OPC・位相シフトマスク・変形照明の違い:変えるもの・解像度と焦点深度への効果・コストを比較

露光で転写できる最小の寸法は、レイリーの式 R = k1 × λ / NA で表されます。波長λと開口数NAが決まった露光装置で、より細かいパターンをつくるには係数k1を下げる必要があり、そのための工夫をまとめて超解像技術(RET)と呼びます。OPCは、光の回折でパターンがゆがむのを見越して、マスクのパターンの形を補正します。位相シフトマスクは、マスクを通る光の位相を180°ずらし、光の干渉を利用して像のコントラストを高めます。変形照明は、マスクを斜めの方向から照らし、細かいパターンからの回折光をレンズに取り込みやすくします。3つは変えるものが違うので、どれか1つを選ぶものではなく、組み合わせて使います。

項目OPC位相シフトマスク変形照明(斜入射照明)
変えるものマスクのパターンの形と寸法マスクを通る光の位相(と透過率)マスクを照らす光の角度の分布(光源の形)
解決する主な問題線の端の後退、角の丸まり、周りのパターンの密度による線幅の違いなど、転写したパターンのゆがみ隣り合うパターンからの光が重なり、像のコントラストが下がること細かいピッチでは回折光の角度が大きくなり、レンズに入らなくなること
しくみシミュレーションで変形を見込み、パターンの端を動かしたり、ハンマーヘッドやセリフなどの補助図形や、それ自体は解像しない細い補助パターン(SRAF)を加えたりする隣の開口部の光の位相を反転させたり(レベンソン型)、遮光部をわずかに光を通す位相反転膜にしたりして(ハーフトーン型)、境界で光の振幅を打ち消し合わせる輪帯照明や2極・4極照明などで、0次光と片側の1次回折光をレンズに取り込み、その2つの干渉で像をつくる
解像度(k1)への効果解像の限界そのものはほとんど変えないが、限界に近いパターンを設計どおりの形で転写できるようにし、実際に使えるk1を下げるレベンソン型は、細かい周期パターンの解像度を大きく高める。ハーフトーン型はコントラストを高め、特にコンタクトホールや孤立したパターンに効く細かいピッチの解像度を大きく高め、1回の露光で周期パターンを解像する理論的な下限(k1 = 0.25)に近づける
焦点深度(DOF)への効果補助パターン(SRAF)を加えると、孤立したパターンの焦点深度を広げられるコントラストが上がるので、焦点深度やプロセスウィンドウを広げられる照明に合ったピッチでは焦点深度が大きく広がるが、合わないピッチでは逆に狭くなることがある(禁止ピッチ)
パターンへの制約制約は少ないが、補正の計算量とマスクのデータ量が大きくなるレベンソン型は、位相を矛盾なく割り当てられない配置(位相の衝突)があり、レイアウトに制約が出る。ハーフトーン型は、不要な像(サイドローブ)に注意が要る効果がパターンの向きとピッチによって変わる。2極照明は1方向の線に強いが、直交する線には弱い
マスクと露光装置への影響マスクのパターンが複雑になり、描画と検査の時間が増える位相をつくる加工や位相反転膜が必要で、マスクの製造と検査が難しくなるマスクは変えずに、露光装置の照明系の設定で実現する
コストと複雑さ大規模な計算機による補正の計算と、マスクのデータ量の増加がコストになるマスクが高価になる。レベンソン型は、位相の衝突を避ける設計や追加の露光が必要になることがあり、特に複雑比較的小さい。ただし、照明の形をパターンに合わせて最適化するには計算が必要
主な組み合わせ解像の限界に近い層ではほぼ必ず使い、照明の最適化と合わせて行うことが多いArF露光では、ハーフトーン型が変形照明やOPCと組み合わせて広く使われるOPCや位相シフトマスクと組み合わせる。現在は光源の形を細かく自由に設定できる照明系が使われる

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

OPC
解像の限界に近いパターンを扱う層では、ほぼ必ず使います。補正の計算は、EUV露光でも欠かせません。
位相シフトマスク
像のコントラストが足りないときに使います。ArF露光では、ハーフトーン型が標準的に使われてきました。レベンソン型は効果が大きい一方、設計とマスクの制約が大きいため、使える場面が限られます。
変形照明
細かいピッチの周期パターンを解像したいときに使います。マスクを変えずに効果が得られますが、パターンの向きとピッチに合わせて照明の形を選ぶ必要があります。

よくある質問

3つのうち、どれが一番解像度を上げますか?

役割が違うので、単純には比べられません。細かいピッチを解像できるようにするのは主に変形照明とレベンソン型の位相シフトマスクで、OPCは解像したパターンを設計どおりの形にする役割を担います。実際の量産では3つを組み合わせて、k1を0.3前後まで下げてきました。

k1の下限はいくつですか?

1回の露光で線と間隔の周期パターンを解像できる理論的な下限は、ハーフピッチで表して0.25です。それより細かいパターンには、マルチパターニングや、より波長の短いEUV露光が必要になります。

SMOやILTとは何ですか?

SMO(光源・マスク最適化)は、照明の形とマスクのパターンを同時に計算して最適化する方法で、変形照明とOPCを一体にした考え方です。ILT(逆リソグラフィ技術)は、ウエハ上で欲しい像から逆算してマスクのパターンを求める方法で、曲線を含む複雑な形になることがあります。どちらも大きな計算量が必要で、特に難しい層から使われています。

ルールベースのOPCとモデルベースのOPCの違いは?

ルールベースのOPCは、線幅や間隔に応じて決めた表に従って、パターンを太らせたり補助図形を加えたりします。モデルベースのOPCは、露光とレジストの反応をシミュレーションで計算し、ウエハ上の形が設計に近づくまでパターンの端を繰り返し動かします。微細な世代ほど、モデルベースが中心になります。

理解度チェック

OPC(光近接効果補正)の説明として正しいものはどれか。

  1. Aレジストを厚く塗って解像度を上げる
  2. Bマスクを洗浄して異物を除去する
  3. Cマスクパターンをあらかじめ補正しておき、転写後の形状のずれを小さくする
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正解:C. マスクパターンをあらかじめ補正しておき、転写後の形状のずれを小さくする

解像限界に近いパターンでは、光の回折や干渉によって、線の端が縮んだり(ラインエンド後退)、角が丸くなったり、周囲のパターンの密度で線幅が変わったりします。OPCでは、この変形をシミュレーションで見込んで、マスクのパターンの端にハンマーヘッドやセリフなどの補助図形を加えたり、寸法を細かく調整したりします。先端のマスクではOPCの計算に大規模な計算機が使われます。

位相シフトマスクの目的として正しいものはどれか。

  1. A隣り合う開口部を通る光の位相を変え、干渉を利用して解像度やコントラストを高める
  2. Bマスクを軽くする
  3. C露光の光量を2倍にする
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正解:A. 隣り合う開口部を通る光の位相を変え、干渉を利用して解像度やコントラストを高める

位相シフトマスクは、マスクの一部を通る光の位相を180°ずらし、隣り合うパターンからの光の境界で振幅を打ち消し合わせて、暗部をより暗くし、パターンの境界のコントラストを高めます。隣のパターンの位相を交互に反転させるレベンソン型や、遮光部をわずかに光を通す位相反転膜(MoSiなど)にしたハーフトーン型があり、ハーフトーン型はArF露光で広く使われています。

マスクを斜めの方向から照明して、細かいパターンの解像度を高める技術はどれか。

  1. AOPC(光近接効果補正)
  2. B変形照明(斜入射照明)
  3. C位相シフトマスク
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正解:B. 変形照明(斜入射照明)

細かい周期パターンでは、回折光が大きな角度に広がってレンズに入らなくなり、0次光だけでは像ができません。光を斜めから当てると、0次光と片側の1次回折光の両方をレンズに取り込めるため、理論上は解像できるピッチが約半分まで細かくなり、焦点深度も深くなります。輪帯照明や2極・4極照明などがあり、現在はピクセル単位で光源の形を自由に設定できる照明系が使われています。

  1. 解像度の式 R = k1 × λ / NA の係数k1についての説明として正しいものはどれか。
  2. 解像度の式 R = k1 × λ / NA にもとづき、解像度を向上させる(Rを小さくする)方法として正しいものはどれか。
  3. 露光装置の開口数(NA)を大きくすると、焦点深度(DOF)は一般にどうなるか。

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関連する用語の解説

OPC(光学近接効果補正)
光の回折などでパターンがゆがむのを見越して、マスクのパターンをあらかじめ補正しておく技術。
位相シフトマスク
隣り合う開口部を通る光の位相をずらし、光の干渉を利用して像のコントラストや解像度を高めるフォトマスク。
焦点深度(DOF)
パターンを許容できる品質で転写できる焦点の範囲。開口数を大きくすると解像度は上がるが焦点深度は浅くなるため、ウエハの平坦化が重要になる。
開口数(NA)
レンズが集められる光の角度の広がりを表す値。大きいほど解像度が高くなる。
フォトマスク(レチクル)
回路のパターンを描いた露光用の原版。石英ガラスの基板に遮光膜のパターンを形成する(EUVでは反射型)。縮小投影の露光装置ではウエハ上の4倍の大きさでつくる。
プロセスウィンドウ
露光量とフォーカスを変えても、パターンの寸法が許容範囲に収まる条件の範囲。広いほど製造のばらつきに強い。
マルチパターニング
1回の露光では解像できない細かいピッチのパターンを、複数回の露光や加工に分けて形成する技術。2回に分けるものをダブルパターニングという。

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