分光エリプソメトリと分光反射率測定の違い:測る量・極薄膜への感度・多層膜を比較

どちらも、ウエハに光を当てて反射光を測り、薄膜の厚さを非接触・非破壊で求める方法です。分光エリプソメトリは、偏光した光を斜めに当て、反射で偏光の状態がどう変わったか(ΨとΔ)を波長ごとに測ります。分光反射率測定(リフレクトメトリ)は、多くは光を垂直に当て、反射光の強さのスペクトル(反射率)を測ります。どちらも光学モデルに合わせ込んで膜厚を出しますが、エリプソメトリは位相の情報も使うので、数nm以下の極薄膜や多層膜、光学定数の評価に強く、反射率測定は装置が簡単で速く、厚めの膜の膜厚管理に向きます。

項目分光エリプソメトリ分光反射率測定
測る量反射によるp偏光とs偏光の振幅比(tanΨ)と位相差(Δ)反射光の強さのスペクトル(反射率)
光の当て方偏光した光を斜めから当てる(入射角は一般に60〜75°程度)多くは垂直に当てる。偏光の制御は不要
求められる値膜厚と光学定数(屈折率n・消衰係数k)を同時に求めやすい主に膜厚。光学定数は既知の値を使うことが多い
モデルへの依存強い。膜の構造と分散式のモデルにフィッティングして値を出すこちらもモデルを使う。厚い単層膜なら干渉の縞の間隔から比較的素直に求まるが、光学定数の仮定に結果が左右される
極薄膜(数nm以下)への感度高い。Δの変化から0.1 nm以下の差もわかり、自然酸化膜やゲート絶縁膜も測れる低い。干渉の縞が現れず反射率の変化が小さいため、精度が落ちる
得意な膜厚の範囲(目安)1 nm未満から数µm程度数十nmから数十µm程度
多層膜得意。波長ごとに2つの量が得られ、各層の膜厚や光学定数を分けて決めやすい層が増えると、各層を分けて決めるのが難しくなる
装置と速度偏光子などを使い構成が複雑。斜めに当てるのでスポットが伸び、1点あたりの時間もやや長い構成が簡単で速く、スポットを小さくしやすい。ほかの装置に組み込みやすい
主な用途ゲート絶縁膜やHigh-k膜、薄い酸化膜・窒化膜、多層膜の膜厚と光学定数、光学式の寸法測定(スキャトロメトリ)レジストや厚い酸化膜・層間絶縁膜の膜厚、CMP装置などに組み込んだ膜厚の監視

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

分光エリプソメトリ
数nm以下の薄い膜や、何層も重なった膜を正確に測りたいときや、膜の光学定数も知りたいときに使います。ゲート絶縁膜のように、0.1 nmの差が問題になる膜の管理に向いています。
分光反射率測定
厚さが数十nm以上の膜を、速く多くの点で測りたいときに向きます。装置が簡単なので、成膜やCMPの装置に組み込んで膜厚を監視するのにも使われます。

よくある質問

エリプソメトリのΨとΔとは何ですか?

反射光のp偏光成分とs偏光成分の比を表す量です。tanΨは振幅の比、Δは位相の差です。膜の厚さや光学定数が変わるとΨとΔが変わるので、光学モデルで計算した値と合わせ込んで、膜厚や屈折率を求めます。

なぜエリプソメトリは極薄膜に強いのですか?

位相差Δが、数nm以下の薄い膜でもはっきり変わるからです。また、2つの偏光成分の比を測るので、光源の明るさの変動の影響を受けにくく、基準となる試料も必要ありません。

分光反射率測定で膜厚がわかるのはなぜですか?

膜の表面で反射した光と、下地との界面で反射した光が干渉し、波長によって強め合ったり弱め合ったりするからです。膜が厚いほど縞の間隔が狭くなるので、反射率のスペクトルから膜厚が求まります。シリコン上の酸化膜が厚さによって色づいて見えるのと同じ原理です。

測った膜厚はどれくらい信用できますか?

どちらの方法も、光学モデルに合わせ込んで値を出す間接的な測定です。膜の構造や光学定数の仮定が実際と違うと、値もずれます。新しい膜では、TEMの断面観察やX線反射率法(XRR)などで確かめてからモデルを決めます。

理解度チェック

エリプソメトリ(分光エリプソメトリ)で主に測定するものはどれか。

  1. A試料に電流を流したときの抵抗
  2. B反射光の偏光状態の変化から求める、薄膜の膜厚や屈折率
  3. Cイオンで削った試料の質量スペクトル
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正解:B. 反射光の偏光状態の変化から求める、薄膜の膜厚や屈折率

エリプソメトリは、偏光した光を斜めに当て、反射光のp偏光とs偏光の振幅の比(tanΨ)と位相差(Δ)を測り、光学モデルで計算した値と合わせ込んで、薄膜の膜厚や屈折率を求める方法です。波長を変えて測る分光エリプソメトリでは多層膜も解析でき、0.1 nm以下の再現性が得られます。非接触・非破壊なので、酸化膜などの膜厚管理に広く使われます。抵抗や質量スペクトルは測りません。

シリコン上の酸化膜が、膜厚に応じてさまざまな色に見える理由として正しいものはどれか。

  1. A酸化膜に含まれる不純物の色
  2. B酸化膜の表面と裏面(シリコンとの界面)で反射した光の干渉
  3. C酸化膜自体が発光している
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正解:B. 酸化膜の表面と裏面(シリコンとの界面)で反射した光の干渉

SiO2自体は透明ですが、膜の表面で反射した光とシリコンとの界面で反射した光が干渉し、膜厚に応じて特定の波長(色)が強め合って見えます。例えば約100 nmで茶〜紫、約300 nmで青、約500 nmで緑系に見え、同じ色が膜厚に応じて周期的に繰り返されます。色を見ればおおよその膜厚がわかるため、昔は色の見本表で確認していました。精密な測定にはエリプソメトリや分光干渉を使います。

X線を非常に浅い角度で入射させ、反射率の振動から薄膜の厚さや密度を求める手法はどれか。

  1. ASIMS
  2. BX線反射率法(XRR)
  3. C4探針法
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正解:B. X線反射率法(XRR)

XRRでは、X線を浅い角度で入射させたときの反射率を、角度を変えながら測ります。膜の表面と界面で反射したX線が干渉して反射率が振動するため、その周期から膜厚を、全反射が起こる臨界角から膜の密度を、振動の減衰から界面の粗さを求められます。光学定数を仮定せずに測れるため、数nmの極薄膜の評価に向いています。SIMSと4探針法は別の量を測ります。

  1. 高濃度基板の上の低濃度エピ層の厚さを、赤外光の干渉を利用して測る方法はどれか。
  2. 装置の状態確認や膜厚の測定などのために、製品とは別に工程に流すウエハを何と呼ぶか。

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関連する用語の解説

エリプソメトリ
偏光した光を当てて、反射による偏光状態の変化から薄膜の厚さや屈折率を求める測定法。非破壊で測れる。
屈折率
真空中の光の速さを、物質中の光の速さで割った値。波長1.55 µmでシリコンは約3.48、酸化膜(SiO2)は約1.45で、この差が大きいほど光を小さな導波路に強く閉じ込められる。
熱酸化
シリコンを酸素や水蒸気の中で加熱し、表面にSiO2膜をつくる方法。ドライ酸化とウェット酸化がある。
自然酸化膜
シリコンが空気や水に触れることで自然にできる、厚さ1 nm前後の薄い酸化膜。コンタクト抵抗の増加やエピタキシャル成長の妨げになるため、必要な工程の直前に除去する。
フォトレジスト
光に反応して現像液への溶けやすさが変わる感光性材料。ポジ型は露光部が溶け、ネガ型は露光部が残る。
CMP
化学機械研磨。スラリーの化学作用とパッドの機械的研磨を組み合わせてウエハ表面を平坦化する。
モニターウエハ
装置の状態確認や膜厚・パーティクルの測定などのために、製品とは別に工程に流すウエハ。テストウエハとも呼ぶ。使用後は膜を除いて研磨し直し、再生ウエハとして再利用されることが多い。

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