真性半導体と不純物半導体の違い:キャリア・フェルミ準位・温度特性を比較

真性半導体は不純物をほとんど含まない純粋な半導体で、熱によって価電子帯から伝導帯に上がった電子と、そのあとにできた正孔が同じ数だけあります。不純物半導体(外因性半導体)は、ドナーやアクセプタを意図的に加えたもので、電子か正孔のどちらかが多数キャリアになります。室温のシリコンの真性キャリア密度は約1×10¹⁰ cm⁻³と小さいので、実際のデバイスでは不純物を加えて、キャリアの密度と導電型を決めています。

項目真性半導体不純物半導体(n型・p型)
不純物意図的には加えない(理想的には完全に純粋)ドナー(リン、ヒ素など)かアクセプタ(ホウ素など)を加える
キャリアの起源熱による電子と正孔の対の生成だけ主に不純物のイオン化。熱による対の生成もわずかにある
電子と正孔の数等しい(n = p = ni)どちらかが多い。n型ではn ≈ ND、p型ではp ≈ NA
キャリア密度(室温のシリコン)約1×10¹⁰ cm⁻³不純物の濃度でほぼ決まる。真性キャリア密度より何桁も大きくできる
電子密度と正孔密度の積n × p = ni²熱平衡では同じくn × p = ni²。少数キャリアの密度は ni² / 不純物濃度
フェルミ準位バンドギャップのほぼ中央(真性フェルミ準位)n型では伝導帯側、p型では価電子帯側に寄る
抵抗率(室温のシリコン)高い(10⁵ Ω·cm台)低い。不純物の濃度に応じて何桁も下がる
温度が上がるとキャリアが指数関数的に増え、抵抗率が大きく下がる室温を含む中間の温度範囲ではキャリア密度がほぼ一定。極低温ではイオン化しなくなって減り(フリーズアウト)、高温では熱で生まれるキャリアが上回って真性半導体と同じふるまいになる
使われ方そのままデバイスに使うことは少ない。不純物を加える出発点となる高純度の結晶トランジスタ、ダイオード、ウェル、ソース・ドレインなど、ほぼすべてのデバイス

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

真性半導体
物性を理解するときの基準として考えます。真性キャリア密度niは、n × p = ni²を通して、不純物半導体の少数キャリアの密度やPN接合のリーク電流を決めます。
不純物半導体
デバイスを作るとき。不純物の種類と濃度で導電型と抵抗率を決め、n型とp型を組み合わせてPN接合やトランジスタを作ります。
高温での注意
温度が上がると真性キャリア密度が急に増え、不純物で決めた性質が失われていきます。バンドギャップの大きいSiCやGaNは真性キャリア密度が非常に小さいので、シリコンより高い温度でも動作できます。

よくある質問

真性半導体にも電流は流れますか?

流れます。室温でも熱によって電子と正孔の対ができるので、わずかに電気を通します。ただしシリコンでは、真性キャリア密度が約1×10¹⁰ cm⁻³と、原子密度(約5×10²² cm⁻³)に比べて非常に小さいため、抵抗率は高くなります。

不純物半導体を「外因性半導体」とも呼ぶのはなぜですか?

キャリアの多くが、半導体そのものではなく、外から加えた不純物に由来するからです。英語では、真性半導体をintrinsic semiconductor、外因性半導体をextrinsic semiconductorと呼び分けます。

どのくらい不純物を加えるとキャリア密度が変わりますか?

シリコンの真性キャリア密度は約1×10¹⁰ cm⁻³なので、それより十分多いドナーやアクセプタを加えると、キャリア密度はほぼ不純物の濃度で決まります。たとえば1×10¹⁶ cm⁻³のリンは、シリコン原子およそ500万個に1個にすぎませんが、電子密度は真性の100万倍になります。

不純物半導体の温度を上げるとどうなりますか?

シリコンでは、室温を含む中間の温度範囲で、キャリア密度はほぼ不純物の濃度に等しく一定です。さらに温度を上げて真性キャリア密度が不純物の濃度に近づくと、熱で生まれたキャリアが増えて真性半導体と同じふるまいになり、PN接合などが正しく働かなくなります。

理解度チェック

真性半導体の温度を上げたとき、真性キャリア密度はどうなるか。

  1. A増加する
  2. B減少する
  3. C変化しない
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正解:A. 増加する

温度が上がると、価電子帯の電子が熱エネルギーでバンドギャップを越えやすくなり、電子と正孔の対が増えます。真性キャリア密度は ni ∝ T^(3/2)·exp(−Eg/2kT) で、シリコンでは室温付近で約10 ℃上がるごとにおよそ2倍になります。この急な増加が、pn接合の逆方向の漏れ電流が高温で増える原因であり、バンドギャップの大きいSiCやGaNが高温動作に強い理由でもあります。

真性半導体の抵抗率の温度依存性として正しいものはどれか。

  1. A温度が上がると抵抗率が下がる
  2. B温度が上がると抵抗率が上がる
  3. C温度によらず抵抗率は一定である
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正解:A. 温度が上がると抵抗率が下がる

真性半導体では、温度が上がるとバンドギャップを越えて励起されるキャリアが指数関数的に増えるため、抵抗率は下がります(負の温度係数)。金属はキャリア数がほぼ一定で、格子振動による散乱が増えるため抵抗率が上がります。この性質を利用したのがサーミスタ(NTC)です。ただし不純物を添加したシリコンでは、常温付近ではキャリア数がほぼ一定のため、移動度の低下で抵抗がむしろ上がる範囲もあります。

熱平衡状態の半導体における電子密度nと正孔密度pの積(n×p)として正しいものはどれか。(ni:真性キャリア密度)

  1. A常に0になる
  2. Bni の2乗に等しい
  3. C不純物濃度の2乗に等しい
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正解:B. ni の2乗に等しい

熱平衡状態では、不純物を添加しても n × p = ni² が成り立ちます(質量作用の法則)。電子を増やすと再結合の相手が増えるため、正孔はその分だけ減るという関係です。例えばシリコン(ni ≈ 1×10¹⁰ cm⁻³)に1×10¹⁶ cm⁻³のドナーを入れると、正孔は1×10⁴ cm⁻³になります。光の照射や電流の注入がある非平衡状態では成り立たず、np > ni² になります。

  1. ドナー濃度1×10¹⁶ cm⁻³のn型シリコン(ドナーはすべてイオン化、真性キャリア密度ni = 1×10¹⁰ cm⁻³)の正孔密度はおよそいくらか。
  2. ドナー濃度5×10¹⁶ cm⁻³とアクセプタ濃度2×10¹⁶ cm⁻³の両方を含むシリコン(室温、すべてイオン化)の性質として正しいものはどれか。
  3. n型シリコンを極低温まで冷やしたとき、キャリア密度が大きく減少する理由として正しいものはどれか。

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関連する用語の解説

真性キャリア密度
不純物を含まない半導体で、熱によって生じる電子と正孔の密度(niと書く)。シリコンでは室温で約1×10¹⁰ cm⁻³で、温度が上がると急激に増える。熱平衡では n × p = ni² が成り立つ。
ドナー
半導体に電子を供給する不純物。シリコンに対してはリン(P)やヒ素(As)などのV族元素で、n型半導体をつくる。
アクセプタ
半導体から電子を受け取り、正孔を生じさせる不純物。シリコンに対してはホウ素(B)などのIII族元素で、p型半導体をつくる。
フェルミ準位
電子がその準位を占める確率がちょうど1/2になるエネルギー。n型では伝導帯側に、p型では価電子帯側に寄る。
縮退半導体
不純物濃度が非常に高く、フェルミ準位が伝導帯や価電子帯の中に入り込んだ半導体。金属に近い性質を示し、トンネルダイオードや低抵抗のコンタクトに使われる。

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