LPCVDとPECVDの違い:温度・膜質・段差被覆性・応力・用途を比較

どちらも気体の原料を反応させて膜をつくるCVDですが、反応のエネルギーの与え方が違います。LPCVDは減圧した炉の中で、600〜800 ℃程度の熱だけで反応させるので、緻密で水素の少ない膜が、段差にも均一につきます。PECVDはプラズマで原料ガスを分解するので、300〜400 ℃程度の低い温度で成膜でき、配線を形成した後の工程でも使えます。ただし膜に水素が多く含まれ、密度は低めになります。

項目LPCVDPECVD
反応のエネルギー熱だけプラズマ(高周波の放電)で原料ガスを分解・活性化する
温度(代表的な範囲)600〜800 ℃程度300〜400 ℃程度
圧力(代表的な範囲)数十〜数百 Pa数百 Pa程度
処理の方式縦型炉のバッチ処理。100枚以上のウエハを並べて一度に成膜する枚葉式が主流。シャワーヘッドの電極の下でウエハを1枚ずつ処理する
膜質緻密で、組成が化学量論に近い。エッチング速度は遅い密度が低めで、組成がずれやすい。エッチング速度は速い
水素の含有量(窒化膜の例)数%以下Si-HやN-Hの形で10〜30%程度
段差被覆性表面反応律速なので、段差にも均一に近い厚さでつくLPCVDより劣ることが多い。原料や条件しだいで改善できる
膜の応力窒化膜は約1 GPaの大きな引っ張り応力。厚くすると割れやすい高周波と低周波の電力の比などで、圧縮から引っ張りまで調整できる
スループット1回の処理は昇温・降温を含めて長いが、多数枚を同時に処理する成膜速度が速く、1枚あたりの処理時間が短い
使える工程配線を形成する前(高温に耐える段階)配線を形成した後でも使える
主な膜と用途ポリシリコン、LOCOSやSTIのマスクやスペーサの窒化膜、TEOS酸化膜層間絶縁膜、パッシベーション膜、銅の拡散防止膜、SiONの反射防止膜、ハードマスク

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

LPCVD
高温に耐える工程で、緻密さ・純度・段差被覆性を優先したいとき。ゲートのポリシリコン、素子分離やスペーサの窒化膜など、トランジスタをつくる前半の工程。
PECVD
下地が高温に耐えられないとき。アルミや銅の配線をつくった後の層間絶縁膜や保護膜、応力を調整したい窒化膜など。
使い分けの目安
熱の予算(どこまで温度を上げられるか)で、まず使える方式が決まります。そのうえで、必要な膜質・被覆性・応力・処理の速さを比べて選びます。

よくある質問

PECVDは、なぜ低い温度で成膜できるのですか?

プラズマの中の高いエネルギーの電子が原料ガスに衝突して、反応しやすいラジカルやイオンに分解するからです。ガスやウエハ自体を高温にしなくても反応が進むので、熱CVDの600〜800 ℃に対し、300〜400 ℃程度で成膜できます。

LPCVDを配線の形成後に使えないのはなぜですか?

600〜800 ℃程度の高温が必要で、アルミの配線は溶けたり変形したりし、銅の配線やlow-k膜も劣化するからです。配線工程では、一般に400 ℃程度までに温度を抑える必要があるので、PECVDが使われます。

PECVDの膜に水素が多いと、何が問題になりますか?

膜の密度が下がり、ウェットエッチングの速度が速くなります。また、後の熱処理で水素が抜けると、膜が縮んで応力が変わることがあります。そのため、緻密さや純度が必要な膜にはLPCVDが選ばれます。

LPCVDで、多数のウエハを一度に処理しても膜厚がそろうのはなぜですか?

減圧するとガス分子の拡散が速くなり、成膜の速さが、ガスの供給ではなく表面での反応で決まるからです(表面反応律速)。表面の温度がそろっていれば、ウエハを数mm間隔で並べても、どこでもほぼ同じ厚さの膜がつきます。

理解度チェック

プラズマCVD(PECVD)の主な利点として正しいものはどれか。

  1. A熱CVDより高い温度が必要になる
  2. B膜中に水素がまったく含まれない
  3. C熱CVDより低い温度で成膜できる
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正解:C. 熱CVDより低い温度で成膜できる

プラズマCVDは、プラズマ中の電子のエネルギーで原料ガスを分解・活性化するため、熱だけで反応させる熱CVD(600〜800 ℃程度)より低い300〜400 ℃程度で成膜できます。アルミや銅の配線形成後など高温にできない工程で、層間絶縁膜や保護膜の成膜に使われます。一方、原料ガスに由来する水素が膜に含まれやすく、膜質は熱CVDに劣る傾向があります。

減圧CVD(LPCVD)の特徴として正しいものはどれか。

  1. A減圧下で行うため膜厚の均一性がよく、多数のウエハを一度に処理できる
  2. B大気圧で行うため装置が最も簡単である
  3. Cプラズマを使うため室温で成膜できる
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正解:A. 減圧下で行うため膜厚の均一性がよく、多数のウエハを一度に処理できる

LPCVDは、数十〜数百Pa程度に減圧して行う熱CVDです。減圧するとガス分子の拡散が速くなり、成膜速度が表面反応で決まる(表面反応律速)ため、ウエハを数mm間隔で立てて100枚以上並べても均一な膜が得られます。段差被覆性もよく、ポリシリコン、シリコン窒化膜、TEOS酸化膜などの成膜に使われます。温度は600〜800 ℃程度と高く、配線形成後には使えません。

同じ材料の膜で比べたとき、高温の熱CVD膜がプラズマCVD膜より一般に優れている点はどれか。

  1. A成膜温度が低い
  2. B成膜速度が必ず速い
  3. C膜が緻密で、水素などの不純物が少ない
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正解:C. 膜が緻密で、水素などの不純物が少ない

高温の熱CVDでは、原料が十分に反応して緻密な膜ができ、原料に由来する水素などの不純物も少なく、組成も化学量論に近くなります。例えばLPCVDの窒化膜の水素は数%以下ですが、プラズマCVDの窒化膜では20%前後含まれることもあります。プラズマCVDは低温で成膜できる一方、膜が粗く、エッチング速度が速い傾向があるため、工程の温度の制約と必要な膜質に応じて使い分けます。

  1. プラズマCVDで成膜したシリコン窒化膜の特徴として正しいものはどれか。
  2. プラズマCVDのシリコン窒化膜の応力を、圧縮から引っ張りまで調整する方法として使われるものはどれか。
  3. CVDで段差被覆性(コンフォーマル性)がよくなる条件として正しいものはどれか。

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関連する用語の解説

LPCVD(減圧CVD)
減圧下で行う熱CVD。気体分子の拡散が速くなるため膜厚の均一性や段差被覆性がよく、多数のウエハを縦型炉で一度に処理できる。ポリシリコンや窒化膜の成膜に使われる。
PECVD(プラズマCVD)
プラズマで原料ガスを分解して膜を堆積するCVD。熱CVDより低い温度で成膜でき、配線工程の絶縁膜などに使われる。
ステップカバレッジ
段差や穴の側面・底面に、平らな部分と比べてどれだけ均一な厚さで膜がつくかを表す指標。ALDは非常によい。
CVD
化学気相成長。原料ガスの化学反応によってウエハ上に薄膜を堆積する方法。
パッシベーション膜
チップの最上層に形成し、内部の回路を水分や汚染、機械的な傷から守る膜。シリコン窒化膜やポリイミドなどが使われる。

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