EDXとSIMSの違い:元素分析の原理・検出下限・深さと横方向の分解能・破壊か非破壊か・定量性を比較

EDXとSIMSは、どちらも試料にどの元素がどれだけ含まれるかを調べる分析法ですが、得意なことが大きく違います。EDXは、電子線を当てたときに出る特性X線のエネルギーから元素を調べる方法で、SEMやTEMで見ている場所の組成を短時間でほぼ非破壊に分析できます。ただし検出下限は一般に約0.1 wt%で、主成分や異物の同定に向きます。SIMSは、一次イオンで試料を削りながら飛び出した二次イオンを質量分析する方法で、元素によってはppb程度まで検出でき、不純物の深さ方向の分布を測れます。その代わり試料を削る破壊分析で、正確な定量には標準試料が必要です。

項目EDXSIMS
原理電子線で内殻の電子をはじき出し、出てくる特性X線のエネルギーを検出器で測るセシウムや酸素の一次イオンで試料をスパッタし、飛び出した二次イオンを質量分析する
検出下限の目安一般に約0.1 wt%元素と条件によって一般にppm〜ppb
測れる元素一般にホウ素や炭素より重い元素。軽元素は感度と定量性が悪く、水素は測れない。ピークが重なる元素もある(シリコンとタングステンなど)水素を含むほぼすべての元素と同位体。質量が近いイオンの重なり(例えば³⁰SiHと³¹P)に注意する
深さ方向の情報電子が広がる範囲(SEMで調べるバルク試料では数百nm〜数µm程度)の平均。深さ方向の分布は得にくい表面から削りながら測るので深さ方向の分布が得られる。深さ分解能は一般に数nm程度
横方向の分解能SEMでは電子の広がりでおよそµm程度。TEMやSTEMの薄い試料ではnmレベル深さ方向の分析では、一般に数十〜数百µm角の領域の平均
破壊か非破壊か分析そのものはほぼ非破壊(電子線で傷む材料もある)。TEMで調べるには、FIBなどで薄片を切り出す破壊分析。測った部分は削られてなくなる
定量の方法補正計算で、主成分のおおよその組成がその場でわかる。軽元素や微量の元素では誤差が大きいイオンになる割合が周囲の材料で大きく変わる(マトリックス効果)ので、同じ母材の標準試料で濃度に換算する
速さと手軽さSEMやTEMに検出器を付けて使い、一般に数分程度でスペクトルが得られる専用の装置が必要で、1つの深さ方向の分析にも時間がかかる
主な用途異物や不良箇所の同定、膜や合金の組成、TEMでの元素の分布図イオン注入やドーピングの分布、接合の深さ、膜中や界面の微量の汚染(水素・炭素・酸素なども含む)

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

EDX
顕微鏡で見つけた異物や不良箇所が何でできているかを、すぐに知りたいとき。主成分や0.1 wt%以上の成分の分析に向きます。
SIMS
ドーパントや汚染のような微量の不純物を、深さ方向の分布として測りたいとき。試料を削ってもよく、同じ母材の標準試料が用意できる場合に使います。
組み合わせ
不良解析では、まずSEMやTEMとEDXで場所と主な成分を調べ、微量の不純物が疑われるときにSIMSで深さ方向の分布を確かめるのが一般的です。化学的な結合の状態を知りたいときはXPSを使います。

よくある質問

EDXでドーパントの濃度は測れますか?

一般には測れません。EDXの検出下限は約0.1 wt%で、シリコン中のドーパントのような微量の不純物はそれよりはるかに少ないからです。ドーパントの濃度や深さ方向の分布は、ppm〜ppbまで検出できるSIMSで測ります。

SIMSは何が「破壊分析」なのですか?

一次イオンで試料の表面を少しずつスパッタして削り、飛び出したイオンを測るので、測った部分は削られてなくなり、試料にはクレーターが残ります。そのため、同じ場所をもう一度測ることはできず、製品のウエハではテスト用の領域や別のモニター用の試料で測ります。

SIMSで定量に標準試料が必要なのはなぜですか?

スパッタされた原子のうちイオンになる割合が、元素の種類だけでなく周りの材料(母材)によって桁違いに変わるからです(マトリックス効果)。そこで、量のわかった不純物をイオン注入した同じ母材の標準試料を測り、信号の強さを濃度に換算します。異なる材料の界面付近では、換算に注意が必要です。

EDXの空間分解能はなぜSEMとTEMで違うのですか?

SEMで調べる厚い試料では、電子が試料の中で散乱して広がり、X線はその広い範囲から出るからです。TEMでは厚さ100 nmより十分に薄い試料を使うので電子がほとんど広がらず、nmレベルの元素の分布図が得られます。

理解度チェック

SIMS(二次イオン質量分析法)の説明として正しいものはどれか。

  1. A電子線を当てて発生する特性X線で元素を調べる
  2. B光の反射率から膜厚を測る
  3. C一次イオンで試料を削りながら、出てくる二次イオンを質量分析し、不純物の深さ方向の分布を調べる
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正解:C. 一次イオンで試料を削りながら、出てくる二次イオンを質量分析し、不純物の深さ方向の分布を調べる

SIMSは、セシウムや酸素の一次イオンを照射して試料表面を少しずつスパッタし、放出された二次イオンを質量分析します。削りながら測定を続けることで、不純物濃度の深さ方向の分布を、元素によってはppb程度の高い感度で測定できます。イオン注入や拡散の評価によく使われますが、試料を削るため破壊分析です。特性X線で元素を調べるのはEDX、反射率で膜厚を測るのは光学的な方法です。

SEMやTEMと組み合わせて使われるEDX(エネルギー分散型X線分光)で分かることはどれか。

  1. A表面の粗さ
  2. B試料に含まれる元素の種類と量
  3. C膜の内部応力
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正解:B. 試料に含まれる元素の種類と量

電子線を試料に当てると、内側の殻の電子がはじき出され、そこに外側の電子が落ちるときに元素ごとに固有のエネルギーの特性X線が出ます。EDXはそのエネルギーを分析して、元素の種類と量を調べます。電子顕微鏡で見た場所の組成がその場で分かるため、異物や不良箇所の分析に広く使われます。検出限界は0.1 wt%程度で、微量の不純物の分析にはSIMSなどを使います。

SIMSが不純物の原子の濃度を測るのに対して、電気的に活性なキャリアの濃度の深さ方向分布を測る方法として正しいものはどれか。

  1. AEDX
  2. B原子間力顕微鏡(AFM)
  3. C拡がり抵抗測定(SRP)などの電気的な測定
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正解:C. 拡がり抵抗測定(SRP)などの電気的な測定

拡がり抵抗測定は、試料を浅い角度で斜めに研磨して深さ方向を引き伸ばし、2本の探針を少しずつずらしながら当てて抵抗を測ることで、キャリア濃度の深さ方向の分布を求める方法です。SIMSは活性化していない不純物も含めた原子の濃度を測るため、両者を比べると活性化の割合が分かります。EDXは元素、AFMは形状を調べる方法です。

  1. X線を照射して放出される光電子のエネルギーから、表面の元素と化学結合状態を調べる分析法はどれか。
  2. ウエハ表面の微量な金属汚染の分析によく使われる方法はどれか。

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関連する用語の解説

EDX(エネルギー分散型X線分光)
電子線を当てたときに試料から出る特性X線のエネルギーを測り、含まれる元素の種類と量を調べる分析法。SEMやTEMと組み合わせて使う。
SIMS(二次イオン質量分析法)
一次イオンで試料を削りながら二次イオンを質量分析し、不純物の深さ方向の分布を高感度に測定する方法。
SEM(走査電子顕微鏡)
細く絞った電子線で試料の表面を走査し、出てくる二次電子などを検出して表面の形状を観察する顕微鏡。光学顕微鏡では見えない数nmの構造まで観察できる。
TEM(透過電子顕微鏡)
薄くした試料に電子線を透過させて観察する顕微鏡。原子レベルの分解能で、断面の構造や結晶の欠陥を調べられる。
FIB(集束イオンビーム)
細く絞ったイオンビームで試料を削ったり膜をつけたりする装置。微小な領域の断面加工、TEM用の薄い試料の作製、回路の修正などに使われる。
XPS(X線光電子分光法)
X線を照射して放出される光電子のエネルギーから、表面の数nmに含まれる元素と、その化学結合の状態を調べる分析法。
TXRF(全反射蛍光X線分析)
X線をウエハの表面すれすれに当てて全反射させ、表面の微量な金属汚染から出る蛍光X線を高感度に測る分析法。

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