SiCとGaNのパワー半導体の違い:耐圧・周波数・用途を比較

炭化ケイ素(SiC)と窒化ガリウム(GaN)は、どちらもシリコンよりバンドギャップが広く、電力変換でシリコンを上回ります。高い電界に耐え、速くスイッチングでき、損失も小さいです。使い分けの目安は電圧です。SiCは電気自動車のインバータなど、高電圧・大電力の用途に向きます。GaNは、比較的低い電圧で、スイッチング周波数がとても高い用途に強く、小型の急速充電器などに使われます。

項目SiCGaN
バンドギャップ約3.3 eV(4H-SiC)。シリコンは1.12 eV約3.4 eV
絶縁破壊電界シリコンの約10倍シリコンの約10倍
熱伝導率高い。シリコンの約3倍で、冷却しやすいシリコンと同程度で、SiCより低い
代表的な素子縦型のMOSFETとショットキーバリアダイオード2次元電子ガスをチャネルに使う、横型のHEMT
代表的な耐圧650 Vから3.3 kV程度、さらに高いものも650 V程度までが中心
スイッチング周波数高い(数十〜数百kHz)とても高い(数百kHz〜MHz)
基板とウェハSiCウェハは高価で、結晶成長も難しい多くはシリコンウェハ上に成長させる(GaN-on-Si)。安く、シリコンの工場で作れる。RF用にはGaN-on-SiCも使う
設計上の課題ゲート酸化膜の信頼性と、高めのゲート駆動電圧ノーマリオンを避ける必要があり、ゲートが耐えられる電圧の幅が小さい
主な用途電気自動車の駆動用インバータ、車載充電器、太陽光発電のインバータ、産業用モータ駆動、鉄道小型の急速充電器やアダプタ、データセンターの電源、5G基地局のRF増幅器

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

SiC
電圧も電力も大きく、効率と発熱が重要なとき。車載インバータ、太陽光発電や産業用の電源システムなど。
GaN
電圧が中程度で、高いスイッチング周波数で、小さく軽く効率の高い変換器を作りたいとき。充電器、アダプタ、サーバー電源など。
どちらも
高速にスイッチングするときは、波形の乱れ(リンギング)やノイズに注意が必要です。素子と同じくらい、配線のレイアウトとゲート駆動が重要です。

よくある質問

SiCとGaNはどちらが優れていますか?

全体としてどちらが優れているとは言えません。SiCは、電気自動車のインバータなど、高電圧・大電力に向き、GaNは、小型の充電器など、比較的低い電圧で、スイッチング周波数がとても高い用途に向きます。

なぜパワーデバイスではSiCやGaNがシリコンより優れているのですか?

どちらもバンドギャップが広く、絶縁破壊電界がシリコンの約10倍あるので、高い電圧に耐え、速くスイッチングでき、損失も小さくなります。

なぜシリコン上のGaNはSiCより安いのですか?

GaNのパワーデバイスは、多くがシリコンウェハ上に作られ、シリコンウェハは安く、既存のシリコンの工場でも作れます。SiCのウェハは、高価で、結晶成長も難しいです。

熱に強いのはSiCとGaNのどちらですか?

SiCです。熱伝導率がシリコンの約3倍あり、GaNはシリコンと同程度です。

理解度チェック

SiC(炭化ケイ素)がSiに比べて高耐圧パワーデバイスに有利な主な理由はどれか。

  1. A絶縁破壊電界がSiの約10倍と高いため
  2. BバンドギャップがSiより小さいため
  3. CウエハがSiより安価で大口径化しやすいため
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正解:A. 絶縁破壊電界がSiの約10倍と高いため

SiCはバンドギャップが約3.3 eVと大きく、絶縁破壊電界がSiの約10倍(約3 MV/cm)あります。同じ耐圧ならドリフト層を約1/10の厚さにでき、不純物濃度を約100倍にできるため、ドリフト層の抵抗は理論上数百分の1になります。熱伝導率もSiの約3倍で高温に強く、EVのインバータなどで採用が広がっています。一方、ウエハはSiより高価で、大口径化(8インチ)は途上です。

SiCやGaNのように、シリコンよりバンドギャップが大きい半導体の総称はどれか。

  1. Aワイドバンドギャップ半導体
  2. Bナローギャップ半導体
  3. Cアモルファス半導体
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正解:A. ワイドバンドギャップ半導体

バンドギャップがおおむね3 eV前後以上の半導体をワイドバンドギャップ半導体と呼び、SiC(約3.3 eV)やGaN(約3.4 eV)が代表です。絶縁破壊電界が高く、真性キャリアが少ないため高温でも動作しやすく、高耐圧・低損失のパワーデバイスや高周波デバイスに使われます。さらに大きいGa2O3(約4.8 eV)やダイヤモンド(約5.5 eV)は、ウルトラワイドバンドギャップ半導体と呼ばれます。

電気自動車のインバータにSiCパワーデバイスを使う主な利点はどれか。

  1. Aシリコンより必ず安価になる
  2. B損失が小さく、航続距離の延長や冷却装置の小型化につながる
  3. Cモーターが不要になる
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正解:B. 損失が小さく、航続距離の延長や冷却装置の小型化につながる

SiCデバイスはオン抵抗とスイッチング損失が小さく高温に強いため、EVのインバータ損失を減らせます。損失が減れば同じ電池で走れる距離が数%〜1割程度延び、冷却装置やインバータも小型・軽量にできます。2018年のTesla Model 3で本格採用されて以降、普及が進み、800 V系の高電圧バッテリーで特に効果が大きくなります。課題はSi IGBTより高いコストです。

  1. SiCやGaNのパワーデバイスで高速にスイッチングするときに、特に対策が重要になる問題はどれか。
  2. GaNが高周波・高出力のトランジスタに適している理由として正しいものはどれか。
  3. 現在普及しているGaNパワーデバイスの多くが採用している構造はどれか。

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関連する用語の解説

SiC(炭化ケイ素)
バンドギャップ約3.3 eVのワイドギャップ半導体。絶縁破壊電界が高く、高耐圧・低損失のパワーデバイスに使われる。
GaN(窒化ガリウム)
バンドギャップ約3.4 eVのIII-V族化合物半導体。青色LEDや高周波・パワーデバイスに使われる。
ワイドバンドギャップ半導体
シリコンよりバンドギャップが大きい半導体。SiCやGaNなど。絶縁破壊電界が高く、高電圧・高温での動作に強い。
パワーMOSFET
大きな電流や電圧を扱えるようにしたMOSFET。スイッチングが速く、電源回路などで広く使われる。

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