SOIとバルクシリコンの違い:チップメーカーから見た比較

ほとんどのチップは、ふつうのシリコンウェハ(バルクシリコン)の中に直接作られます。シリコン・オン・インシュレータ(SOI)のウェハは、トランジスタを作る薄いシリコン層の下に、酸化膜の層を埋め込んだものです。この絶縁層が、トランジスタを基板から分離するので、寄生容量が減り、ラッチアップがなくなり、回路を速く、または低消費電力にできます。代わりに、ウェハは高価で、熱も逃げにくくなります。

項目バルクシリコンSOI
構造トランジスタをシリコンウェハの中に直接作る薄いシリコン層が、シリコン基板の上の埋め込み酸化膜(BOX)の上にある
分離ウェルとシャロートレンチ分離BOXで基板から完全に分離し、横方向はトレンチ分離
寄生容量接合容量が大きい小さい。接合が酸化膜の上にあるため
ラッチアップ起こりうる。寄生のサイリスタ構造のためなくなる
ソフトエラー放射線による電荷に敏感敏感さが小さい。電荷を集める体積が小さいため
しきい値の調整ボディバイアスは使えるが、限られる完全空乏型SOI(FD-SOI)では、BOX越しに強いバックゲートバイアスをかけられる
自己発熱熱は基板に逃げる悪化する。酸化膜は熱を伝えにくい
ウェハのコスト安いかなり高い
主な用途ほとんどのCMOSチップ。メモリ、プロセッサ、汎用のロジックスマートフォンのRFスイッチ、IoTや車載向けの低消費電力のFD-SOIチップ、MEMS、高耐圧や耐放射線のIC

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

バルク
主流のチップの標準です。ウェハが安く、周りの環境も成熟しています。
SOI
低消費電力、RF性能、耐放射線性、ボディバイアスが、ウェハのコスト増に見合うとき。

よくある質問

埋め込み酸化膜は何をしますか?

トランジスタを作る薄いシリコン層を、基板から絶縁します。寄生容量が減り、ラッチアップもなくなります。

なぜSOIは高いのですか?

SOIウェハは、埋め込み酸化膜を作る追加の工程が必要なので、バルクのウェハよりかなり高くなります。

FD-SOIとは何ですか?

完全空乏型SOIのことで、キャリアが完全に空乏化する、非常に薄いシリコン層を使います。チャネルの制御がよく、埋め込み酸化膜越しにバックゲートバイアスをかけられます。

なぜSOIでは自己発熱が悪化するのですか?

埋め込み酸化膜は熱を伝えにくいので、トランジスタの熱が、バルクのシリコンのようには、基板へ逃げにくいからです。

理解度チェック

SOI(Silicon On Insulator)構造の説明として正しいものはどれか。

  1. Aゲート絶縁膜を使わないトランジスタ構造
  2. B埋め込み酸化膜の上の薄いシリコン層にトランジスタをつくる構造
  3. Cチップを2枚重ねた構造
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正解:B. 埋め込み酸化膜の上の薄いシリコン層にトランジスタをつくる構造

SOIは、シリコン基板の中に埋め込んだ酸化膜(BOX層)の上の薄いシリコン層にトランジスタをつくる構造です。素子が基板から絶縁されるため、接合容量やリーク電流が小さく、ラッチアップも起こりません。ウエハは、酸化膜をつけたウエハを貼り合わせて片方を薄くするスマートカット法などで作られます。高周波のスイッチ(RF-SOI)や、低消費電力向けのFD-SOIで広く使われています。

完全空乏型SOI(FD-SOI)トランジスタの利点として正しいものはどれか。

  1. Aシリコン層を厚くでき、不純物を多く入れられる
  2. Bゲート電極が不要になる
  3. Cチャネルの不純物を少なくでき、しきい値電圧のばらつきを抑えられ、基板バイアスでしきい値を調整しやすい
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正解:C. チャネルの不純物を少なくでき、しきい値電圧のばらつきを抑えられ、基板バイアスでしきい値を調整しやすい

FD-SOIでは、厚さ5〜7 nm程度の極めて薄いシリコン層全体が空乏化するため、チャネルに不純物を入れなくても短チャネル効果を抑えられ、ランダムドーパントゆらぎによるばらつきが小さくなります。さらに薄い埋め込み酸化膜(約20 nm)を通して基板側から電圧をかけると、しきい値を動的に変えられ、低電圧・低消費電力のIoTや車載、RF用途で使われています。

FinFETやSOIトランジスタで問題になりやすい自己発熱の原因として正しいものはどれか。

  1. Aトランジスタが冷えすぎるため
  2. B電流がまったく流れないため
  3. Cチャネルが細い構造や絶縁膜に囲まれており、発生した熱が基板へ逃げにくいため
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正解:C. チャネルが細い構造や絶縁膜に囲まれており、発生した熱が基板へ逃げにくいため

フィンのような細い構造や、熱伝導率の低い酸化膜(SiO2はSiの約1/100)で囲まれた構造では、トランジスタで発生した熱が基板に逃げにくく、チャネルの温度が周囲より数十℃も高くなることがあります。温度が上がると移動度が下がって電流が減り、近くの配線のエレクトロマイグレーションやデバイスの劣化も加速されるため、信頼性の評価や回路設計で考慮が必要です。

  1. バルク基板上につくるFinFETで、フィンの根元(ゲートで制御しにくい部分)に高濃度の不純物層を設ける目的はどれか。
  2. MEMSの製造でSOIウエハがよく使われる理由として正しいものはどれか。

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関連する用語の解説

SOIウエハ
シリコン基板の上に埋め込み酸化膜(BOX層)を挟んで薄いシリコン層をもつウエハ。水素イオンを注入したウエハを貼り合わせて剥離する方法などでつくる。寄生容量が小さく、FD-SOIやMEMSに使われる。
FD-SOI(完全空乏型SOI)
埋め込み酸化膜の上の非常に薄いシリコン層にトランジスタをつくり、チャネルを完全に空乏化させる技術。チャネルの不純物を少なくでき、基板バイアスでしきい値電圧を調整しやすい。

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