フェーザとは

ふぇーざ

同じ周波数の正弦波交流の電圧や電流を、大きさ(ふつうは実効値)と位相をもつ複素数で表したもの。v(t) = 100√2 sin(ωt + 30°) は 100∠30° V と書く。微分は jω を掛けること、積分は jω で割ることになり、交流回路の計算を直流と同じような代数の計算にできる。

「フェーザ」は、1分野の8問の練習問題に出てきます(回路解析(交流回路・線形回路・過渡現象)など)。

この用語の分野: 回路解析(交流回路・線形回路・過渡現象)

時間の波形から複素数へ

同じ角周波数 ω の正弦波どうしでは、違うのは大きさと位相だけです。そこで、時間とともに回る e^(jωt) の部分を省き、大きさと位相だけを複素数 V = |V|∠θ = |V|(cos θ + j sin θ) として扱うのがフェーザです。もとの波形には、V に √2 と e^(jωt) を掛けて虚部(または実部)をとれば戻れます。大きさを実効値にするか最大値にするかは流儀で、電力の計算に便利な実効値がよく使われます。

微分と積分が掛け算と割り算になる

コイルの電圧 v = L di/dt は、フェーザでは V = jωL I になり、コンデンサの電流 i = C dv/dt は I = jωC V になります。これがインピーダンス jωL と 1/(jωC) の由来です。キルヒホッフの法則も、テブナンの定理や重ね合わせの理も、複素数のままそのまま使えるので、交流回路を連立一次方程式として解けます。

フェーザ図

複素平面に電圧や電流のフェーザを矢印として描いた図をフェーザ図といいます。直列回路では電流を、並列回路では電圧を基準(実軸の向き)にとると見やすくなります。RLC回路の各部の電圧が直角三角形をつくる様子や、力率改善でコンデンサの電流が遅れの電流を打ち消す様子が、計算する前に図で確かめられます。

フェーザの練習問題に挑戦

正弦波交流電圧 v(t) = 100√2 sin(ωt + π/6) [V] を、実効値を大きさとするフェーザ(極形式)で表したものはどれか。

  1. A100∠60° V
  2. B100∠30° V
  3. C141∠30° V
答えと解説を見る

正解:B. 100∠30° V

解き方1(定義から): フェーザの大きさは実効値で、最大値 100√2 V を √2 で割った100 Vです。偏角は初期位相 π/6 rad = 30° なので、100∠30° V になります。解き方2(複素数で確かめる): 100∠30° = 100(cos 30° + j sin 30°) = 86.6 + j50 V で、これに √2 と e^(jωt) を掛けて虚部をとると、もとの v(t) に戻ります。電気回路の計算では、最大値ではなく実効値をフェーザの大きさにするのが一般的です。

ある負荷の電圧と電流のフェーザ(実効値)が V = 100∠0° V、I = 5∠−30° A であった。この負荷の無効電力の大きさはどれか。

  1. A250 var
  2. B約433 var
  3. C500 var
答えと解説を見る

正解:A. 250 var

解き方1(力率角から): 電流は電圧より30°遅れているので、有効電力は P = VI cos 30° ≈ 433 W、無効電力は Q = VI sin 30° = 100 × 5 × 0.5 = 250 var です。解き方2(複素電力): 複素電力 S = V × (Iの共役) = 100∠0° × 5∠30° = 500∠30° ≈ 433 + j250 VA で、実部が有効電力、虚部が無効電力です。虚部が正なので、遅れ(誘導性)の無効電力250 varを受け取る負荷です。皮相電力は |S| = 500 VA です。

よくある質問

フェーザは正弦波でない波形にも使えますか?

使えるのは、すべての電圧と電流が同じ周波数の正弦波で、回路が線形のときです。ひずんだ波形は、フーリエ級数で周波数ごとの正弦波に分けてから、周波数ごとにフェーザで計算して重ね合わせます。スイッチを入れた直後のような過渡現象には、ラプラス変換を使います。

フェーザとラプラス変換はどんな関係ですか?

ラプラス変換の s を jω に置き換えると、s領域のインピーダンス sL、1/(sC) が、フェーザのインピーダンス jωL、1/(jωC) になります。フェーザは、正弦波の定常状態だけを扱うラプラス変換の特別な場合と考えられます。

解説の中の「フェーザ」

「フェーザ」が出てくる問題(8問)

  1. 正弦波交流電圧 v(t) = 100√2 sin(ωt + π/6) [V] を、実効値を大きさとするフェーザ(極形式)で表したものはどれか。
  2. ある負荷の電圧と電流のフェーザ(実効値)が V = 100∠0° V、I = 5∠−30° A であった。この負荷の無効電力の大きさはどれか。
  3. 図の並列RLC回路で、抵抗R、コイルL、コンデンサCに流れる電流の実効値が、それぞれ IR = 4 A、IL = 5 A、IC = 2 A であった。電源から流れ出る電流 I の実効値はどれか。
  4. 図の並列RLC回路で、電源の周波数を共振周波数 f0 = 1/(2π√(LC)) に合わせたときの性質として正しいものはどれか。
  5. 図の直列RLC回路で、R = 10 Ω、ωL = 30 Ω、1/(ωC) = 20 Ω、電源電圧の実効値 V = 100 V である。回路に流れる電流 I の実効値と、電源電圧に対する位相の組み合わせとして正しいものはどれか。
  6. 線間電圧200 V(実効値)の平衡三相電源に、図(b)のように各相が20 Ωの抵抗のΔ結線負荷を接続した。線電流の実効値に最も近いものはどれか。
  7. 図(b)のRCハイパスフィルタに、角周波数 ω = 1/(RC) の正弦波を入力した。入力に対する出力の振幅と位相の関係として正しいものはどれか。
  8. 図(a)の回路で、R = 10 Ω、使う角周波数でのコンデンサのリアクタンスを 1/(ωC) = 10 Ω、入力電圧を vin = 10∠0° V(実効値)とする。出力端子から見たテブナンの等価回路の内部インピーダンス Zth はどれか。

回路解析(交流回路・線形回路・過渡現象)の参考書を探す PR

Amazonの検索結果へのリンクです。Amazonのアソシエイトとして、半導体教室は適格販売により収入を得ています。

関連する用語

実効値 アドミタンス インピーダンス リアクタンス 無効電力 力率 共振回路 三相交流 伝達関数 テブナンの定理

用語集の一覧へ