銅・コバルト・ルテニウム配線の違い:抵抗率・サイズ効果・バリア層・信頼性を比較

太い配線では、バルクの抵抗率が最も低い銅が最もよい材料で、現在も配線の大部分は銅です。ところが、線幅が数十nm以下になると、電子が配線の表面や結晶粒界で散乱されて抵抗率が上がり(サイズ効果)、銅に必要なバリア層も断面の多くを占めるようになります。コバルトやルテニウムは、バルクの抵抗率は銅の数倍ですが、電子の平均自由行程が短いので細くしても抵抗率が上がりにくく、バリア層を薄くできます。そのため、最も細い配線やコンタクト、ビアへの適用が進められています。

項目銅(Cu)コバルト(Co)ルテニウム(Ru)
バルクの抵抗率(室温、代表値)約1.7 µΩ·cm約6 µΩ·cm約7 µΩ·cm
電子の平均自由行程(代表値)約40 nmと長い10 nm前後かそれ以下と短い10 nm前後かそれ以下と短い
細い配線での抵抗率の上昇大きい。数十nm以下で表面・粒界散乱が増え、バルクの数倍になることもある銅より小さい銅より小さい
バリア層必要。TaN/Taなど数nmで側面と底を囲む薄いライナー(TiNなど)を使うが、銅より薄くできる絶縁膜に拡散しにくく、バリアを非常に薄くするか省ける可能性がある
融点(目安)約1085 ℃約1495 ℃約2334 ℃
エレクトロマイグレーション耐性対策が必要。上面のキャップ層やライナーで強化する銅より高い高い
加工・埋め込みダマシン法。シード層の上に電解めっきで埋める。ドライエッチングは難しいCVDやめっきで、細い穴や溝も埋めやすいCVDやALDで成膜できる。膜をつくってからエッチングで加工する方式も検討されている
使われる層中間層から上層までの、配線の大部分コンタクトやビアの埋め込み、最下層の一部の細い配線、銅配線のキャップやライナー最も細い配線やビアへの導入が研究・開発されている。ライナーにも使われる
材料の入手性豊富で安価銅より高価白金族の貴金属で、資源が少なく高価

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

銅(Cu)
線幅に余裕のある中間層・上層の配線。ここでは、バルクの抵抗率が最も低いという利点がそのまま効きます。
コバルト(Co)
トランジスタに近いコンタクトやビアなど、穴が非常に細く、銅ではバリアとシードの分だけ実効的な抵抗が上がる場所。銅配線の信頼性を上げるキャップやライナー。
ルテニウム(Ru)
線幅が十数nm以下の最も細い配線やビアの候補。バリアを省いた分まで導体に使えるので、細い配線では銅より実効的な抵抗が低くなる可能性があります。

よくある質問

バルクの抵抗率は銅が最も低いのに、なぜコバルトやルテニウムが検討されるのですか?

細い配線では、バルクの抵抗率よりも、表面や粒界での散乱とバリア層の厚さで実効的な抵抗が決まるからです。銅は平均自由行程が約40 nmと長いので、細くすると抵抗率が大きく上がり、数nmのバリアも必要です。コバルトやルテニウムは細くしても抵抗率が上がりにくく、バリアを薄くできるので、ごく細い配線では銅に近いか、それより低い抵抗になる可能性があります。

サイズ効果とは何ですか?

配線の幅や厚さが、電子の平均自由行程と同じくらいかそれ以下になると、配線の表面や結晶粒界で電子が散乱されやすくなり、抵抗率がバルクの値より上がる現象です。細い配線では結晶粒も小さくなるので、粒界での散乱がさらに増えます。

銅配線にバリアメタルが必要なのはなぜですか?

銅は絶縁膜やシリコンの中に拡散しやすく、シリコンに入るとトランジスタのリークや劣化の原因になり、絶縁膜の中では配線間の絶縁を悪くするからです。そのため、側面と底をTaN/Taなどのバリアメタルで囲み、上面を誘電体のキャップ膜で覆います。

銅の配線は、すべてほかの金属に置き換わりますか?

置き換わりません。線幅に余裕がある中間層や上層の配線では、バルクの抵抗率が最も低い銅が引き続き有利です。新しい材料は、トランジスタに近いコンタクトやビア、最も細い配線など、銅の弱点が目立つ場所から導入されます。

理解度チェック

Cu配線の幅が非常に細くなると、配線の実効的な抵抗率が上昇する主な理由はどれか。

  1. A配線の温度が下がるため
  2. B電子の表面散乱や粒界散乱が増え、抵抗の高いバリア層の占める割合も大きくなるため
  3. CCuが半導体に変わるため
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正解:B. 電子の表面散乱や粒界散乱が増え、抵抗の高いバリア層の占める割合も大きくなるため

配線幅が電子の平均自由行程(Cuで約40 nm)と同程度以下まで細くなると、配線の表面や結晶粒界での電子の散乱が増え、抵抗率がバルクの数倍にもなります。細い配線では結晶粒も小さくなるため、粒界散乱がさらに増えます。加えて、一定の厚さが必要なバリア層が断面に占める割合も大きくなります。そのため、平均自由行程の短いコバルトやルテニウム、モリブデンなどの新しい配線材料が検討・導入されています。

Cuに代わる微細配線の材料として検討されているルテニウム(Ru)などの金属の利点として正しいものはどれか。

  1. A細い配線でも抵抗率の上昇が比較的小さく、バリア層を薄くできる(または不要にできる)可能性がある
  2. B銅よりはるかに安価である
  3. C光を通すため検査しやすい
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正解:A. 細い配線でも抵抗率の上昇が比較的小さく、バリア層を薄くできる(または不要にできる)可能性がある

Cuは太い配線では抵抗率が低いものの、幅10〜20 nm台の極めて細い配線では表面や粒界での散乱が増え、数nmのバリア層も必要なため、実効的な抵抗が上がります。ルテニウムやモリブデンは電子の平均自由行程が数nm〜十数nmと短く、細くしても抵抗率の上昇が小さいうえ、絶縁膜への拡散が少なくバリアを薄くまたは不要にできる可能性があります。エッチングで加工できることも利点です。

Cu配線で、TaやTaNなどのバリアメタルを設ける主な目的はどれか。

  1. A配線の抵抗を下げる
  2. BCuが絶縁膜やシリコンへ拡散するのを防ぐ
  3. CCuの表面を酸化させる
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正解:B. Cuが絶縁膜やシリコンへ拡散するのを防ぐ

Cuは絶縁膜やシリコン中に拡散しやすく、シリコンに入ると深い準位をつくってトランジスタのリークや特性の劣化を招き、絶縁膜中では配線間の絶縁を悪くします。そのため、Cu配線の側面と底をTa/TaNなどのバリアメタル(数nm)で囲み、上面は誘電体のキャップ膜で覆って拡散を防いでいます。バリアメタルは絶縁膜との密着性を高め、Cuの結晶の向きをそろえる役割もあります。

  1. 室温での銅(Cu)の抵抗率に最も近い値はどれか。(バルクの値)
  2. Cu配線の上面にコバルトなどのキャップ層を設ける主な目的はどれか。
  3. エレクトロマイグレーションの説明として正しいものはどれか。

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関連する用語の解説

バリアメタル
銅配線の周りに設け、銅が絶縁膜やシリコンへ拡散するのを防ぐ薄い金属膜。TaやTaNなど。
エレクトロマイグレーション
電流によって配線の金属原子が移動する現象。ボイドやヒロックが生じ、断線や短絡の原因になる。
ダマシン法
絶縁膜に溝を掘って金属を埋め込み、余分な金属をCMPで除去して配線を形成する方法。Cu配線に用いる。
RC遅延
配線の抵抗(R)と容量(C)の積で決まる信号の遅れ。微細化で配線が細くなるほど大きくなり、性能を制限する。
MOL(ミドル・オブ・ライン)
トランジスタ(FEOL)と多層配線(BEOL)の間をつなぐ、コンタクトや局所的な配線の部分。微細化で抵抗が大きくなり、性能を制限する要因になっている。

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