等方性エッチングと異方性エッチングの違い:断面の形・アンダーカット・方向性のしくみ・選択比を比較

等方性エッチングは、縦にも横にも同じ速さで削れるので、マスクの下まで回り込み(アンダーカット)、断面は丸くなります。異方性エッチングは特定の方向にだけ速く削れるもので、方向性を生むしくみは2種類あります。1つは、プラズマ中で垂直に加速されたイオンが底面の反応を助け、側壁を保護膜が守るドライエッチングで、ほぼ垂直な側壁がつくれます。もう1つは、KOHやTMAHのようなアルカリの液で単結晶シリコンを削ると、(111)面だけが非常に遅く削れるウェットエッチングで、形は結晶面で決まります。ウェットだから等方性、ドライだから異方性とは限らず、ラジカルだけを使うドライエッチングは等方的に削れます。方向性と選択比やダメージはトレードオフの関係にあるため、目的に合わせて使い分けます。

項目等方性エッチング異方性エッチング(イオンを使うドライ)結晶面に依存する異方性エッチング(ウェット)
方向性を生むしくみなし。化学反応がどの向きにも同じように進む電界で垂直に加速されたイオンが底面の反応を促し、側壁は保護膜で守られる結晶面によってエッチングの速さが大きく違い、シリコンの(111)面が非常に遅く削れる
断面の形マスクの開口部を中心とした、丸みのある形ほぼ垂直な側壁(テーパー角は条件で調整する)(100)面のウエハでは約54.7°の斜面、(110)面のウエハでは垂直な壁
アンダーカット大きい。深さとほぼ同じだけ横にも削れ、オーバーエッチングでさらに広がる小さい<110>方向にそろえたマスクの辺では(111)面で止まる。凸の角や方向のずれた辺の下は削れる
代表的な方法フッ酸による酸化膜のエッチングなどのウェットエッチング、XeF2のガス、ラジカルだけを使うダウンフロー型のプラズマRIE、ICPを使うエッチング、ボッシュプロセスKOHやTMAHなどのアルカリの水溶液
選択比高くしやすい。物理的に削る作用がほとんどないイオンの衝撃でマスクや下地も削られやすく、方向性を強めるほど下がりやすい高い。シリコン窒化膜や酸化膜(特にTMAH)のマスクはほとんど削られない
ダメージ少ないイオンの衝撃や帯電によるダメージが起こりうるプラズマによるダメージはない
形の制約膜厚より細いパターンには向かないマスクの形をほぼそのまま転写できる。深い穴ではアスペクト比による速さの低下などが起こる単結晶シリコンだけに使え、形は結晶面で決まる。マスクを結晶方位に合わせて配置する必要がある
主な用途膜の全面除去、洗浄、MEMSの犠牲層エッチング、GAAのナノシートの間のSiGeの除去トランジスタのゲート、コンタクト、トレンチ、ビアなどの微細なパターン、MEMSの深い垂直な穴MEMSのダイヤフラム、V溝、ピラミッド形の穴などのバルク加工

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

等方性エッチング
寸法の精度よりも、高い選択比や下地を傷めないことが大切なとき。アンダーカットを利用して、構造の下をくり抜いたり、層を横から取り除いたりするときにも使います。
異方性エッチング(イオンを使うドライ)
細くて垂直なパターンを、マスクの寸法どおりに転写したいとき。先端のLSIの微細なパターンは、ほとんどこの方法でつくります。
結晶面に依存する異方性エッチング(ウェット)
単結晶シリコンに、結晶面で決まる正確な斜面やV溝、薄いダイヤフラムを安くつくりたいとき。主にMEMSのバルク加工に使います。

よくある質問

ウェットエッチングは必ず等方性ですか?

必ずではありません。アモルファスや多結晶の膜を薬液で削ると一般に等方的になりますが、単結晶シリコンをKOHやTMAHで削ると、結晶面によって速さが大きく違うため異方性になります。逆にドライエッチングでも、イオンを使わずラジカルやXeF2のガスだけで反応させれば、等方的に削れます。

イオンを使うと、なぜ縦にだけ削れるのですか?

ウエハの電極に生じる負の電位でイオンがほぼ垂直に加速され、主に底面に当たるからです。イオンの衝撃はラジカルとの化学反応を大きく促すので、底面は側壁よりずっと速く削れます。側壁には反応でできたポリマーなどの保護膜が付いて、横方向のエッチングを防ぎます。

方向性と選択比はなぜトレードオフになるのですか?

方向性を強めるには、イオンのエネルギーを上げて物理的な作用を強めますが、この作用は材料を選ばないため、マスクや下地も削ってしまうからです。等方性の化学的なエッチングは物理的に削る作用がほとんどなく、選択比を高くしやすい一方、横にも削れます。実際の工程では、ガスの組成、イオンのエネルギー、保護膜のつき方を調整してバランスをとります。

アンダーカットはどのくらい起こりますか?

完全に等方的なエッチングでは、削った深さとほぼ同じだけマスクの端から横に削れます。厚さ1 µmの膜を下地まで削ると、横にも約1 µm削れ、オーバーエッチングの分だけさらに広がります。そのため、膜厚より細いパターンの加工には異方性エッチングを使います。

理解度チェック

厚さ1 µmの膜を、完全に等方的なウェットエッチングでちょうど下地まで削ったとき、マスクの端から横方向に削れる量(アンダーカット)のおよその大きさはどれか。

  1. A約1 µm
  2. B約10 µm
  3. Cほぼ0
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正解:A. 約1 µm

等方的なエッチングでは縦と横に同じ速さで削れるため、1 µm削って下地に達したときには、マスクの端から横方向にも約1 µm削れています(アンダーカット)。さらにオーバーエッチで横方向の削れは増えます。そのため膜厚と同程度以上の寸法の変化が生じ、膜厚より細いパターンの加工には向きません。逆に、MEMSで構造の下をくり抜く用途などではこの性質を利用します。

プラズマで生成したラジカルだけをウエハに供給するダウンフロー型エッチングの特徴として正しいものはどれか。

  1. Aイオン衝撃が強いため、異方性が非常に高い
  2. Bイオン衝撃がほとんどないため、ダメージが少なく等方的にエッチングできる
  3. C薬液を使ってエッチングする
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正解:B. イオン衝撃がほとんどないため、ダメージが少なく等方的にエッチングできる

ダウンフロー型(リモートプラズマ型)では、プラズマを発生させる場所とウエハを離し、途中でイオンや電子が再結合して失われるため、寿命の長い中性のラジカルだけがウエハに届きます。イオンが当たらずプラズマからの紫外線もさえぎられるためダメージが少なく、等方的にエッチングできます。レジストの除去、ダメージを嫌う工程での膜の除去、ナノシートの間のSiGeの除去などに使われます。

MEMSの犠牲層除去などで、プラズマを使わずにシリコンを等方的にエッチングできる気体はどれか。

  1. AO2(酸素)
  2. BN2(窒素)
  3. CXeF2(二フッ化キセノン)
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正解:C. XeF2(二フッ化キセノン)

XeF2は室温付近で昇華するガスで、シリコンと自発的に反応してSiF4などをつくり、プラズマなしで等方的にシリコンをエッチングします(2XeF2 + Si → 2Xe + SiF4)。酸化膜や窒化膜、レジスト、多くの金属に対する選択比が1000以上と非常に高く、液体を使わないためスティクションが起きにくいことから、MEMSの構造をシリコンの犠牲層から解放するのに使われます。

  1. シリコンにXeF2のガスとアルゴンイオンのビームを同時に当てると、それぞれ単独の場合の和よりはるかに速くエッチングが進む。このことが示すドライエッチングの性質はどれか。
  2. エッチングでできた穴や溝の側壁が垂直からどれだけ傾いているかを表す指標はどれか。
  3. 異方性エッチングの説明として正しいものはどれか。

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関連する用語の解説

等方性エッチング
縦にも横にも同じ速さで削れるエッチング。マスクの下に回り込んで削れる(アンダーカット)。
異方性エッチング
特定の方向(主に垂直方向)にだけエッチングが進む性質。微細パターンの加工に必要。
選択比
エッチングで、削りたい膜とマスクや下地膜とのエッチング速度の比。大きいほど下地を傷めにくい。
RIE(反応性イオンエッチング)
プラズマ中の反応性の粒子と、電界で加速したイオンを組み合わせて削るドライエッチング。垂直な異方性の加工ができる。
ボッシュプロセス(Deep RIE)
エッチングと側壁保護膜の堆積を短い周期で交互に繰り返し、シリコンに深く垂直な穴や溝を掘るドライエッチング技術。MEMSやTSVの加工に使われる。
犠牲層エッチング
構造の下に一時的に置いた層(犠牲層)をエッチングで取り除き、動ける梁や膜を浮かせる、MEMSの代表的な加工法。
ラジカル
不対電子をもち、化学的に非常に反応しやすい中性の原子や分子。プラズマ中にイオンよりはるかに多く存在し、化学的なエッチングや成膜を担う。
結晶方位
結晶の面や方向の向きを表すもの。(100)のようにミラー指数で表し、MOSFET用のシリコンウエハでは(100)面が一般的。

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