エピタキシャル成長とCVDの違い:結晶・下地・温度・用途を比較

エピタキシャル成長は、単結晶基板の上に、基板の結晶方位をそろえて単結晶の膜を成長させる技術です。シリコンのエピタキシャル成長の多くはCVD(化学気相成長)で行われるので、両者は対立するものではなく、エピタキシャル成長は「下地の結晶を引き継いで単結晶を育てるCVD」と考えることができます(MBEのようにCVD以外の方法もあります)。この表では、単結晶を育てるエピタキシャル成長と、ポリシリコンやアモルファスシリコン、酸化膜や窒化膜などの単結晶でない膜を堆積する一般のCVDを比べます。

項目エピタキシャル成長CVD(一般の成膜)
できる膜の結晶下地の結晶の並びと方位を引き継いだ単結晶多結晶(ポリシリコン)やアモルファス。酸化シリコンや窒化シリコンの膜もアモルファス
下地の条件結晶の並びを写し取る、清浄な単結晶の表面が必要。異なる材料を育てるヘテロエピタキシーでは、格子定数や熱膨張係数の違いが問題になる単結晶である必要はない。酸化膜や金属の上、段差のあるパターンの上など、ガスが届く表面なら堆積する
成長前の表面処理厳密。厚さ約1 nmの自然酸化膜や炭素が残ると、積層欠陥などの起点になる。シリコンでは希フッ酸の洗浄に加え、水素中で約1,100 ℃に加熱する水素ベークで酸化膜を除くのが一般的下地と結晶をつなぐ必要がないので、エピタキシャル成長ほど厳密な酸化膜の除去は一般に求められない
温度の傾向シリコンは原料で変わり、トリクロロシランで約1,100〜1,150 ℃、ジクロロシランで約1,000〜1,100 ℃、シランなら600〜900 ℃程度。SiCでは約1,500〜1,650 ℃方法で幅が広い。LPCVDは約600〜800 ℃、プラズマCVDは約300〜400 ℃。シランによるシリコン膜は約580 ℃より低いとアモルファス、それより高いと多結晶になる
代表的な膜シリコンのエピ層、SiGe、SiC、GaNやGaAsなどの化合物半導体の層ポリシリコン、アモルファスシリコン、酸化シリコン(TEOSなど)、窒化シリコン、タングステン
ドーピングの制御成長と同時にホスフィンやジボランを流すインサイチュドーピングで、層ごとに濃度を変え、深さ方向に急峻な変化をつくれる。高濃度の基板からのオートドーピングに注意するポリシリコンはインサイチュドーピングで導電性の膜にできる。絶縁膜では、ドーピングは主な目的ではない
主な用途パワーデバイスの低濃度ドリフト層、CMOS用のエピウエハ(p/p+など)、CMOSイメージセンサの基板、トランジスタのせり上げソース・ドレイン、SiGe HBTのベース、LEDやレーザーの多層構造層間絶縁膜、STIの埋め込み、スペーサー、ハードマスク、ポリシリコンのゲートや抵抗、タングステンのプラグ
重視する品質積層欠陥や転位などの結晶欠陥、エピ層の膜厚と抵抗率(不純物濃度)。ヘテロエピタキシーでは臨界膜厚を超えるとミスフィット転位が入る膜厚の均一性、段差被覆性、膜の密度や水素などの不純物、膜の応力
装置300 mmウエハのシリコンでは、ランプで加熱する枚葉式の反応炉が主流。化合物半導体ではMOCVDが広く使われ、研究などではMBEも使う多数のウエハを縦型炉で一度に処理するLPCVD、プラズマCVD、溝を埋めるHDP-CVDなど

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

エピタキシャル成長
デバイスの電気的な働きを担う層を、欠陥が少なく、基板とは独立したドーピングで作りたいとき。たとえばパワーデバイスのドリフト層や、ソース・ドレインのSiGe。
CVD(一般の成膜)
単結晶である必要のない絶縁膜、電極、マスク、埋め込みの膜を、段差を覆いながら作りたいとき。
同じ原料での違い
同じシリコンの原料ガスでも、清浄な単結晶シリコンの上では単結晶が、酸化膜の上ではポリシリコンなどができます。選択エピタキシャル成長は、塩素を含む原料やHClでこの違いを強め、シリコンが露出した部分だけに単結晶を育てます。

よくある質問

エピタキシャル成長はCVDの一種ですか?

シリコンのエピタキシャル成長の多くはCVDで行うので、CVDの中で単結晶を育てる使い方と考えられます。ただし、エピタキシャル成長は「下地の結晶を引き継いで単結晶を育てる」という結果を指す言葉で、方法はCVDに限りません。化合物半導体で広く使われるMOCVDはCVDによるエピタキシャル成長ですが、MBE(分子線エピタキシー)は超高真空で原料を分子線として供給する、CVDではない方法です。

エピタキシャル成長の前に水素ベークをするのはなぜですか?

表面に自然酸化膜(約1 nm)や炭素などの汚染が残っていると、単結晶がうまく成長せず、積層欠陥などの原因になるからです。水素中で約1,100 ℃に加熱すると、酸化膜がSiOとして蒸発し、清浄な結晶面が出ます。熱予算を抑えたい先端工程では、薬液洗浄やプラズマ処理と組み合わせて、より低い温度で行います。

同じシリコンの膜でも、エピ層とポリシリコンはどう違いますか?

エピ層は基板とつながった単結晶で、結晶欠陥が少なく、ドリフト層やソース・ドレインのように、デバイスの電気的な働きを担う層に使えます。ポリシリコンは小さな結晶粒の集まりで、酸化膜の上などどこにでも成膜でき、ゲート電極や抵抗などに使われます。

理解度チェック

エピタキシャル成長の説明として正しいものはどれか。

  1. A単結晶基板の上に、基板の結晶方位をそろえて単結晶の薄膜を成長させること
  2. B基板の上にアモルファスの膜を堆積させること
  3. C基板を高温で溶かして再結晶させること
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正解:A. 単結晶基板の上に、基板の結晶方位をそろえて単結晶の薄膜を成長させること

エピタキシャル成長では、基板の結晶の並びを引き継ぐように原子が積み重なり、基板と同じ方位をもつ単結晶膜ができます。基板とは独立に不純物濃度や材料を選べ、CZウエハより欠陥の少ない層をつくれるため、パワーデバイスの低濃度ドリフト層、CMOSイメージセンサ用の基板、トランジスタのソース・ドレインのSiGe、LEDやレーザーの多層構造などに使われます。

シリコンのエピタキシャル成長の直前に、高温の水素雰囲気でウエハを加熱する主な目的はどれか。

  1. A表面を厚く酸化させる
  2. B不純物を高濃度に添加する
  3. C表面の自然酸化膜を除去し、清浄な結晶面を露出させる
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正解:C. 表面の自然酸化膜を除去し、清浄な結晶面を露出させる

表面に自然酸化膜(約1 nm)や炭素などの汚染が残っていると、その上には単結晶がうまく成長せず、積層欠陥などの原因になります。成長の前に水素中で約1100 ℃に加熱(水素ベーク)すると、SiO2がシリコンと反応してSiOとして蒸発し、清浄なシリコンの結晶面が露出します。熱予算を抑えたい先端工程では、事前の薬液洗浄やプラズマ処理と組み合わせて、より低温で行います。

シランを熱分解してシリコン膜を堆積するとき、成膜温度を低くした場合にできる膜はどれか。

  1. A単結晶シリコン
  2. Bアモルファスシリコン
  3. C二酸化シリコン
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正解:B. アモルファスシリコン

シランの熱分解によるシリコン膜は、およそ580 ℃より低い温度ではアモルファスになり、それより高い温度では多結晶(ポリシリコン)になります。アモルファスで成膜してから600 ℃前後で長時間熱処理すると、核が少ないまま結晶が育つため、直接成膜した膜より結晶粒の大きな(移動度の高い)膜が得られます。液晶ディスプレイの薄膜トランジスタ(TFT)では、レーザーで結晶化させる方法も使われます。

  1. シリコンのエピタキシャル成長で原料として使われるガスはどれか。
  2. エピタキシャル成長中にドーピングガスを流し、成長と同時に不純物を添加することを何と呼ぶか。
  3. 選択エピタキシャル成長の説明として正しいものはどれか。

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関連する用語の解説

エピタキシャル成長
単結晶基板の上に、基板の結晶方位をそろえて単結晶の薄膜を成長させる技術。
CVD
化学気相成長。原料ガスの化学反応によってウエハ上に薄膜を堆積する方法。
選択エピタキシャル成長
絶縁膜で覆われていない、シリコンが露出した部分だけに結晶を成長させる方法。トランジスタのソース・ドレインのSiGeなどに使われる。
自然酸化膜
シリコンが空気や水に触れることで自然にできる、厚さ1 nm前後の薄い酸化膜。コンタクト抵抗の増加やエピタキシャル成長の妨げになるため、必要な工程の直前に除去する。
オートドーピング
エピタキシャル成長中に、基板などの不純物が気相を通じて成長層に取り込まれてしまう現象。高濃度の基板の上に低濃度の層を成長させるときに問題になる。
LPCVD(減圧CVD)
減圧下で行う熱CVD。気体分子の拡散が速くなるため膜厚の均一性や段差被覆性がよく、多数のウエハを縦型炉で一度に処理できる。ポリシリコンや窒化膜の成膜に使われる。
MOCVD(有機金属気相成長)
有機金属化合物とアンモニアなどの原料ガスを使って結晶を成長させる方法。GaNやGaAsなどの化合物半導体の成長に広く使われる。

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