NRZとPAM4の違い:ビット数・ボーレート・アイの開き・FEC・規格の世代を比較

NRZは2つの信号レベルで1シンボルに1ビットを送る、最も基本的な方式です。PAM4は4つのレベルで1シンボルに2ビットを送るので、同じビットレートならボーレート(1秒あたりのシンボル数)が半分で済み、伝送路の高い周波数での損失を避けられます。そのかわり、同じ振幅の中に3つのアイが縦に並ぶので、アイの高さは約1/3になり、SNRで約9.5 dB不利です。このため、PAM4のリンクでは前方誤り訂正(FEC)がほぼ必須になります。

項目NRZPAM4
信号のレベル2つ(0と1)4つ(2ビットの組み合わせ00・01・11・10などに対応)
1シンボルのビット数1ビット2ビット
同じビットレートでのボーレートビットレートと同じ(例:64 Gbit/sなら64 GBd)ビットレートの半分(例:64 Gbit/sなら32 GBd)
ナイキスト周波数ボーレートの半分。PAM4の2倍になり、伝送路の損失が大きいNRZの半分。同じ伝送路でも損失が小さい
アイの開き1つの大きなアイ縦に3つのアイが並び、それぞれの高さはNRZの約1/3
必要なSNR基準同じ振幅では約9.5 dB(20 log₁₀ 3)不利
FECなし、または軽い符号で済むことが多いほぼ必須。FEC前のビット誤り率をある程度許し、FECで訂正する。そのぶん遅延が増える
送受信回路比較的簡単。判定は1つのしきい値3つのしきい値で判定し、レベルの間隔をそろえる高い線形性が必要。高速品ではADCとDSPで受けるものも多い
ビットの割り当て1つのレベルが1ビットに対応する隣り合うレベルの誤りが1ビットの誤りで済むよう、グレイ符号で割り当てる
使われる規格の例PCI Express 5.0まで(32 GT/s)、レーンあたり25 Gbit/s級までのイーサネットPCI Express 6.0(64 GT/s)、レーンあたり50 Gbit/sや100 Gbit/s以上のイーサネット、データセンターの光トランシーバ

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

NRZ
レーンあたりの速度が数十 Gbit/sまでで、伝送路の損失に余裕があるとき。回路を簡単にし、FECによる遅延を避けたいとき。
PAM4
レーンあたり50 Gbit/s以上が必要で、NRZではボーレートが高すぎて伝送路の損失に耐えられないとき。FECと強い等化をセットで使います。
考え方
ボーレートを上げるか、1シンボルのビット数を増やすかの選択です。PAM4は周波数の問題をSNRの問題に置き換え、その不足をFECで補っています。

よくある質問

PAM4はNRZより速いのですか?

同じボーレートなら、PAM4は1シンボルで2ビットを送るので、ビットレートは2倍になります。逆に同じビットレートなら、ボーレートを半分にできます。どちらにしても、伝送路の帯域を効率よく使うための方式で、そのぶん雑音には弱くなります。

なぜPAM4はSNRで約9.5 dB不利なのですか?

同じ電圧の振れ幅を3つの間隔に分けるので、隣り合うレベルの差がNRZの約1/3になるからです。信号の振幅が1/3になるのと同じで、20 log₁₀ 3 ≈ 9.5 dBの不利になります。

PAM4ではなぜFECが必要なのですか?

レベルの間隔が狭く、雑音でビットを誤りやすいからです。FEC前のビット誤り率がある程度高くても、誤り訂正符号でまとめて直すことで、リンク全体として必要な誤り率を満たします。PCI Express 6.0では、遅延を抑えた軽いFECと、誤りを検出したときの再送を組み合わせています。

PCI Express 6.0は、なぜPAM4に切り替えたのですか?

PCI Express 5.0の32 GT/sの2倍の64 GT/sをNRZで送ると、ナイキスト周波数が32 GHzになり、基板やコネクタの損失が大きくなりすぎるからです。PAM4なら32 GBdのままで2倍の転送レートが得られます。

理解度チェック

PCI Express 6.0で採用されたPAM4(4値パルス振幅変調)の特徴として正しいものはどれか。

  1. A1つの記号で1ビットを送り、0と1の2段階の電圧を使う
  2. B4段階の電圧で1つの記号あたり2ビットを送るので、同じ記号の速さでビットの速さを2倍にできる
  3. C光ファイバだけで使える方式で、銅線では使えない
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正解:B. 4段階の電圧で1つの記号あたり2ビットを送るので、同じ記号の速さでビットの速さを2倍にできる

従来のNRZは2段階の電圧で1記号に1ビットを送ります。PAM4は4段階の電圧で00・01・10・11を表すので、1記号で2ビットを送れます。伝送路は周波数が高いほど信号が弱まるため、記号の速さを上げずにビットの速さを2倍にできるのが利点です。PCI Express 6.0は、第5世代と同じ記号の速さのままPAM4で64 GT/sを実現しました。

PAM4を使うと、NRZに比べて誤り訂正(FEC)がより重要になる理由として正しいものはどれか。

  1. APAM4ではクロックを取り出せないので、誤りが毎回起きるから
  2. B同じ振幅の中に4段階を入れるので段階の間隔が約1/3になり、雑音でビットを誤りやすくなるから
  3. CPAM4の信号は暗号化されているので、復号の誤りを直す必要があるから
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正解:B. 同じ振幅の中に4段階を入れるので段階の間隔が約1/3になり、雑音でビットを誤りやすくなるから

電圧の振れ幅が同じなら、2段階のNRZでは0と1の間に振れ幅いっぱいの間隔がありますが、4段階のPAM4では隣の段階との間隔が約1/3になります。雑音の余裕がおよそ9.5 dB小さくなるので、ビットの誤りが起こりやすくなります。そこでPCI Express 6.0では、軽い誤り訂正の符号を加え、受信側で小さな誤りを直してから使います。

高速なシリアル信号の品質を見るアイパターン(アイダイアグラム)について正しいものはどれか。

  1. A多数のビットの波形を重ねて描いたもので、中央の「目」が縦にも横にも大きく開いているほど余裕がある
  2. B目が閉じているほど、信号の品質が良い
  3. C人の目の健康状態を調べるための図である
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正解:A. 多数のビットの波形を重ねて描いたもので、中央の「目」が縦にも横にも大きく開いているほど余裕がある

アイパターンは、ビットの1周期ごとに波形を切り出して重ね描きしたものです。0と1の波形の間に目の形のすき間ができ、その高さは雑音に対する余裕、幅はタイミングのずれ(ジッタ)に対する余裕を表します。伝送路の損失や反射、ジッタが大きいと目は閉じていきます。受信回路はこの目の中央でビットを判定するので、目の開きが品質の目安になります。

  1. PAM4で、1波長あたり約106 Gb/s(誤り訂正の符号などを含む)の信号を送るときのシンボルレート(1秒あたりの記号の数)に最も近いものはどれか。
  2. データセンター内の光接続で広く使われる強度変調・直接検波(IM-DD)方式でPAM4を使う場合、4つの値として変えているものはどれか。
  3. 100ギガビットのイーサネットのような高速な接続が、例えば25 Gb/sのレーンを4本束ねて作られることがある。この考え方として正しいものはどれか。

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関連する用語の解説

NRZ
2段階の電圧で1つの記号あたり1ビットを送る、最も基本的な伝送の方式。Non-Return-to-Zeroの略。
PAM4
4段階の電圧で1つの記号あたり2ビットを送る変調方式。同じ記号の速さでビットの速さを2倍にできるが、雑音の余裕が小さくなる。
アイパターン
多数のビットの波形を1周期ごとに重ねて描いた図。中央の目の高さは雑音に対する余裕、幅はタイミングのずれに対する余裕を表す。
SerDes
シリアライザ/デシリアライザ。送る側でチップ内の並列のデータを1本の速いビット列に変え、受ける側で元の並列のデータに戻す回路。高速なシリアル伝送の物理層の中心。

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