交流と直流の違いとは? インピーダンスをやさしく

約14分 · 更新: 2026年10月23日

直流は、流れる向きがいつも同じ電気です。交流は、向きと大きさが波のように規則正しく変わる電気で、日本のコンセントでは1秒に50回か60回の往復をくり返します。交流では、コンデンサやコイルが「変化の速さ」によって電流の通しやすさを変えます。その交流での流れにくさを、抵抗と合わせてインピーダンスと呼びます。

この記事でわかること

  • 直流と交流の違いと、コンセントの電気が交流である理由
  • 「100ボルト」が平均ではなく実効値で、山は約141ボルトになる理由
  • 抵抗・コンデンサ・コイルの交流でのふるまいと、インピーダンスの意味
  • 電流と電圧のずれ(位相)、ラジオの選局(共振)、力率のあらまし
  • 充電器やフィルタなど、電子機器のどこでこの違いが効くか

前提知識: 電圧(電気を押す力)、電流(電気の流れ)、抵抗(流れにくさ)の大まかな意味。式はほとんど使いません。

身近なところでは

スマホの充電器をよく見ると、小さな文字が並んでいます。例えば「入力 AC100-240V 50/60Hz」「出力 DC5V」のような表示です。ACは交流、DCは直流の略です。充電器は、コンセントの交流を受け取り、スマホが使える直流に変えて送り出しています。

一方、乾電池やスマホの電池から出てくる電気は、はじめから直流です。リモコンやスマホの中の回路も、直流で動いています。つまり、家の中には2種類の電気があり、その境目で変換が行われているのです。

この記事では、まず2つの電気の違いを見ます。次に、交流ならではの性質として、コンデンサやコイルのふるまいを説明します。最後に、それが充電器やフィルタでどう役に立つかを確かめます。

しくみ1: 向きが一定の直流、入れ替わる交流

電池につないだ豆電球では、電流はいつもプラスの端子から回路を回ってマイナスへ流れます。向きも大きさもほぼ一定の、この電気が直流です。グラフに描くと、時間がたっても高さの変わらない水平な線になります。

コンセントの電気は違います。電圧がなめらかにプラスへ上がり、0に戻り、マイナスへ下がって、また戻ります。この往復をくり返すのが交流で、形は「正弦波」と呼ばれる波です。電圧の向きが変わるので、流れる電流の向きも行ったり来たりします。

1秒間に何回往復するかを、周波数と呼びます。単位はヘルツ(Hz)で、50 Hzなら1秒に50回の往復です。日本では、静岡県の富士川と新潟県の糸魚川あたりを境に、東が50 Hz、西が60 Hzです。明治時代に、東京にはドイツ製の50 Hzの発電機が入りました。大阪にはアメリカ製の60 Hzの発電機が入り、これが今まで続いています(パナソニックの解説)。

直流は高さが一定の線。交流は0を中心に+141 Vと−141 Vの間を往復する波で、実効値100 Vの高さを点線で示す 直流(電池など) 0 向きも大きさも一定 交流(コンセント) 141 100 0 −141 1往復 = 1/50秒(東日本) 点線: 実効値100 V
直流(上)と、日本のコンセントの交流(下)の電圧。数字の単位はボルト。交流は0を中心に+141 Vと−141 Vの間を往復し、点線は実効値の100 Vの高さ。西日本(60 Hz)では1往復が1/60秒。省略していること: 実際のコンセントの電圧の小さな揺れやゆがみ。

しくみ2: なぜコンセントは交流なのか

理由の中心は、電圧を簡単に上げ下げできることです。鉄の芯に2つのコイル(電線をぐるぐる巻いたもの)を巻いておくと、片方の電流の変化がもう片方に電圧を生みます。この道具を変圧器(トランス)と呼びます。電圧の比は巻き数の比で決まり、巻き数が10分の1なら電圧も10分の1です。

変圧器は、電流が「変化している」ときにしか働きません。交流はいつも変化しているので、そのまま通せば電圧が変わります。直流は一定なので、つないだ瞬間を除いて、もう片方には何も起きません。発電所から家まで電圧を何段も変えるには、交流が都合よかったのです。

電圧を上げて送ると、損失が減る

では、なぜ電圧を変えたいのでしょうか。電線にもわずかな抵抗があり、電流が流れると一部が熱になって失われます。この失われる電力は、電流に同じ電流をもう一度掛け、さらに電線の抵抗を掛けた大きさです。式で書くと「電流² × 抵抗」で、I²Rとも書きます。

送る電力は、電圧と電流の掛け算です。同じ電力を10倍の電圧で送れば、電流は10分の1で済みます。損失は電流の2乗に比例するので、10分の1の2乗で100分の1になります。そこで日本の大きな発電所では、27万5千〜50万ボルトほどに上げて送り、変電所で段階的に下げます。電柱の上の変圧器で、最後に100ボルトや200ボルトにします(日本製鉄の広報誌の解説)。

しくみ3: 「100ボルト」は実効値

交流の電圧は、たえず変わっています。では、コンセントの「100ボルト」は、どの瞬間の値なのでしょうか。平均をとると、プラスとマイナスが打ち消し合って0になってしまいます。そこで、別の決め方を使います。

電気ストーブのような、電気を熱に変える器具を考えます。交流をつないだときと同じだけ熱くなる直流の電圧を、その交流の「実効値」と呼びます。コンセントの100ボルトは実効値で、ストーブを直流100ボルトと同じだけ温める、という意味です。

正弦波の交流では、山の高さは実効値の約1.41倍(2の平方根倍)です。100ボルトのコンセントの電圧は、実際には+141ボルトと−141ボルトの間を往復しています。熱くなる量は、電圧の2乗に比例します。この2乗を1周期でならすと、山の2乗のちょうど半分になります。その平方根をとると、山を1.41で割った値になるのです(導き方は省きます)。

なお、コンセントの電圧はいつもぴったり100ボルトではありません。電気事業法とその施行規則では、送配電の会社が、101ボルトの上下6ボルトの範囲に保つよう努めることになっています。つまり、95〜107ボルトです。

しくみ4: 抵抗・コンデンサ・コイルのふるまい

交流が直流と大きく違うのは、回路の部品によって、電流の通しやすさが「変化の速さ」で変わることです。ここでは、電子回路の基本の3つの部品を見ます。話を簡単にするため、どれも理想の部品として扱います。

抵抗は、直流でも交流でも、同じように電流を流れにくくします。周波数が変わっても、流れにくさは変わりません。流れた電気のエネルギーは、熱になって出ていきます。

コンデンサ: 速い変化ほど通す

コンデンサは、2枚の金属の板を、電気を通さない薄い膜をはさんで向かい合わせた部品です。電圧をかけると、片方の板にプラス、もう片方にマイナスの電気がたまります。直流では、たまりきると電流が止まります。たまるまでの時間は「時定数RCとは?」で説明しています。

交流では、電圧の向きが入れ替わるたびに、たまった電気が出ていき、逆向きにたまり直します。その出入りのぶん、回路には電流が行ったり来たりします。向きが速く入れ替わるほど、出入りも速くなるので、電流がよく流れます。コンデンサは、直流を止め、速い変化ほどよく通す部品です。

コイル: 速い変化ほど通しにくい

コイルは、電線をぐるぐる巻いた部品です。電流が流れると、まわりに磁石のような力が生まれます。電流が変わろうとすると、その力も変わり、その変化を打ち消す向きの電圧がコイルに生まれます。この電圧を逆起電力と呼びます。

直流では電流が変わらないので、コイルはただの電線と同じで、よく通します。交流では、変化が速いほど逆らう電圧が大きくなり、電流が流れにくくなります。コイルは、直流をよく通し、速い変化ほど通しにくい部品です。コンデンサと、ちょうど反対の性格です。

リアクタンスとインピーダンス

コンデンサやコイルが交流に対して示す流れにくさを、リアクタンスと呼びます。単位は抵抗と同じオーム(Ω)です。ただし抵抗と違い、電力を熱にして使うわけではありません。1周期の中で、エネルギーをためては回路へ返すことをくり返しています。

コンデンサのリアクタンスは、周波数が高いほど小さくなります。式では「1 ÷(2 × 円周率 × 周波数 × 容量)」です。容量(ためられる電気の量の目安)が1マイクロファラドのコンデンサなら、50 Hzで約3.2キロオームです。1メガヘルツ(1秒に100万回)では、約0.16オームまで下がります。コイルは逆に「2 × 円周率 × 周波数 × コイルの強さ」で、周波数に比例して大きくなります。

抵抗とリアクタンスを合わせた、交流での電流の流れにくさ全体を、インピーダンスと呼びます。「この回路は、この周波数で何オームか」を一つの数で表したものです。ただし、抵抗とリアクタンスは単純な足し算にはなりません。理由は、次に見る「タイミングのずれ」にあります。

周波数が高くなると、コンデンサの流れにくさは下がり、コイルの流れにくさは上がる。抵抗は変わらない。コンデンサとコイルが等しくなる点で共振が起きる 流れにくさ コンデンサ コイル 抵抗 共振 低い 周波数 高い
周波数による流れにくさの変わり方。縦も横も、10倍ごとに同じ間隔の目盛り(対数の目盛り)で描くと、コンデンサとコイルは直線になる。直流は周波数0にあたり、この目盛りでは左の端よりさらに外になる。省略していること: 具体的な数値、実際の部品がもつ小さな抵抗や、高い周波数での性質の変化。

しくみ5: 電流と電圧のタイミングがずれる(位相)

抵抗だけの回路では、電圧が山のとき電流も山になり、2つの波はそろっています。ところがコンデンサでは、そろいません。コンデンサに流れ込む電流は、電圧の「変わり方」が最も速い瞬間に最大になるからです。正弦波では、それは電圧が0を横切る瞬間です。

その結果、コンデンサでは電流の山が、電圧の山より4分の1周期だけ早く来ます。波の中のタイミングを位相と呼び、1周期を360度として「電流が90度進む」と言います。電流が未来を先取りするわけではなく、くり返す波の中で山の位置がずれているという意味です。コイルでは反対に、電流が電圧より90度遅れます。

コンデンサにかかる電圧と流れる電流の波。電流の山が、電圧の山より4分の1周期早く来る コンデンサの場合 電流 電圧 1/4周期(90度)
コンデンサにかかる電圧と、流れる電流(色の線)。2本の点線は、それぞれの山の位置。電流の山が4分の1周期早い。コイルでは反対に、電流の山が4分の1周期遅れる。省略していること: 2つの波の高さは見やすくそろえただけ(電圧と電流は単位が違うので、高さどうしは比べられない)。

抵抗の電流は電圧とそろい、コンデンサやコイルの電流は90度ずれます。ずれた波どうしは、山の時刻が違うので、大きさを単純に足せません。インピーダンスが「抵抗 + リアクタンス」にならないのは、このためです。計算では、大きさとずれの角度をいっしょに扱う方法を使います(ここでは深入りしません)。

しくみ6: 共振とラジオの選局

コイルとコンデンサは、周波数に対して反対の性格でした。そのため、2つを組み合わせると、ちょうど両者の効き目が等しくなる周波数が1つだけあります。そこでは、2つの逆向きのずれが打ち消し合い、回路がその周波数に強く反応します。これを共振と呼びます(前の図の「共振」の点)。

ラジオの選局は、この性質を使っています。アンテナには、たくさんの放送局の電波が、違う周波数でいっしょに届きます。日本のAM放送は、526.5〜1606.5キロヘルツの範囲を使います(2026年時点、総務省)。選局のつまみで容量を変えると、共振する周波数が動き、その局の電波だけが強く取り出されます。

ここで説明したのは、昔ながらのつまみ式のしくみです。今のラジオの多くは、つまみで部品を動かすかわりに、電子回路で周波数を細かく制御して選んでいます。

しくみ7: 働く電流と、往復するだけの電流(力率)

電流と電圧がずれると、電力にも影響が出ます。コンデンサやコイルは、エネルギーをためては返すだけでした。そのぶんの電流は、電源と機器の間を往復するだけで、熱や動きなどの仕事をしません。

流れている電流のうち、実際に仕事をする割合を表した数を力率と呼びます。0から1の間の値で、ずれがなければ1です。例えば、100ボルトで800ワットを使う機器は、力率1なら8アンペアで済みます。力率0.8なら10アンペアが必要で、電線の損失は電流の2乗なので約1.56倍に増えます。

モーターのようにコイルを多く含む機器は、電流が遅れて力率が下がりやすいです。また、パソコンの電源などは、電流の波の形がゆがむことでも力率が下がります。そこで、入力の電流を電圧と同じ形・同じタイミングに近づける力率改善回路を組み込んだ機器が多くあります。

電子機器の中では

充電器: 交流を直流に変える

充電器はまず、電流を一方向にだけ通す部品(ダイオード)で、交流の向きをそろえます。これを整流と呼び、くわしくは「ダイオードとは?」で説明しています。向きはそろっても波打っているので、コンデンサで波をならします。この用途のものが平滑コンデンサです。

今の充電器の多くは、その直流を、1秒に数万回以上の速さで細かく切り替えます。そして小さな変圧器に通して電圧を下げ、もう一度整流してならします(ローム)。切り替えが速いほど、少ない巻き数と小さな芯で同じ電圧を生み出せます。コイルが「速い変化ほど強く反応する」性質を生かして、充電器を小さく軽くしているのです(ここでは話を簡単にしています)。

フィルタ: 周波数で選り分ける

コンデンサとコイルは、周波数で流れやすさが変わります。この性質を使うと、必要な周波数だけを通し、ほかを弱める回路が作れます。これをフィルタと呼び、どこから弱めるかの目安はカットオフ周波数で表します(「デシベルとは?」)。

身近な例が、チップの電源の端子のすぐ近くに置く小さなコンデンサです。電源と、電圧の基準(グラウンド)の間につなぎます。直流の電源は通さず、速い揺れ(雑音)だけをグラウンドへ逃がして、チップに届く電圧を安定させます。音や電波を扱うアナログの回路でも、フィルタは基本の部品です(「アナログ半導体とは?」)。

よくある誤解

誤解: コンセントの電圧は、いつも100ボルト

実際は、約+141ボルトから約−141ボルトまでの間を、1秒に50回か60回往復しています。100ボルトは、同じだけ熱を出す直流の電圧に直した実効値です。テスターなどの測定器も、ふつうは実効値を表示するので、この誤解が生まれやすいのです。

誤解: コンデンサが交流を通すのは、電子が絶縁の膜を通り抜けるから

実際は、電子は膜を通り抜けません。片方の板に電気がたまると、反対の板からは同じ量の電気が押し出されます。それが向きを変えながらくり返されるので、回路の外から見ると電流が流れ続けているように見えます。「通す」は、回路全体として見たときの言い方です。

誤解: 直流は古い技術で、送電はすべて交流

実際は、大電力の交流と直流を変換する装置(今は主に半導体を使います)ができ、直流で送る設備も使われています。例えば2021年3月から、岐阜県と長野県の間を直流の線で結ぶ設備が動いています(東京電力パワーグリッド)。50 Hzと60 Hzの地域の間で、電気を融通するためのものです。交流が選ばれたのは、19世紀に変圧器で電圧を変えやすかったからです(「パワー半導体とは?」)。

数字で見る

項目数字
日本のコンセントの周波数東 50 Hz / 西 60 Hz
コンセントの電圧(実効値)100 V(95〜107 Vに保つよう努める)
同じく、山の高さ約141 V
送電に使う電圧の例27万5千〜50万 V
電圧を10倍にしたときの送電の損失100分の1(同じ電力のとき)
1 µFのコンデンサの流れにくさ50 Hzで約3.2 kΩ、1 MHzで約0.16 Ω
日本のAM放送の周波数526.5〜1606.5 kHz

同じ1マイクロファラドのコンデンサでも、周波数が2万倍になると、流れにくさは2万分の1になります。コンセントの交流はほとんど通さないのに、ラジオの電波くらいの速い変化はほぼ素通しです。部品の「何オームか」は、周波数を決めて初めて言える、というのが交流の世界の大事な点です。

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