SAR・ΔΣ・パイプライン・フラッシュADCの違い:方式を比較

アナログ・デジタル変換器(ADC)は、いくつもの方式で作れ、方式ごとに、速度と分解能のバランスが違います。フラッシュ型は最も速いですが、ビット数は少なめです。SAR型は、小さく、低消費電力で、中程度の速度の汎用的な選択肢です。パイプライン型は、高速で、中〜高の分解能を実現します。ΔΣ型は、速度と引き換えに最高の分解能が得られ、オーディオや精密なセンサーに向きます。

項目フラッシュ型SAR型パイプライン型ΔΣ型
仕組み2ᴺ − 1個の比較器で、入力をすべてのしきい値と同時に比較する二分探索。1つの比較器と内部のDACで、1クロックに1ビットずつ決める段をつなぎ、各段が数ビットを決めて、増幅した残りを次の段へ渡す粗いモジュレータでオーバーサンプリングして雑音を整形し、デジタルフィルタで出力を作る
一般的な分解能4〜8ビット8〜18ビット8〜16ビット16〜24ビット以上
一般的な速度最も速い。数GS/sまでkS/sから数十〜数百MS/s10 MS/sから数百MS/s最も遅い。約1 MS/sまで
遅延1クロックNビットで、Nクロック数クロック長い。デジタルフィルタのため
消費電力と面積分解能とともに急速に増える。大きく、電力も多い非常に低消費電力で、小さい中程度から大きい中程度。デジタルフィルタが面積をとる
アンチエイリアスフィルタ急峻なフィルタが必要急峻なフィルタが必要急峻なフィルタが必要緩くてよい。オーバーサンプリングのため
主な用途高速のオシロスコープ、光や無線の受信機、パイプラインの内部のサブADCマイコンのADC、IoTのセンサー、汎用のデータ収集映像、通信、イメージングのシステムオーディオのコーデック、はかり、精密な計測

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

フラッシュ型
極端な速度が必要で、ビット数は少なくてよいとき。または、ほかの方式の内部の高速な部品として。
SAR型
中程度の速度と、中〜高の分解能の標準です。特に、消費電力と大きさが重要なとき。
パイプライン型
高い速度と、よい分解能の両方が必要なとき。映像や無線の受信機など。
ΔΣ型
速度よりも分解能が重要なとき。オーディオ、はかり、低い周波数のセンサーなど。

よくある質問

最も速いADCの方式はどれですか?

フラッシュ型です。入力をすべてのしきい値と同時に比較し、数GS/sに達しますが、分解能は数ビットだけです。

なぜΔΣ型ADCは精度が高いのですか?

粗いモジュレータでオーバーサンプリングし、量子化雑音を高い周波数へ追いやって、デジタルフィルタで除きます。低速で、16〜24ビットの分解能が得られます。

SAR型ADCとは何ですか?

逐次比較型のADCで、1つの比較器と内部のDACで二分探索をして、1クロックに1ビットずつ決めます。小さく低消費電力で、マイコンによく使われます。

なぜフラッシュ型ADCは多くの比較器が必要なのですか?

Nビットのフラッシュ型には、2ᴺ − 1個の比較器が必要で、たとえば8ビットなら255個です。分解能とともに、大きさと電力が急速に増えます。

理解度チェック

フラッシュ型ADコンバータの特徴として正しいものはどれか。

  1. A多数の比較器を並列に並べて一度に変換するため高速だが、分解能を上げると回路規模が急増する
  2. B1ビットずつ順に比較して変換するため、速度は遅いが回路が小さい
  3. C入力電圧を長い時間積分するため、高精度だが変換が遅い
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正解:A. 多数の比較器を並列に並べて一度に変換するため高速だが、分解能を上げると回路規模が急増する

フラッシュ型は、入力を2ᴺ−1個の比較器で同時に全しきい値と比べるため、1回の比較で変換が終わり、最も高速な方式です(数GS/s級)。代わりにNビットで比較器が2ᴺ−1個必要で、8ビットで255個、10ビットで1023個と急増し、面積・消費電力・入力容量が大きくなります。そのため6〜8ビット程度の超高速用途に使われ、パイプライン型やサブレンジ型の部品としても使われます。

逐次比較型(SAR型)ADコンバータの動作として正しいものはどれか。

  1. A入力電圧を一定時間積分し、放電にかかる時間を計測する
  2. B上位ビットから順に、内部DACの出力と入力電圧を比較して1ビットずつ決めていく
  3. Cオーバーサンプリングとノイズシェーピングによって高分解能を得る
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正解:B. 上位ビットから順に、内部DACの出力と入力電圧を比較して1ビットずつ決めていく

逐次比較型は、最上位ビットから順に「入力は内部DACの出力より大きいか」を比較し、二分探索のように1ビットずつ決めていきます。Nビットの変換にN回の比較が必要で、比較器は1個で済みます。速度(数kS/s〜数十MS/s)・精度(8〜18ビット)・消費電力のバランスがよく、マイコン内蔵ADCの主流です。積分を使うのは二重積分型、オーバーサンプリングを使うのはΔΣ型です。

ΔΣ(デルタシグマ)型ADコンバータの特徴として正しいものはどれか。

  1. Aオーバーサンプリングとノイズシェーピングにより、高い分解能を得やすい
  2. Bすべての方式の中で最も変換が高速である
  3. CNビットの変換に 2ᴺ−1 個の比較器が必要である
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正解:A. オーバーサンプリングとノイズシェーピングにより、高い分解能を得やすい

ΔΣ型は、信号帯域よりはるかに高い周波数でサンプリングし(オーバーサンプリング)、帰還ループで量子化ノイズを高い周波数側に追いやって(ノイズシェーピング)、デジタルフィルタで取り除きます。1ビットの粗い量子化器でも、低い周波数では20ビット以上の分解能が得られ、アナログ部品の精度にあまり頼りません。オーディオ、計測、センサーの読み取りに使われますが、レイテンシが大きく高速用途には向きません。

  1. 3ビットのフラッシュ型ADコンバータに必要なコンパレータの数はいくつか。
  2. Nビットの逐次比較型ADコンバータが、1回の変換で行う比較の回数として基本的に正しいものはどれか。
  3. ΔΣ型ADコンバータで、高速で粗い量子化出力を、低いサンプリング周波数の高分解能なデータに変換するデジタル回路はどれか。

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関連する用語の解説

逐次比較型ADC
内部のDACと比較器を使い、上位ビットから1ビットずつ決めていくADC。速度と精度、消費電力のバランスがよい。
ΔΣ型ADC
高い周波数でオーバーサンプリングし、量子化雑音を高い周波数へ追いやってから取り除くADC。音声や計測などの高分解能の用途に使う。
フラッシュ型ADC
多数のコンパレータを並べて入力を一度に比較する、最も高速なADコンバータ。Nビットには 2ᴺ − 1 個のコンパレータが必要で、分解能を上げると回路が急に大きくなる。
パイプライン型ADC
変換を複数の段に分け、各段が数ビットずつ決めて残りの誤差を次の段へ送る、流れ作業のようなADコンバータ。高速と中〜高分解能を両立する。

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