クラウドとは? データやアプリが「どこか」で動くしくみ

約13分 · 更新: 2026年10月23日

クラウドとは、よその会社が持つ大量のコンピュータを、インターネット経由で借りて使うしくみです。そのコンピュータは、データセンターという専用の建物に置かれています。写真の保存やWebメールなど、身近なサービスの多くがクラウドで動いており、その安全は事業者と利用者が分担して守ります。

この記事でわかること

  • 「クラウドにある」データが、実際にはどこにあるのか
  • 会社がクラウドを使う理由と、費用や障害などの注意点
  • IaaS・PaaS・SaaSの違いと、仮想化のしくみ
  • データセンターの中身と、電気の使い方の効率を表す数字
  • 安全を事業者と利用者で分け合う「責任共有モデル」

前提知識: 特にありません。スマホで写真を保存したり、Webメールを使ったりしたことがあれば十分です。

身近なところでは

スマホを新しい機種に替えても、前の写真がそのまま見られることがあります。写真がスマホの中だけでなく、インターネットの向こうにも保存されているからです。Webメール、動画の配信、ブラウザで使う文書作成や表計算も同じです。どれも、データや計算の本体は手元ではなく、遠くのコンピュータにあります。

このように、遠くのコンピュータにデータを預けたり、計算を任せたりする使い方を「クラウド」と呼びます。正式には「クラウドコンピューティング」といいます。英語のcloudは「雲」という意味です。

クラウドの正体は「よその会社のコンピュータ」

「クラウドに保存する」と言っても、データが空中に浮かんでいるわけではありません。求めに応じてデータを渡したり、計算したりするコンピュータがあります。これを「サーバ」と呼びます。クラウドの実体は、クラウドの事業者が持つサーバです。

手元のスマホとサーバの間は、インターネットでつながっています。データがどう運ばれるかは「インターネットはどうやってデータを届けるの?」で説明しています。

事業者は、たくさんのサーバを専用の建物にまとめて置いています。電気・冷房・通信の回線を、大量の機械のためにまとめて用意した建物です。この建物を「データセンター」と呼びます。利用者は、その中のどの機械を使っているかを、ふだん意識しません。

スマホやパソコンから、インターネットを通って、データセンターの中のサーバにつながる スマホ パソコン インターネット データセンター(事業者の建物) 電源 冷却 サーバの棚(ラック) 止めないための設備
「クラウド」の先にあるのは、データセンターという建物の中のサーバです。省略していること: 途中や建物の中の通信機器・保存装置、世界各地にある多くのデータセンター。

米国の国立標準技術研究所(NIST)は、2011年にクラウドの定義を公表しています。そこに挙げられた5つの特徴を、ここでは3つにまとめて、やさしく言い直します。

  • ネットワークを通して、使いたいときに自分で申し込み、すぐに使える
  • 大勢の利用者が大きな設備を分け合い、使う量をすばやく増減できる
  • 使った量が自動で測られ、利用者にも見える(料金の元になる)

会社がクラウドを使う理由

クラウドが広まる前は、会社が自分でサーバを買い、社内の部屋に置いて動かすのがふつうでした。この形を「オンプレミス」と呼びます。機械を買うお金が先にかかり、届いて動かせるまでに時間もかかります。部品の交換や、古くなった機械の入れ替えも自分で行います。

クラウドなら、サーバを借りる手続きはWebの画面から数分で済みます。料金は、使った時間や保存した量に応じて払うのが基本です。新しいサービスが当たるかどうかわからないときも、小さく始めて、様子を見ながら増やせます。

利用者の数に合わせて、台数を変えられるのも利点です。例えば、チケットの発売日だけアクセスが集中するサイトは、その時間だけサーバを増やせます。混み具合を見て台数を自動で増減するしくみをオートスケーリングと呼びます。

費用と、頼ることのリスク

クラウドは、いつでも安いわけではありません。借りている間は、料金が毎月かかり続けます。たくさんのサーバを何年も休まず動かすなら、自分で買うほうが安い場合もあります。預けたデータを外へ取り出すときに、転送の料金がかかるサービスもあります。

事業者とネットワークに頼る点にも注意が必要です。インターネットが切れると、手元にないデータは使えません。事業者の側で障害が起きても、自分では直せず、復旧を待つしかありません。事業者ごとに使い方が違うので、別の事業者へ移るのに手間がかかることもあります。

2025年10月19〜20日(米国時間)、Amazonのクラウド「AWS」の米国バージニア北部の地域で大きな障害が起きました。名前からサーバの番号を調べるしくみをDNSと呼びます。AWSの事後報告によると、原因は、データベースのサービスで、DNSの記録を自動で管理するしくみに潜んでいた不具合でした。記録が空になり、そのデータベースに新しく接続できなくなりました。それに頼るほかのサービスにも、影響が広がりました。最初の異常から、AWSが障害の終わりとした時刻まで、約14時間半でした。

自社のサーバでも、故障は起きます。違いは、1つの事業者の障害が、多くの会社のサービスに同時に響くことです。事業者は、電源・冷房・回線が互いに独立した建物のまとまりを、1つの地域にいくつも用意しています。このまとまりをアベイラビリティゾーンと呼び、大事なシステムは複数に分けて置きます。ただ、上の例のように地域全体に及ぶ障害もあるため、別の地域への備えも考えます。

IaaS・PaaS・SaaS: どこまでを借りるか

クラウドのサービスは、事業者がどこまでを用意するかで、大きく3つに分けられます。NISTの定義にも出てくる分け方です。名前の後半の「aaS」は、as a Service(サービスとして提供する)の略です。

最初の文字は、何を貸すかを表します。Iは基盤(Infrastructure)、Pは土台(Platform)、Sはソフトウェア(Software)です。ここでの土台は、OSと、アプリを動かすのに必要なソフトのことです。OSは、WindowsやLinuxのような、コンピュータ全体を管理する基本のソフトです。

種類事業者が用意するもの例
IaaS(イアース)サーバ・保存場所・ネットワークなどの基盤。OSから上は利用者が管理する仮想サーバの貸し出し
PaaS(パース)OSや、プログラムを動かす環境まで。利用者は自分のアプリを載せるアプリの実行環境、データベースのサービス
SaaS(サース)アプリそのもの。利用者はブラウザなどから使うだけWebメール、オンラインの文書作成

3つを、自由に選べる範囲や運用の手間で比べた表は「IaaS・PaaS・SaaSの違い」にあります。サーバの管理をほとんど意識せず、短いプログラムだけを動かす形もあります。これをサーバーレスと呼びます。

仮想化: 1台の機械を何台にも分ける

データセンターのサーバは性能が高く、1つの用途だけでは使いきれないことがよくあります。そこで、ソフトウェアの力で、1台の機械を何台もの「見かけのコンピュータ」に分けます。このしくみを「仮想化」と呼びます。

分けられた1つ1つを「仮想マシン」と呼びます。仮想マシンはそれぞれ自分のOSを持ち、利用者からは独立した1台のコンピュータに見えます。同じ機械の上に、別の会社の仮想マシンが並んでいることもあります。

機械の力を仮想マシンに分け与え、互いに中をのぞけないように仕切るのは、専用のソフトです。このソフトをハイパーバイザと呼びます。仮想マシンは新しく機械を買わずに作れるので、申し込んでから短い時間で使えます。使い終わったら消して、その分の力をほかの利用者に回せます。

1台の物理サーバの上でハイパーバイザが動き、その上に3つの仮想マシンがそれぞれOSとアプリを持つ 仮想マシン(3台に見える) アプリ アプリ アプリ OS OS OS ハイパーバイザ(仕切り役) 物理サーバ(実際の1台) CPU・メモリなどをハイパーバイザが分ける
1台の機械(下)の上でハイパーバイザが動き、その上に独立した仮想マシンがいくつも作られます。省略していること: 実際の仮想マシンの数(もっと多い)、ネットワークやストレージの仮想化。

もっと軽く分ける方法もあります。仮想マシンのようにOSを丸ごと動かさず、1つのOSの中心部分を共有したまま、アプリごとに区切る方法です。この区切りをコンテナと呼びます。軽くて起動が速い代わりに、仕切りの強さは一般に仮想マシンに及びません。違いは「仮想マシンとコンテナの違い」で表にまとめています。

データセンターの中には何がある?

データセンターの中には、背の高い棚がずらりと並んでいます。この棚を「ラック」と呼び、薄い箱の形をしたサーバが何台も重ねて入っています。データをためる保存装置(ストレージ)や、機械どうしと外の回線をつなぐ通信機器も並びます。

止まらないための設備も大切です。停電に備えて、すぐに電気を送れるバッテリーと、非常用の発電機を用意しています。サーバは動くと熱を出すので、冷やし続けないと止まったり壊れたりします。大きな空調のほか、冷たい液体を機械の近くに流して冷やす方法も使われています。

データセンターが電気をどれだけむだなく使えているかを表す数字に、PUEがあります。建物全体で使う電力を、サーバなどのIT機器が使う電力で割った値です。冷房や電源の変換でのむだがまったくなければ1.0になり、1に近いほど効率がよいことを表します。

調査機関のUptime Instituteが2024年に行った世界の調査では、PUEの平均は1.56でした。各回答者が運営する最大の施設の、1年間の値です。IT機器が1使うごとに、冷房などで0.56を余分に使っている計算です。大手はもっと低い値を公表しており、例えばGoogleは2024年の自社の大規模なデータセンター全体で1.09です。ただし、測り方や気候が違うので、単純には比べられません。

AIとGPUもクラウドで動く

最近のデータセンターで大きな話題になっているのが、AIです。AIの学習や利用では、同じ形の計算を大量にこなす必要があります。そのため、同時にたくさんの計算ができるGPUという部品が使われます。理由は「なぜAIにGPUが使われるの?」で説明しています。

大きなAIの学習には高価なGPUが大量に要り、自分で買いそろえられる会社は多くありません。そこで、クラウドの事業者がGPUを積んだサーバを用意し、使った時間に応じて貸しています。

AIの広がりとともに、データセンターが使う電気も増えています。電気の量はTWh(テラワット時)という単位で表し、1TWhは10億kWhです。国際エネルギー機関(IEA)の2025年の報告では、2024年の世界のデータセンターの電力は約415TWhでした。世界全体の約1.5%に当たります。IEAは、2030年には約945TWhと、2倍あまりになると見込んでいます。

安全は「分担して」守る: 責任共有モデル

クラウドの安全は、事業者と利用者が範囲を分け合って守ります。この考え方を責任共有モデルと呼びます。AWSはこれを、事業者は「クラウドそのもの」の安全に、利用者は「クラウドの中」の安全に責任を持つ、と説明しています。

事業者が受け持つのは、建物や機械、仮想化の基盤などです。建物への出入りの管理や、機械の修理、基盤のソフトの修正がこれに当たります。利用者が受け持つのは、自分のアカウント、だれに何を許すかの設定、保存したデータです。IaaSなら、仮想マシンのOSの更新も利用者の仕事になります。

IaaS・PaaS・SaaSで、利用者と事業者が受け持つ範囲。データと設定はどの形でも利用者 IaaS PaaS SaaS データ・設定 利用者 利用者 利用者 アプリ 利用者 利用者 事業者 OS・実行環境 利用者 事業者 事業者 仮想化の基盤 事業者 事業者 事業者 機械・建物 事業者 事業者 事業者 いちばん上の段は、 どの形でも利用者の仕事
IaaSからSaaSへ進むほど、事業者の受け持ちが増えます。それでも、データと設定(アカウントや権限)は利用者に残ります。省略していること: 境目は事業者やサービスごとに少しずつ違うこと、ネットワークの設定などの細かい分担。

Microsoftは、どの形でもデータとID(アカウント)は利用者のもので、守る責任も利用者にあるとしています。Googleは、事業者が安全な設定の手本を示すなど、利用者をより積極的に支える考え方も示しています。

事故は、利用者の側の設定の誤りから起きることもよくあります。米国の国家安全保障局(NSA)は2020年の資料で、クラウドの資源の設定の誤りを、最もよく見られる弱点としています。例えば、ファイルの保存場所を「だれでも見られる」状態にしてしまい、中身を外から読まれる事故です。

パスワードも狙われます。推測されやすいものや、ほかで漏れたものを使い回していると、事業者の設備がどれほど堅くても入られてしまいます。防ぎ方は「パスワードはなぜ破られる?」で説明しています。パスワードに加えて、スマホなど別の手段でも本人を確かめるしくみを多要素認証と呼び、クラウドでは使うのが基本です。

よくある誤解

誤解: クラウドは空の上のようなもので、決まった場所がない

実際は、データはどこかの国の、どこかの建物の機械に保存されています。事業者の多くは、データを置く地域を利用者が選べるようにしています。置き場所の国によって適用される法律が変わることもあるため、会社では置き場所を確かめて選びます。「雲」という呼び名と、場所を気にせず使える手軽さから生まれやすい誤解です。

誤解: クラウドに置いたデータは、自動でバックアップされていて安全

実際は、事業者は機械の故障に備えて、データを複数の装置に写していることが多くあります。しかしそれは、自分で消したり上書きしたりした場合の備えではありません。手元とクラウドを同じ中身にそろえるサービスでは、手元で消すとクラウドからも消えることがあります。アカウントの乗っ取りや、ランサムウェア(データを読めなくして身代金を求めるプログラム)の被害もありえます。大事なデータは、別の場所にも控えを取っておきます。

誤解: クラウドにすれば、必ず安くなる

実際は、使う量の波が大きい用途や、小さく始めたい場合には安くなりやすいです。一方、同じ量を何年も使い続けるなら、自前のほうが安いこともあります。使っていないサーバを止め忘れると、その分も請求されます。比べるときは、電気代や管理する人の手間も含めた総額で考えます。

数字で見る

項目数字補足
データセンターのPUE(調査の平均)1.56Uptime Instituteの世界の調査(2024年)
Googleの大規模データセンター全体のPUE1.09Googleの公表値(2024年の年間)
世界のデータセンターの電力消費約415TWh世界の電力の約1.5%(IEA、2024年)
同じく2030年の見込み約945TWh2024年の2倍あまり(IEAの基本の想定)
2025年10月のAWSの障害約14時間半最初の異常から障害の終わりまで(AWSの事後報告)
クラウドの基盤の市場シェア(2026年4〜6月)Amazon 28%、Microsoft 20%、Google 15%Synergy Research Groupの推計

市場シェアは、IaaSとPaaSなどを合わせた売上で見た推計です。上位3社で6割あまりを占めます。数字は3か月ごとに変わり、調べる会社によっても違います。

もっと詳しく学ぶ

  • 計算で試す: 稼働率の計算ツール(サーバを2台に分けて置くと、止まる時間がどれだけ減るか)
  • 次の一歩の用語: オブジェクトストレージ(写真などを置くクラウドの保存場所)、SLA(事業者が約束する稼働率などの取り決め)、単一障害点(止まると全体が止まる箇所)
  • コンテナをもっと知る: Docker(コンテナを作って動かす道具)、Kubernetes(たくさんのコンテナをまとめて管理する基盤)
  • 土台から読む: 仮想マシンの中でも動いている基本のソフトについて「OSとは?」

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