マルウェアとは? ウイルス・ランサムウェアの違いと対策

約14分 · 更新: 2026年10月23日

マルウェアは、利用者に害を与える目的で作られたソフトをまとめて呼ぶ言葉です。ウイルス、ワーム、ランサムウェアなどは、その中の種類の名前です。防ぐ基本は、ソフトの更新、切り離した控え(バックアップ)、多要素認証などを重ねることです。

この記事でわかること

  • マルウェアとウイルスの関係と、主な種類の違い
  • マルウェアが入ってくる、主な4つの道すじ
  • ランサムウェアが何をするのか、身代金についての公的機関の考え方
  • 個人と会社でできる防ぎ方
  • 感染したかもしれないときに、最初にすることと相談先

前提知識: 特にありません。「フィッシング詐欺とは?」「OSとは?」を読んでいると、よりわかりやすくなります。

身近なところでは

「サイバー攻撃で、会社の工場や出荷が止まった」というニュースを見たことはないでしょうか。原因としてよく名前が出るのが、ランサムウェアです。警察庁によると、2025年に全国の警察へ報告された被害は226件でした。2026年1〜6月は123件で、半年ごとに数え始めた2020年後半以降で最多です。

個人のスマホやパソコンも狙われます。「ウイルスに感染しました」という警告が、急に画面に出た経験がある人もいるでしょう。こうした警告の中には、感染していないのに出る偽の画面もあります。

マルウェアとは: 悪い目的で作られたソフトの呼び名

マルウェアは、英語の malicious(悪意のある)と software(ソフトウェア)を合わせた言葉です。利用者の知らないうちに情報を盗んだり、データを壊したり、機器を勝手に操ったりします。1つのしくみの名前ではなく、こうしたソフト全体の呼び名です。

日本では、同じ意味で「ウイルス」と言うこともよくあります。総務省の一般向けのサイトも、広い意味でウイルスと呼ぶことがあると説明しています。一方、狭い意味のウイルスは、下の表の1つの種類です。この記事では、全体をマルウェアと呼びます。

なお、正当な理由なく、人のコンピュータで動かす目的でマルウェアを作ったり配ったり、実際に動かしたりすることは犯罪です。2011年7月に施行された、刑法の「不正指令電磁的記録に関する罪」です。

主な種類: 何に注目するかで呼び名が変わる

種類の名前は、増え方、入り込み方、目的のどれに注目するかで付けられています。そのため、1つのマルウェアが2つ以上の種類に当てはまることもよくあります。

種類ひとことで言うと主な害
ウイルスほかのファイルに入り込み、そのファイルが開かれると増えるファイルを壊す、感染を広げる
ワームネットワークを通って、自分で次の機器へ広がる短い時間に大量の機器へ広がる
トロイの木馬役に立つソフトのふりをして、利用者に入れさせる裏で情報を盗む、ほかのマルウェアを呼び込む
ランサムウェアデータを使えなくして、お金を要求する仕事が止まる、盗んだデータを公開すると脅される
スパイウェア・インフォスティーラーこっそり情報を集めて送るパスワードやカード番号が盗まれる
ボット外から命令を受けて、機器を動かす乗っ取った機器が、ほかへの攻撃に使われる

トロイの木馬という名前は、ギリシャ神話から来ています。兵士を隠した木馬を、贈り物として町の城壁の中に運び込ませた話です。便利なソフトに見せかけ、利用者自身に入れさせる点をなぞらえています。

情報を盗むもののうち、近年目立つのがインフォスティーラー(情報を盗む者という意味)です。パスワードやカード番号などを集めて、攻撃者に送ります。2025年5月、Microsoftは各国の捜査機関などと協力し、その1つ「Lumma」の拠点を止めました。同年3月16日〜5月16日に、世界で39万台を超えるWindowsのパソコンで感染を確認したとしています。

感染した機器を、外からの命令で操れるようにするのがボットです。パソコンだけでなく、ネットにつながる防犯カメラや家庭用ルーターも狙われます。多くの機器を一斉に操り、ほかのサイトを攻撃した例もあります(「IoTとは?」)。

どこから入ってくるのか: 主な4つの道すじ

マルウェアは、勝手に湧いて出てくるわけではありません。個人にも会社にも共通する主な道すじは、次の4つです。

1. メールの添付ファイル

取引先からの返信を装ったメールに、WordやExcelのファイルが付いてくる手口があります。開くと、「コンテンツの有効化」を押すよう促されます。Officeのファイルには、作業を自動で行う小さなプログラムを入れておけます。これをマクロと呼び、ボタンを押すと動き出して感染します。2022年に日本で再び広がったEmotet(エモテット)も、この手口でした。

2. 偽のアプリや、正規でない配布元のソフト

人気のアプリや無料のソフトに見せかけたものです。IPA(情報処理推進機構)が毎年選ぶ「情報セキュリティ10大脅威」の2026年版にも、不正アプリの被害が入っています。アプリは、公式のアプリストアや開発元の公式サイトから入れます。

3. 更新していないソフトの弱点

ソフトの設計や作りの誤りのうち、悪用されると入り込まれるものを脆弱性(ぜいじゃくせい)と呼びます。OS、ブラウザ、会社のネットワーク機器などで次々に見つかり、そのたびに直されています(「OSとは?」)。

2017年5月に世界で広がったWannaCryは、Windowsの脆弱性を突き、ネットワークの中で次々に広がりました。ワームでもあり、ランサムウェアでもあったのです。Microsoftは、この脆弱性を直す更新を、約2か月前の2017年3月に配っていました。Windows Updateを有効にしていたパソコンは守られていた、と説明しています。

一方、直す更新が配られる前の弱点を突く攻撃もあります。これをゼロデイ攻撃と呼びます。更新だけでは防げないので、ほかの守りも重ねます。

4. フィッシングのリンク

メールやSMSのリンクから偽のサイトに誘い、パスワードを入力させたり、不正なアプリを入れさせたりする手口です(「フィッシング詐欺とは?」)。

会社の場合は、もう1つ大きな入口があります。外から社内につなぐためのVPN機器と、離れた場所からパソコンを操作するリモートデスクトップです。警察庁によると、2024年に感染経路がわかった100件のうち、VPN機器が55件、リモートデスクトップが31件でした(「VPNとは?」)。

ランサムウェアは何をするのか

ランサムウェアの「ランサム」は、英語で身代金という意味です。会社やパソコンの中のファイルを、勝手に暗号化して読めなくします。そして、元に戻す代わりにお金を要求します。

暗号化は、本来はデータを守るための技術です。鍵を持たない人には読めない形に、データを変えます(「暗号とは?」)。ランサムウェアでは鍵を攻撃者だけが持つので、持ち主が自分のデータを読めなくなります。

会社を狙う攻撃では、暗号化の前にデータのコピーを盗み出すことが多くあります。そのうえで「払わなければ、盗んだデータを公開する」とも脅します。脅しが2つ重なるので、二重恐喝(にじゅうきょうかつ)と呼ばれます。警察庁によると、2024年に手口がわかった134件のうち、111件(約8割)が二重恐喝でした。

二重恐喝のしくみ。社内に入り込んだ攻撃者が、データのコピーを盗み出し、ファイルを暗号化する。「払わないと公開する」と「払えば元に戻す」の2つの脅しで支払いを迫る 攻撃者が入り込む ① データの コピーを盗む ② ファイルを 暗号化する 「払わないと 公開する」 「払えば 元に戻す」 脅しが2つ重なる = 二重恐喝
多くの攻撃は、①盗むと②暗号化するを組み合わせます。バックアップで②から立ち直れても、①の脅しは残ります。省略していること: 攻撃者が社内のほかのパソコンやサーバに広がる段階。順番は事件によって違うこと。

暗号化はせず、データを盗んで脅すだけの手口もあります。警察庁はこれを「ノーウェアランサム」と呼び、2025年に17件の報告があったとしています。この場合、バックアップがあっても、公開するという脅しは防げません。

身代金は払うべき? 公的機関の考え方

警察庁は、被害にあった組織に、支払いについて2つの点を説明しています。払ったお金が、犯罪グループの活動資金になるおそれがあること。そして、払っても、暗号化されたデータが元に戻る保証はないことです。

米国でサイバー安全保障を担う機関CISAなども、対策の手引きで、身代金を払うことは勧めないとしています。払っても、データが戻ること、盗まれたデータが漏らされないこと、再び侵入されないことは保証されないためです。

払うかどうかを考える前に、まず警察や専門の会社に相談します。兵庫県警察も、復号(元に戻すこと)を急ぐより先に、システムやセキュリティの会社に相談するよう案内しています。種類によっては、元に戻す道具が公開されている場合もあります。

防ぎ方: 1つに頼らず、重ねる

どの対策も、それだけで全部は防げません。入口を狭める対策と、入られても被害を小さくする対策を重ねます。会社でも家庭でも、考え方は同じです。

1. ソフトを更新する

OS、ブラウザ、アプリ、ルーターなどの更新は、見つかった脆弱性をふさぐ作業です。自動更新を有効にし、通知が来たら先延ばしにしないことが基本です。サポートが終わった古いOSや機器には、更新が届きません。

2. バックアップを取り、1つは切り離しておく

データの控えを別の場所に取っておくことを、バックアップと呼びます。ランサムウェアの暗号化への、いちばんの備えです。ただし、パソコンにつないだままの外付けディスクや共有のフォルダは、いっしょに暗号化されることがあります。警察庁が2024年に被害組織を調べたときも、バックアップから元に戻せなかった例が多くありました。

つないだままのバックアップは、パソコンといっしょに暗号化される。取るときだけつなぎ、終わったら切り離したバックアップは無事に残り、そこから元に戻せる つないだままの控え パソコン 控え 両方とも暗号化される 切り離した控え パソコン 外す 控え 控えは無事 ここから元に戻せる
色を付けた箱は暗号化されたもの、色のない箱は無事なものです。省略していること: 何日分もの控えを残すこと。書き換えや削除ができない設定にしたクラウドの控えなど、つないだままでも守る方法があること。

警視庁は、バックアップを取るときだけつなぎ、終わったら外す方法を勧めています。何日分かの控えを残すこと、戻せるか時々試すことも大切です。クラウドに置いた控えも、それだけで安全とは限りません(「クラウドとは?」のよくある誤解)。

3. 多要素認証を使う

パスワードに加えて、スマホなど別の手段でも本人を確かめるしくみが多要素認証です。盗まれたパスワードだけでは、入られにくくなります。インフォスティーラーにパスワードを盗まれたときの助けにもなります(「パスワードはなぜ破られる?」)。

4. ウイルス対策ソフトとEDR

ウイルス対策ソフトは、知られているマルウェアの特徴との照合や、怪しい動きの見張りで、見つけたものを止めます。Windows 11には、Microsoft Defenderという対策ソフトが初めから入っています。ほかの対策ソフトを入れないなら、これを有効にしたまま使います。

会社では、パソコンの上で起きたことを記録し続け、入り込まれた後の怪しい動きを見つける製品も使われます。これをEDRと呼びます。担当者は何が起きたかを調べ、遠くからその端末をネットワークから切り離せる製品もあります(「ウイルス対策ソフト・EDR・XDRの違い」)。

5. ふだんは必要な権限だけで使う

パソコンには、ソフトを入れたり設定を変えたりできる強い権限(管理者の権限)と、ふだんの作業用の権限があります。ここでは単純化しますが、マルウェアは、それを動かした人の権限で動くのが基本です。ふだんは管理者でない利用者で使うと、被害が広がりにくくなります。必要な分だけの権限を与えるこの考え方を、最小権限の原則と呼びます。

会社で、社員ごとに開けるフォルダを絞るのも同じ考え方です。1台が感染しても、被害の範囲を小さくできます。

6. マクロを有効にせず、入れるアプリを選ぶ

身に覚えのない添付ファイルは開かず、開いてしまっても「コンテンツの有効化」は押しません。Microsoftは2022年から、ネットから来たOfficeファイルのマクロを、初めから止めるように変えました。止められたという表示が出たら、送り主に電話など別の方法で確かめます。

感染したかもしれないときは

身代金を求める文が画面に出た、ファイルが急に開けなくなった。そんなときは、最初の動き方で被害の広がりが変わります。警察やIPAの案内をもとにまとめます。

  1. ネットワークから切り離す: LANケーブルを抜き、Wi-Fiを切ります。ほかの機器へ広がるのを防ぐためです。
  2. 会社の端末なら、電源は切らずに、すぐ担当者へ報告する: 警察の注意喚起は、電源を切ったり再起動したりしないよう呼びかけています。何が起きたかを調べる手がかりが、消えるおそれがあるためです。会社に決まった手順があれば、それに従います。
  3. 警察に通報・相談する: 会社の被害は、所在地の警察署や、都道府県警察のサイバー犯罪の相談窓口に届けます。迷ったら、警察の相談専用電話「#9110」も使えます。
  4. 個人の相談はIPAへ: IPAの「情報セキュリティ安心相談窓口」が、ウイルスや不正アクセスの相談に助言しています。電話は03-5978-7509です(2026年10月時点。平日10時〜17時)。

スマホに不正なアプリを入れてしまった場合、IPAは、機内モードにしてアプリを消すよう案内しています。そのうえで、端末の初期化とパスワードの変更をします。

よくある誤解

誤解: ウイルス対策ソフトを入れていれば、マルウェアは全部防げる

実際は、作られたばかりのマルウェアは、すり抜けることがあります。盗まれたパスワードを使った侵入も、対策ソフトだけでは止めきれません。対策ソフトは守りの層の1つで、更新やバックアップと重ねて使います。「ウイルス対策」という名前から、何でも防ぐ盾を想像しやすいことが誤解のもとです。

誤解: 画面に「ウイルスに感染しました」と出たら、書かれた番号に電話して直してもらう

実際は、ブラウザに出る偽の警告で、電話をかけさせてお金を払わせる「サポート詐欺」のおそれがあります。IPAは、表示された番号には電話をせず、画面を閉じるよう呼びかけています。「10大脅威 2026」の個人編にも、「サポート詐欺(偽警告)による金銭被害」が入っています。会社のパソコンなら、管理者に知らせます。

誤解: 感染すれば、パソコンが重くなるなどして、すぐ気づける

実際は、多くのマルウェアは、見つからないよう静かに動きます。総務省も、利用者が気づかないうちに動く種類があると説明しています。情報を盗むものやボットは、持ち主が気づかないまま働き続けます。映画などで、感染すると画面がおかしくなる場面が多く描かれることも、誤解のもとです。

数字で見る

項目数字時点・出典
ランサムウェアの被害の報告230件→197件→222件→226件2022年→2025年、警察庁
同上(半年ごと)123件(2020年後半以降の半年ごとで最多)2026年1〜6月、警察庁
そのうち中小企業143件(約6割)2025年、警察庁
暗号化せずに盗んで脅す手口17件2025年、警察庁
手口がわかった被害のうち二重恐喝134件中111件(約8割)2024年、警察庁
感染経路(わかった100件のうち)VPN機器55件、リモートデスクトップ31件2024年、警察庁
10大脅威(組織編)の1位ランサム攻撃による被害2026年版、IPA(2021年版から6年続けて1位)
Lummaの感染を確認したWindowsのパソコン39万台超2025年3月16日〜5月16日、Microsoft
WannaCry: 直す更新(MS17-010)の配布→攻撃2017年3月→5月Microsoft

警察庁の件数は、警察に報告された数です。報告されない被害もあるので、すべての被害の数ではありません。それでも、毎年200件前後の高い水準が続いています。中小企業が約6割を占め、大きな会社だけが狙われるわけではありません。

もっと詳しく学ぶ

シリーズ「セキュリティと暮らしの IT」の記事

  1. パスワードはなぜ破られる? 長さと使い回しが大事な理由
  2. クラウドとは? データやアプリが「どこか」で動くしくみ
  3. 暗号とは? 共通鍵と公開鍵のしくみをやさしく
  4. 生成AIはどう動く? 大規模言語モデルのしくみ
  5. VPNとは? 通信を守るトンネルのしくみと、できないこと
  6. 機械学習とは? データから規則を見つけるしくみ
  7. データセンターとは? クラウドとAIを支える建物の中身
  8. ファイアウォールとは? 通信を通す・止めるしくみ
  9. QRコードとは? 汚れても読めるしくみ
  10. フィッシング詐欺とは? 偽メール・偽サイトの見分け方と対策
  11. 指紋認証・顔認証のしくみとは? スマホはどう本人を見分ける?
  12. マルウェアとは? ウイルス・ランサムウェアの違いと対策

この分野の問題: 情報セキュリティの基礎

参考にした資料

やさしい解説の一覧へ