HTOL・THB・HAST・温度サイクル・高温放置試験の違い:条件・目的・故障モードを比較

半導体の信頼性試験の多くは、温度・電圧・湿度・温度の変化といったストレスを実際の使用より強く加えて故障を加速し、短い時間で寿命や故障率を確かめる加速試験です。HTOLは高温で電圧をかけて動作させ、TDDBやエレクトロマイグレーションなど、チップそのものの劣化を評価します。高温高湿バイアス試験(THB)とHASTは、湿度と電圧で水分による腐食などを加速する耐湿性の試験で、HASTは加圧した水蒸気を使って同様の評価を短い時間で行います。温度サイクル試験は高温と低温を繰り返して材料の熱膨張の差による疲労を、高温放置試験は電圧をかけずに温度だけで進む劣化を評価します。対象とする故障がそれぞれ異なるため、製品の認定ではこれらを組み合わせて行います。

項目HTOL高温高湿バイアス試験(THB)HAST温度サイクル試験高温放置試験
目的チップの寿命と故障率を確かめるパッケージの耐湿性を確かめる耐湿性を短い時間で確かめる接合部やパッケージの、熱による疲労への強さを確かめる温度だけで進む劣化への強さを確かめる
加えるストレス高温と電圧温度・湿度と電圧100 ℃を超える温度・湿度・圧力と電圧温度の変化(高温と低温の繰り返し)高温だけ
電圧(バイアス)をかけるかかける。最大動作電圧かそれをやや上回る電圧で、信号を入れて動作させるかける。発熱を抑えるため、消費電力が小さくなるようにかける通常はかける。かけないアンバイアスHASTもある一般にかけないかけない
代表的な条件125 ℃前後。温度グレードによってはより高い温度85 ℃・85%RH、大気圧(85/85試験)110〜130 ℃程度・85%RHの加圧した水蒸気。例えば130 ℃・85%RH−55〜125 ℃や−65〜150 ℃など。高温と低温でそれぞれ一定時間保持する例えば150 ℃。製品によってはより高い温度
試験時間の目安1000時間程度。途中の168時間や500時間などでも測定する1000時間程度130 ℃・85%RHで96時間程度数百〜数千サイクル1000時間程度。より高い温度で短くすることもある
主に加速する故障メカニズムTDDB、BTI、エレクトロマイグレーションなど、チップそのものの劣化と潜在的な欠陥侵入した水分による電気化学反応(腐食、イオンマイグレーション)THBと同じ。水分の侵入を速め、より強く加速する熱膨張係数の違いによるひずみの繰り返しで進む疲労温度だけで進む劣化(金属間化合物の成長、材料の熱劣化、蓄えた電荷の抜け)
見つかる代表的な不良電気的特性の規格外れ(しきい値電圧の変動など)、機能の不良アルミニウムのパッドや配線の腐食、リーク電流の増加、導体間の短絡THBと同様の腐食、リーク電流の増加、短絡はんだ接合部やワイヤ接合部の亀裂、封止樹脂の剥離、チップやパッシベーション膜のクラックワイヤ接合部の抵抗の上昇や剥がれ(カーケンダルボイド)、不揮発性メモリのデータ保持の不良
加速のモデルアレニウスモデル(温度)と電圧の加速モデルPeckモデル(相対湿度のべき乗とアレニウス型の温度の項)Peckモデル(THBと同じ)コフィン・マンソン則(温度変化の幅のべき乗)アレニウスモデル
試料の状態パッケージ品をボードに載せ、電圧をかけて動作させるパッケージ品。認定では、吸湿とリフローの熱を加える前処理のあとに行うことが多いパッケージ品。THBと同じく、前処理のあとに行うことが多い部品単体(前処理のあとに行うことが多い)のほか、基板に実装した状態の試験もあるパッケージ品を高温の槽に置く。電気的な接続はいらない
位置づけ(規格の例)寿命と故障率の認定試験。JEDEC(JESD22シリーズ)、AEC-Q100など耐湿性の認定試験。JEDEC(JESD22シリーズ)、AEC-Q100などTHBの代わりに使われることがある。JEDEC(JESD22シリーズ)、AEC-Q100などパッケージと接合部の認定試験。JEDEC(JESD22シリーズ)、AEC-Q100など温度だけによる劣化の認定試験。JEDEC(JESD22シリーズ)、AEC-Q100など
注意点自己発熱で接合温度が上がりすぎないよう、温度を管理するチップが発熱すると表面の相対湿度が下がり、湿度による故障が起こりにくくなる温度が高いため、封止樹脂の性質が変わるなど、実使用では起こらない故障を招くおそれがある熱衝撃試験(より急な温度変化)やパワーサイクル試験(自己発熱)とは別の試験電圧をかけないので、TDDBやエレクトロマイグレーションなど電界や電流で進む劣化は評価できない

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

HTOL
新しい製品や製造工程の変更で、チップの設計と工程が狙いの寿命と故障率を満たすかを確かめたいとき。結果はアレニウスモデルなどで実使用の条件に換算しますが、仮定する活性化エネルギーによって大きく変わるため、目安として扱います。
高温高湿バイアス試験(THB)
樹脂で封止したパッケージの耐湿性を、実際の環境に近い温度で確かめたいとき。1000時間程度かかりますが、HASTのような高い温度に特有の故障を避けられます。
HAST
耐湿性の評価を短い期間で済ませたいとき。例えば130 ℃・85%RHで96時間程度の試験が、85 ℃・85%RHで1000時間のTHBの代わりに使われます。どちらを使うかは、適用する規格や顧客との取り決めで決めます。
温度サイクル試験
はんだ接合部、ワイヤ接合部、封止樹脂とチップの界面など、材料の熱膨張の差によるひずみが心配なとき。温度の変化が大きい車載などの用途や、チップやパッケージが大きくひずみが大きくなる製品で重要です。
高温放置試験
ワイヤボンディングの接合部での金属間化合物の成長や、不揮発性メモリのデータ保持など、温度だけで進む劣化を、電圧の影響と切り分けて確かめたいとき。
認定試験での組み合わせ
故障の種類ごとに効くストレスが違うため、製品の認定ではこれらを組み合わせ、一般に試験ごとに別の試料を用意して並行して行います。湿度を使う試験(THB・HAST)や温度サイクル試験の前には、吸湿させてからリフローと同じ熱を加える前処理(プリコンディショニング)をすることが多く、実装の熱を受けたあとの状態で評価します。どの試験も、途中と終了後に電気的特性を測って合否を判定します。

よくある質問

THBとHASTの違いは何ですか?

どちらも相対湿度85%程度で電圧をかけ、水分による腐食やリーク電流の増加を評価します。THBは85 ℃・大気圧で1000時間程度かけるのに対し、HASTは110〜130 ℃程度の加圧した水蒸気で水分の侵入を速め、例えば130 ℃・85%RHでは96時間程度で同等の評価をします。HASTは短い時間で済む一方、温度が高いため、実使用では起こらない故障を招くおそれがあります。

HTOLとバーンインの違いは何ですか?

バーンインは、出荷する製品のすべてまたは多くに短時間の高温・高電圧のストレスを加え、初期故障を起こしやすい個体を取り除く選別(スクリーニング)です。HTOLは、抜き取った試料を1000時間程度動作させ、製品の設計と製造工程が狙いの寿命と故障率を満たすかを確かめる認定のための試験で、試験した個体は出荷しません。

高温放置試験とHTOLの違いは何ですか?

高温放置試験は、電圧をかけずに例えば150 ℃の高温に置くだけの試験で、ワイヤボンディングの接合部の劣化や不揮発性メモリのデータ保持など、温度だけで進む劣化を評価します。HTOLは125 ℃前後で電圧をかけて動作させるため、TDDBやエレクトロマイグレーションなど、電界や電流で進む劣化も加速して評価します。

理解度チェック

HTOLでは加えるが、高温放置試験では加えないストレスはどれか。

  1. A高い温度
  2. B高い湿度
  3. C電源電圧などの電気的なバイアス
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正解:C. 電源電圧などの電気的なバイアス

高温放置試験(HTS)は、電圧をかけずに製品を例えば150 ℃程度の高温に長時間置き、前後で電気的特性を比べる試験です。HTOLは高温で電源電圧をかけて動作させるため、TDDBやエレクトロマイグレーションなど電界や電流で進む劣化も加速しますが、高温放置試験では温度だけで進む劣化を切り分けて評価できます。代表的な対象は、ワイヤボンディングの接合部での金属間化合物の成長とボイドによる抵抗の増加や剥がれ、不揮発性メモリのデータ保持、封止樹脂などの材料の劣化です。湿度と電圧を同時に加えるのは高温高湿バイアス試験(THB)です。

製品を高温で長時間動作させ、寿命や故障率を評価する代表的な信頼性試験はどれか。

  1. A温度サイクル試験
  2. B高温動作寿命試験(HTOL)
  3. C落下試験
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正解:B. 高温動作寿命試験(HTOL)

HTOL(High Temperature Operating Life)試験は、製品を125 ℃前後の高温で、最大動作電圧かそれをやや上回る電圧をかけて長時間動作させ、故障の発生を調べる試験です。車載用のAEC-Q100では、3ロットから77個ずつを1000時間試験し、故障0を求めます。温度と電圧による加速を利用して、短い試験時間で実使用での寿命や故障率を推定します。温度サイクル試験は接合の疲労、落下試験は衝撃への強さを評価します。

高温高湿バイアス試験(THBやHAST)で主に評価する故障はどれか。

  1. A宇宙線によるソフトエラー
  2. Bクロックの遅れ
  3. C水分の侵入による電極の腐食やリーク電流の増加
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正解:C. 水分の侵入による電極の腐食やリーク電流の増加

高温高湿の環境で電圧をかけると、パッケージ内に侵入した水分と不純物イオンによって、アルミパッドの腐食やイオンの移動が起こり、リーク電流の増加や断線を招きます。THBは85 ℃/85%RHで1000時間程度、HASTは130 ℃前後の加圧した水蒸気で水分の侵入を加速し、約100時間程度の短い時間で耐湿性を評価します。ソフトエラーやクロックの遅れは別の試験の対象です。

  1. 車載用ICの認定試験で、85 ℃・85%RHで1000時間行う高温高湿バイアス試験(THB)の代わりに、HAST(130 ℃・85%RH程度の加圧した水蒸気中でバイアスをかける試験)が使われることがある主な理由はどれか。
  2. 温度サイクル試験で主に評価する故障はどれか。
  3. 高温高湿試験の結果から実使用の寿命を推定するとき、湿度の影響を相対湿度のべき乗で表すモデルとしてよく使われるものはどれか。
  4. 温度サイクルによるはんだ接合の疲労寿命を、温度変化の幅(ひずみの大きさ)と繰り返しの回数の関係で表すモデルはどれか。
  5. 車載用の集積回路の信頼性試験の基準として広く使われている規格はどれか。

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関連する用語の解説

HTOL(高温動作寿命試験)
製品を高温で電圧をかけて長時間動作させ、チップの寿命や故障率を加速して評価する信頼性試験。例えば125 ℃前後で1000時間行う条件が代表的。
高温高湿バイアス試験(THB)
一般に85 ℃・85%RHの高温高湿の環境で電圧をかけ、パッケージに侵入した水分による腐食やリーク電流の増加を評価する信頼性試験。85/85試験とも呼ばれる。
HAST(高度加速ストレス試験)
100 ℃を超える温度と高い湿度の加圧した水蒸気中でバイアスをかけ、耐湿性を短時間で評価する試験。例えば130 ℃・85%RHの96時間で、85 ℃・85%RHで1000時間の高温高湿バイアス試験(THB)に相当する評価とされる。
温度サイクル試験
高温と低温を繰り返し加え、材料の熱膨張係数の違いによるはんだ接合部の疲労や、パッケージのクラック・剥離を評価する信頼性試験。
高温放置試験(高温保存試験)
電圧をかけずに製品を高温に置き続け、ワイヤボンディング接合部の劣化や不揮発性メモリのデータ保持などを評価する信頼性試験。HTSやHTSLとも呼ばれる。
バーンイン
高温・高電圧などのストレスを加えて動作させ、初期故障を起こしやすい製品を出荷前に取り除く試験。
アレニウスモデル
反応や劣化の速さが温度に対して exp(−Ea/kT) で変わるとするモデル。温度を上げた加速試験の結果から、実際の使用温度での寿命を推定するのに使う。
バスタブ曲線
故障率の時間変化を表す曲線。初期故障期・偶発故障期・摩耗故障期からなり、浴槽のような形になる。
AEC-Q100
自動車用電子部品評議会(AEC)が定めた、車載用集積回路の信頼性認定試験の基準。動作温度のグレードがあり、グレード1は−40〜125 ℃、グレード0は−40〜150 ℃。ディスクリート半導体はAEC-Q101、受動部品はAEC-Q200が対象。
MSL(吸湿感度レベル)
表面実装部品の吸湿しやすさの等級で、JEDECの規格(J-STD-020)で定められる。防湿袋の開封からリフローまでに許される時間(フロアライフ)を表し、MSL 3では30 ℃・60%RH以下で168時間。期限を過ぎた部品はベーキングで乾燥させてから実装する。

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