導体・半導体・絶縁体の違い:バンドギャップ・抵抗率・温度特性を比較

導体・半導体・絶縁体の違いは、電気を運べる電子がどれだけあるかで決まり、それはバンド構造で説明できます。金属は伝導帯が電子で部分的に満たされていて、もともと多くの自由電子があります。絶縁体はバンドギャップが大きく、室温では電子がほとんど伝導帯に上がれません。半導体はその中間で、バンドギャップが1 eV前後と適度なため、温度や光、不純物の添加によって電気の流れやすさを大きく変えられます。

項目導体(金属)半導体絶縁体
バンド構造伝導帯が電子で部分的に満たされている(または価電子帯と伝導帯が重なっている)価電子帯は満ちていて、伝導帯との間に適度なバンドギャップがある価電子帯は満ちていて、伝導帯との間に大きなバンドギャップがある
バンドギャップの目安なし1 eV前後のものが多い(Siは約1.12 eV、Geは約0.66 eV、GaAsは約1.42 eV)。SiCやGaNのように3 eVを超えるワイドバンドギャップ半導体もある大きい(SiO2は約9 eV)
室温の抵抗率の目安とても低い(銅で約1.7×10⁻⁶ Ω·cm)中間で、不純物の量によって何桁も変わる(純粋なシリコンで10⁵ Ω·cm台)とても高い(SiO2などで10¹⁴ Ω·cm以上)
電気を運ぶキャリア自由電子。1 cm³あたり10²²個以上(銅で約8.5×10²²個)伝導帯の電子と価電子帯の正孔の2種類。不純物の添加で密度を大きく変えられるほとんどない
温度が上がると抵抗が増える(格子振動による散乱が増えるため)純粋な半導体では抵抗が大きく下がる(熱で生まれるキャリアが急に増えるため)抵抗は非常に高いままだが、高温ではわずかに下がる
不純物を加えると導電率はほとんど変わらない(わずかに抵抗が増える)ごく少量で導電率が何桁も変わり、n型とp型を作り分けられる絶縁性を保つことが求められ、不純物や欠陥は漏れ電流の原因になる
光を当てるとほとんど変わらないバンドギャップより大きいエネルギーの光でキャリアが生まれ、電流が増える(光導電)可視光ではほとんど変わらない(SiO2は可視光を通す)
代表的な材料銅、アルミニウム、金、タングステンシリコン、ゲルマニウム、GaAs、SiC、GaNSiO2、窒化シリコン(Si3N4)、アルミナ(Al2O3)、樹脂
半導体デバイスでの役割配線、電極、コンタクト、ボンディングワイヤトランジスタやダイオードなど、電流を制御する部分ゲート絶縁膜、配線の間の層間絶縁膜、素子分離、保護膜

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

導体(金属)
電気を損失少なく運びたいとき。チップの中の配線や電極、パッケージのワイヤやリードに使います。
半導体
電流をオン・オフしたり、増幅したり、光と電気を変換したりしたいとき。トランジスタ、ダイオード、イメージセンサ、太陽電池などの本体になります。
絶縁体
電気を通したくないところを分けたいとき。MOSFETのゲート絶縁膜、配線どうしの間を埋める層間絶縁膜、隣のトランジスタとの素子分離に使います。

よくある質問

半導体はなぜ「半分の導体」と呼ばれるのですか?

抵抗率が導体(金属)と絶縁体の中間にあるからです。ただし大事なのは値そのものより、不純物の添加や温度、光、電界によって電気の流れやすさを大きく変えられる点で、この性質がトランジスタやダイオードの動作のもとになっています。

金属と半導体で、温度による抵抗の変化が逆になるのはなぜですか?

金属は自由電子の数がほぼ一定で、温度が上がると格子振動による散乱が増えるので抵抗が上がります。純粋な半導体では、温度が上がるとバンドギャップを越えて励起されるキャリアが指数関数的に増え、散乱の増加を上回るので抵抗が下がります。

バンドギャップが何eV以上なら絶縁体ですか?

はっきりした境界はありません。室温でキャリアがほとんどない、バンドギャップの大きな材料を絶縁体と呼ぶことが多いですが、約5.5 eVのダイヤモンドや約4.5〜4.9 eVのGa2O3のように、不純物を加えて電気を流せるものは、半導体(ウルトラワイドバンドギャップ半導体)として扱われます。

シリコンは導体ですか、絶縁体ですか?

半導体です。純粋なシリコンの抵抗率は室温で10⁵ Ω·cm台と高めですが、リンやホウ素をわずかに加えるだけで何桁も下がります。たとえば電子密度1×10¹⁶ cm⁻³のn型シリコンは約0.5 Ω·cmです。

理解度チェック

室温におけるシリコン(Si)のバンドギャップに最も近い値はどれか。

  1. A約0.66 eV
  2. B約1.12 eV
  3. C約3.4 eV
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正解:B. 約1.12 eV

シリコンのバンドギャップは室温で約1.12 eVで、吸収できる光の波長の上限は約1.1 µm(1240÷1.12)です。約0.66 eVはゲルマニウムで、ギャップが小さいぶん高温で漏れ電流が増えやすく、約3.4 eVはGaNで、高耐圧・高温動作や青色LEDに向くワイドギャップ半導体です。シリコンはその中間で、良質な熱酸化膜(SiO2)を作れることと合わせてLSIの主役になりました。

次の材料のうち、バンドギャップが最も大きいものはどれか。

  1. Aシリコン(Si)
  2. Bゲルマニウム(Ge)
  3. C二酸化シリコン(SiO2)
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正解:C. 二酸化シリコン(SiO2)

SiO2のバンドギャップは約9 eVと非常に大きく、良好な絶縁体です。シリコン(約1.12 eV)、ゲルマニウム(約0.66 eV)とは桁が違います。ギャップが大きいだけでなく、シリコン側との伝導帯のずれ(約3.1 eV)も大きいため、電子がゲート絶縁膜を越えにくくなっています。High-k材料(HfO2は約5.8 eV)は誘電率が高い代わりにギャップが小さく、漏れ電流とのバランスで選ばれます。

真性半導体の抵抗率の温度依存性として正しいものはどれか。

  1. A温度が上がると抵抗率が下がる
  2. B温度が上がると抵抗率が上がる
  3. C温度によらず抵抗率は一定である
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正解:A. 温度が上がると抵抗率が下がる

真性半導体では、温度が上がるとバンドギャップを越えて励起されるキャリアが指数関数的に増えるため、抵抗率は下がります(負の温度係数)。金属はキャリア数がほぼ一定で、格子振動による散乱が増えるため抵抗率が上がります。この性質を利用したのがサーミスタ(NTC)です。ただし不純物を添加したシリコンでは、常温付近ではキャリア数がほぼ一定のため、移動度の低下で抵抗がむしろ上がる範囲もあります。

  1. 真性半導体の温度を上げたとき、真性キャリア密度はどうなるか。
  2. シリコン原子1個がもつ価電子(最外殻電子)の数はいくつか。
  3. 室温におけるゲルマニウム(Ge)のバンドギャップに最も近い値はどれか。

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関連する用語の解説

バンドギャップ
価電子帯の上端と伝導帯の下端とのエネルギー差。シリコンは室温で約1.12 eV。大きいほど高温・高電圧に強い。
真性キャリア密度
不純物を含まない半導体で、熱によって生じる電子と正孔の密度(niと書く)。シリコンでは室温で約1×10¹⁰ cm⁻³で、温度が上がると急激に増える。熱平衡では n × p = ni² が成り立つ。
移動度
電界をかけたときのキャリアの動きやすさ。シリコンでは電子の移動度が正孔より大きい。
フェルミ準位
電子がその準位を占める確率がちょうど1/2になるエネルギー。n型では伝導帯側に、p型では価電子帯側に寄る。

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