レチクルとフォトマスクの違い:言葉の範囲・縮小倍率・大きさ・ペリクルを比較

フォトマスクは、回路のパターンを描いた露光用の原版をまとめて指す言葉です。レチクルはその一種で、もともとはウエハの一部(1個から数個のチップ分)のパターンだけを持ち、ステッパーやスキャナーで位置をずらしながら繰り返し露光する原版を指します。現在の量産の露光装置はパターンを1/4に縮小して投影するので、レチクル上のパターンはウエハ上の4倍の大きさです。これに対して、マスクアライナなどで使う等倍のフォトマスクは、ウエハ全面のパターンを同じ大きさで持ち、1回で全面を露光します。量産の現場ではレチクルのこともふつうに「マスク」と呼ぶため、2つの言葉はしばしば同じ意味で使われます。

項目レチクル(縮小投影用)等倍のフォトマスク(ウエハ全面用)
言葉の範囲フォトマスクの一種。ウエハの一部の領域のパターンを持ち、位置をずらして繰り返し露光する原版露光用の原版の総称。狭い意味では、ウエハ全面のパターンを等倍で持つマスクを指す
使う露光装置ステッパー(ステップ・アンド・リピート)やスキャナー(ステップ・アンド・スキャン)マスクアライナ(密着露光・近接露光)や、等倍の投影露光装置
ウエハ上のパターンとの倍率一般に4倍(投影光学系で1/4に縮小する)。古いステッパーでは5倍や10倍もあった1倍。マスク上の寸法がそのままウエハに写る
1回に露光する範囲1ショット分。スキャナーではウエハ上で最大約26 mm × 33 mmで、ショットを繰り返してウエハ全面を覆うウエハ全面を一度に露光する
基板の大きさと材料6インチ角(約152 mm)・厚さ約6 mmの合成石英が標準。EUV用は低熱膨張ガラスに多層膜をつけた反射型ウエハより一回り大きい角形のガラス板(ソーダ石灰ガラスや石英)。クロムでパターンをつくるものが多い
ペリクルDUVでは付けるのが標準。EUV用には厚さ数十nmの極薄の膜が開発されている密着露光や近接露光では、マスクをウエハのすぐ近くに置くので付けられない
誤差と欠陥の影響原版の寸法の誤差や小さな異物は、ウエハ上では縮小される。ただし欠陥は、すべてのショットの同じ位置に繰り返し転写される誤差や欠陥がそのままの大きさで転写される。密着露光ではレジストとの接触で汚れや傷がつきやすく、洗浄や交換が必要
主な使われ方先端のLSI(ロジック・メモリ)の量産で、微細な層をつくるMEMS、パワーデバイス、LED、研究開発など、寸法がµmオーダーの層
現場での呼び方露光装置まわりでは「レチクル」(レチクルステージ、レチクルリミットなど)。設計やマスクの製造では「マスク」(マスクセット、マスク枚数など)と呼ぶことも多い研究室やMEMSの工程では、単に「マスク」「フォトマスク」と呼ぶことが多い

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

レチクル
ステッパーやスキャナーで、微細なパターンを量産するとき。4倍の大きさで描くので原版をつくりやすく、原版の小さな誤差の影響も縮小されます。
等倍のフォトマスク
寸法がµmオーダーで、装置と原版のコストを抑えたいとき。マスクアライナで、ウエハ全面を一度に露光できます。
言葉の使い分け
量産の微細な層の話では、レチクルとフォトマスク(マスク)はほぼ同じ意味で使われます。区別したいときは、縮小投影用をレチクル、等倍の全面用をマスクと呼び分けます。

よくある質問

レチクルとフォトマスクは同じものですか?

広い意味では同じで、レチクルはフォトマスクの一種です。もともとは、ウエハ全面のパターンを等倍で持つものをマスク、一部の領域のパターンを持ち、ステッパーで繰り返し露光するものをレチクルと呼び分けていました。現在の量産ではほとんどの露光が縮小投影なので、レチクルのことも「マスク」と呼ぶのがふつうです。

なぜレチクルのパターンはウエハ上の4倍なのですか?

露光装置が投影光学系でパターンを1/4に縮小して転写するからです。原版の線を4倍の太さで描けるのでつくりやすく、原版の寸法の誤差や小さな異物の影響も、ウエハ上では小さくなります。その代わり、1ショットで露光できる範囲は、ウエハ上で約26 mm × 33 mmに限られます。

等倍のフォトマスクにペリクルを付けないのはなぜですか?

密着露光ではマスクをレジストに接触させ、近接露光でもマスクとウエハのあいだをごくわずかしかあけないため、マスクから数mm離して膜を張るペリクルを置く場所がないからです。そのため、マスクを定期的に検査し、洗浄して使います。

1枚のレチクルにはチップがいくつ入りますか?

チップの大きさによります。1ショットの範囲(ウエハ上で約26 mm × 33 mm)に入るだけ並べるので、小さなチップなら多数、非常に大きなチップなら1個です。1ショットより大きいチップは、そのままでは露光できません。

理解度チェック

現在の露光装置(スキャナー)で一般的な、マスクのパターンをウエハ上に投影するときの縮小倍率はどれか。

  1. A等倍(1/1)
  2. B1/4
  3. C1/100
答えと解説を見る

正解:B. 1/4

現在の露光装置では、マスクのパターンを1/4に縮小してウエハに投影するのが一般的です。マスク上のパターンはウエハ上の4倍の大きさでよいためマスクを製作しやすく、マスク上の小さな欠陥や寸法誤差も1/4に縮んで影響が小さくなります。マスクは6インチ角(152 mm)の石英板が標準で、その中に26×33 mmのショット4倍分が収まります。High-NA EUVでは方向によって1/4と1/8の縮小を組み合わせます。

フォトマスク(レチクル)のパターンを描くために主に使われる装置はどれか。

  1. A電子線描画装置
  2. Bステッパー
  3. CCMP装置
答えと解説を見る

正解:A. 電子線描画装置

フォトマスクのパターンは、細く絞ったり長方形に成形したり(可変成形ビーム)した電子線をマスク上のレジストに直接当てて描く電子線描画装置でつくります。マスクなしで非常に細かいパターンを描けますが、一筆書きのため1枚に十数時間かかることもあり、量産ではマスクを使って一括転写します。先端マスクでは、数十万本の電子ビームを同時に使うマルチビーム描画装置で、OPCや曲線のパターンを高速に描いています。

フォトマスクの上に一定の間隔をあけて張る薄い膜(ペリクル)の役割はどれか。

  1. A解像度を2倍にする
  2. B露光の光量を増やす
  3. C異物がマスク面に直接付着するのを防ぎ、ペリクル上に付いても焦点が合わず転写されにくくする
答えと解説を見る

正解:C. 異物がマスク面に直接付着するのを防ぎ、ペリクル上に付いても焦点が合わず転写されにくくする

マスクに異物が付くと、そのマスクで露光するすべてのウエハのすべてのショットに欠陥が転写されてしまいます。ペリクルはマスクから約6 mm離して枠に張った厚さ1 µm以下の透明な膜で、異物はペリクルの上に付くため焦点が合わずにぼやけ、ウエハには転写されにくくなります。EUV用にはEUV光を約90%透過し、高温に耐える数十nmの極薄膜(ポリシリコンやカーボンナノチューブなど)が開発されています。

  1. フォトマスクをつくるときに使う、石英ガラスの基板に遮光膜などをあらかじめ成膜した材料を何と呼ぶか。
  2. 現在のスキャナー型露光装置で、1回の露光(1ショット)でウエハ上に露光できる最大の領域の大きさとして一般的なものはどれか。
  3. ArF露光用のフォトマスクの基板に使われる材料はどれか。

リソグラフィの練習問題へ

関連する用語の解説

フォトマスク(レチクル)
回路のパターンを描いた露光用の原版。石英ガラスの基板に遮光膜のパターンを形成する(EUVでは反射型)。縮小投影の露光装置ではウエハ上の4倍の大きさでつくる。
ペリクル
フォトマスクの上に一定の間隔をあけて張る薄い膜。異物がマスク面に直接付くのを防ぎ、ペリクルの上に付いた異物は焦点が合わないため転写されにくい。
スキャナー
スリット状の光に対してマスクとウエハを同期して動かしながら露光する露光装置。現在の量産の露光装置の主流で、一般にマスクのパターンを1/4に縮小して投影する。
EUV露光
波長13.5 nmの極端紫外光を使う露光技術。反射光学系と真空環境を用いる。
フォトレジスト
光に反応して現像液への溶けやすさが変わる感光性材料。ポジ型は露光部が溶け、ネガ型は露光部が残る。

関連する比較