パワー半導体とは

ぱわーはんどうたい

電力を変換・制御するために、高い電圧と大きな電流をオン・オフする半導体素子の総称。パワーデバイスともいう。ダイオード、パワーMOSFET、IGBT、サイリスタなどがあり、材料にはSi、SiC、GaNが使われる。

「パワー半導体」は、13分野の52問の練習問題に出てきます(パワー半導体, エピタキシャル成長, 半導体産業・市場など)。

熱抵抗の直列回路モデル ヒートシンクを付けた場合 Tj Tc Ts Ta θJC θCS θSA 接合 ケース ヒートシンク 周囲 熱の流れ P(消費電力)が電流に相当 Tj = Ta + P × (θJC + θCS + θSA) θJAだけで見積もる場合 Tj Ta θJA Tj = Ta + P × θJA θJAは試験用の基板で測った値で、実装の条件で変わる
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この用語の分野: パワー半導体

ロジックやメモリのICとの違い

パワー半導体(パワーデバイス)は、電力を変換・制御するための半導体素子の総称です。交流を直流にする整流、直流を交流にするインバータ、電圧を変えるDC-DCコンバータ、モータの駆動などで、スイッチとして電流をオン・オフします。ロジックやメモリのICが1 V前後の電源電圧で小さな信号を扱い、微細化によって集積度を上げてきたのに対し、パワー半導体は目安として数十 Vから数 kVの電圧と、数 Aから数千 Aの電流を扱います。高い電圧を阻止するには低濃度のドリフト層を厚くする必要があるため、電流をチップの表面から裏面へ縦方向に流す縦型構造が多く使われます。製品は、1つの素子をパッケージに収めたディスクリート半導体のほか、複数のチップを絶縁基板の上に組み合わせて大電流を扱うパワーモジュールとして供給されます。

主なデバイスの種類

ダイオードは制御端子をもたず、整流や、インバータで電流を逃がす還流に使われます。pn接合のダイオードのほか、逆回復がほとんどないショットキーバリアダイオードがあります。パワーMOSFETは多数キャリアだけで導通するためスイッチングが速く、シリコンでは主に数百 V以下の電源回路で使われます。IGBTはMOSゲートで駆動するバイポーラ素子で、伝導度変調によって高耐圧でもオン電圧を低くでき、シリコンでは約600 Vから6.5 kVの領域で電気自動車のインバータ、鉄道車両、産業用のモータ駆動に使われます。サイリスタはpnpnの4層構造で、ゲート信号で一度オンにすると電流が保持電流を下回るまで導通を続けるため、交流の位相制御や、直流送電のような非常に高い電圧・大電流の変換に使われます。

材料: Si・SiC・GaN

現在もっとも多く使われているのはシリコン(Si)で、大口径のウエハと成熟した製造技術により低いコストでつくれます。炭化ケイ素(SiC、バンドギャップ約3.3 eV)と窒化ガリウム(GaN、約3.4 eV)はワイドバンドギャップ半導体で、絶縁破壊電界がシリコンの約10倍あります。そのため同じ耐圧をより薄く高濃度のドリフト層で阻止でき、オン抵抗とスイッチング損失を大きく下げられます。SiCは主に600 V級以上のMOSFETやショットキーバリアダイオードとして、電気自動車のインバータや急速充電器、太陽光発電のパワーコンディショナに使われます。GaNの多くはシリコン基板上の横型HEMTで、高い周波数でのスイッチングが生きる数百 V以下の領域で、小型のACアダプタやサーバーの電源などに使われます。

損失と主な用途

損失は、オンのときの電圧降下による導通損失と、オン・オフを切り替える途中で電圧と電流が重なることによるスイッチング損失に大きく分けられます。導通損失はMOSFETでは電流の2乗とオン抵抗の積、IGBTやダイオードではおおよそオン電圧と電流の積になり、スイッチング損失は1回の切り替えで失うエネルギーとスイッチング周波数の積になります。損失はすべて熱になるため、接合温度を定格(シリコンでは一般に150〜175 °C)以下に保てるよう、熱抵抗の小さいパッケージと冷却が欠かせません。主な用途は、電気自動車やハイブリッド車のモータを駆動するインバータと車載充電器、パソコンやサーバーのスイッチング電源、鉄道車両の駆動装置、エアコンなど家電のインバータ、産業用のモータドライブ、太陽光発電や風力発電の電力変換、送電設備などです。

パワー半導体の練習問題に挑戦

SiC(炭化ケイ素)がSiに比べて高耐圧パワーデバイスに有利な主な理由はどれか。

  1. A絶縁破壊電界がSiの約10倍と高いため
  2. BバンドギャップがSiより小さいため
  3. CウエハがSiより安価で大口径化しやすいため
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正解:A. 絶縁破壊電界がSiの約10倍と高いため

SiCはバンドギャップが約3.3 eVと大きく、絶縁破壊電界がSiの約10倍(約3 MV/cm)あります。同じ耐圧ならドリフト層を約1/10の厚さにでき、不純物濃度を約100倍にできるため、ドリフト層の抵抗は理論上数百分の1になります。熱伝導率もSiの約3倍で高温に強く、EVのインバータなどで採用が広がっています。一方、ウエハはSiより高価で、大口径化(8インチ)は2020年代半ばの時点でまだ移行の途上です。

パワーデバイスで、スイッチング周波数を高くすると主に増える損失はどれか。

  1. A導通損失
  2. Bスイッチング損失
  3. C待機時の漏れ電流による損失だけ
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正解:B. スイッチング損失

スイッチング損失は、切り替わる瞬間に電圧と電流が同時に存在することで生じ、「1回あたりの損失 × スイッチング周波数」になります。周波数を10倍にすればスイッチング損失も10倍です。一方、導通損失はオン中の損失(MOSFETなら I²R、IGBTならおよそ 飽和電圧 × 電流)で、周波数によりません。周波数を上げるとコイルやコンデンサを小型化できるため、スイッチング損失の小さいSiCやGaNで高周波化するのが近年の流れです。

よくある質問

パワー半導体はロジックICやメモリとどう違いますか?

ロジックICやメモリは低い電圧で情報を処理・記憶し、多数のトランジスタを集積します。パワー半導体は電力そのものを扱う素子で、数十 Vから数 kVの電圧と大きな電流をスイッチングします。高い電圧を阻止するため厚いドリフト層をもつ縦型構造が多く、単体の素子やモジュールとして使われます。

パワー半導体にはどんな種類がありますか?

主なものは、整流や還流に使うダイオード(pn接合ダイオード、ショットキーバリアダイオード)、高速なスイッチングに向くパワーMOSFET、高耐圧・大電流に向くIGBT、非常に高い電圧・大電流の変換に使うサイリスタです。用途の電圧・電流・スイッチング周波数に合わせて使い分けます。

SiCやGaNのパワー半導体がシリコンより有利なのはなぜですか?

SiCやGaNはバンドギャップが広く、絶縁破壊電界がシリコンの約10倍あるため、同じ耐圧をより薄いドリフト層で実現でき、オン抵抗とスイッチング損失を下げられます。そのぶん電源や変換器を高効率・小型にできますが、基板やデバイスのコストはシリコンより高くなります。

解説の中の「パワー半導体」

「パワー半導体」が出てくる問題(52問)

  1. SiC(炭化ケイ素)がSiに比べて高耐圧パワーデバイスに有利な主な理由はどれか。
  2. パワーデバイスで、スイッチング周波数を高くすると主に増える損失はどれか。
  3. 熱抵抗が2 ℃/Wのパワーデバイスで10 Wの損失が生じたとき、温度上昇はいくらか。
  4. パワー半導体のゲートドライバの主な役割として正しいものはどれか。
  5. パワーデバイスで、ゲート電圧が0 Vのときに電流が流れない「ノーマリーオフ」特性が求められる主な理由はどれか。
  6. SiCやGaNのパワーデバイスで高速にスイッチングするときに、特に対策が重要になる問題はどれか。
  7. 電気自動車のインバータにSiCパワーデバイスを使う主な利点はどれか。
  8. パワーデバイスのゲート駆動回路で、ゲート抵抗の値を大きくしたときの影響として正しいものはどれか。
  9. インバータで、上下のスイッチが同時にオンするなどの短絡が起きたとき、パワーデバイスが破壊されずに耐えられる時間を表す指標はどれか。
  10. GaNパワーデバイスの採用が進んでいる身近な製品の例として正しいものはどれか。
  11. パワー半導体の主な役割として正しいものはどれか。
  12. パワーデバイスにヒートシンク(放熱器)を取り付ける主な目的はどれか。
  13. パワーデバイスのスイッチング回路に入れるスナバ回路の主な目的はどれか。
  14. 一般的なシリコンのパワーデバイスの最大接合温度(Tj max)の定格として多いものはどれか。
  15. パワーデバイスを選ぶとき、定格電圧に余裕をもたせて実際の使用電圧より高い耐圧の素子を使う(ディレーティングする)主な理由はどれか。

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