オペアンプとは? 小さな信号を正確に増やすしくみ

約12分 · 更新: 2026年10月23日

オペアンプは、2つの入力の電圧の差を、とても大きな倍率で大きくするICです。そのままでは倍率が大きすぎて扱えないので、出力の一部を入力に戻す「負帰還」というつなぎ方で使います。すると、全体の倍率が外につないだ2本の抵抗の比で決まり、小さな信号を正確に大きくできます。

この記事でわかること

  • オペアンプが何をする部品か
  • 倍率が大きすぎて不正確なのに、なぜ正確に増やせるのか(負帰還)
  • 反転増幅・非反転増幅・ボルテージフォロワの考え方
  • 電源・速さ・ずれなど、実物の限界

前提知識: 電圧・電流・抵抗の大まかな意味。アナログの信号とは何かを知っていると読みやすくなります(「アナログ半導体とは?」)。

身近なところでは

スマホのマイクが声から作る電圧は、とても小さなものです。体温計や体重計のセンサも同じで、そのままでは数字に直せません。まず、信号の形を保ったまま大きくする必要があります。

この「大きくする」部分で広く使われる部品が、オペアンプです。小さな部品として単体で売られるほか、センサ用のICやマイコンの中にも、同じ働きの回路が入っています。オーディオ機器、計測器、工場の機械など、アナログの信号を扱う多くの機器で使われています。

しくみ1: 2つの入力の「差」を大きくする

オペアンプは、多くのトランジスタなどを1つの小さなチップにまとめた部品、つまりICの一種です(「集積回路(IC)とは?」)。入力が2つ、出力が1つあり、ほかに電気をもらうための電源の端子があります。

2つの入力には「+」と「−」の印がついています。オペアンプは、+の入力の電圧から−の入力の電圧を引いた差を、何倍にもして出力します。2つの入力の電圧が同じなら、差はゼロなので、出力もほぼゼロです。

オペアンプの記号: +と−の2つの入力、1つの出力、上下2本の電源。出力は2つの入力の差を大きくしたもの + − +入力 −入力 出力 電源+ 電源− 出力 = 入力の差 × 約20万
三角形がオペアンプの記号。帰還をかけないときの倍率は、例えば広く使われるLM741で代表値約20万倍。省略していること: 実際の部品の端子の並び、回路図では電源の線を省いて描くことが多い点。

名前のオペアンプは、英語のoperational amplifier(演算増幅器)を縮めたものです。米国のラガツィーニらが、1947年の論文でこの名前を使いました。当時は、電圧で足し算や積分などの計算をする「アナログ計算機」の部品だったので、「演算」の名がついています。

しくみ2: 倍率が大きすぎて、しかも不正確

増幅器が信号を何倍にするかを、利得(ゲイン)と呼びます(dBでの表し方は「デシベルとは?」)。オペアンプを単体で使ったときの利得は、とても大きな値です。広く使われるLM741という製品では、代表値が約20万倍です。

ところが、この倍率はあまり当てになりません。部品の説明書をデータシートと呼びます。LM741を作る米国のテキサス・インスツルメンツ(TI)のデータシートを見てみます。25 ℃で保証される最小値は5万倍で、温度が変わればさらに下がります。同じ型番でも4倍の幅がありうる倍率では、「ちょうど10倍に増やしたい」という目的に使えません。

大きすぎることも問題です。LM741を±15 Vの電源で使うと、出力は約±14 Vまでしか出せません。入力の差がわずか0.1 mV(1万分の1 V)でも、20万倍すれば20 Vで、出力は電源の端に張りついてしまいます。この状態を、飽和と呼びます。

しくみ3: 負帰還で、倍率を抵抗で決める

そこで、出力の一部を−の入力に戻すようにつなぎます。出力が上がりすぎると、戻ってきた電圧が入力の差を小さくするので、出力は下がります。下がりすぎれば、逆に上がります。このように結果を入力に戻し、ずれを打ち消す向きに働かせるつなぎ方を、負帰還と呼びます。

出力は、入力の差がほとんどゼロになるところで落ち着きます。このとき全体の倍率は、オペアンプ自身の倍率ではなく、戻す割合で決まります。例えば出力の10分の1を戻すと、全体の倍率はほぼ10倍です。戻す割合は2本の抵抗の比で決まり、抵抗は値の正確なものを作りやすいので、倍率も正確になります。

どれくらい正確か、計算してみます(当サイトの計算)。出力の10分の1を戻すとき、オペアンプ自身の倍率が20万倍なら、全体は約9.9995倍です。5万倍なら約9.998倍です。自身の倍率が4倍違っても、全体の倍率の違いは約0.015%にすぎません。

大きくて不正確な倍率を手放して、小さくて正確な倍率を手に入れる、という取り引きです。負帰還の増幅器は、1927年に米国のベル研究所のハロルド・ブラックが考えました。長い電話線の途中で声を増幅する装置の、ひずみを減らすためでした。

しくみ4: 2つの「黄金律」は、簡単にした約束

負帰還をかけたオペアンプの回路は、2つの約束を使うと簡単に考えられます。米国の電子回路の教科書『The Art of Electronics』が、「黄金律」と呼んだものです。

  1. 2つの入力の電圧は、ほぼ等しくなる。 負帰還が、入力の差をほとんどゼロにするからです。電線でつないだわけではないのに、つないだように扱えるので、仮想短絡(イマジナリーショート)と呼びます。
  2. 入力の端子には、電流がほとんど流れ込まない。 LM741の入力に流れる電流は、代表値で約0.08 µA(マイクロアンペア)とごくわずかです。

どちらも、ここでは話を簡単にするために「ゼロ」とみなしています。実際には、出力10 V・倍率20万倍なら、入力の差は約50 µV(0.00005 V)残ります。また、1つめの約束が使えるのは、負帰還をかけて、出力が電源の範囲の中にあるときだけです。2つめは入力の端子そのものの性質なので、帰還がなくてもほぼ成り立ちます。

しくみ5: 非反転増幅回路と反転増幅回路

2つの約束を使って、代表的な増幅回路を見てみます。まず、入力の信号を+の入力に入れる回路です。出力を2本の抵抗で分けて、その一部を−の入力に戻します。出力と入力の向きが同じなので、非反転増幅回路と呼びます。

非反転増幅回路: 入力を+に入れ、出力をR2とR1で分けて−に戻す。倍率は1+R2÷R1 + − 入力 出力 R2 戻す R1 倍率 = 1 + R2 ÷ R1 例: R1=1k、R2=9kで10倍
色の線が、出力の一部を−の入力に戻す道。R1の下の記号は、電圧の基準(0 V)につなぐ印。kは抵抗の値の単位kΩ(キロオーム)。省略していること: オペアンプの電源の線。

倍率の考え方は、こうです。R1とR2の2本の抵抗は、出力の電圧を抵抗の比で分け、その電圧を−の入力に渡します。+の入力には、信号そのものが入っています。仮想短絡により、この2つは等しくなります。

R1が1 kΩ、R2が9 kΩなら、分けた電圧は出力の10分の1です。それが入力と等しいので、出力は入力の10倍です。式にすると、倍率は「1+R2÷R1」です。

この回路の入力は、電流をほとんど吸い込みません。そのため、弱い電流しか出せないセンサにつないでも、センサの電圧を乱しにくいのが長所です。

次は、+の入力を0 Vにつなぎ、信号を抵抗R1を通して−の入力に入れる回路です。出力から−の入力へは、R2で戻します。出力は入力と上下が逆の向きになるので、反転増幅回路と呼びます。

反転増幅回路: 入力をR1を通して−に入れ、R2で出力から−に戻す。+は0 V。倍率は−R2÷R1 − + 入力 R1 ほぼ0 V R2 出力 倍率 = −R2 ÷ R1 例: R1=10k、R2=100kで−10倍 −は、上下が逆になる印
+の入力を0 Vにつなぐと、仮想短絡で−の入力もほぼ0 Vになる。色の線が戻す道。省略していること: オペアンプの電源の線。

こちらの倍率の考え方です。仮想短絡により、−の入力もほぼ0 Vになります。入力からR1を通って流れてきた電流は、オペアンプに入れないので、すべてR2を通ります。

例えば、入力が0.1 V、R1が10 kΩ、R2が100 kΩとします。R1には、0.1 V÷10 kΩで10 µAの電流が流れます。同じ電流が100 kΩのR2を通ると、R2の両端に1 Vの差ができます。電流は0 Vの点から出力へ向かうので、出力は0 Vより1 V低い−1 Vです。一般に、倍率は「−R2÷R1」になります。

反転増幅回路では、入力から見ると、R1を通して電流が流れ込みます。抵抗の値と倍率の関係は、オペアンプの増幅率の計算ツールで試せます。

しくみ6: 倍率1倍の「ボルテージフォロワ」

非反転増幅回路で、出力をそのまま−の入力につなぐと、倍率は1倍になります。この回路をボルテージフォロワと呼びます。出力が入力に「ついていく(フォロー)」からです。

1倍では意味がないように見えますが、役に立ちます。入力は電流をほとんど吸い込まず、出力は電源から電流を出せるからです。電気を受け取って使う側の回路を、負荷と呼びます。例えば、10 Vを10 kΩの抵抗2本で分けると、5 Vができます。そこに10 kΩの負荷をつなぐと、約3.3 Vに下がってしまいます(当サイトの計算)。

間にボルテージフォロワを入れれば、5 Vのまま負荷に渡せます。前の回路は電流を取られず、負荷には必要な電流が届くからです。このように、前と後ろの回路を切り離す使い方を、バッファと呼びます。

分圧と負荷の関係は、分圧回路の計算ツールで確かめられます。

しくみ7: 帰還をかけないと「比べる」回路になる

負帰還をかけずに使うと、入力の差がわずかでも、出力は電源の上か下の端に張りつきます。どちらに張りつくかで、2つの入力のどちらが高いかがわかります。電圧の大小を比べて、結果を2通りの出力で示す回路を、コンパレータと呼びます。

オペアンプでも比べることはできますが、張りついた状態から戻るのに時間がかかり、出力の変わる速さにも限りがあります。そのため、比べる用途には、すばやく切り替わるよう作った専用のコンパレータを使うのがふつうです。違いは「オペアンプとコンパレータの違い」で表にしています。

どこで使われているか

  • センサの信号を大きくする: 温度・光・圧力などのセンサの小さな電圧を、測りやすい大きさにします。
  • 音声: マイクの信号を大きくしたり、ヘッドホンを鳴らしたりする回路です。
  • フィルタ: 抵抗やコンデンサと組み合わせ、要らない周波数(1秒間に揺れる回数)の成分を弱めます。コンデンサが周波数で電流の通しやすさを変えることを利用します(「交流と直流の違いとは?」)。
  • ADコンバータの手前: 電圧を数字に変えるADコンバータの多くは、測る瞬間に入力から電気をまとめて引き込みます。信号を乱さないよう、手前にオペアンプを置いて電気を補います。

しくみ8: 実物のオペアンプの限界

黄金律は理想の姿です。実物には、次のような限界があります。数字は、1968年に生まれた古い型の流れをくむLM741の例です。今は、用途に合わせて、もっと速いものや、ずれの小さいものが作られています。

  • 電源の範囲を超えられない: ±15 Vの電源なら、出力は約±14 Vまでです。電源の端近くまで出せるように作った製品を、レール・ツー・レールと呼びます。
  • 倍率を上げると、速い信号を増やせない: 多くのオペアンプでは、倍率と、その倍率を保てる周波数の上限の積がほぼ一定です。この積を利得帯域幅積と呼び、741では約1 MHz(1秒に100万回の揺れ)です。倍率を100倍にすると、上限は約10 kHz(1秒に1万回)に下がります(目安)。
  • 入力に小さなずれがある: 中のトランジスタのわずかな違いから、入力の差がゼロでも出力がゼロになりません。このずれを「入力にこれだけの差があるのと同じ」という形で表した値を、入力オフセット電圧と呼びます。LM741では代表値1 mV、最大5 mVです。1 mVのずれなら、倍率100倍の回路で出力が約0.1 Vずれます。
  • 出力の変わる速さに上限がある: 出力の電圧が1 µs(100万分の1秒)に変われる量の上限を、スルーレートと呼びます。LM741では0.5 V/µsで、出力を10 V動かすには20 µsかかります。

オペアンプの歩み

最初は真空管で作られていたオペアンプは、1960年代にICになりました。米国のフェアチャイルド社が1964年にμA702を、1965年にμA709を出しました。μA709で、アナログのICが大量に使われるようになります。1968年には、デビッド・フラガーが設計したμA741が出ます。米国の計算機歴史博物館は、これを史上最も普及したオペアンプと紹介しています。

μA741は、回路が揺れ続ける(発振する)のを防ぐコンデンサを、チップの中に入れたのが特徴です。外に部品を足さなくても安定して使えるので、扱いやすくなりました。その流れをくむ741は、今も大学の実験や教科書の例によく使われます。

よくある誤解

誤解: オペアンプは、信号のエネルギーを生み出して大きくしている

実際は、出力のエネルギーは電源から来ています。オペアンプは、入力の小さな信号に合わせて、電源から取り出す電気の量を調節しているだけです。だから、出力は電源の電圧を超えられません。「増幅」という言葉が、信号そのものがふくらむように聞こえるので、誤解されやすいのです。

誤解: 2つの入力はいつも同じ電圧になる

実際は、「同じになる」のは、負帰還をかけ、出力が電源の範囲の中にあり、信号が速すぎないときだけです。コンパレータのように帰還をかけない使い方や、出力が飽和したときには、2つの入力の電圧はまったく違います。黄金律は計算を簡単にする約束で、自然の法則ではありません。

誤解: 増幅の正確さは、オペアンプ自身の倍率で決まる

実際は、負帰還をかけた回路の倍率は、主に2本の抵抗の比で決まります。オペアンプ自身の倍率が大きいことは、抵抗の比どおりに動かすための「余力」として効いています。そのため、精度の高い回路では、抵抗の精度も同じくらい大切です。

数字で見る

項目数字ひとこと
帰還なしの倍率約20万倍LM741の代表値。最小は5万倍
10倍の回路の倍率の違い約0.015%自身の倍率が5万倍と20万倍のとき(当サイトの計算)
入力に流れる電流約0.08 µA741の例
利得帯域幅積約1 MHz741の例。100倍なら約10 kHz
スルーレート0.5 V/µsLM741。10 V動くのに20 µs
入力オフセット電圧1 mVLM741の代表値。最大5 mV

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この分野の問題: アナログ・電子回路

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