雑音指数(NF)とは

ざつおんしすう

増幅器や受信機などの回路が、自身の雑音によって信号対雑音比(S/N)をどれだけ悪化させるかを表す指標。入力のS/Nを出力のS/Nで割った比(雑音係数)を、dBで表したものを雑音指数(NF)と呼ぶ。温度290 Kの熱雑音を基準に定義される。縦続接続した回路全体の値はフリスの公式で求められ、主に初段の雑音指数と利得で決まる。

「雑音指数(NF)」は、1分野の3問の練習問題に出てきます(無線通信の基礎など)。

この用語の分野: 無線通信の基礎

定義と雑音温度

雑音係数Fは、入力のS/Nを出力のS/Nで割った比で、入力の雑音を温度290 Kの熱雑音としたときの値と定義されます。雑音のない理想的な回路ではF = 1(0 dB)で、NF = 10·log₁₀ F です。同じ性能を、回路の雑音を入力に換算した温度で表すこともでき、等価雑音温度は Te = 290 × (F − 1) K です。例えば、NF 1 dBは約75 K、NF 3 dBは約290 Kにあたり、衛星通信の受信機のように雑音の小さい領域では雑音温度がよく使われます。

フリスの公式

雑音係数F1・利得G1の回路の後ろに、雑音係数F2・利得G2、F3の回路をつなぐと、全体の雑音係数は F = F1 + (F2 − 1)/G1 + (F3 − 1)/(G1·G2) + … となります(すべて真数)。後ろの段の雑音は、それより前の利得で割られるので、初段に雑音指数が小さく利得の大きいLNAを置くことが重要です。逆に、アンテナとLNAの間のケーブルやフィルタの損失(L dB)は、その分だけ雑音指数をそのまま悪化させます。

半導体デバイスとの関係

LNAの雑音指数は、トランジスタの熱雑音やショット雑音、ゲートやベースの抵抗などで決まります。高い周波数で特に小さな雑音指数が求められる用途では、電子の移動度が高いGaAsやInPのHEMTが使われてきました。一方、微細化したCMOSのLNAも、数GHzまでの携帯電話や無線LANでは十分な性能を得られるようになり、トランシーバに集積されています。

雑音指数(NF)の練習問題に挑戦

受信機の初段に雑音指数1.5 dB・利得15 dBのLNAを置き、その後ろに雑音指数10 dBの回路をつないだ。2段全体の雑音指数に最も近いものはどれか。

  1. A1.5 dB
  2. B2.3 dB
  3. C11.5 dB
答えと解説を見る

正解:B. 2.3 dB

縦続接続した回路の雑音指数はフリスの公式 F = F1 + (F2 − 1)/G1 で求め、F(雑音指数)とG(利得)には真数を使います。F1 = 10^0.15 ≈ 1.41、F2 = 10、G1 = 10^1.5 ≈ 31.6 なので、F ≈ 1.41 + 9/31.6 ≈ 1.70 となり、dBにすると 10·log₁₀(1.70) ≈ 2.3 dBです。後ろの段の雑音は初段の利得で割られるので、初段の利得が大きいほど影響は小さくなります。このため、受信機の雑音の性能は主に初段のLNAで決まります。

温度290 Kでの熱雑音の電力密度を−174 dBm/Hzとする。帯域幅1 MHz、雑音指数6 dBの受信機で、復調に必要なS/Nが10 dBのとき、受信感度(受信できる最小の信号電力)に最も近いものはどれか。

  1. A−114 dBm
  2. B−108 dBm
  3. C−98 dBm
答えと解説を見る

正解:C. −98 dBm

帯域幅1 MHzでの熱雑音の電力は、−174 + 10·log₁₀(10⁶) = −174 + 60 = −114 dBmです。受信機の雑音指数の分だけ雑音が増えたとみなすと、入力に換算した雑音の電力は −114 + 6 = −108 dBm になります。そこからS/Nが10 dB大きい信号が必要なので、受信感度は −108 + 10 = −98 dBm です。帯域幅を狭くするか、雑音指数や必要なS/Nを小さくすると、受信感度はよく(より小さな値に)なります。

よくある質問

雑音指数3 dBとはどういう意味ですか?

回路を通すとS/Nが3 dB(約1/2)悪くなるという意味です。入力に換算すると、回路が入力の熱雑音と同じ大きさの雑音を加えていることになります。受信機の雑音指数が3 dB下がれば、受信感度は3 dBよくなります。

ミキサやフィルタの損失も雑音指数に影響しますか?

はい。整合のとれた受動的な損失(フィルタやケーブル)の雑音指数は、損失のdB値にほぼ等しくなります。LNAより前に置くと、その損失がそのまま全体の雑音指数に加わります。LNAの後ろに置けば、フリスの公式によりLNAの利得で割られて影響が小さくなります。

解説の中の「雑音指数(NF)」

「雑音指数(NF)」が出てくる問題(3問)

  1. 受信機の初段に雑音指数1.5 dB・利得15 dBのLNAを置き、その後ろに雑音指数10 dBの回路をつないだ。2段全体の雑音指数に最も近いものはどれか。
  2. 温度290 Kでの熱雑音の電力密度を−174 dBm/Hzとする。帯域幅1 MHz、雑音指数6 dBの受信機で、復調に必要なS/Nが10 dBのとき、受信感度(受信できる最小の信号電力)に最も近いものはどれか。
  3. 無線の受信機で、アンテナのすぐ後ろに置かれ、自分の雑音をできるだけ加えずに微弱な受信信号を増幅する回路はどれか。

無線通信の基礎の参考書を探す PR

Amazonの検索結果へのリンクです。Amazonのアソシエイトとして、半導体教室は適格販売により収入を得ています。

関連する用語

熱雑音(ジョンソン雑音) NFC(Near Field Communication) LPWA(Low Power Wide Area) OFDM(直交周波数分割多重) 隠れ端末問題 QAM(直交振幅変調) シャノンの定理 自由空間伝搬損失 スーパーヘテロダイン方式 ダイレクトコンバージョン方式

用語集の一覧へ