MRAM・ReRAM・PCM・FeRAMの違い:新規メモリを比較

この4つの新しい不揮発性メモリは、どれもRAMのような速さと、電源を切ってもデータが残ることの両立をめざしています。違いは、何でビットを記憶するかです。薄膜の磁化(MRAM)、酸化物中のフィラメントの抵抗(ReRAM)、材料の結晶状態とアモルファス状態(PCM)、強誘電体の分極(FeRAM)です。どれもまだDRAMやフラッシュを広く置き換えてはいませんが、それぞれの得意な分野を見つけています。

項目MRAMReRAMPCMFeRAM
何でビットを記憶するか磁気トンネル接合の自由層の磁化の向き。低抵抗か高抵抗として読み出す金属酸化物の層にできたり切れたりする、導電性のフィラメントの抵抗相変化材料の、結晶状態(低抵抗)かアモルファス状態(高抵抗)コンデンサ中の強誘電体の分極の向き
書き込み方法スピン注入(STT)やスピン軌道トルク(SOT)の電流電圧パルス(SETとRESET)熱のパルス。溶かして急冷するとアモルファス、熱を加えて結晶化する電界で分極の向きを反転させる
読み出し抵抗の検出抵抗の検出抵抗の検出キャパシタ型は破壊読み出し。読み出し後にデータを書き戻す
速度速い。書き込みは数〜数十ns速い〜中程度(数十ns〜マイクロ秒)読み出しは速い。書き込みは遅く、エネルギーも多く要る速い。数十ns
書き換え寿命非常に長い(10¹⁰回超)中程度〜長い。設計によって異なる中程度(おおむね10⁶〜10⁹回)キャパシタ型では非常に長い
集積度中程度。セルが大きく、積層しにくい高くできる見込み。セルが単純で、クロスバー配列にできる高くできる見込み低め。キャパシタを小さくしにくい
主な課題書き込みのエネルギー、セルの大きさ、工程の複雑さセル間のばらつき、最初のフォーミング工程書き込み電流が大きいこと、抵抗が時間とともに変わるドリフトキャパシタの微細化、強誘電体材料の集積
主な用途マイコンや車載機器の組み込みメモリ、データのロギング組み込みの不揮発性メモリ、AI向けのインメモリコンピューティングストレージクラスメモリ、組み込みメモリスマートカード、メーター、IoT機器の小さな低消費電力メモリ

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

MRAM
フラッシュのようにデータが残り、DRAMのように速く、書き換え回数もほぼ無制限の不揮発性メモリが欲しいとき。組み込みメモリや頻繁なロギングなど。
ReRAM
単純で高密度、低電圧のセルが欲しいとき。メモリの配列の中で積和演算をする、インメモリコンピューティングにも向きます。
PCM
DRAMとフラッシュの間にあたる、より高密度なメモリが欲しく、書き込みのエネルギーが多いことを許容できるとき。
FeRAM
消費電力が非常に小さく、速く、書き換え寿命の長いメモリが、少量だけ必要なとき。スマートカードやセンサーなど。

よくある質問

DRAMやSRAMの置き換えに最も近い新規メモリはどれですか?

MRAMが、速度と書き換え寿命で最も近く、書き込みは数〜数十ns、書き換えは10¹⁰回を超えます。ただし、セルが大きいので、容量と1ビットあたりのコストではDRAMやフラッシュにはるかに及ばず、組み込みメモリとして使われています。

相変化メモリはどうやってデータを記憶しますか?

材料を加熱して、結晶状態(低抵抗)とアモルファス状態(高抵抗)を切り替えます。その抵抗を、0か1として読み出します。

キャパシタ型のFeRAMの読み出しが破壊読み出しなのはなぜですか?

読み出しでは、分極を反転させて検出するので、記憶していた値が消えてしまい、読み出しのたびにデータを書き戻す必要があります。

ReRAMのインメモリコンピューティングとは何ですか?

ReRAMの配列は、各セルの抵抗を重みとして使い、メモリの中で直接、積和演算ができます。AIの処理に向き、メモリとプロセッサの間でデータを動かさずに済みます。

理解度チェック

MRAMの記憶原理として正しいものはどれか。

  1. A磁気トンネル接合(MTJ)の磁化の向きによる抵抗の違い
  2. Bカルコゲナイド材料の結晶状態とアモルファス状態の抵抗の違い
  3. Cキャパシタに蓄えた電荷の有無
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正解:A. 磁気トンネル接合(MTJ)の磁化の向きによる抵抗の違い

MRAMは、2つの磁性層で厚さ1 nm程度の絶縁層をはさんだ磁気トンネル接合(MTJ)を使います。磁化の向きが平行なら抵抗が低く、反平行なら高くなるトンネル磁気抵抗効果で0と1を区別し、磁化は電源なしで保たれるため不揮発です。書き換え回数がほぼ無制限で高速な点が強みです。結晶とアモルファスの抵抗差を使うのは相変化メモリ、電荷を使うのはDRAMです。

相変化メモリ(PCM)の記憶原理として正しいものはどれか。

  1. A磁性層の磁化方向の違い
  2. Bカルコゲナイド材料の結晶状態とアモルファス状態の抵抗の違い
  3. C強誘電体の分極の向き
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正解:B. カルコゲナイド材料の結晶状態とアモルファス状態の抵抗の違い

PCMは、GeSbTeなどのカルコゲナイド材料を電流のジュール熱で加熱・急冷し、低抵抗の結晶状態と高抵抗のアモルファス状態を切り替えます。抵抗の差は2〜3桁と大きく、中間の値を作って多値化もできます。同じ材料は、結晶とアモルファスで光の反射率が変わる性質を使って、書き換え型のDVDやBlu-rayにも使われてきました。書き込みに大きな電流が必要なことが課題です。

FeRAM(強誘電体メモリ)が情報の記憶に利用している性質はどれか。

  1. A酸化物中の導電性フィラメントの形成と消滅
  2. B磁気抵抗効果
  3. C強誘電体の自発分極(残留分極)の向き
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正解:C. 強誘電体の自発分極(残留分極)の向き

FeRAMは、電圧を取り去っても分極が残る強誘電体の性質(残留分極)を使い、分極の向きで0と1を記憶します。書き込みは分極を反転させるだけなので、フラッシュのような高電圧が不要で、速く(数十ns)消費電力も小さく、書き換え回数も10¹²回以上と多いのが特徴です。従来はPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)が使われてきました。フィラメントを使うのはReRAM、磁気抵抗はMRAMです。

  1. ReRAM(抵抗変化メモリ)の記憶原理として正しいものはどれか。
  2. フラッシュメモリと比べたときのMRAMの一般的な利点として正しいものはどれか。
  3. 抵抗変化型メモリなどを使ったインメモリコンピューティングで期待される主な用途はどれか。

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関連する用語の解説

MRAM
磁気トンネル接合(MTJ)の磁化の向きによる抵抗の違いで情報を記憶する不揮発性メモリ。
PCM(相変化メモリ)
カルコゲナイド材料の結晶状態(低抵抗)とアモルファス状態(高抵抗)の違いで情報を記憶する不揮発性メモリ。
ReRAM(抵抗変化メモリ)
電圧をかけて酸化物などの中に導電パスをつくったり切ったりし、抵抗の違いで情報を記憶する不揮発性メモリ。
FeRAM(強誘電体メモリ)
強誘電体の分極の向きで情報を記憶する不揮発性メモリ。書き込みが速く低電力で、ICカードなどに使われる。
磁気トンネル接合(MTJ)
薄い絶縁膜を2つの磁性層で挟んだ構造。2層の磁化の向きがそろうと抵抗が低く、逆向きだと高くなる。MRAMの記憶素子。

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