PN接合ダイオードとショットキーダイオードの違い:構造・順方向電圧・逆回復・リーク電流を比較

PN接合ダイオードはp型とn型の半導体の接合で、ショットキーダイオードは金属と半導体の接合で整流します。PN接合では順方向に少数キャリアが注入されて蓄積されるため、逆方向に切り替えたときに逆回復電流が流れます。ショットキーダイオードは多数キャリアだけで動くので逆回復がほとんどなく、シリコンでは順方向電圧も約0.2〜0.4 VとPN接合の約0.6〜0.7 Vより低くなります。その代わり逆方向のリーク電流が大きく、シリコンでは高い耐圧を得にくいという弱点があります。

項目PN接合ダイオードショットキーダイオード
構造p型とn型の半導体を接合する金属と半導体(主にn型)を接合する(ショットキー接合)
電流を運ぶキャリア注入された少数キャリア。電子と正孔の両方が関わる多数キャリアだけ。障壁を越える熱電子放出で流れる
順方向電圧(シリコン、目安)約0.6〜0.7 V約0.2〜0.4 V。金属の種類と耐圧で変わる
逆回復ある。蓄積した少数キャリアが消えるまで逆電流が流れる。一般整流用でµsオーダー、ファストリカバリ品で数十 ns程度ほとんどない。流れるのは接合容量の充放電の電流だけ
逆方向リーク電流小さい大きい。障壁の低いものほど大きい
耐圧(シリコン、目安)高耐圧も作りやすい。数 kV級まである約200 V程度まで。SiCでは600〜1700 V級も実用化されている
高耐圧品の大電流での電圧降下伝導度変調で低濃度層の抵抗が下がり、電圧降下を抑えられる伝導度変調がなく、ドリフト層の抵抗がそのまま効く
温度特性順方向電圧は約−2 mV/℃で下がる。リーク電流は温度とともに増えるリーク電流が温度とともに急に増え、熱暴走に注意が必要。順方向電圧は温度とともに下がる
主な用途商用電源の整流、高耐圧の整流、汎用の保護や信号回路スイッチング電源の低電圧・大電流の整流、還流ダイオード、逆接続の保護、高周波の検波

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

PN接合ダイオード
高い逆電圧がかかる整流や、高温でもリーク電流を小さく抑えたいとき。商用電源の整流や高耐圧の回路などで使います。
ショットキーダイオード
低い電圧で大きな電流を整流するときや、高速にスイッチングするとき。スイッチング電源の出力の整流、還流ダイオード、電池の逆接続の保護などで使います。
組み合わせ
高耐圧で高速な用途では、SiCのショットキーダイオードや、ライフタイム制御をしたファストリカバリダイオードが選ばれます。PN接合とショットキー接合を組み合わせたJBS構造のダイオードもあり、リーク電流と順方向電圧のバランスをとっています。

よくある質問

ショットキーダイオードの順方向電圧が低いのはなぜですか?

ショットキー障壁を越えて流れる熱電子放出の電流は、PN接合の拡散電流より桁違いに大きな飽和電流をもつので、同じ電流を低い電圧で流せるからです。障壁の高さは金属の種類で変わり、障壁が低いほど順方向電圧は下がりますが、逆方向のリーク電流は増えます。

ショットキーダイオードに逆回復がほとんどないのはなぜですか?

多数キャリアだけで電流が流れ、PN接合のように少数キャリアを注入して蓄積することがないからです。逆方向に切り替えたときに流れるのは接合容量を充放電する電流だけなので、スイッチング損失やノイズを小さくできます。

シリコンのショットキーダイオードで、高い耐圧のものが少ないのはなぜですか?

耐圧を上げるには低濃度で厚いドリフト層が必要ですが、ショットキーダイオードには伝導度変調がないため、その抵抗がそのまま順方向の電圧降下に加わるからです。リーク電流も大きくなるので、シリコンでは約200 V程度までが一般的です。臨界電界の高いSiCなら、薄いドリフト層で600 V以上の耐圧が得られます。

ショットキーダイオードを高温で使うときの注意点は何ですか?

逆方向のリーク電流が温度とともに急に増えることです。リーク電流による発熱でさらに温度が上がると熱暴走につながるので、データシートで高温でのリーク電流を確かめ、放熱や逆電圧に余裕を持たせて使います。

理解度チェック

一般的なシリコンPN接合ダイオードの順方向電圧(電流が流れ始めるおよその電圧)はどれか。

  1. A約3 V
  2. B約0.1 V
  3. C約0.6〜0.7 V
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正解:C. 約0.6〜0.7 V

シリコンダイオードは約0.6〜0.7 Vを超えると大きな電流が流れ始めます。これは室温で実用的な電流(mA程度)が流れる電圧の目安で、バンドギャップが大きい材料ほど高くなります。ショットキーバリアダイオードは約0.2〜0.4 V、SiCのショットキーダイオードは約1〜1.5 V(SiCのPN接合は約2.5〜3 V)、GaN系の青色LEDは約3 Vです。整流時の損失は「順方向電圧×電流」なので、大電流の電源では低いVFが重視されます。

ショットキーバリアダイオードの特徴として正しいものはどれか。

  1. A2つのp型半導体を接合したダイオードである
  2. B金属と半導体の接合を利用し、順方向電圧が低く、スイッチングが速い
  3. C順方向に電流を流すと強く発光する
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正解:B. 金属と半導体の接合を利用し、順方向電圧が低く、スイッチングが速い

ショットキーバリアダイオードは金属と半導体の接合(ショットキー接合)を使い、多数キャリアだけで動作します。少数キャリアの蓄積がないため逆回復がほとんどなく高速で、順方向電圧も約0.2〜0.4 VとPN接合より低いため、スイッチング電源の整流に使われます。弱点は逆方向の漏れ電流が大きく高温で増えやすいことで、シリコンでは耐圧は約200 V程度までですが、SiCでは1 kV級も実用化されています。

PN接合ダイオードを順方向から逆方向に切り替えたとき、短い時間だけ逆方向電流が流れる(逆回復時間がある)原因はどれか。

  1. A金属電極の抵抗が大きいため
  2. B順方向で導通していたときに蓄積された少数キャリアが、すぐには消えないため
  3. Cパッケージが熱をもつため
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正解:B. 順方向で導通していたときに蓄積された少数キャリアが、すぐには消えないため

順方向で導通している間、接合の両側には注入された少数キャリアが蓄積されています。逆方向に切り替えても、これらが引き抜かれるか再結合で消えるまでは逆方向に電流が流れ続けます。この時間が逆回復時間(trr)で、逆回復電流は損失やノイズの原因になります。対策として、ライフタイム制御をしたファストリカバリダイオード、少数キャリアを使わないショットキーやSiCダイオードが使われます。

  1. ダイオードのデータシートにある逆回復時間 trr について正しいものはどれか。
  2. SiCショットキーバリアダイオードが、インバータなどの還流ダイオードとして使われる主な利点はどれか。
  3. ベース-コレクタ間にショットキーバリアダイオードを並列に入れたトランジスタ(ショットキークランプ)の狙いとして正しいものはどれか。

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関連する用語の解説

ショットキーバリアダイオード
金属と半導体の接合(ショットキー接合)を使ったダイオード。順方向電圧が低く、少数キャリアの蓄積がないため高速にスイッチングできる。
逆回復時間
導通していたダイオードに逆電圧をかけたとき、蓄積された少数キャリアが消えるまで逆方向に電流が流れ続ける時間。スイッチング損失やノイズの原因になる。
順方向バイアス
p側に正、n側に負の電圧をかけること。障壁が下がって電流がよく流れる。逆にかけると逆方向バイアスで、電流はほとんど流れない。
伝導度変調
低濃度の層に多数の少数キャリアが注入され、その層の抵抗が大きく下がる現象。PINダイオードやIGBTで、高耐圧と低いオン電圧を両立させるために使われる。
仕事関数
真空準位からフェルミ準位までのエネルギー差で、物質から電子を取り出すのに必要な最小のエネルギー。メタルゲートのしきい値電圧やショットキー障壁の高さを左右する。

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