スパッタリングと真空蒸着の違い:仕組み・段差被覆性・密着性・合金の組成を比較

どちらも、固体の材料を原子にして飛ばし、ウエハに付着させるPVD(物理気相成長)です。スパッタリングは、プラズマ中のアルゴンイオンをターゲットに衝突させ、はじき出された原子を堆積させます。真空蒸着は、高真空の中で材料を抵抗加熱や電子ビームで加熱して蒸発させます。スパッタリングは、合金の組成を保ちやすく密着性もよいので、LSIの配線やバリアメタルの主流です。蒸着は、原子がまっすぐ飛ぶ性質を生かして、リフトオフによる電極の形成などに使われます。

項目スパッタリング真空蒸着(抵抗加熱・電子ビーム)
原子を飛ばす仕組みプラズマ中のArイオンをターゲットに衝突させ、運動量を受け取った原子をはじき出す材料を抵抗加熱や電子ビームで加熱して蒸発させる
圧力と原子のエネルギー0.1〜1 Pa程度のガスの中。届く原子は一般に数eV〜数十eV高真空(目安として10⁻⁴ Pa以下)。届く原子は約0.1 eVと低い
段差被覆性低め(蒸着よりはよい)。イオン化スパッタやコリメータで穴の底への成膜を改善非常に低い。原子が直進するので、見通せない部分には付かない
密着性と膜質よい。緻密な膜になりやすいスパッタより劣りやすい。基板の加熱などで改善する
合金・化合物の組成ターゲットとほぼ同じ組成で成膜できる。反応性スパッタで窒化物なども成分ごとの蒸気圧の差で組成がずれやすい(複数の蒸発源で同時に蒸着して調整)
成膜速度マグネトロンで実用的な速度。材料によって差がある一般に高くしやすい
基板への影響プラズマや高いエネルギーの粒子にさらされ、加熱や損傷が起こることがある基板の温度上昇は比較的小さい。電子ビーム蒸着ではX線による損傷に注意
主な用途LSIの配線(Al、Cu)、バリアメタル(Ta、TaN、TiN)、Cuのシード層、シリサイド用の金属リフトオフによる電極の形成(化合物半導体など)、研究開発、有機ELの発光層

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

スパッタリング
大きなウエハに均一で密着性のよい膜をつけたいとき、合金や窒化物の膜をつくりたいときに使います。LSIの配線工程の金属膜の多くはスパッタで成膜します。
真空蒸着
膜を真上からだけ付けたいリフトオフや、高い純度の膜、プラズマで傷めたくない材料の成膜に向きます。電子ビームを使えば、高融点の金属も蒸発させられます。

よくある質問

なぜLSIの配線にはスパッタリングが主に使われるのですか?

合金や化合物をターゲットとほぼ同じ組成で成膜でき、膜が緻密で密着性もよく、大きなウエハに均一につけやすいからです。窒素を加えた反応性スパッタで、TiNやTaNのバリアメタルもつくれます。

なぜリフトオフには蒸着が向いているのですか?

蒸着では原子がほぼまっすぐ飛ぶので、レジストの側壁にはほとんど膜が付きません。そのため、レジストを溶かすと、その上の膜だけがきれいに取れて、パターンの部分の膜が残ります。スパッタでは側壁にも膜が付き、きれいに切れにくくなります。

抵抗加熱と電子ビーム蒸着の違いは何ですか?

抵抗加熱は、材料を入れた金属のボートなどに電流を流して加熱する簡単な方法ですが、高融点の材料は蒸発させにくく、ボートからの汚染も起こりえます。電子ビーム蒸着は、材料に電子ビームを集中して当てるので、高融点の金属や酸化物も蒸発させられ、汚染も少なくなります。

深い穴の中まで膜を付けるにはどうしますか?

スパッタでは、飛ぶ原子をイオン化してバイアスで垂直に引き込む方法やコリメータで、底への成膜を改善します。それでも足りない場合は、表面の反応で成膜するCVDやALDを使います。

理解度チェック

スパッタリングによる成膜は、次のどれに分類されるか。

  1. APVD(物理気相成長)
  2. BCVD(化学気相成長)
  3. C熱酸化
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正解:A. PVD(物理気相成長)

スパッタリングは、アルゴンなどのプラズマ中のイオンを数百Vで加速してターゲットに衝突させ、運動量を受け取ってはじき出された原子をウエハに堆積させる方法で、化学反応を使わない物理的な現象なのでPVD(物理気相成長)に分類されます。金属配線、バリアメタル(Ta、TiNなど)、Cuのシード層、電極などの成膜に使われます。CVDは原料ガスの化学反応、熱酸化はシリコン自体の酸化です。

真空蒸着の説明として正しいものはどれか。

  1. A原料ガスの化学反応で膜を堆積させる
  2. B電解液中で金属を析出させる
  3. C真空中で材料を加熱して蒸発させ、基板に付着させる
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正解:C. 真空中で材料を加熱して蒸発させ、基板に付着させる

真空蒸着は、抵抗加熱や電子ビームで材料を加熱して蒸発させ、10⁻⁴ Pa程度以下の真空中を飛んだ原子を基板に付着させるPVDです。装置が比較的簡単で純度の高い膜が得られますが、原子がまっすぐ飛ぶため段差被覆性は低く、合金の組成もずれやすいため、LSIの配線にはスパッタが主に使われます。化合物半導体の電極形成のリフトオフや、有機ELの発光層の成膜などに使われます。

電子ビームで材料を加熱する真空蒸着の利点として正しいものはどれか。

  1. A高融点の材料も蒸発させられる
  2. B段差被覆性が非常に高い
  3. C原料ガスの化学反応で膜をつくる
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正解:A. 高融点の材料も蒸発させられる

電子ビーム蒸着では、数kVで加速した電子ビームを材料に集中して当てて加熱するため、抵抗加熱では溶かしにくいタングステンやモリブデン、酸化物なども蒸発させられ、るつぼからの汚染も少なくなります。蒸発した原子はまっすぐ飛ぶため段差被覆性は低く、この性質を利用して、レジストの上に成膜してからレジストごと不要部分を除くリフトオフ法で電極をつくるのに使われます。

  1. スパッタリングや蒸着などのPVDで、深い溝の側壁や底に膜がつきにくい主な理由はどれか。
  2. 真空蒸着と比べたときのスパッタリングの利点として正しいものはどれか。
  3. 成膜におけるステップカバレッジ(段差被覆性)の説明として正しいものはどれか。

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関連する用語の解説

スパッタリング
プラズマ中のイオンをターゲットに衝突させ、はじき出された原子をウエハに堆積させるPVDの一種。
真空蒸着
真空中で材料を加熱して蒸発させ、基板に付着させて膜をつくる方法。電子ビームで加熱すれば高融点の材料も扱えるが、段差被覆性は低い。
マグネトロンスパッタリング
ターゲットの裏側に磁石を置き、磁場で電子をターゲット近くに閉じ込めてプラズマ密度を高めるスパッタリング。成膜速度が上がり、現在のスパッタ装置の主流。
反応性スパッタリング
金属のターゲットを、窒素や酸素などの反応性ガスを含む雰囲気でスパッタし、窒化物や酸化物の膜をつくる方法。窒化チタン(TiN)などの成膜に使われる。
ステップカバレッジ
段差や穴の側面・底面に、平らな部分と比べてどれだけ均一な厚さで膜がつくかを表す指標。ALDは非常によい。
バリアメタル
銅配線の周りに設け、銅が絶縁膜やシリコンへ拡散するのを防ぐ薄い金属膜。TaやTaNなど。
シード層
Cuを電解めっきで埋め込む前に、スパッタリングなどで薄く形成するCu膜。めっきの電流を流すための導電層になる。

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