静電容量式とピエゾ抵抗式のMEMSセンサの違い:原理・消費電力・温度特性・用途を比較

MEMSの加速度センサーや圧力センサーは、おもりやダイヤフラムが力で動いたり曲がったりする量を電気信号に変えます。静電容量式は、可動電極と固定電極の間の静電容量の変化から変位を測ります。消費電力が小さく温度の影響も受けにくいのですが、変化がごくわずかなので、高感度の専用回路が必要です。ピエゾ抵抗式は、シリコンに応力が加わると抵抗率が変わる効果を使い、ブリッジ回路で読み取ります。回路は簡単で出力も扱いやすい一方、電流を流し続けるため消費電力が大きく、温度による変化の補償が欠かせません。

項目静電容量式ピエゾ抵抗式
検出の原理可動電極と固定電極の間の静電容量の変化応力による抵抗率の変化(ピエゾ抵抗効果)
加速度センサーの構造ばねで支えたおもりに、くし歯状の可動電極を付け、両側の固定電極との容量の差を測る(差動)おもりを支えるはりに抵抗をつくり込み、はりが曲がったときの応力を測る
圧力センサーの構造圧力で曲がるダイヤフラムと、向かい合う電極の間の容量を測る薄いダイヤフラムの縁に4つの抵抗をつくり込み、ホイートストンブリッジにする
読み取る信号非常に小さい容量の変化(加速度センサーではfF以下のことも)。容量を電圧に変える専用のASICが必要抵抗の変化をブリッジの電圧として取り出す。回路は簡単
消費電力小さい。直流の電流が流れない大きめ。ブリッジに直流電流を流し続ける
温度の影響受けにくい抵抗値と感度が温度で大きく変わり、温度補償が必須
感度と分解能差動の電極と高感度の回路で、小さな加速度や微小な圧力も高い分解能で測りやすい出力の直線性がよい。感度は比較的低めだが、大きな圧力や衝撃の測定にも向く
静止した状態(一定の力)の測定できる(重力も測れる)できる(重力も測れる)
外乱への強さ配線の寄生容量や電気的なノイズの影響を受けやすく、回路をセンサーの近くに置く低いインピーダンスで、寄生容量の影響を受けにくい
製造表面マイクロマシニングなどでつくり、回路のチップと一緒に小さなパッケージに入れやすい主にバルクマイクロマシニングでダイヤフラムやはりをつくり、イオン注入や拡散で抵抗を形成する
主な用途スマートフォンなどの加速度センサー・ジャイロ、MEMSマイクロフォン、低消費電力の気圧センサー自動車のエンジンやタイヤの圧力、血圧計、産業用の圧力計、衝撃用の加速度センサー

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

静電容量式
電池で動く機器で消費電力を小さくしたいとき、温度変化の大きい環境で安定させたいとき、小さな変化を高い分解能で測りたいとき。
ピエゾ抵抗式
回路を簡単にしたいとき、出力の直線性や扱いやすさを重視するとき、大きな圧力や衝撃を測るとき。
選ぶときの注意
実際の製品の性能は、センサーの構造だけでなく、一緒に使う回路や温度補償、パッケージで大きく変わります。消費電力、測定範囲、精度、温度範囲を仕様書で比べて選びます。

よくある質問

ピエゾ抵抗とピエゾ電気(圧電)は同じですか?

違います。ピエゾ抵抗効果は、応力で抵抗率が変わる効果で、電流を流して抵抗の変化を測ります。圧電効果は、応力で材料に電荷が生じる効果です。圧電式は一定の力が続くと電荷が逃げてしまうため、重力のような一定の加速度は測りにくいのに対し、ピエゾ抵抗式は測れます。

スマートフォンの加速度センサーが静電容量式なのはなぜですか?

消費電力が小さく、温度の影響を受けにくく、回路のチップと一緒に小さなパッケージに入れやすいからです。容量の変化はごくわずかですが、差動の電極と高感度の回路で読み取ります。

ピエゾ抵抗式で温度補償が必要なのはなぜですか?

シリコンの抵抗値と、応力に対する抵抗の変化の大きさ(感度)が、どちらも温度で変わるからです。4つの抵抗をブリッジにして影響の一部を打ち消し、残りを補償回路や校正で補正します。

理解度チェック

静電容量式のMEMS加速度センサが加速度を検出する原理として正しいものはどれか。

  1. A温度変化による抵抗値の変化
  2. B可動部(おもり)の変位による電極間の静電容量の変化
  3. C光の干渉縞の変化
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正解:B. 可動部(おもり)の変位による電極間の静電容量の変化

加速度が加わると、ばねで支えられたおもりが慣性で動き、くし歯状の固定電極との距離が変わります。その静電容量の変化を回路で検出して加速度を求めます。変位は数nm以下、容量変化はfF(10⁻¹⁵ F)以下とごくわずかですが、差動の電極構成と高感度な回路で読み取ります。構造が簡単で消費電力が小さく温度の影響も受けにくいため、スマートフォンなどで広く使われています。

半導体圧力センサなどに利用されるピエゾ抵抗効果の説明として正しいものはどれか。

  1. A機械的な応力が加わると、材料の電気抵抗率が変化する効果
  2. B光を当てると電圧が生じる効果
  3. C磁界によって電流の向きが曲げられる効果
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正解:A. 機械的な応力が加わると、材料の電気抵抗率が変化する効果

シリコンは応力が加わると結晶のバンド構造が変わり、抵抗率が金属のひずみゲージより数十倍大きく変化します(ピエゾ抵抗効果)。圧力を受けて変形する薄いダイヤフラムの縁に4つの抵抗をつくり込み、ホイートストンブリッジで抵抗変化を検出すると、圧力を電気信号に変換できます。自動車のエンジンやタイヤの圧力、血圧計、気圧計などに使われ、温度補償が設計の鍵です。

MEMSマイクロフォンで音を電気信号に変える代表的な方式はどれか。

  1. A音で発熱する抵抗の温度変化を検出する
  2. B音で発光する素子の光量を検出する
  3. C音圧で振動する膜と固定電極の間の静電容量の変化を検出する
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正解:C. 音圧で振動する膜と固定電極の間の静電容量の変化を検出する

一般的なMEMSマイクロフォンは、音圧で振動する厚さ1 µm前後の薄い膜(ダイヤフラム)と、穴のあいた固定電極(バックプレート)でコンデンサを構成し、膜の振動による容量の変化を、同じパッケージ内のASICで電気信号に変えます。従来のエレクトレットコンデンサマイクより小型で、はんだ付けの熱に強く特性もそろいやすいため、スマートフォンでは複数個を使ってノイズ除去なども行います。

  1. 4つの抵抗R1・R2・R3・R4でつくったホイートストンブリッジ(R1とR2、R3とR4がそれぞれ直列で、その2組が並列)で、2組の中点の間に電流が流れない(平衡する)条件はどれか。
  2. MEMS加速度センサが、静止した状態でも約1 Gの加速度を検出する理由として正しいものはどれか。

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関連する用語の解説

静電容量検出
可動電極と固定電極の間の静電容量の変化から、変位や圧力などを検出する方式。MEMSセンサーで広く使われる。
ピエゾ抵抗効果
機械的な応力が加わると、材料の電気抵抗率が変化する効果。シリコンでは特に大きく、半導体圧力センサなどに利用される。
加速度センサー
ばねで支えた小さなおもりの動きから加速度を検出するセンサー。スマートフォンの向きの検出やエアバッグなどに使われる。
MEMS
微小電気機械システム。半導体の微細加工技術で微小な機械構造と電子回路をつくり込んだデバイス。

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