BJTとMOSFETの違い:制御方式・速度・用途を比較

バイポーラトランジスタ(BJT)はベース電流で制御し、MOSFETは絶縁されたゲートの電圧で制御します。この違いから、ほかの特徴の多くが説明できます。MOSFETは定常的な入力電流がほとんど流れず、数十億個も集積しやすいので、デジタルICの主役です。一方、BJTは相互コンダクタンスが大きく雑音が小さいので、アナログやRFの回路で今も使われます。

項目BJTMOSFET
制御方式電流制御。ベース電流でコレクタ電流が決まる電圧制御。ゲート電圧でドレイン電流が決まる
入力電流定常的にベース電流が必要(コレクタ電流を電流増幅率で割った値)定常的なゲート電流はほぼ0。ただしスイッチングのたびにゲート容量の充放電が必要
キャリア電子と正孔の両方が関わる(バイポーラ)チャネルを流れるのは1種類のキャリア(ユニポーラ)
相互コンダクタンス同じ電流なら大きい(gm = IC / VT。1 mAで約38 mS)同じ電流なら小さい(gm = 2 ID / (VGS − Vth))
スイッチング速度飽和まで駆動すると、少数キャリアの蓄積で遅くなる少数キャリアの蓄積がないので速い
オン状態飽和電圧VCE(sat)は約0.1〜0.3 Vで一定抵抗RDS(on)として働き、損失はI²R
温度特性温度が上がると電流が増え、熱暴走のおそれがある。並列接続が難しい温度が上がるとオン抵抗が増え、電流が分散する。並列接続しやすい
雑音低周波(1/f)雑音が小さい1/f雑音が大きい
集積度面積が大きく、バイアス電流も必要。アナログ・RF・高速回路で使う(SiGe HBT、BiCMOS)小さく、CMOSでは静的消費電力がほぼ0。マイクロプロセッサやメモリの基本素子
主な用途アナログ増幅、RF回路、バンドギャップ基準電圧、単純なディスクリートのスイッチデジタル論理、メモリ、電力スイッチング、現代のほとんどのIC

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

BJT
電流あたりの利得が欲しいとき、低雑音が必要なとき、精度の高い基準電圧が欲しいとき。アナログのフロントエンド、オーディオやRFの増幅器、バンドギャップ基準など。
MOSFET
スイッチとして使うとき、またはチップ上に非常に多くの素子を載せたいとき。デジタル論理、メモリ、電源変換、モータ駆動など。
IGBT
IGBTは、MOSゲートとバイポーラの出力段を組み合わせた素子です。モータ駆動やインバータなど、電圧も電流も大きい用途で使われます。

よくある質問

BJTとMOSFETの最も大きな違いは何ですか?

BJTはベース電流で制御し、MOSFETは絶縁されたゲートの電圧で制御します。MOSFETは定常的なゲート電流がほとんど流れないので、非常に多くの素子を集積しやすくなります。

なぜデジタルチップにはBJTでなくMOSFETが使われるのですか?

MOSFETは小さく、CMOS回路では静的消費電力がほとんどありません。BJTはバイアス電流が必要で面積も大きいので、数十億個を1チップに載せると熱で壊れてしまいます。

BJTがMOSFETより優れるのはどんなときですか?

BJTは、同じ電流なら相互コンダクタンスが大きく、低周波の雑音も小さいので、アナログ増幅器、RF回路、バンドギャップ基準電圧などで今も使われています。

IGBTとは何ですか?

IGBTは、MOSゲートとバイポーラの出力段を組み合わせた素子です。モータ駆動やインバータなど、高電圧・大電流の用途で使われ、導通損失がMOSFETより小さくなります。

理解度チェック

バイポーラトランジスタとMOSFETの制御の違いとして正しいものはどれか。

  1. Aバイポーラトランジスタはベース電流で制御し、MOSFETはゲート電圧で制御する(ゲートに直流電流はほとんど流れない)
  2. Bバイポーラトランジスタは光で、MOSFETは温度で制御する
  3. Cどちらもゲートの電圧で制御し、制御端子に直流電流は流れない
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正解:A. バイポーラトランジスタはベース電流で制御し、MOSFETはゲート電圧で制御する(ゲートに直流電流はほとんど流れない)

バイポーラトランジスタはベース電流でコレクタ電流を制御する電流制御型です。MOSFETはゲートが絶縁膜で隔てられた電圧制御型で、定常的なゲート電流はほぼ0ですが、スイッチングのたびにゲート容量を充放電する電流は流れます。そのため低速では駆動電力が小さく、高速・大容量では駆動回路の能力が重要になります。両者の長所を組み合わせたのが、MOSゲートで駆動するIGBTです。

シリコンのバイポーラトランジスタが飽和領域にあるときの、コレクタ-エミッタ間電圧の目安として正しいものはどれか。

  1. A約0.1〜0.3 V
  2. B約5 V
  3. C約20 V
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正解:A. 約0.1〜0.3 V

飽和領域では両方の接合が順バイアスになり、2つの接合の順方向電圧がほぼ打ち消し合うため、VCE(sat)は約0.1〜0.3 Vと小さくなります。スイッチのオン時の電圧降下にあたり、損失は VCE(sat) × IC です。大電流ではコレクタの抵抗分が加わってVCE(sat)は大きくなります。MOSFETのオン抵抗による電圧降下と比べて、低電圧・大電流ではMOSFETが有利になることが多くなります。

コレクタ電流1 mAで動作しているバイポーラトランジスタの相互コンダクタンスgmはおよそいくらか。(室温、熱電圧VT ≈ 26 mVとする)

  1. A約0.38 mS
  2. B約38 mS
  3. C約3.8 S
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正解:B. 約38 mS

バイポーラトランジスタの相互コンダクタンスは gm = IC/VT で、1 mA ÷ 26 mV ≈ 38 mS です。電流だけで決まり、トランジスタの大きさや製造ばらつきに左右されないのが特徴です。MOSFETの gm = 2ID/(VGS − Vth) は、VGS − Vth が通常0.1 V以上あるため、同じ電流ではバイポーラのほうが2〜4倍大きくなります。この大きなgmが、低雑音・高利得のアナログ回路でバイポーラが使われる理由の1つです。

  1. CMOSインバータの静的(定常状態の)消費電力が小さい理由として正しいものはどれか。
  2. パワーMOSFETを複数並列に接続して使いやすい理由として、オン抵抗の温度依存性に関する説明で正しいものはどれか。
  3. シリコンのMOSFETとIGBTの一般的な使い分けとして正しいものはどれか。

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関連する用語の解説

パワーMOSFET
大きな電流や電圧を扱えるようにしたMOSFET。スイッチングが速く、電源回路などで広く使われる。
HBT(ヘテロ接合バイポーラトランジスタ)
エミッタとベースにバンドギャップの異なる材料を使ったバイポーラトランジスタ。SiGeやGaAs系などがあり、高周波の増幅器に使われる。

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