降圧コンバータと昇圧コンバータの違い:電圧変換比・部品の配置・電流・効率・用途を比較

どちらも、スイッチ、コイル、ダイオード(または2つ目のスイッチ)、コンデンサという同じ部品で作るスイッチング方式のDC-DCコンバータですが、並べ方が違います。降圧コンバータは、入力とコイルの間にスイッチを置き、オンの時間の割合(デューティ比D)に応じて入力の電圧を切り刻んで平均し、理想的にはD倍の低い電圧を出します。昇圧コンバータは、入力の側にコイルを置き、スイッチでグランドにつないでコイルにエネルギーをためてから出力へ放出し、理想的には1/(1−D)倍の高い電圧を出します。

項目降圧(バック)コンバータ昇圧(ブースト)コンバータ
出力電圧の範囲入力より低い(0〜入力の電圧)入力より高い(入力の電圧以上)
理想的な電圧変換比(電流連続モード)Vout/Vin = DVout/Vin = 1/(1−D)
例(D = 0.5のとき)12 Vから6 V12 Vから24 V
部品の配置スイッチは入力とコイルの間、コイルは出力の側。ダイオードはスイッチとコイルの間の点とグランドの間コイルは入力の側、スイッチはコイルの後ろの点とグランドの間。ダイオードはその点と出力の間
動作オンでコイルを通して出力へ電流を送り、オフではダイオードを通してコイルの電流が流れ続けるオンでコイルにエネルギーをため、オフでコイルの電圧が入力に上乗せされて出力へ放出する
入力の電流断続的(スイッチがオンの間だけ流れる)。入力のコンデンサが重要連続的(コイルを通って流れ続ける)
出力の電流連続的(コイルから流れ続ける)。出力のリップルが小さい断続的(スイッチがオフの間だけ届く)。出力のコンデンサのリップル電流が大きい
効率条件により80〜95%程度条件により80〜95%程度。昇圧の比が大きいと下がる
制御制御のループを設計しやすい電流連続モードでは右半平面のゼロがあり、制御のループの帯域を上げにくい
スイッチを止めたとき入力と出力が切り離されるコイルとダイオードを通って、入力の電圧が出力に出たままになる。完全に切るには別のスイッチが必要
主な用途12 Vや5 VからCPUやSoCのコアの電圧(1 V前後)を作る、電池から低い電圧を作るリチウムイオン電池(約3.0〜4.2 V)から5 Vを作る、直列のLEDの駆動、交流の電源の力率の改善(PFC)

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

降圧(バック)コンバータ
入力より低い電圧を、大きな電流で効率よく作りたいとき。CPUやSoCのコアの電源、12 Vや5 Vからの各電圧の生成。
昇圧(ブースト)コンバータ
入力より高い電圧が必要なとき。電池から5 VのUSBの出力を作る、直列につないだLEDを駆動する、PFCで高い直流の電圧を作るとき。
昇降圧
電池の電圧が、使ううちに出力の電圧の上下をまたぐときは、両方の働きをもつ昇降圧(バックブースト)コンバータを使います。

よくある質問

変換比のDと1/(1−D)は、どう求めますか?

安定して動いているとき、コイルにかかる電圧を1周期で平均するとゼロになる(電圧と時間の積がつり合う)ことから求めます。降圧では、オンの間に(Vin − Vout)、オフの間に−Voutがかかるので、(Vin − Vout) × D = Vout × (1 − D)からVout = D × Vinです。昇圧では、Vin × D = (Vout − Vin) × (1 − D)からVout = Vin/(1 − D)になります。

昇圧コンバータで、入力より高い電圧が出るのはなぜですか?

スイッチがオンの間に、コイルに電流を流してエネルギーをためます。スイッチをオフにすると、コイルは電流を流し続けようとして電圧を発生し、それが入力の電圧に上乗せされてダイオードから出力へ流れるので、出力は入力より高くなります。

Dを1に近づければ、昇圧の比はいくらでも大きくできますか?

理想的には1/(1−D)は限りなく大きくなりますが、実際にはコイルやスイッチの抵抗による損失が増えて、出力の電圧は頭打ちになり、効率も下がります。実用的な昇圧の比は数倍程度までで、それ以上の比にはトランスを使う方式などを選びます。

同期整流とは何ですか?

ダイオードの代わりにMOSFETを使い、ダイオードが電流を流すタイミングでオンにする方式です。ダイオードの順方向の電圧(ショットキーバリアダイオードでも0.3〜0.5 V程度)による損失を減らせるので、出力の電圧が低いときほど効率が上がります。

理解度チェック

理想的な降圧チョッパ(バックコンバータ)で、入力電圧12 V、スイッチのデューティ比0.25のときの出力電圧はいくらか。

  1. A3 V
  2. B9 V
  3. C48 V
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正解:A. 3 V

理想的な降圧チョッパの出力電圧は「入力電圧 × デューティ比」で、12 V × 0.25 = 3 V です。スイッチのオン時間の割合を変えて出力を調整し、コイルとコンデンサで平均化して滑らかな直流にします。ダイオードの代わりにMOSFETを使う同期整流で効率は90%を超えます。CPUやメモリの低い電源電圧は、マザーボード上の多相の降圧チョッパでつくられています。

入力より高い直流電圧を出力するDC-DCコンバータはどれか。

  1. A昇圧チョッパ(ブーストコンバータ)
  2. B降圧チョッパ(バックコンバータ)
  3. Cブリッジ整流回路
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正解:A. 昇圧チョッパ(ブーストコンバータ)

昇圧チョッパは、スイッチがオンの間にコイルにエネルギーを蓄え、オフになったときにコイルの電圧を入力電圧に上乗せして出力します。理想的には出力電圧は 入力電圧 ÷ (1 − デューティ比) で、デューティ比0.5なら2倍です。乾電池1本からLEDを光らせる回路、太陽電池の電圧の昇圧、ハイブリッド車のモーター駆動電圧の昇圧、PFC回路などに使われます。

電力変換器のスイッチング周波数を高くすることの主な利点はどれか。

  1. Aスイッチング損失が必ず減る
  2. Bコイルやコンデンサなどの受動部品を小型化できる
  3. C電磁ノイズが必ず減る
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正解:B. コイルやコンデンサなどの受動部品を小型化できる

スイッチング周波数を高くすると、1周期あたりにコイルやコンデンサが蓄える必要のあるエネルギーが小さくなり、部品を小型化でき、電源を小型・軽量にできます。例えばトランスの大きさは周波数にほぼ反比例して小さくなります。一方、スイッチング損失やノイズは周波数とともに増えるため、高速でも損失の小さいSiCやGaNが高周波化を可能にしています。

  1. リニアレギュレータ(LDOなど)と比べたときのスイッチングレギュレータの特徴として正しいものはどれか。
  2. リレーのコイルなどの誘導性負荷に並列に接続するダイオード(フライホイールダイオード)の目的として正しいものはどれか。

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関連する用語の解説

DC-DCコンバータ
直流の電圧を別の大きさの直流の電圧に変換する回路。スイッチとコイル、コンデンサを使い、入力より低い電圧にする降圧型や、高い電圧にする昇圧型がある。
デューティ比
周期的なパルス信号で、1周期のうち出力がHighになっている時間の割合。PWMでは平均の電力を決める。
ショットキーバリアダイオード
金属と半導体の接合(ショットキー接合)を使ったダイオード。順方向電圧が低く、少数キャリアの蓄積がないため高速にスイッチングできる。
PMIC
電源管理IC。電池などから複数の電圧を作り、電源を入れる順番や電圧の切り替えを管理する部品。

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