デシベル(dB)とは? 掛け算を足し算に変える単位のしくみ

約13分 · 更新: 2026年10月23日

デシベル(dB)は、2つの電力の比を「10を何回掛けたか」で数え、それを10倍して表す書き方です。電力が10倍なら+10 dB、100倍なら+20 dB、2倍なら約+3 dB、半分なら約−3 dBです。掛け算が足し算に変わるので、強めたり弱めたりが何段も続く電子回路や無線の計算を、暗算できるほど簡単にできます。

この記事でわかること

  • dBが出てくる場所(Wi-Fiの電波、増幅器、フィルタ、雑音、ADC、音)
  • 10倍が+10 dB、2倍が約+3 dBになる理由
  • 電圧のdBだけ「20倍」の式を使う理由と、−3 dBの意味
  • dBmと、電波の強さを足し算で見積もる方法

前提知識: 掛け算と、10 × 10 × 10 = 1000 のような累乗(中学校の数学の程度)。電圧・電流・電力の大まかな意味。

身近なところでは

スマホやパソコンで、つないでいるWi-Fiの詳しい情報を表示すると、「−55 dBm」のような数字が出ることがあります。電波の強さを表す数字なのに、マイナスがついています。

電子部品の説明書にも、dBはあちこちに出てきます。増幅器の「20 dB」、フィルタの「−3 dB」、ADコンバータの「98 dB」などです。音の大きさを測る機械の表示も、dBです。

これらはすべて、同じ考え方の上にあります。dBは、量そのものではなく「何倍か」を、桁の数で表したものです。この記事では、まずdBが何を数えているかを見てから、電波や回路の計算でなぜ便利なのかを確かめます。

しくみ1: 比を「0の数」で数える

電子回路や無線では、とても大きさの違う量を同時に扱います。例えば、Wi-Fiの親機が0.1 W(100 mW)の電波を出すとします。壁の向こうのスマホに届くのは、その100億分の1より小さいこともあります。

こうした比を「10000000000分の1」と書くと、0の数を数え間違えます。そこで、比が10を何回掛けた数かだけを数えます。1000は10を3回掛けた数なので「3」、100万なら「6」です。この「10を何回掛けたか」を、数学では常用対数(以下、対数)と呼びます。

対数で表した比の単位を、ベル(B)と呼びます。電話の発明で知られるベルにちなむ名前です。ただ、ベルは目盛りとして粗いので、その10分の1のデシベル(dB)を使います。「デシ」は、デシリットルと同じ10分の1の意味です。この名前は1929年、米国の電話会社のグループ(ベル・システム)の技術誌で、W・H・マーティンが発表しました。

まとめると、電力の比のdBは「10を何回掛けたか」の10倍です。10倍なら+10 dB、100倍なら+20 dB、1000倍なら+30 dBになります。反対に、10分の1なら−10 dB、1000分の1なら−30 dBです。比が1、つまり変わらないときは0 dBです。

しくみ2: 2倍がなぜ約3 dBなのか

10倍は+10 dBでした。では2倍は何dBでしょうか。ここでは、2を10回掛けると1024で、ほぼ1000になることを使います。

2倍を10回くり返すと、約1000倍、つまり約+30 dBです。1回あたりにすると、その10分の1の約3 dBです。正確には3.01 dBですが、ふだんは「2倍で約3 dB」と覚えます。同じように、4倍は約6 dB、8倍は約9 dB、半分は約−3 dBです。

dBは掛け算を足し算に変えます。例えば20倍は「10倍して2倍」なので、10 dB + 3 dBで約13 dBです。1000倍して半分にすれば、30 dB − 3 dBで約27 dBです。0をたくさん並べる計算が、小さな数の足し引きで済みます。

dBと電力の比の対応: +10 dBで10倍、+3 dBで約2倍、0 dBは1倍、−3 dBで約半分。dBmなら0 dBmが1 mW、30 dBmが1 W、−30 dBmが1 µW dB 電力の比 dBmなら +30 1000倍 1 W +20 100倍 100 mW +10 10倍 10 mW +3 約2倍 約2 mW 0 1倍(同じ) 1 mW −3 約1/2 約0.5 mW −10 1/10 0.1 mW −20 1/100 10 µW −30 1/1000 1 µW 10 dB上がるごとに10倍 3 dB上がるごとに約2倍
dBの目盛りと電力の比。目盛りは等しい間隔で、10 dBごとに電力は10倍になる。右の列は、1 mWを基準にしたdBmで読んだときの電力。省略していること: 電圧の比(電圧では20 dBで10倍、6 dBで約2倍)。

しくみ3: 電圧のdBは「20倍」の式になる

ここまでは電力の比でした。電力とは、1秒あたりに使ったり送ったりする電気のエネルギーで、単位はW(ワット)です。回路では、電力より電圧のほうが測りやすいことがよくあります。

同じ抵抗に、2倍の電圧をかけたとします。流れる電流も2倍になります。電力は電圧と電流の掛け算なので、2 × 2 = 4倍です。電圧が10倍なら、電力は10 × 10 = 100倍になります。つまり電力は、電圧の2乗に比例します。

電圧が10倍のとき、電力は100倍で+20 dBです。同じ変化を、電圧で見ても電力で見ても同じdBで表したいので、電圧の比は「10を何回掛けたか」の20倍にします。「10を何回掛けたか」をlogと書きます。すると、電力の比はdB = 10 × log(比)、電圧の比はdB = 20 × log(比)です。

この決まりで、電圧が2倍なら約+6 dB(電力では4倍)、10倍なら+20 dBです。ただし、これがぴったり合うのは、比べる2か所の抵抗が同じときです。抵抗が違う場所どうしでは、電圧の比のdBと電力の比のdBは一致しません。

増幅器が信号を何倍にするかを、利得(ゲイン)と呼びます。説明書では、利得をdBで書くのがふつうです。電圧を100倍にする増幅器なら40 dBです。

しくみ4: −3 dBは「電力が半分」

必要な周波数だけを通し、ほかを弱める回路をフィルタと呼びます。フィルタの性能は、通す範囲の端を「出力が3 dB下がる周波数」で表すのがふつうです。この周波数をカットオフ周波数と呼びます。

−3 dBは、電力でいえば約半分です。では電圧では何倍でしょうか。電力は電圧の2乗に比例するので、電力が半分なら、電圧は「2乗すると半分になる数」倍です。それは約0.707倍(2の平方根分の1)です。

電圧が半分になるのは、−3 dBではなく約−6 dBです。「−3 dB = 半分」と覚えるときは、電力の話だと意識しておくと間違えません。抵抗とコンデンサだけの簡単なフィルタでは、この点の周波数が、時定数から計算できます(「時定数RCとは?」)。

しくみ5: dBm は「1 mWに対して何dBか」

dBだけでは、「何倍か」しかわかりません。そこで基準の量を決めておくと、dBで量そのものの大きさを表せます。1 mW(1000分の1 W)を基準にした電力の表し方を、dBmと呼びます。最後のmが、ミリワットを基準にした印です。

0 dBmは、基準と同じ1 mWです。10 dBmは10 mW、20 dBmは100 mW、30 dBmは1 Wです。反対に、−30 dBmは1 µW(100万分の1 W)、−90 dBmは1 pW(1兆分の1 W)です。1 mWより小さい電力は、dBmではマイナスになります。

スマホに届くWi-Fiの電波は、とても弱い電力です。親機のすぐそばで−30 dBmくらい、つながるかどうかの境目で−90 dBmくらいが目安です。区切り方は機器やアプリで違います。例えばAppleの説明(2026年時点)では、iPhoneは電波が−70 dBmより弱くなると、別の親機を探し始めます。冒頭の「−55 dBm」がマイナスなのは、1 mWよりずっと弱いからです。

基準を変えた書き方はほかにもあります。dBiは、どの向きにも同じ強さで電波を出す理想のアンテナに比べた、アンテナの性能です。音の大きさのdBにも、決まった基準があります(後で説明します)。dBの後ろの文字は、何を基準にしたかの印です。換算はdB・dBm換算ツールで試せます。

しくみ6: 電波の強さを足し算で見積もる

dBが本領を発揮するのは、強めたり弱めたりが何段も続くときです。例として、Wi-Fiの親機から10 m先のスマホに届く電波の強さを見積もります。数字は説明のための例で、話を簡単にするため、壁や反射はないものとします。

親機の送信回路は、20 dBm(100 mW)を出すとします。アンテナまでのケーブルで、半分が熱になって失われるとします。これは−3 dBです。

アンテナは、電波を全方向に均等に出さず、ある向きに集めることができます。集めた向きでは、理想のアンテナより強い電波になります。この度合いをアンテナの利得と呼び、ここでは+3 dBi(約2倍)とします。ほかの向きは弱くなるので、エネルギーが増えるわけではありません。

空間を進むと、どれだけ弱まるか

アンテナを出た電波は、球の形に広がりながら進みます。球の表面積は、半径の2乗に比例します。そのため、同じ面積で受け取れる電力は、距離が2倍で4分の1(−6 dB)、10倍で100分の1(−20 dB)です。

障害物のない空間でのこの弱まりを、自由空間伝搬損失と呼びます。理想のアンテナどうしの場合、弱まる比は「4 × 円周率 × 距離 ÷ 波長」の2乗です。波長は、電波の山から次の山までの長さです。式に波長が入るのは、理想のアンテナが電波を受け取る面積が、波長で決まるためです(ここでは深入りしません)。

2.4 GHz帯の電波の波長は、約12.5 cmです。距離10 mなら、4 × 3.14 × 10 ÷ 0.125で約1000、その2乗で約100万です。100万分の1は、0が6つなので−60 dBです。距離が100 mなら約−80 dBになります。

足し算でまとめる

スマホのアンテナの利得は0 dBi(1倍)とします。すると、スマホに届く強さは、20 − 3 + 3 − 60 = −40 dBmです。電力に直すと0.0001 mW、つまり1000万分の1 Wです。

同じ計算を掛け算ですると、100 mW × 2分の1 × 2 × 100万分の1 となります。答えは同じですが、0の数を追うのが大変です。dBなら、どの段でいちばん失っているかも、数字の大きさでひと目でわかります。

送信機の20 dBmから、ケーブルで3 dB弱まり、アンテナで3 dB強まり、10 mの空間で60 dB弱まって、スマホには約−40 dBmが届く 電波の強さ(dBm) 20 0 −20 −40 送信機 100 mW 20 dBm ケーブル −3 dB 17 dBm アンテナ +3 dB 20 dBm 空間10 m −60 dB スマホに届く 約−40 dBm 目盛り(dBm)
Wi-Fiの親機から10 m先のスマホまでの、電波の強さの見積もり(数字は説明のための例)。右向きの矢印は強める段、左向きは弱める段で、横の位置はdBmの目盛りに合わせている。3 dBの変化は60 dBに比べて小さいので、矢印がごく短い。省略していること: 壁・床・反射による弱まり、スマホのアンテナの利得(0 dBiとした)。

このように、送り手から受け手までの強めと弱めを積み上げる計算を、リンクバジェットと呼びます。実際の家では、壁や床、人の体でさらに弱まります。そのため、必要な強さに対して十分な余裕を見込んで設計します。

注意したいのは、足してよいのは「dBm + dB」だということです。dBmどうしを足しても意味はありません。例えば0 dBm(1 mW)の信号を2つ合わせると、2 mWで約3 dBmです。0 + 0 = 0 dBmではありません。

しくみ7: 雑音とSN比

回路の中では、電子が熱でばらばらに動くため、小さな電圧の揺れがいつも生まれます。こうした要らない揺れを雑音と呼びます(代表的なものが熱雑音)。信号が弱すぎると、雑音に埋もれて読み取れません。

そこで、信号の電力が雑音の電力の何倍かを見ます。この比をSN比(SNR)と呼び、dBで表します。SN比が30 dBなら、信号の電力は雑音の1000倍です。SN比が大きいほど、信号をはっきり読み取れます。

ADコンバータの「6 dB/ビット」

電圧を数字に変える回路を、ADコンバータ(ADC)と呼びます。ADCは、電圧を決まった段のどれかに丸めて数字にします。段の数は、使うビット(0か1かの桁)の数で決まり、16ビットなら65,536段です。丸めで生まれるずれ(量子化誤差)も、雑音の一種です。

ビットを1つ増やすと、段は2倍に細かくなり、丸めのずれの大きさは半分になります。電圧の比で2倍は約6 dBなので、1ビットごとにSN比が約6 dBよくなります。理想のADCに、扱える範囲いっぱいの大きさの正弦波(なめらかな波)を入れたとします。そのときのSN比は、約6.02 × ビット数 + 1.76 dBです。1.76 dBは、正弦波の形から来る小さな上乗せです(導き方は省きます)。

音楽CDの16ビットなら、6.02 × 16 + 1.76で約98 dBです。電力の比では、約64億倍にあたります。実際のADCでは、ほかの雑音やゆがみでこれより下がります。その実力をビット数に直した値がENOBです(「アナログ半導体とは?」、ADCのSN比・ENOBの計算ツール)。

音のdBは、聞こえる限界が基準

騒音計などが示す音の大きさのdBは、空気の圧力の揺れ(音圧)を比べたものです。基準は20 µPa(マイクロパスカル)です。1 kHz付近の音で、人がやっと聞き取れる程度の揺れにあたります。

同じ空気の中なら、音圧の2乗が音の強さ(電力にあたる量)に比例します。電圧と同じ関係です。そのため、音圧のdBも20倍の式で計算します。0 dBは「音がない」ではなく、「聞こえる限界と同じ揺れ」という意味です。

音の強さが10倍(+10 dB)になると、人には約2倍の大きさに聞こえる、という目安があります。これは物理の決まりではなく、人の感じ方を平均した経験則です。音の高さや大きさによって、当てはまり方は変わります。

よくある誤解

誤解: 0 dBは「ゼロ」「何もない」という意味

実際は、0 dBは「比が1」、つまり基準と同じという意味です。0 dBmは1 mWの電力があり、音の0 dBは聞こえるかどうかの境目くらいの音です。基準より小さければ、−40 dBmのようにマイナスにもなります。温度の0 ℃が「熱がない」ではないのと同じで、目盛りの0が基準の位置にあるだけです。

誤解: dBの数字が2倍になれば、電力も2倍になる

実際は、10 dBは10倍、20 dBは100倍です。dBの数字を2倍にすると、比は2乗になります。電力を2倍にするのは「+3 dB」です。dBは掛け算を足し算に変えた目盛りなので、目盛りの数字と量は比例しません。

誤解: dBは、ボルトやワットのような量の単位

実際は、dBは比を対数で表したもので、それだけでは量の大きさを表しません。ボルトのように物理量そのものを測る単位ではなく、国際単位系(SI)の単位でもありません。dBm、dBi、音のdBのように基準が決まって、初めて大きさがわかります。説明書でdBを見たら、何に対する比かを確かめましょう。

数字で見る

例dB比・大きさ
送信の強さ(この記事の例)20 dBm100 mW
2.4 GHz、10 m先までの弱まり−60 dB100万分の1
同じく100 m先まで−80 dB1億分の1
Wi-Fiの受信の目安の下限−90 dBm1 pW(1兆分の1 W)
理想の16ビットADCのSN比約98 dB電力で約64億倍

1 Wと1 pWの差は12桁、dBでは120 dBです。dBを使うと、こうした何桁もの違いを、3桁までの数字の足し引きで扱えます。これが、電子回路や通信の技術者がdBを手放さない理由です。

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