NPNトランジスタとPNPトランジスタの違い:構造・電流の向き・回路記号・使い方を比較

NPNトランジスタは、n型のエミッタとコレクタでp型のベースを挟んだもの、PNPトランジスタはその逆で、p型のエミッタとコレクタでn型のベースを挟んだものです。NPNでは電子が、PNPでは正孔が主に電流を運び、電圧と電流の向きがすべて逆になります。シリコンでは電子の移動度が正孔より大きいので、同じ寸法ならNPNの方が速く、電流増幅率も高くしやすいため、よく使われます。

項目NPNPNP
半導体の並び(エミッタ・ベース・コレクタ)n型・p型・n型p型・n型・p型
主に電流を運ぶキャリア電子(エミッタからベースへ注入される)正孔(エミッタからベースへ注入される)
能動領域のバイアスベース・エミッタ間は順バイアス(ベースをエミッタより約0.6〜0.7 V高くする)、ベース・コレクタ間は逆バイアスベース・エミッタ間は順バイアス(ベースをエミッタより約0.6〜0.7 V低くする)、ベース・コレクタ間は逆バイアス
端子の電圧の関係(能動領域)VC > VB > VEVE > VB > VC
電流の向きベースとコレクタから流れ込み、エミッタから流れ出すエミッタから流れ込み、ベースとコレクタから流れ出す
回路記号の矢印エミッタから外向きエミッタへ内向き
スイッチとしての使い方負荷とGNDの間に置くローサイドスイッチ。ベースに電流を流し込むとオン電源と負荷の間に置くハイサイドスイッチ。ベースから電流を引き出すとオン
性能(同じ寸法のとき)電子の移動度が大きいので、速く、電流増幅率を大きくしやすい正孔の移動度が小さいので、NPNより遅く、電流増幅率も小さめになりやすい
主な使い方増幅回路、ローサイドスイッチ、オープンコレクタ出力、ECLなどの高速回路ハイサイドスイッチ、NPNと組み合わせたプッシュプル出力段、電源側から電流を送り出す電流源

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

NPN
迷ったときの最初の候補です。マイコンの端子からLEDやリレーをGND側でオン・オフする回路や、一般的な増幅回路でよく使います。
PNP
電源側で負荷をオン・オフしたいときや、電源から電流を送り出す電流源を作りたいときに使います。
組み合わせ
特性のそろったNPNとPNPの組(コンプリメンタリペア)で、正と負の半周期を分担するプッシュプル増幅回路を作れます。B級ではクロスオーバーひずみが出るので、少しバイアス電流を流すAB級にするのが一般的です。

よくある質問

NPNとPNPの回路記号はどう見分けますか?

エミッタに付いた矢印の向きで見分けます。矢印は、ベースとエミッタの間のPN接合で順方向の電流が流れる向き(p型からn型)を表していて、NPNではエミッタから外向き、PNPではエミッタへ内向きです。

NPNの方がよく使われるのはなぜですか?

シリコンでは電子の移動度が正孔の約2〜3倍あり、同じ構造ならNPNの方が電流増幅率や動作速度を高くしやすいからです。また、GNDを基準にした回路では、NPNのローサイドスイッチが組みやすいことも理由です。

NPNをPNPに置き換えることはできますか?

そのまま差し替えることはできません。電圧と電流の向きがすべて逆になるので、電源の極性や負荷の位置を含めて回路を作り直す必要があります。回路全体を電源側とGND側で上下反転させた形にすると、同じ働きをさせられます。

PNPトランジスタをオンにするには?

ベースの電圧をエミッタより約0.6〜0.7 V低くし、ベースから電流を引き出します。エミッタを電源につないだハイサイドスイッチでは、ベースを抵抗を通してGND側に引くとオンになり、エミッタと同じ電圧にするとオフになります。

理解度チェック

NPNトランジスタを増幅に使う(能動領域で動作させる)ときのバイアス条件として正しいものはどれか。

  1. Aベース-エミッタ間は順方向、ベース-コレクタ間は逆方向
  2. Bベース-エミッタ間は逆方向、ベース-コレクタ間は順方向
  3. Cベース-エミッタ間、ベース-コレクタ間ともに順方向
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正解:A. ベース-エミッタ間は順方向、ベース-コレクタ間は逆方向

能動領域では、ベース-エミッタ接合を順方向にしてエミッタからベースへ電子を注入し、ベース-コレクタ接合を逆方向にして、ベースを通り抜けた電子を強い電界でコレクタへ引き込みます。コレクタ電流はコレクタ電圧にほとんど左右されず、ベース電流(またはVBE)で決まるため増幅ができます。両方が順方向なら飽和領域(スイッチのオン)、両方が逆方向なら遮断領域(オフ)です。

PNPトランジスタで、エミッタからベースへ注入されて主に電流を運ぶキャリアはどれか。

  1. A電子
  2. B正孔
  3. Cイオン
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正解:B. 正孔

PNPトランジスタでは、p型のエミッタからn型のベースへ正孔が注入され、ベースを通り抜けてp型のコレクタに集められます。NPNでは電子が同じ役割を担います。電子の移動度は正孔の約3倍なので、同じ構造ならNPNのほうが速く電流増幅率も高く、主流です。PNPはNPNと組み合わせたプッシュプル回路や、電源の正側でのスイッチ(ハイサイド)などで使われ、電圧と電流の向きがNPNと逆になります。

NPNトランジスタの回路記号で、エミッタに付いている矢印の向きとして正しいものはどれか。

  1. Aコレクタからエミッタへ向かう向き
  2. Bベースからエミッタの外へ向かう向き
  3. Cエミッタの外からベースへ向かう向き
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正解:B. ベースからエミッタの外へ向かう向き

回路記号の矢印は、ベース-エミッタ間のPN接合で順方向電流が流れる向き(p→n)を表します。NPNではベース(p)からエミッタ(n)へ流れるので矢印は外向き、PNPでは内向きです。覚え方として「NPN: Not Pointing iN(内を指さない)」が知られています。矢印はエミッタ側にだけ付くので、記号からエミッタとコレクタを見分けることもできます。

  1. NPNトランジスタで、エミッタの不純物濃度をベースより高くする主な理由はどれか。
  2. NPNとPNPのトランジスタで正と負の半周期を分担するB級プッシュプル増幅回路で生じやすいひずみはどれか。
  3. 能動領域で動作しているシリコンのバイポーラトランジスタのベース-エミッタ間電圧VBEの目安として正しいものはどれか。

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関連する用語の解説

電流増幅率(hFE)
バイポーラトランジスタのコレクタ電流とベース電流の比(IC/IB)。
能動領域
ベース-エミッタ間を順方向、ベース-コレクタ間を逆方向にバイアスした状態。ベース電流に比例したコレクタ電流が流れ、増幅に使う。
飽和領域
バイポーラトランジスタのベース-エミッタ接合とベース-コレクタ接合がどちらも順バイアスになった状態。コレクタ-エミッタ間電圧が0.1〜0.3 V程度まで下がり、スイッチのオンに相当する。
エミッタフォロワ
コレクタ接地の増幅回路。電圧利得はほぼ1だが、入力インピーダンスが高く出力インピーダンスが低いため、信号を弱らせずに次の段を駆動するバッファとして使われる。
クロスオーバーひずみ
B級プッシュプル増幅回路で、正と負の半周期を受け持つトランジスタが切り替わる0 V付近で、どちらも導通しないために生じるひずみ。わずかにバイアスを流すAB級で軽減する。

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