2次元材料とは

にじげんざいりょう

原子1層から数層の厚さでも安定に存在する層状の材料。MoS2などの半導体は、シリコンでは難しい極めて薄いチャネルをつくれるため、将来の極微細トランジスタの材料として研究されている。

「2次元材料」は、3分野の5問の練習問題に出てきます(先端トランジスタ(FinFET・GAA), エピタキシャル成長, エッチングなど)。

この用語の分野: 先端トランジスタ(FinFET・GAA)

2次元材料とは

2次元材料は、原子が面内では強い共有結合でつながり、層と層の間は弱いファンデルワールス力で重なっている層状物質から、1層または数層を取り出したものです。炭素のグラフェン、絶縁体の六方晶窒化ホウ素(hBN)、半導体の遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)が代表的です。TMDはモリブデンやタングステンなどの遷移金属と、硫黄やセレンなどのカルコゲン元素からなり、MoS2の1層の厚さは約0.65 nmです。グラフェンにはバンドギャップがないため、トランジスタのチャネルには主にTMDが検討されています。

極薄のチャネルに向く理由

短チャネル効果を抑えるには、ゲートの長さに比べてチャネルを十分に薄くする必要があります。シリコンを数nm以下に薄くすると、表面の凹凸による散乱が強まって移動度が大きく下がり、厚さのわずかなばらつきでしきい値電圧も変わります。2次元材料は表面に余った結合の手(ダングリングボンド)がなく、1層の厚さが材料で決まるため、1 nm以下の厚さでも半導体の性質を保ちます。このため、ナノシート型GAAやCFETのチャネルをさらに薄くする候補とされ、n型にはMoS2、p型にはWSe2などが検討されています。

コンタクトとゲート絶縁膜の難しさ

2次元材料のトランジスタでは、金属電極との接触抵抗が大きくなりやすいことが大きな課題でした。2021年には、半金属のビスマスを電極に使うことで単層MoS2との接触抵抗を大きく下げた結果が、MIT、TSMC、台湾大学などの研究者によって報告されています。一方、表面に結合の手がないことは、ゲート絶縁膜をつくるときには不利に働きます。原子層堆積(ALD)の原料が表面に吸着しにくく、High-k膜が均一に成長しにくいため、種となる薄い層を使うなどの工夫が研究されています。

量産に向けた課題

300 mmウエハ全面に、欠陥の少ない単層の膜を均一に形成することはまだ難しく、高い温度で別の基板に成長させた膜を転写する場合は、しわや汚れ、破れが問題になります。p型で十分な性能を得ることや、シリコンのような不純物の添加による伝導の制御も課題です。2020年代半ばの時点で、2次元材料のチャネルは、シリコンのナノシートより先の世代をめざして研究が進められている段階です。

2次元材料の練習問題に挑戦

MoS2などの2次元材料をチャネルに使うトランジスタで、原子層堆積(ALD)によってHigh-kのゲート絶縁膜を均一に成膜しにくい主な理由として正しいものはどれか。

  1. A2次元材料は金属なので、絶縁膜と反応してしまうから
  2. B表面にダングリングボンドがほとんどなく、ALDの原料が吸着して膜が成長し始める場所が少ないから
  3. C2次元材料の表面は凹凸が大きく、ALDの原料が奥まで届かないから
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正解:B. 表面にダングリングボンドがほとんどなく、ALDの原料が吸着して膜が成長し始める場所が少ないから

2次元材料は層の表面に余った結合の手(ダングリングボンド)がないため、1 nm以下の厚さでも移動度が下がりにくいという長所があります。しかし同じ性質のために、ALDの原料が表面に化学的に吸着しにくく、膜は欠陥や粒界などから島状に成長して、薄く均一な絶縁膜になりにくくなります。プラズマを使う方法は膜を傷めやすいため、種となる薄い層を先につくるなどの工夫が研究されています。

2次元材料のうち、グラフェンではなくMoS2などの遷移金属ダイカルコゲナイドが論理回路のトランジスタのチャネルとして主に検討されている理由として正しいものはどれか。

  1. Aグラフェンにはバンドギャップがなく、ゲート電圧で電流を十分に止められないから
  2. Bグラフェンは厚さが1 cm以上ないと安定しないから
  3. Cグラフェンは電気を通さない絶縁体だから
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正解:A. グラフェンにはバンドギャップがなく、ゲート電圧で電流を十分に止められないから

グラフェンは移動度が非常に高い一方、バンドギャップがなく、オフ状態でも電流が流れてしまうため、オンとオフの電流比が大きくとれません。MoS2やWSe2などの遷移金属ダイカルコゲナイドは、1層でもバンドギャップをもつ半導体で、約0.65 nmの厚さのチャネルでもトランジスタとして動作します。このため、シリコンのナノシートをさらに薄くする次の候補として研究されています。

よくある質問

グラフェンをトランジスタのチャネルに使わないのはなぜですか?

グラフェンにはバンドギャップがなく、ゲート電圧で電流を十分に止められないためです。論理回路のトランジスタには、バンドギャップをもつMoS2やWSe2などの遷移金属ダイカルコゲナイドが検討されています。

2次元材料のチャネルは薄くても移動度が下がりにくいのはなぜですか?

表面にダングリングボンドがなく、層の厚さが原子のレベルでそろっているため、シリコンを極端に薄くしたときのような表面の凹凸による散乱や厚さのばらつきが起こりにくいからです。

2次元材料のトランジスタの主な課題は何ですか?

金属との接触抵抗、ゲート絶縁膜の均一な成膜、大面積で欠陥の少ない膜の形成、p型の性能、ドーピングの制御などです。

解説の中の「2次元材料」

「2次元材料」が出てくる問題(5問)

  1. MoS2などの2次元材料をチャネルに使うトランジスタで、原子層堆積(ALD)によってHigh-kのゲート絶縁膜を均一に成膜しにくい主な理由として正しいものはどれか。
  2. 2次元材料のうち、グラフェンではなくMoS2などの遷移金属ダイカルコゲナイドが論理回路のトランジスタのチャネルとして主に検討されている理由として正しいものはどれか。
  3. グラフェンなどの2次元材料で覆った基板の上に結晶を成長させ、成長した膜を基板からはがして再利用できるようにする研究段階の技術はどれか。
  4. 将来の極微細トランジスタのチャネル材料として研究されている、二硫化モリブデン(MoS2)などの材料の特徴として正しいものはどれか。
  5. プラズマで生成したイオンを中性化してからウエハに当て、帯電や紫外線によるダメージを抑えて加工する研究段階のエッチング方法はどれか。

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