抵抗(抵抗器)とは? オームの法則と電圧・電流をやさしく

約13分 · 更新: 2026年10月23日

抵抗は、電流の流れにくさです。電圧(電気を押し出す力の差)と電流(1秒あたりに流れる電気の量)は、「電圧 = 電流 × 抵抗」というオームの法則で結ばれます。抵抗器は、この関係を使って電流を決めたり電圧を分けたりする部品です。抵抗に電流が流れると電気は熱に変わり、チップが熱くなる理由の一つにもなっています。

この記事でわかること

  • 電圧・電流・抵抗が、それぞれ何を表しているのか
  • オームの法則の意味と、簡単な数字での計算
  • 抵抗器の2つの使い道: LEDの電流を決める、電圧を分ける
  • 抵抗で電気が熱になるしくみと、チップが熱くなる理由
  • チップの配線が細くなるほど、抵抗が増える理由

前提知識: 特になし。掛け算と割り算だけを使います。

身近なところでは

トースターやドライヤーは、電気で熱を作ります。中には、電気を通しにくい金属の線(ニクロム線など)が入っています。電気を通しにくい線に、あえて電気を流して熱くしているのです。この「通しにくさ」が抵抗です。

家電の基板を見ると、色の帯が描かれた小さな部品があります。これが抵抗器です。スマホのような小さな機器では、ごま粒より小さな四角い抵抗器(チップ抵抗器)が使われます。抵抗器は、電子回路でいちばん基本的な部品の一つです。

スマホで重いゲームをすると本体が温かくなるのも、抵抗と関係があります。チップの中で電気が流れる道には、どこにも少しずつ抵抗があるからです。この記事では、まず電圧と電流の意味から順に説明します。

しくみ① 電圧・電流・抵抗とは

電気を運んでいるのは、金属の中を動ける、とても小さな粒です。この粒を電子と呼びます。電池をつなぐと、電子が回路の中をいっせいに少しずつ動きます。これが「電気が流れる」ということです。

1秒あたりに、ある場所をどれだけの電気が通ったかを、電流と呼びます。単位はA(アンペア)です。1 Aの1000分の1が1 mA(ミリアンペア)です。

電流を流そうとする押しの強さを、電圧と呼びます。単位はV(ボルト)です。電圧は、いつも「2つの点の間の差」として決まります。乾電池の1.5 Vは、プラス側とマイナス側の差が1.5 Vという意味です。

同じ電圧をかけても、つなぐ物によって流れる電流は違います。この流れにくさが抵抗で、単位はΩ(オーム)です。1 Vをかけて1 Aが流れる物の抵抗が、1 Ωです。

しくみ② オームの法則

多くの金属では、かける電圧を2倍にすると、流れる電流もちょうど2倍になります。電流は電圧に比例し、その割合を決めるのが抵抗です。この関係を、ドイツの物理学者オームが1827年に発表しました(ブリタニカ百科事典)。オームの法則と呼びます。

言葉で書くと「電圧 = 電流 × 抵抗」です。電圧をV、電流をI、抵抗をRと書いて、V = IRとも表します。割り算に直すと「電流 = 電圧 ÷ 抵抗」で、どれか2つがわかれば、残りの1つが計算できます。

1.5ボルトの乾電池に100オームの抵抗をつなぐと、1.5÷100で0.015アンペア、つまり15ミリアンペアの電流が流れる 乾電池に抵抗を1本つなぐ + 1.5 V 100 Ω 電流 15 mA 電流 = 電圧 ÷ 抵抗 1.5 ÷ 100 = 0.015 A
四角の記号が抵抗(日本の規格で決められた図記号)。矢印は電流の向き(電子が動く向きとは逆と決められている)。省略していること: 電池の中の抵抗と、導線の抵抗。

例で確かめます。1.5 Vの乾電池に、100 Ωの抵抗をつなぎます。流れる電流は1.5 ÷ 100 = 0.015 A、つまり15 mAです。抵抗を2倍の200 Ωにすると、電流は半分の7.5 mAになります。

ただし、どんな物でも比例するわけではありません。電流を一方向にだけ流す部品(ダイオード)やLEDは、ある電圧を超えると電流が急に増えます(「ダイオードとは?」)。金属でも、温度が上がると抵抗が少し増えます。オームの法則は、決まった条件でよく当てはまる決まりと考えてください。

しくみ③ 抵抗の大きさを決める3つのもの

電線のような物の抵抗は、3つのもので決まります。長いほど大きく、太いほど小さくなります。長い道は通り抜けにくく、太い道はたくさんの電子が並んで通れるからです。

3つ目は材料です。同じ形でも、材料によって電気の通しやすさは大きく違います。この材料ごとの通しにくさを、抵抗率と呼びます。20 ℃の抵抗率は、銅を1とすると、アルミニウムは約1.6倍、ヒーターに使うニクロムは約60倍です。米国ジョージア州立大学の物理の解説の表から計算しました。

式で書くと、抵抗 = 抵抗率 × 長さ ÷ 断面積 です。断面積は、線を輪切りにしたときの切り口の面積です。電気の通しやすさで、物は導体・半導体・絶縁体に分けられます(導体・半導体・絶縁体の違い)。

抵抗器の使い道① LEDの電流を決める

抵抗器は、決まった抵抗の値をもつように作った部品です。いちばん多い仕事は、流れる電流をちょうどよい大きさに抑えることです。代表的な例が、LEDといっしょに使う抵抗です。

LEDは、ある電圧を超えると電流が急に増えるので、電源に直接つなぐと電流が流れすぎて壊れます(「LEDはなぜ光る?」)。そこで抵抗を一列に(直列に)つなぎ、電流を決めます。このとき、LEDにかかる電圧はほぼ一定とみなせます。

抵抗器の2つの使い道。5ボルトの電源で、LEDに約2ボルト、300オームの抵抗に3ボルトがかかり、10ミリアンペアが流れる。10キロオームの抵抗2本で5ボルトを分けると、間の点は2.5ボルトになる ① LEDの電流を決める 5 V 300 Ω LED 3 V 約2 V 3 V ÷ 300 Ω = 10 mA ② 電圧を半分に分ける 5 V 10 kΩ 10 kΩ 0 V 2.5 V
上は電池とLEDと抵抗を一つの輪につないだ回路、下は電源の5 Vと0 Vの間に抵抗を2本並べた回路。省略していること: LEDの電圧が電流や品種で少し変わること、下の回路の出力に別の回路をつなぐと電圧が下がること。

数字で計算してみます。電源は5 V、赤いLEDの電圧は約2 Vとします(ロームの赤いLEDの代表値は、20 mAで1.9 V)。流したい電流は10 mAです。抵抗にかかるのは、残りの5 − 2 = 3 Vです。

オームの法則から、抵抗 = 3 V ÷ 0.01 A = 300 Ωです。電子部品の販売店の資料も、同じ考え方で計算しています(秋月電子通商)。実際には、売られている値の中から近いものを選びます(LEDの抵抗計算ツール)。

抵抗器の使い道② 電圧を分ける

抵抗を2本、一列につないで電源につなぐと、2本には同じ電流が流れます。それぞれにかかる電圧は「電流 × 抵抗」なので、抵抗の値の割合で分かれます。同じ値の2本なら、ちょうど半分ずつです。

5 Vに10 kΩ(1万Ω)を2本つなぐと、間の点は2.5 Vになります。流れる電流は、5 V ÷ 2万Ω = 0.25 mAです。この回路を分圧回路と呼び、電池の電圧を測る回路や、センサの信号を読む回路で使われます(分圧回路の計算ツール)。

直列と並列のつなぎ方による違いは、直列接続と並列接続の違いで表にまとめています。

電気が熱になるしくみ

電子は、金属の中を進むとき、原子のゆれなどにぶつかりながら進みます。そのたびに、電気のエネルギーの一部が、原子をゆらすエネルギー、つまり熱に変わります。これが、抵抗で熱が出るしくみです。ここでは、原子の世界の話をかなり単純にしています。

1秒あたりに使われるエネルギーを電力と呼び、単位はW(ワット)です。電力は「電圧 × 電流」で求められます。電圧は「電流 × 抵抗」なので、電力は「電流 × 電流 × 抵抗」とも書けます。電流と抵抗から熱を求めるこの関係は、英国のジュールが1840年に見つけました(ブリタニカ百科事典)。

LEDの例では、抵抗の電力は3 V × 0.01 A = 0.03 W(30 mW)です。リード線付きの抵抗器には、1/4 W(0.25 W)まで使える品種がよくあります(KOAのデータシート)。この「ここまで使える」という上限を、定格と呼びます。30 mWは定格の8分の1ほどなので、この抵抗はほとんど温かくなりません。

電流が2倍になると、熱は4倍になります。電流の2乗で効くからです。大きな電流が流れる所では、わずかな抵抗でも大きな熱が出ます。

チップが熱くなる理由

チップの中のトランジスタは、電気を通したり止めたりするスイッチです(「トランジスタとは?」)。ただし、通しているときでも、抵抗はゼロになりません。この残る抵抗をオン抵抗と呼びます。

チップの中では、たくさんのトランジスタが、1秒に何億回も切り替わります。切り替わるたびに、配線などに電気をためたり、ためた電気を逃がしたりします。そのとき流れる電流が、オン抵抗や配線の抵抗を通って熱になります。止まっているトランジスタからも、わずかな電流が漏れます。この内訳は、静的消費電力と動的消費電力の違いでくわしく扱います。

チップが使った電力は、最後はほとんどすべて熱になります。たとえば、NVIDIAが2022年に発表した、AIの計算用のチップH100があります。そのサーバー用のSXM版は、最大700 Wを使う設計です(NVIDIAの製品情報)。小さめの電気ストーブ1台分に近い熱が、1つの部品から出ることになります。冷やし方も、この熱を逃がせるように設計します。

熱が逃げる道にも、オームの法則と同じ形の考え方があります。熱の逃げにくさを熱抵抗と呼び、「温度の上がり方 = 熱抵抗 × 電力」で見積もります(ロームの資料)。電圧の代わりに温度の差、電流の代わりに熱の流れを考えるのです(接合温度の計算ツール)。熱をどう逃がすかは「チップの冷却とは?」で説明しています。

チップの中の配線と抵抗

チップの中では、トランジスタどうしを金属の細い配線がつないでいます。配線は何層にも重なっていて、下の層ほど細く、上の層ほど太くなります(多層配線)。1997年にIBMが発表してから、配線の金属は主にアルミニウムから銅に替わりました(IBMの歴史のページ)。

しくみ③のとおり、配線の抵抗は断面積に反比例します。幅と厚さをどちらも半分にすると、断面積は4分の1になり、同じ長さの抵抗は4倍になります。チップを細かくするほど、配線の抵抗は増えていくのです。

同じ長さの配線で、幅と厚さを半分にすると断面積は4分の1になり、抵抗は4倍になる。ごく細い配線では、銅そのものも電気を通しにくくなる 切り口が小さいほど抵抗が大きい 太い配線 幅・厚さ半分 断面積 1 断面積 1/4 抵抗 1 抵抗 4倍 ごく細いと、銅も通しにくくなる
配線を輪切りにした切り口を、正面から見たイメージ(長さは同じとする)。省略していること: 配線を囲む薄い膜(バリアメタル)と、まわりの絶縁膜。この膜は銅より電気を通しにくく、実際の抵抗をさらに大きくします。

数字で比べてみます。家の配線に使うような、直径1.6 mmの銅線の1 mm分の抵抗は、約0.0000085 Ωです。チップの中の、幅50 nm・厚さ100 nmの銅の配線では、1 mm分で約3,400 Ωになります。nm(ナノメートル)は、100万分の1 mmです。同じ長さでも、約4億倍です。どちらも、表にある銅の抵抗率で計算しました。

ただし、実際の細い配線の抵抗は、この計算よりさらに大きくなります。表の値は、大きな銅のかたまりの値だからです。銅の中の電子は、ぶつかるまでに平均約40 nm進みます(米国レンセラー工科大学のGallの論文)。配線の幅がこれと同じくらいか細いと、電子が配線の表面や、金属の小さな結晶の境目にぶつかる回数が増えます。そのぶん、銅そのものが電気を通しにくくなるのです。2018年のIntelの「10 nm」世代では、いちばん細い配線の間隔が36 nmでした(TechInsights)。間隔は、線1本とすき間1つを合わせた幅です。線の幅は、その半分ほどです。世代の名前の数字は、寸法そのものではありません(「「2nm」は何の長さ?」)。

そのため、ごく細い所には、銅以外の金属も使われ始めています。たとえばIntelの「10 nm」世代は、いちばん下の2層の配線にコバルトを使いました(Intelの2017年の論文)。銅とほかの金属の違いは、銅・コバルト・ルテニウム配線の違いで表にまとめています。配線の抵抗は、信号の遅れの原因にもなります(「時定数RCとは?」)。

電源の配線で起きること

チップに電気を届ける電源の配線にも、抵抗があります。電流が流れると、オームの法則のぶんだけ電圧が途中で下がります。この電圧の低下をIRドロップと呼びます。Iは電流、Rは抵抗を表す記号です。トランジスタに届く電圧が下がると、動作が遅くなったり、誤動作したりします。

説明のための数字で考えます。電源が1 Vのチップに、100 Aが流れるとします。通り道の抵抗が0.001 Ωなら、下がる電圧は100 × 0.001 = 0.1 Vです。わずか1000分の1 Ωでも、電圧の1割が失われます。電圧が低く電流の大きいチップほど、配線の抵抗が効いてくるのです。

対策の一つが、電源の配線をチップの裏側に回し、表側の細い配線を通らずに電気を届ける裏面電源供給です。Intelは、18Aと呼ぶ世代でこの方式を使い、電圧の低下を大きく減らせると説明しています(Intelの資料)。

電流が細い配線に集中すると、別の問題も起きます。流れる電子に押されて、金属の原子が少しずつ動いてしまうのです。長い間に、配線にすき間ができて切れたり、盛り上がった所がとなりとくっついたりします。ドイツのドレスデン工科大学のLienigらが解説しています。この現象をエレクトロマイグレーションと呼び、温度が高いほど速く進みます(「アレニウスの式とは?」)。

よくある誤解

誤解: 電流は抵抗やLEDを通ると使われて減る

実際は、一つの輪になった回路では、どこでも同じ大きさの電流が流れています。使われて減るのは、電流ではなく電気のエネルギーです。抵抗を通るたびに電圧が下がり、その分のエネルギーが熱や光に変わります。

誤解: 抵抗が大きいほど、必ず熱くなる

実際は、条件によって逆になります。同じ電流を流すなら、熱は「電流 × 電流 × 抵抗」なので、抵抗が大きいほど熱くなります。同じ電圧をかけるなら、抵抗が小さいほど電流が増え、熱が増えます。電源のプラスとマイナスを直接つなぐ(ショートさせる)と危ないのは、このためです。

誤解: 電子は電線の中を光の速さで走っている

実際は、電子が平均して進む速さはとても遅いです。直径約2 mmの銅線に20 Aを流しても、1秒に約0.5 mmです(米国の大学向けの教科書OpenStax)。速く伝わるのは、電子を押す力のほうです。だからスイッチを入れると、遠くの電灯もすぐにつきます。

数字で見る

数字何の数字か
1 Ω1 Vをかけて1 Aが流れるときの抵抗
15 mA1.5 Vの乾電池に100 Ωをつないだときの電流
300 Ω5 Vの電源で、赤いLEDに10 mAを流すための抵抗
約60倍ニクロムの抵抗率。銅を1としたとき(20 ℃)
約4億倍同じ1 mmの長さで、チップの細い配線(50 nm × 100 nm)と直径1.6 mmの銅線の抵抗の比(表の抵抗率から計算。実際はさらに大きい)
約40 nm銅の中の電子が、ぶつかるまでに進む平均の距離
最大700 WNVIDIA H100(SXM版、2022年発表)が使う電力の上限(熱設計電力)
1827年オームが法則を発表した年

チップの中の1 mmの配線が数千Ωにもなる、というのは意外かもしれません。それでもチップが動くのは、多くの配線がとても短く、流れる電流も小さいからです。長い配線や電源の配線には、上の層の太い配線を使います。

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この分野の問題: 電気回路・電磁気の基礎

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