コダックのブライス・ベイヤーが考えた並べ方で、1976年に米国で特許になりました。緑が多いのは、人の目が緑の光に最も敏感だからです。明るさや細かい模様を、主に緑の画素から読み取れます。
この並べ方では、1つの画素は1色の明るさしか測っていません。たとえば赤の画素には、緑と青の値がありません。そこで、周りにある緑や青の画素の値から、足りない2色を推定して補います。この計算をデモザイク(色補間)と呼びます。
推定なので、うまくいかない場面もあります。細かい縞模様の服などを撮ると、本当はない色のにじみや模様が出ることがあります。カメラの画像処理は、輪郭の向きを調べるなどして、こうした誤りを減らしています。
しくみ④ 光をむだなく集める工夫
画素の面積の全部が、光を受けられるわけではありません。画素の中には、電子を読み出すトランジスタや配線もあるからです。そこで各画素の上に、光を受光部へ集める小さな凸レンズを1つずつ置きます。これをマイクロレンズと呼びます。
チップの作り方にも工夫があります。ふつうのチップは、シリコンの板の表面にトランジスタを作り、その上に何層もの金属の配線を重ねます(「半導体チップはどうやって作られる?」)。表側から光を入れる従来の作り方を、表面照射型と呼びます。この作り方では、光が配線のすき間を通り抜けなければならず、一部が配線にさえぎられます。
そこで、チップを裏返して板を数µm(マイクロメートル。1µmは1mmの1,000分の1)まで薄く削り、配線のない裏側から光を入れる作り方が生まれました。これを裏面照射型と呼びます。ソニーは、2009年にこの方式のCMOSイメージセンサを量産し、最初にビデオカメラ「ハンディカム」に載せました。当時の同社の発表では、従来の製品に比べて感度は約2倍でした。
裏面照射型では、薄くしたチップを支える板を、裏から貼り合わせます。この支えの板を、信号を処理する回路のチップに置き換えたのが積層型です。ソニーは2012年1月に開発を発表し、同年10月に最初の製品の出荷を始めました。画素と回路を上下に重ねるので、チップを小さくでき、回路も増やせます。
3つの構造の違いは「表面照射型・裏面照射型・積層型の違い」で表にしています。
CMOSとCCD: 読み出し方の違い
イメージセンサには、電子の読み出し方が違う2つの方式があります。1つはCCDです。各画素の電子を、バケツリレーのように隣へ隣へと送り、出口にある1つの回路でまとめて電圧に変えます。CCDは1969年に米国のベル研究所で発明され、発明者の2人は2009年のノーベル物理学賞を受けました。
もう1つがCMOSイメージセンサです。CMOSは、CPUなどと同じ種類のトランジスタ回路の作り方の名前です(「トランジスタとは?」)。この方式では、各画素の中で電子を電圧に変え、列ごとの回路で並行して読み出します。
CMOS方式には、読み出しが速く、使う電力が少ないという長所があります。AD変換や画像処理の回路も、同じチップや重ねたチップに載せられます。ただ、かつてはCCDのほうが、写真のざらつきのもとになる雑音(ノイズ)が少なく、画質を重んじる用途で選ばれていました。
その後、CMOSも雑音を減らす改良が進みました。今では、スマホやデジタルカメラのセンサのほとんどがCMOSです。CCDは、天体観測や科学計測などの一部で使われています。違いは「CMOSイメージセンサーとCCDの違い」で表にしています。
大きな画素ほど暗い場所に強い理由
同じ明るさの場所を何度撮っても、1つの画素にたまる電子の数は毎回少しずつ変わります。光の粒は、雨粒のようにばらばらの時刻に届くからです。この偶然によるばらつきをショットノイズと呼びます。暗い写真がざらざらして見える主な原因の一つです。
ばらつきの大きさには決まった関係があります。平均で100個の電子がたまる画素なら、ばらつきはおよそ±10個で、平均の10%です。平均が1万個なら、ばらつきはおよそ±100個で、1%にすぎません。数学の言葉でいうと、ばらつきの目安は平均の数の平方根(2回かけるとその数になる値)です。
つまり、1つの画素に集まる光の粒が多いほど、ばらつきの割合は小さくなり、なめらかに写ります。画素が大きいほど、またセンサ全体が大きいほど、たくさんの光を集められます。スマホの夜景モードには、何枚も撮って重ね合わせるものがあります。これも、集める光を増やすための工夫です。ここでは話を簡単にするため、回路から加わる雑音などは省いています。
「5,000万画素」は何の数?
「50MP」の MP はメガピクセル、つまり100万画素の意味です。50MP は、センサの画素が約5,000万個あることを表します。横と縦の比が4:3の画面なら、横に約8,200個、縦に約6,100個並ぶ計算です。
同じ大きさのセンサに画素を多く詰めると、1つの画素は小さくなります。すると1画素あたりの光が減り、前の節のばらつきの割合が大きくなります。画素数を増やすと細かいところまで写せる可能性は高まりますが、光の少ない場面では不利になることがあるわけです。
そこで高画素のスマホのセンサには、隣り合う4画素に同じ色のフィルタを置くものがあります。暗い場面では、この4画素の信号をまとめて、大きな1画素として扱います。このようにまとめることを、ビニングと呼びます。
たとえばAppleの2022年のiPhone 14 Proは、4800万画素のセンサを使います。4画素を1つにまとめて、ふだんは1200万画素の写真にします。設定によっては、まとめずに4800万画素で撮ることもできます。
読み出しの順番とゆがみ
多くのCMOSイメージセンサは、画素を上の行から順に1行ずつ読み出します。これに合わせて、露光の始まりと終わりも1行ずつ少しずつずれます。この方式をローリングシャッターと呼びます。そのため、速く動く電車や回るプロペラを撮ると、斜めに傾いたり曲がったりして写ることがあります。
すべての画素で同時に露光し、電子を画素の中に一時的に預けてから読み出す方式もあります。これをグローバルシャッターと呼びます。動く物がゆがみませんが、預ける部分の分だけ画素の回路が増えます。工場の検査用カメラなどで使われています。2023年には、ソニーがこの方式のセンサを積んだカメラ「α9 III」を発表しました。
イメージセンサを作る会社
イメージセンサの大手には、ソニー、サムスン電子、オムニビジョンなどがあります。ソニーの中では、ソニーセミコンダクタソリューションズが作っています。スマホ用では、調査会社TechInsightsやCounterpointの2024年の調べで、ソニーが首位でした。
同社によると、前に紹介した裏面照射型と積層型は、どちらもソニーが世界で初めて量産しました。同社が2022年に公開した記事では、自社のイメージセンサの約9割が積層型だとしています。
よくある誤解
誤解: 画素数が多いカメラほど、いい写真が撮れる
実際は、写りはレンズ、センサの大きさ、1画素の大きさ、画像処理の組み合わせで決まります。センサの大きさが同じなら、画素数を増やすと1画素が受ける光は減り、暗い場面ではざらつきやすくなります。画素数は仕様表で比べやすい数字なので、画質の目安として目立ちやすいのです。
誤解: 1つの画素が、赤・緑・青のすべての色を測っている
実際は、ほとんどのセンサでは、1つの画素は1色の明るさしか測りません。足りない2色は、周りの画素の値から計算で補っています。完成した写真ではどの画素にも3色の値があるので、最初から全色を測っているように見えます。
誤解: センサは、フィルムのように像そのものを焼き付けている
実際は、各画素は露光の間にたまった電子の量を測り、数字にして送り出すだけです。読み出しが終わると電子は捨てられ、画素は次の撮影の準備に戻ります。写真として残るのは、メモリに保存された数字の並びです。「写真を撮る」という言葉から、センサの上に絵が残るように思われがちです。
数字で見る
| 項目 | 数字 | ひとこと |
|---|---|---|
| 50MP(5,000万画素)の並び | 横約8,200×縦約6,100 | 4:3の画面の場合(当サイトの計算) |
| ベイヤー配列の色の割合 | 緑1/2、赤1/4、青1/4 | 2×2の4画素で1組 |
| 電子100個のときのばらつき | 約±10個(10%) | ショットノイズ |
| 電子1万個のときのばらつき | 約±100個(1%) | 光が多いほど割合は小さい |
| 4画素をまとめたときの光 | 4倍 | ばらつきの割合は約半分 |
| iPhone 14 Proの主カメラ | 4800万画素→1200万画素 | 2022年。4画素を1つにまとめる |
| 裏面照射型の量産 | 2009年 | ソニー。感度は従来の約2倍(同社) |
| 積層型の発表 | 2012年1月 | ソニー。同年10月に最初の製品を出荷 |
ショットノイズだけを考えると、4画素をまとめて光が4倍になっても、ばらつきの割合は半分にしかなりません。4の平方根が2だからです。光を集める工夫が、少しずつしか効かない理由でもあります。
もっと詳しく学ぶ
- 違いを表で見る: CMOSイメージセンサーとCCDの違い、表面照射型・裏面照射型・積層型の違い、ローリングシャッターとグローバルシャッターの違い
- 次の一歩の用語: 量子効率(光の粒のうち電子になる割合)、暗電流(光がなくても生まれる電子)。
- さらに: 飽和電子数(1画素にためられる電子の上限)、相関二重サンプリング(読み出しの雑音を打ち消す方法)。
- 数字で試す: バンドギャップと波長の換算ツールで、シリコンが電子に変えられる光の波長の上限(約1,100nm)を確かめられます。画像・音声・動画のデータ量の計算ツールでは、画素数から写真のデータ量を計算できます
- 土台から読む: 「半導体とは?」「トランジスタとは?」