LEDと半導体レーザーの違い:発光の仕組み・光の性質・用途を比較

LEDと半導体レーザーは、どちらもPN接合に順方向の電流を流し、電子と正孔が再結合するときに光を出します。LEDの光は自然放出によるもので、波長の幅が広く、いろいろな方向に広がります。半導体レーザーは光を往復させる共振器をもち、誘導放出で光を増幅するので、波長と位相のそろった、まっすぐ進む強い光が得られます。照明や表示にはLED、光通信や光ディスク、センシングにはレーザーが使われます。

項目LED半導体レーザー
発光の仕組み自然放出。電子と正孔がそれぞれ勝手なタイミングで再結合して光を出す誘導放出。光が、同じ波長・位相・向きの光をさらに生み出して増幅される
光の共振器ないある。へき開した端面(端面発光型)や多層膜の反射鏡(VCSEL)の間で光を往復させる
波長の幅(スペクトル幅)広い(数十nm程度)狭い(1 nm以下も可能。DFBレーザーは単一の波長で発振する)
光の広がり広い角度に広がる狭い。細く絞ったり、遠くまで届けたりできる
位相のそろい方(コヒーレンス)低い高い
電流と光出力電流を流すとすぐに光り、電流にほぼ比例して明るくなるしきい値電流を超えると発振が始まり、光出力が急に増える。しきい値より下では弱い自然放出光だけ
変調の速さ比較的遅い速い。光通信用には、電流で直接変調して数十Gb/sの信号を送るものもある
温度の影響温度が上がると発光効率が下がる温度が上がるとしきい値電流が増え、波長もずれるので、温度制御を使うこともある
扱いやすさ駆動回路が簡単で、長寿命光出力を一定に保つ制御が必要なことが多い。強い光は目に危険なので、レーザーの安全基準(クラス分け)がある
主な用途照明、ディスプレイのバックライト、表示灯、リモコン光ファイバ通信、光ディスク、レーザープリンタ、LiDAR、顔認証のセンサ、レーザー加工

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

LED
広い範囲を明るく照らしたいときや、表示に使うとき。安く、長寿命で、駆動も簡単です。
半導体レーザー
光を細く絞って遠くへ届けたいとき、速く変調して情報を送りたいとき、波長のそろった光が必要なとき。光通信、距離の測定、加工などに使います。
共通点
どちらも、出す光の色(波長)は主に発光層の半導体のバンドギャップで決まります。発光の効率が高いGaN系、GaAs系、InP系などの直接遷移型の化合物半導体が使われ、間接遷移型のシリコンは発光素子に向きません。

よくある質問

LEDとレーザーの光は何が違いますか?

レーザーの光は波長と位相がそろい、まっすぐ進んで広がりにくいのに対し、LEDの光は波長の幅が広く、いろいろな方向に広がります。LEDは自然放出で、レーザーは共振器の中での誘導放出で光を出すためです。

半導体レーザーのしきい値電流とは何ですか?

レーザー発振が始まる電流です。共振器の中で、誘導放出による光の増幅が損失を上回ると発振し、それより大きい電流では光出力が電流に対して急に増えます。しきい値より小さい電流では、LEDのような弱い自然放出光しか出ません。

LEDの色は何で決まりますか?

主に発光層の半導体のバンドギャップで決まり、波長λ(nm) ≈ 1240 / Eg(eV) の関係があります。青色や緑色にはInGaN、赤色にはAlGaInPなどが使われます。白色LEDの多くは、青色LEDの光の一部を蛍光体で黄色などに変えて混ぜています。

シリコンでLEDやレーザーを作りにくいのはなぜですか?

シリコンは間接遷移型の半導体で、電子と正孔が再結合して光を出すには、フォノン(格子振動)も関わる必要があり、発光の効率が非常に低いからです。シリコンフォトニクスでは、InPなどの化合物半導体のレーザーを組み合わせて使います。

理解度チェック

半導体レーザーとLEDの違いとして正しいものはどれか。

  1. ALEDの方が波長の幅が狭く、単色性が高い
  2. B半導体レーザーは、誘導放出と光の共振器によって、波長と位相のそろった指向性の高い光を出す
  3. C半導体レーザーは電流を流さずに発光する
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正解:B. 半導体レーザーは、誘導放出と光の共振器によって、波長と位相のそろった指向性の高い光を出す

LEDは自然放出の光で、波長幅が数十nmあり、いろいろな方向に広がります。半導体レーザーは、劈開面などでつくった光の共振器の中で、しきい値以上の電流を流して誘導放出を起こし、波長と位相がそろった、幅の狭い(1 nm以下も可能)指向性の高い光を出します。光通信、光ディスク、レーザープリンタ、LiDAR、加工などに使われます。

LEDの発光色(発光波長)を決める主な要因はどれか。

  1. Aパッケージの形状
  2. B駆動電流の向き
  3. C発光層に使う半導体のバンドギャップ
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正解:C. 発光層に使う半導体のバンドギャップ

LEDでは電子と正孔が再結合するとき、バンドギャップに相当するエネルギーの光が出ます。波長は λ(nm) ≈ 1240/Eg(eV) で、例えばGaN系(InGaN)は約2.7 eVで青色の約460 nm、AlGaInPは約1.9 eVで赤色の約650 nmです。発光層の組成を変えるとバンドギャップを調整でき、同じInGaNでもInを増やすと緑色になります。白色LEDは青色LEDと黄色の蛍光体の組み合わせです。

LEDが光る仕組みとして正しいものはどれか。

  1. A順方向バイアスで注入された電子と正孔が再結合するときに光を出す
  2. B逆方向の降伏電流で高温になり、熱放射で光る
  3. C光が当たると電流が流れる
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正解:A. 順方向バイアスで注入された電子と正孔が再結合するときに光を出す

LEDに順方向電圧をかけると、n側から電子が、p側から正孔が接合部に注入され、再結合するときにバンドギャップに相当するエネルギーを光として放出します。発光色は材料で決まり、赤はAlGaInP、青や緑はInGaN系です。白色LEDは青色LEDに黄色の蛍光体を組み合わせています。効率よく光らせるには直接遷移型の材料が必要で、シリコンでは実用的なLEDは作れません。

  1. 光通信で、単一の波長で安定に発振させるために、回折格子を内蔵した半導体レーザーはどれか。
  2. シリコンのような間接遷移型の半導体で、電子と正孔が再結合して光を出す確率が低い理由として正しいものはどれか。
  3. 波長620 nmの光の光子1個がもつエネルギーに最も近い値はどれか。(E [eV] ≈ 1240 / λ [nm])

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関連する用語の解説

順方向バイアス
p側に正、n側に負の電圧をかけること。障壁が下がって電流がよく流れる。逆にかけると逆方向バイアスで、電流はほとんど流れない。
直接遷移型
伝導帯の底と価電子帯の頂上が同じ波数にあるバンド構造。電子と正孔の再結合で効率よく発光する。GaAsなど。
バンドギャップ
価電子帯の上端と伝導帯の下端とのエネルギー差。シリコンは室温で約1.12 eV。大きいほど高温・高電圧に強い。
量子井戸
バンドギャップの小さい数nmの薄い層を、バンドギャップの大きい層で挟んだ構造。キャリアを閉じ込めて再結合を起こしやすくするため、LEDやレーザーの発光層に使われる。
VCSEL(垂直共振器面発光レーザー)
基板に垂直な方向に光を出す半導体レーザー。ウエハのまま検査でき、2次元に並べるのも容易なため、データ通信や顔認証の光源などに使われる。

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