ローリングシャッターとグローバルシャッターの違い:露光・ゆがみ・ノイズ・用途を比較

どちらもイメージセンサの電子シャッターの方式です。ローリングシャッターは、画素の行ごとに少しずつ時刻をずらして露光し、順に読み出します。画素の回路が簡単でノイズも小さくできますが、上の行と下の行で撮影の時刻が違うため、速く動く被写体は斜めにゆがみます。グローバルシャッターは、すべての画素を同時に露光し、電荷を画素の中に一時的に保持してから読み出すので、ゆがみが生じません。その代わり、画素の回路が増え、画素が大きくなりやすくなります。

項目ローリングシャッターグローバルシャッター
露光のタイミング行ごとに少しずつずらして露光を始め、終える全画素で同時に露光を始め、同時に終える
読み出しの流れ露光を終えた行から順に読み出す全画素の電荷を一斉に画素内の保持部へ移し、その後で行ごとに読み出す
撮影時刻のずれ画面の上端と下端で、1画面の読み出し時間(数 ms〜数十 ms)だけずれるずれはない
動く被写体速く動く物や、カメラを振ったときに、斜めにゆがむゆがまない
点滅する光とフラッシュ照明のちらつきが横縞になりやすい。短いフラッシュでは画面の一部だけが明るくなることがある全画面が同時に光を受けるので縞にならず、パルス光と同期させやすい
画素の回路代表的には4トランジスタ画素電荷を一時的に保持する部分と、そのためのトランジスタが追加で必要
画素サイズと感度小さな画素にしやすい保持部の分だけ画素が大きくなりやすく、受光の面積も減りやすい
ノイズリセット時と信号の差をとる相関二重サンプリング(CDS)で、読み出しノイズを小さくしやすい方式によってはCDSが難しくノイズが増えやすい。保持中の暗電流や、保持部への光の漏れ込みも課題
コスト低い高め
主な用途スマートフォン、デジタルカメラ、動画撮影、監視カメラ工場の検査カメラ(マシンビジョン)、バーコードの読み取り、車載のドライバーモニタリング、ToFなどの距離計測、ロボットやAR/VRのトラッキング

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

ローリングシャッター
被写体の動きが速すぎず、画素の小ささ、感度、低ノイズ、コストを優先したいとき。多くのカメラの標準です。
グローバルシャッター
速く動く物を正確な形で撮りたいとき、またはパルス光やフラッシュと露光を正確に合わせたいとき。検査や計測、機械が画像を判断する用途です。
ゆがみを小さくするには
ローリングシャッターでも、1画面を読み出す時間を短くすれば、ゆがみは小さくなります。積層型センサで読み出しを速くしたり、メカニカルシャッターと組み合わせたりする方法があります。

よくある質問

ローリングシャッターで、動く物がゆがむのはなぜですか?

画素を1行ずつ順に露光して読み出すため、画面の上の行と下の行で撮影の時刻が数 ms〜数十 msずれるからです。その間に被写体が動くと、行ごとに違う位置が写り、全体が斜めにゆがみます。

グローバルシャッターのほうが常に優れていますか?

そうとは限りません。グローバルシャッターは画素に保持部が必要なので、画素が大きくなりやすく、感度やノイズ、コストの面では不利になりがちです。動きのゆがみが問題にならない用途では、ローリングシャッターが選ばれます。

照明のちらつきが縞になるのはなぜですか?

ローリングシャッターでは行ごとに露光の時刻が違うため、点滅する照明の明るさが変わる途中で露光した行と、そうでない行の明るさに差が出て、横縞として写ります。グローバルシャッターでは全画素が同時に露光するので縞になりません。

理解度チェック

CMOSイメージセンサのローリングシャッター方式で、速く動く被写体がゆがんで写る理由として正しいものはどれか。

  1. A行ごとに露光と読み出しのタイミングがずれるため
  2. Bすべての画素を同時に露光するため
  3. Cカラーフィルタの配列のため
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正解:A. 行ごとに露光と読み出しのタイミングがずれるため

ローリングシャッター方式では、画素を1行ずつ順に露光・読み出すため、上の行と下の行で撮影時刻が数ms〜数十msずれます。そのため速く動く被写体が斜めにゆがんだり、蛍光灯のちらつきが縞になったりします。全画素を同時に露光するグローバルシャッター方式ではゆがみが生じず、工業用の検査カメラや車載で使われますが、画素内に電荷を一時保持する回路が必要で画素が大きくなります。

CMOSイメージセンサの代表的な4トランジスタ画素で、フォトダイオードの電荷を浮遊拡散層(フローティングディフュージョン)に移す役割をもつトランジスタはどれか。

  1. A転送トランジスタ
  2. Bリセットトランジスタ
  3. C選択トランジスタ
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正解:A. 転送トランジスタ

4トランジスタ画素は、転送、リセット、増幅(ソースフォロワ)、選択の4つのトランジスタで構成されます。転送トランジスタが埋め込みフォトダイオードの電荷を浮遊拡散層(FD)に移し、その電圧を増幅トランジスタで出力します。リセットはFDの初期化、選択は読み出す行の選択です。転送前後の値の差をとるCDSが可能になるのがこの構造の利点で、隣の画素とFDなどを共有して面積を減らす工夫もあります。

CMOSイメージセンサの読み出しで使われる相関二重サンプリング(CDS)の目的として正しいものはどれか。

  1. A信号を2倍に増幅するため
  2. B色の情報を補間するため
  3. Cリセット時と信号読み出し時の差をとり、リセットノイズや画素ごとのオフセットを除去するため
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正解:C. リセット時と信号読み出し時の差をとり、リセットノイズや画素ごとのオフセットを除去するため

CDSでは、浮遊拡散層をリセットした直後の出力と、フォトダイオードの電荷を転送した後の出力をそれぞれサンプリングし、その差を信号とします。リセットのたびにばらつくkTC雑音と画素ごとのアンプのオフセットは両方の値に共通なので、差をとると打ち消されます。埋め込みフォトダイオードの完全転送と組み合わせることで、読み出しノイズを電子数個分以下まで減らせます。

  1. 多くのCMOSイメージセンサで採用されている、画素の列ごとにAD変換器を設けて並列に変換する方式の主な利点はどれか。

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関連する用語の解説

ローリングシャッター
画素の行ごとに順番に露光と読み出しを行う方式。回路が簡単だが、速く動く被写体はゆがんで写る。すべての画素を同時に露光する方式はグローバルシャッター。
グローバルシャッター
すべての画素を同時に露光する電子シャッター方式。行ごとに順に読み出すローリングシャッターと違い、動く物の像がゆがまない。
相関二重サンプリング(CDS)
画素をリセットしたときの電圧と、信号を読み出したときの電圧の差をとる処理。リセットノイズや画素ごとのオフセットを取り除ける。
CMOSイメージセンサー
画素ごとに増幅回路をもち、CMOSプロセスで作るイメージセンサー。低消費電力で周辺回路を集積でき、スマートフォンのカメラなどの主流。

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