A級・AB級・D級アンプの違い:動作原理・効率・ひずみ・発熱・用途を比較

アンプの級(クラス)は、出力のトランジスタをどう動かすかの違いです。A級は信号の全周期でトランジスタに電流を流し続けるので、ひずみは最も小さいものの、信号がなくても電力を使い、効率は理論上でも25%または50%です。AB級は、正と負の半周期を2つのトランジスタで分担するB級に、少しのアイドリング電流を加えてクロスオーバーひずみを抑えたもので、効率はB級の理論上の最大約78.5%に近づきます。D級はトランジスタをスイッチとしてオン・オフし、PWMなどのパルスをフィルタで元の信号に戻すので、大きな出力で90%前後の高い効率が得られます。

項目A級AB級D級
動作原理トランジスタに常に電流を流し(線形の領域)、信号に応じて電流を増減する2つのトランジスタのプッシュプルで、正と負の半周期を分担する。少しのアイドリング電流を流しておくトランジスタをスイッチとしてオン・オフし、信号をPWMなどのパルスに変えて増幅し、LCのローパスフィルタで元に戻す
導通角(1つのトランジスタが電流を流す期間)360°(全周期)180°より大きく360°より小さい(B級は180°)完全なオンかオフで使うので、導通角では分類しない
理論上の最大効率25%(抵抗の負荷を直列につなぐ場合)。トランスやチョークコイルで結合すると50%B級の約78.5%(π/4)より少し低い理想のスイッチなら100%。実際も大きな出力で90%前後
小さな出力のときの効率非常に低い。信号がなくても同じ電力を使う出力に応じて下がるが、A級よりずっとよい高く保ちやすい(ごく小さな出力ではスイッチングの損失の割合が増える)
ひずみ最も小さい。クロスオーバーひずみがない小さい。アイドリング電流と負帰還でクロスオーバーひずみを抑えるデッドタイムやスイッチングの不完全さ、電源の変動によるひずみがある。負帰還などで小さくできる
発熱最も大きい。信号がないときに最大になる中くらい。放熱器が必要なことが多い小さい。放熱器を小さくするか、なくせる
ノイズ・EMIスイッチングのノイズはないスイッチングのノイズはない数百 kHz〜数 MHzのスイッチングによるEMIが出る。出力のフィルタや配線に注意が必要
回路・部品簡単。トランジスタ1つでも作れる出力のトランジスタの対と、バイアスの回路パルスの変調器、ゲートの駆動回路、出力のフィルタ(コイルとコンデンサ)
主な用途小さな信号の増幅、プリアンプ、後ろの段を駆動するドライバの段、一部の高級なオーディオオーディオのパワーアンプ、ヘッドホンアンプ、オペアンプの出力段スマートフォンやテレビのスピーカの駆動、カーオーディオ、携帯型のスピーカ、大出力のアンプ

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

A級
出力が小さく、ひずみの少なさを最優先するとき。小さな信号の増幅や、プリアンプ、後ろの段を駆動するドライバの段。
AB級
ひずみの少なさと効率を両立したいとき。オーディオのパワーアンプやヘッドホンアンプ、オペアンプやバッファの出力段。
D級
電池で長く動かしたいとき、発熱や放熱器を小さくしたいとき、大きな出力が必要なとき。スマートフォンやテレビのスピーカ、カーオーディオ。

よくある質問

A級の最大効率に、25%と50%の2つがあるのはなぜですか?

負荷のつなぎ方が違うからです。負荷の抵抗をトランジスタに直列につなぐと、負荷にも直流の電流が流れて電力を捨てるので、理論上の最大は25%です。トランスやチョークコイルで負荷につなぐと、直流の電力を負荷で捨てずに済み、出力の電圧も電源の電圧の2倍まで振れるので、最大50%になります。

クロスオーバーひずみとは何ですか?

B級のプッシュプルで、信号が0の付近を通るとき、どちらのトランジスタもオンにならない区間ができて、出力の波形がゆがむことです。バイポーラトランジスタでは、ベースとエミッタの間に約0.6〜0.7 Vかけないと電流が流れないために起きます。AB級では、少しのアイドリング電流を流してこの区間をなくします。

D級のDは、デジタルのことですか?

違います。A級、B級、C級に続いて名付けられたもので、デジタルという意味ではありません。アナログの入力の信号を、三角波と比較器で比べてPWMのパルスに変えて動くD級アンプも多くあります。

D級の効率が高いのはなぜですか?

出力のトランジスタを、完全なオンかオフで使うからです。オンでは電圧がほぼゼロ、オフでは電流がほぼゼロなので、トランジスタで熱になる電力が小さくなります。残る損失は、オン抵抗による損失、切り替えの途中の損失、ゲートを駆動する電力などです。

理解度チェック

A級増幅回路と比べたときのB級プッシュプル増幅回路の特徴として正しいものはどれか。

  1. A効率は低いが、ひずみが非常に小さい
  2. Bバイアス電流を常に大きく流す
  3. C電力効率が高い(理論上最大約78.5%)が、クロスオーバーひずみが生じやすい
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正解:C. 電力効率が高い(理論上最大約78.5%)が、クロスオーバーひずみが生じやすい

A級は常に大きなバイアス電流を流すため、ひずみは小さいものの、理論上の最大効率は抵抗負荷で25%、トランス結合で50%と低く、信号がなくても発熱します。B級は信号がないときにほとんど電流を流さないため効率が高く、最大約78.5%(π/4)ですが、出力の切り替わりでクロスオーバーひずみが生じます。実用ではわずかにバイアスを流すAB級、さらに高効率なD級が使われます。

NPNとPNPのトランジスタで正と負の半周期を分担するB級プッシュプル増幅回路で生じやすいひずみはどれか。

  1. A量子化誤差
  2. Bエイリアシング
  3. Cクロスオーバーひずみ
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正解:C. クロスオーバーひずみ

B級プッシュプルでは、入力が0付近のとき、どちらのトランジスタもVBEが約0.6 Vに届かず導通しない区間ができ、波形の切り替わり部分がひずみます。これがクロスオーバーひずみで、小さい音量ほど目立ちます。ダイオードやVBEマルチプライヤで約1.2 Vのバイアスをかけ、わずかに電流を流すAB級にすることで低減します。オーディオアンプの出力段の多くがAB級です。

理想的なB級プッシュプル増幅回路の最大の電力効率に最も近い値はどれか。

  1. A約100%
  2. B約78.5%
  3. C約25%
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正解:B. 約78.5%

B級増幅では2つのトランジスタがそれぞれ半周期ずつ動作し、信号がないときにはほとんど電流が流れません。正弦波を最大振幅で出したときの効率は π/4 ≈ 78.5% が理論上の上限で、常にバイアス電流を流すA級(抵抗負荷で25%、トランス結合で50%)より高効率です。さらに効率を上げたい用途では、トランジスタをスイッチとして使うD級(90%以上)が使われ、スマートフォンや薄型テレビのアンプの主流になっています。

  1. 増幅回路で、入力信号がないときのトランジスタの直流の電圧・電流の状態を何と呼ぶか。
  2. マイコンでLEDの明るさやモーターの回転の速さを調整するのによく使われる方法はどれか。

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関連する用語の解説

クロスオーバーひずみ
B級プッシュプル増幅回路で、正と負の半周期を受け持つトランジスタが切り替わる0 V付近で、どちらも導通しないために生じるひずみ。わずかにバイアスを流すAB級で軽減する。
PWM(パルス幅変調)
周期を一定にしたまま、出力がHighになっている時間の長さを変えて、平均の電圧や電力を調整する方式。LEDの明るさやモーターの速さの調整に使う。
負帰還
出力の一部を入力に逆の極性で戻すこと。増幅率は下がるが、利得が安定し、ひずみや帯域が改善する。

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