減衰係数 ζ = 0.5 の二次遅れ系(零点のない標準形)にステップを入力した。オーバーシュート(最大の行き過ぎ量の、最終値に対する割合)に最も近いものはどれか。
- A約16%
- B約21%
- C50%
制御対象とPID のゲイン Kp・Ki・Kd を決めると、目標値を 0 から 1 に変えたときの出力の動きを計算します。P だけで残る定常偏差、I を足すと消えること、ゲインを上げすぎると振動すること、操作量の上限で起きる積分の巻き上がりを、グラフで確かめられます。
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上のグラフの青い線が出力、点線が目標値(1)です。下のグラフの緑の線は制御器が出す操作量で、上限を決めたときは点線で示します。
ほかの入力は今の値のまま、選んだ入力だけを今の値の1/4〜4倍の範囲で変えたときの結果です。赤い点が今の値です。
PID 制御は、目標値と出力の差(偏差) e に比例する P、e を時間で積分した値に比例する I、e の変化の速さに比例する D の3つを足して操作量を決めます。P を大きくすると速く応答しますが、一次遅れの対象では偏差が残ります。例の「P 制御だけ」(K = 1、Kp = 4)では、最終値は K·Kp/(1 + K·Kp) = 0.8 で、0.2 の定常偏差が残ります。I を足すと、偏差が残っているあいだ操作量が増え続けるので、定常偏差がなくなります。D は偏差の変化を先回りして抑えるので、オーバーシュートや振動を減らしますが、雑音を大きくしやすいため、一般にフィルタを通して使います。
二次遅れの系では、減衰係数 ζ が小さいほどオーバーシュートが大きくなり、ステップ応答の最大のオーバーシュートは exp(−πζ/√(1 − ζ²)) で表されます。例の「二次遅れに P 制御」では、閉ループの ζ が約0.14になり、オーバーシュートは約64%です。ζ = 0.5 では約16%、ζ = 0.7 では約5%が目安です。積分つきの対象(モータの位置など)に P 制御をかける例では、閉ループが ζ = 0.5 の二次遅れになり、オーバーシュートは約16%になります。積分を含む対象では、P 制御だけでもステップ入力に対する定常偏差は残りません。
むだ時間は、操作してから出力に効きはじめるまでの遅れで、配管を流れる時間や、測定・通信の遅れなどで生じます。むだ時間があると、制御器は遅れた出力を見て操作量を決めるため、ゲインを上げすぎると振動し、さらに上げると発散します。例の「ゲインが大きすぎる」では、Kp = 20 で出力が発散します。ジーグラ・ニコルスの方法のように、むだ時間と時定数からゲインの目安を決める方法がありますが、実際の装置では、小さめのゲインから始めて応答を見ながら調整するのが安全です。
操作量には、モータの電圧やバルブの開度のように上限があります。上限に張り付いて出力が追いつかないあいだも、積分は偏差をため続けます。目標値に届いたあとも、ためた積分が減るまで操作量が下がらないため、大きなオーバーシュートが起きます。これが積分の巻き上がり(ワインドアップ)です。例の「巻き上がり」では、上限1.5でオーバーシュートが約35%になり、対策を入れると約7%に減ります。このツールの対策は、操作量が上限に張り付き、偏差がさらに上限を強める向きのあいだ、積分を止める方法です。ほかに、上限との差を積分に戻す方法(バックカリキュレーション)もあります。
正解:C. 操作量が上限に張り付いている間も積分項が偏差を積み重ね続けるため、偏差の符号が変わってもしばらく操作量が下がらず、大きなオーバーシュートが起こる現象
モータの電圧やバルブの開度のように、操作量には上限と下限があります。大きな偏差が続いて操作量が上限で飽和すると、操作量はそれ以上増えないのに、積分項は偏差を積み重ね続けて大きな値になります。制御量が目標値を超えて偏差の符号が変わっても、ためこんだ積分の値が減るまで操作量は上限に張り付いたままなので、大きなオーバーシュートと長い振動が起こります。対策として、飽和している間は積分を止めたり、積分の値を制限したりするアンチワインドアップが使われます。
まず P だけで、振動しはじめる手前までゲインを上げ、次に I を足して定常偏差をなくし、オーバーシュートが大きければ D を足すのが基本の流れです。むだ時間と時定数が分かっていれば、ジーグラ・ニコルスなどの調整則で目安を決められます。実際の装置では、操作量の上限や雑音も考えて、小さめのゲインから調整します。
P 制御では、操作量が偏差に比例するので、操作量を出し続けるには偏差が残っている必要があるからです。一次遅れの対象 K/(Ts+1) では、最終値は K·Kp/(1 + K·Kp) になり、偏差は 1/(1 + K·Kp) です。I を足すか、対象が積分を含めば、ステップ入力に対する定常偏差はなくなります。
微分は変化の速い成分ほど大きくするので、測定の雑音を大きくし、目標値を急に変えた瞬間には操作量が大きく跳ね上がります。そこで、一次のローパスフィルタを通して高い周波数を抑えます。このツールでは、フィルタの時定数を Kd/(N·Kp) にしていて、N を小さくするほどフィルタが強く効きます。