デシベル(dB)とは? 掛け算を足し算に変える単位のしくみ
デシベル(dB)は、2つの電力の比を「10を何回掛けたか」で数え、それを10倍して表す書き方です。電力が10倍なら+10 dB、100倍なら+20 dB、2倍なら約+3 dB、半分なら約−3 dBです。掛け算が足し算に変わるので、強めたり弱めたりが何段も続く電子回路や無線の計算を、暗算できるほど簡単にできます。
この記事でわかること
- dBが出てくる場所(Wi-Fiの電波、増幅器、フィルタ、雑音、ADC、音)
- 10倍が+10 dB、2倍が約+3 dBになる理由
- 電圧のdBだけ「20倍」の式を使う理由と、−3 dBの意味
- dBmと、電波の強さを足し算で見積もる方法
前提知識: 掛け算と、10 × 10 × 10 = 1000 のような累乗(中学校の数学の程度)。電圧・電流・電力の大まかな意味。
身近なところでは
スマホやパソコンで、つないでいるWi-Fiの詳しい情報を表示すると、「−55 dBm」のような数字が出ることがあります。電波の強さを表す数字なのに、マイナスがついています。
電子部品の説明書にも、dBはあちこちに出てきます。増幅器の「20 dB」、フィルタの「−3 dB」、ADコンバータの「98 dB」などです。音の大きさを測る機械の表示も、dBです。
これらはすべて、同じ考え方の上にあります。dBは、量そのものではなく「何倍か」を、桁の数で表したものです。この記事では、まずdBが何を数えているかを見てから、電波や回路の計算でなぜ便利なのかを確かめます。
しくみ1: 比を「0の数」で数える
電子回路や無線では、とても大きさの違う量を同時に扱います。例えば、Wi-Fiの親機が0.1 W(100 mW)の電波を出すとします。壁の向こうのスマホに届くのは、その100億分の1より小さいこともあります。
こうした比を「10000000000分の1」と書くと、0の数を数え間違えます。そこで、比が10を何回掛けた数かだけを数えます。1000は10を3回掛けた数なので「3」、100万なら「6」です。この「10を何回掛けたか」を、数学では常用対数(以下、対数)と呼びます。
対数で表した比の単位を、ベル(B)と呼びます。電話の発明で知られるベルにちなむ名前です。ただ、ベルは目盛りとして粗いので、その10分の1のデシベル(dB)を使います。「デシ」は、デシリットルと同じ10分の1の意味です。この名前は1929年、米国の電話会社のグループ(ベル・システム)の技術誌で、W・H・マーティンが発表しました。
まとめると、電力の比のdBは「10を何回掛けたか」の10倍です。10倍なら+10 dB、100倍なら+20 dB、1000倍なら+30 dBになります。反対に、10分の1なら−10 dB、1000分の1なら−30 dBです。比が1、つまり変わらないときは0 dBです。
しくみ2: 2倍がなぜ約3 dBなのか
10倍は+10 dBでした。では2倍は何dBでしょうか。ここでは、2を10回掛けると1024で、ほぼ1000になることを使います。
2倍を10回くり返すと、約1000倍、つまり約+30 dBです。1回あたりにすると、その10分の1の約3 dBです。正確には3.01 dBですが、ふだんは「2倍で約3 dB」と覚えます。同じように、4倍は約6 dB、8倍は約9 dB、半分は約−3 dBです。
dBは掛け算を足し算に変えます。例えば20倍は「10倍して2倍」なので、10 dB + 3 dBで約13 dBです。1000倍して半分にすれば、30 dB − 3 dBで約27 dBです。0をたくさん並べる計算が、小さな数の足し引きで済みます。
しくみ3: 電圧のdBは「20倍」の式になる
ここまでは電力の比でした。電力とは、1秒あたりに使ったり送ったりする電気のエネルギーで、単位はW(ワット)です。回路では、電力より電圧のほうが測りやすいことがよくあります。
同じ抵抗に、2倍の電圧をかけたとします。流れる電流も2倍になります。電力は電圧と電流の掛け算なので、2 × 2 = 4倍です。電圧が10倍なら、電力は10 × 10 = 100倍になります。つまり電力は、電圧の2乗に比例します。
電圧が10倍のとき、電力は100倍で+20 dBです。同じ変化を、電圧で見ても電力で見ても同じdBで表したいので、電圧の比は「10を何回掛けたか」の20倍にします。「10を何回掛けたか」をlogと書きます。すると、電力の比はdB = 10 × log(比)、電圧の比はdB = 20 × log(比)です。
この決まりで、電圧が2倍なら約+6 dB(電力では4倍)、10倍なら+20 dBです。ただし、これがぴったり合うのは、比べる2か所の抵抗が同じときです。抵抗が違う場所どうしでは、電圧の比のdBと電力の比のdBは一致しません。
増幅器が信号を何倍にするかを、利得(ゲイン)と呼びます。説明書では、利得をdBで書くのがふつうです。電圧を100倍にする増幅器なら40 dBです。
しくみ4: −3 dBは「電力が半分」
必要な周波数だけを通し、ほかを弱める回路をフィルタと呼びます。フィルタの性能は、通す範囲の端を「出力が3 dB下がる周波数」で表すのがふつうです。この周波数をカットオフ周波数と呼びます。
−3 dBは、電力でいえば約半分です。では電圧では何倍でしょうか。電力は電圧の2乗に比例するので、電力が半分なら、電圧は「2乗すると半分になる数」倍です。それは約0.707倍(2の平方根分の1)です。
電圧が半分になるのは、−3 dBではなく約−6 dBです。「−3 dB = 半分」と覚えるときは、電力の話だと意識しておくと間違えません。抵抗とコンデンサだけの簡単なフィルタでは、この点の周波数が、時定数から計算できます(「時定数RCとは?」)。
しくみ5: dBm は「1 mWに対して何dBか」
dBだけでは、「何倍か」しかわかりません。そこで基準の量を決めておくと、dBで量そのものの大きさを表せます。1 mW(1000分の1 W)を基準にした電力の表し方を、dBmと呼びます。最後のmが、ミリワットを基準にした印です。
0 dBmは、基準と同じ1 mWです。10 dBmは10 mW、20 dBmは100 mW、30 dBmは1 Wです。反対に、−30 dBmは1 µW(100万分の1 W)、−90 dBmは1 pW(1兆分の1 W)です。1 mWより小さい電力は、dBmではマイナスになります。
スマホに届くWi-Fiの電波は、とても弱い電力です。親機のすぐそばで−30 dBmくらい、つながるかどうかの境目で−90 dBmくらいが目安です。区切り方は機器やアプリで違います。例えばAppleの説明(2026年時点)では、iPhoneは電波が−70 dBmより弱くなると、別の親機を探し始めます。冒頭の「−55 dBm」がマイナスなのは、1 mWよりずっと弱いからです。
基準を変えた書き方はほかにもあります。dBiは、どの向きにも同じ強さで電波を出す理想のアンテナに比べた、アンテナの性能です。音の大きさのdBにも、決まった基準があります(後で説明します)。dBの後ろの文字は、何を基準にしたかの印です。換算はdB・dBm換算ツールで試せます。
しくみ6: 電波の強さを足し算で見積もる
dBが本領を発揮するのは、強めたり弱めたりが何段も続くときです。例として、Wi-Fiの親機から10 m先のスマホに届く電波の強さを見積もります。数字は説明のための例で、話を簡単にするため、壁や反射はないものとします。
親機の送信回路は、20 dBm(100 mW)を出すとします。アンテナまでのケーブルで、半分が熱になって失われるとします。これは−3 dBです。
アンテナは、電波を全方向に均等に出さず、ある向きに集めることができます。集めた向きでは、理想のアンテナより強い電波になります。この度合いをアンテナの利得と呼び、ここでは+3 dBi(約2倍)とします。ほかの向きは弱くなるので、エネルギーが増えるわけではありません。
空間を進むと、どれだけ弱まるか
アンテナを出た電波は、球の形に広がりながら進みます。球の表面積は、半径の2乗に比例します。そのため、同じ面積で受け取れる電力は、距離が2倍で4分の1(−6 dB)、10倍で100分の1(−20 dB)です。
障害物のない空間でのこの弱まりを、自由空間伝搬損失と呼びます。理想のアンテナどうしの場合、弱まる比は「4 × 円周率 × 距離 ÷ 波長」の2乗です。波長は、電波の山から次の山までの長さです。式に波長が入るのは、理想のアンテナが電波を受け取る面積が、波長で決まるためです(ここでは深入りしません)。
2.4 GHz帯の電波の波長は、約12.5 cmです。距離10 mなら、4 × 3.14 × 10 ÷ 0.125で約1000、その2乗で約100万です。100万分の1は、0が6つなので−60 dBです。距離が100 mなら約−80 dBになります。
足し算でまとめる
スマホのアンテナの利得は0 dBi(1倍)とします。すると、スマホに届く強さは、20 − 3 + 3 − 60 = −40 dBmです。電力に直すと0.0001 mW、つまり1000万分の1 Wです。
同じ計算を掛け算ですると、100 mW × 2分の1 × 2 × 100万分の1 となります。答えは同じですが、0の数を追うのが大変です。dBなら、どの段でいちばん失っているかも、数字の大きさでひと目でわかります。
このように、送り手から受け手までの強めと弱めを積み上げる計算を、リンクバジェットと呼びます。実際の家では、壁や床、人の体でさらに弱まります。そのため、必要な強さに対して十分な余裕を見込んで設計します。
注意したいのは、足してよいのは「dBm + dB」だということです。dBmどうしを足しても意味はありません。例えば0 dBm(1 mW)の信号を2つ合わせると、2 mWで約3 dBmです。0 + 0 = 0 dBmではありません。
しくみ7: 雑音とSN比
回路の中では、電子が熱でばらばらに動くため、小さな電圧の揺れがいつも生まれます。こうした要らない揺れを雑音と呼びます(代表的なものが熱雑音)。信号が弱すぎると、雑音に埋もれて読み取れません。
そこで、信号の電力が雑音の電力の何倍かを見ます。この比をSN比(SNR)と呼び、dBで表します。SN比が30 dBなら、信号の電力は雑音の1000倍です。SN比が大きいほど、信号をはっきり読み取れます。
ADコンバータの「6 dB/ビット」
電圧を数字に変える回路を、ADコンバータ(ADC)と呼びます。ADCは、電圧を決まった段のどれかに丸めて数字にします。段の数は、使うビット(0か1かの桁)の数で決まり、16ビットなら65,536段です。丸めで生まれるずれ(量子化誤差)も、雑音の一種です。
ビットを1つ増やすと、段は2倍に細かくなり、丸めのずれの大きさは半分になります。電圧の比で2倍は約6 dBなので、1ビットごとにSN比が約6 dBよくなります。理想のADCに、扱える範囲いっぱいの大きさの正弦波(なめらかな波)を入れたとします。そのときのSN比は、約6.02 × ビット数 + 1.76 dBです。1.76 dBは、正弦波の形から来る小さな上乗せです(導き方は省きます)。
音楽CDの16ビットなら、6.02 × 16 + 1.76で約98 dBです。電力の比では、約64億倍にあたります。実際のADCでは、ほかの雑音やゆがみでこれより下がります。その実力をビット数に直した値がENOBです(「アナログ半導体とは?」、ADCのSN比・ENOBの計算ツール)。
音のdBは、聞こえる限界が基準
騒音計などが示す音の大きさのdBは、空気の圧力の揺れ(音圧)を比べたものです。基準は20 µPa(マイクロパスカル)です。1 kHz付近の音で、人がやっと聞き取れる程度の揺れにあたります。
同じ空気の中なら、音圧の2乗が音の強さ(電力にあたる量)に比例します。電圧と同じ関係です。そのため、音圧のdBも20倍の式で計算します。0 dBは「音がない」ではなく、「聞こえる限界と同じ揺れ」という意味です。
音の強さが10倍(+10 dB)になると、人には約2倍の大きさに聞こえる、という目安があります。これは物理の決まりではなく、人の感じ方を平均した経験則です。音の高さや大きさによって、当てはまり方は変わります。
よくある誤解
誤解: 0 dBは「ゼロ」「何もない」という意味
実際は、0 dBは「比が1」、つまり基準と同じという意味です。0 dBmは1 mWの電力があり、音の0 dBは聞こえるかどうかの境目くらいの音です。基準より小さければ、−40 dBmのようにマイナスにもなります。温度の0 ℃が「熱がない」ではないのと同じで、目盛りの0が基準の位置にあるだけです。
誤解: dBの数字が2倍になれば、電力も2倍になる
実際は、10 dBは10倍、20 dBは100倍です。dBの数字を2倍にすると、比は2乗になります。電力を2倍にするのは「+3 dB」です。dBは掛け算を足し算に変えた目盛りなので、目盛りの数字と量は比例しません。
誤解: dBは、ボルトやワットのような量の単位
実際は、dBは比を対数で表したもので、それだけでは量の大きさを表しません。ボルトのように物理量そのものを測る単位ではなく、国際単位系(SI)の単位でもありません。dBm、dBi、音のdBのように基準が決まって、初めて大きさがわかります。説明書でdBを見たら、何に対する比かを確かめましょう。
数字で見る
| 例 | dB | 比・大きさ |
|---|---|---|
| 送信の強さ(この記事の例) | 20 dBm | 100 mW |
| 2.4 GHz、10 m先までの弱まり | −60 dB | 100万分の1 |
| 同じく100 m先まで | −80 dB | 1億分の1 |
| Wi-Fiの受信の目安の下限 | −90 dBm | 1 pW(1兆分の1 W) |
| 理想の16ビットADCのSN比 | 約98 dB | 電力で約64億倍 |
1 Wと1 pWの差は12桁、dBでは120 dBです。dBを使うと、こうした何桁もの違いを、3桁までの数字の足し引きで扱えます。これが、電子回路や通信の技術者がdBを手放さない理由です。
もっと詳しく学ぶ
- 用語: リンクバジェット / 自由空間伝搬損失 / 雑音指数(NF) / ボード線図(周波数ごとの利得をdBで描くグラフ)
- 数字で試す: dB・dBm換算ツール / ADCのSN比・ENOBの計算ツール / オペアンプの増幅率の計算ツール / ボード線図の計算ツール
- 違いを表で見る: Wi-Fi・Bluetooth・LPWAの違い
- 関連する解説: 「Wi-Fiのしくみとは?」 / 「5Gとは?」 / 「フェルミ分布とボルツマン分布とは?」(電流が「1桁」変わる電圧を数える話)